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河川局

美しく、安全で、いきいきした海岸を目指して




2.海岸のあるべき姿


 海岸は、我が国の国土の外郭を形成しており、海域に起因する様々な災害から国民の生命や財産を防護する機能を有するとともに、人々の憩いの場や優れた自然景観などを提供し、さらに多様な生物の生息場となるなどの多くの機能をもっている。反面、海岸は陸域と海域の間の遷移帯であるため、陸域・海域双方の影響を受けやすい敏感な空間であり、これら機能の管理には十分な配慮が求められる。

 しかし、従来の海岸管理は、領土・領海の基線を守り、背後地の生命・財産を守るという観点から、主に防災機能の向上に焦点が当てられてきた。そのため、人々の利用・自然景観や生物生息などへの配慮は必ずしも十分ではなかった。また、沿岸域の開発等により砂浜ばかりでなく干潟・磯浜といった自然の海岸が減少し、人々が憩い親しむ美しい景観を持つ海岸の減少とともに、生物の種・量の減少もみられるようになった。

 このような過去の海岸管理のあり方への反省と、「持続可能な発展」、「自然との共生」をキーワードとした環境の重要性に対する認識の高まり、さらには、来たる21世紀の社会経済の成熟化や、高齢化・少子化・価値観の多様化などに伴うライフスタイルの変化を背景として、海岸に期待される役割は多様化し、その重要性はますます高まると考えられる。これからの海岸は、人の生命・財産を守ることはもとより、人々の憩い親しみや多種多様な生物の生息を支えることなど、その本来の姿を取り戻すことが強く求められている。このようなかけがえのない海岸の機能は、我が国の国民だけでなく、地球上の共有の財産として次世代に引き継がれていかなければならないものである。

 また、海岸空間の環境容量は有限なものであり、節度ある対応も必要であることを認識した上で、海岸の環境に支障を及ぼす行為をできるだけ回避するようにすべきであり、美しい景観の保全も含めた広い意味での環境に配慮した海岸づくりを行うことが求められている。

 以上の観点から、「次世代に継承する美しく、安全で、いきいきした海岸」をこれからの海岸管理が目指す望ましいあるべき姿としてとらえ、海岸における防災・利用・環境の調和を総合的に図っていくことが必要である。そのためには、防災空間としてだけでなく、環境や利用のためのより望ましい空間として砂浜の保全と回復を主体とした海岸空間の整備を行っていくことが重要である。

 海岸侵食が発生した場合には、その影響は広範囲に及び、変化が現れたときには復元までに長い時間と多大な労力とばく大な費用を要することから、常に土砂の移動範囲にある海岸全体の状況を把握し、広域的な視点に立った安全な海岸の整備と保全を行うべきである。

 また、その利用に際しては、海岸は海への入り口であり、時には人命を損なう危険な場所でもあるという認識に立って、すべての人が自由に親しめ、安全に活動できる空間として確保されなければならない。さらに、現在一般に行われている利用だけでなく、将来展開されるであろう新たな利用にも配慮し、未来にその可能性を残した対応をすることが必要である。

 さらに、環境面では、海岸には多様な生物が生息し、生態系の保全や物質循環においても重要な位置を占めていることから、その多様性と複雑性の持続に十分に配慮しなければならない。

 このような防災・利用・環境のそれぞれの機能の調和がとれた海岸づくりを行うためには、関係行政機関や団体等と連携した陸域と海域の広域的・総合的な取り組みが必要である。

 さらに、海岸が地域の特性を形成するとともに地域固有の文化を育んできたという視点から、地域特性を活かした文化的・風土的に良好な海岸空間の保全・創造を通して、豊かな地域づくりに貢献するとともに、地域と共生し、親しまれるきめの細かい海岸管理を行う必要がある。



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