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河川局

審議会等の情報
河川審議会について


は じ め に


 わが国の国土は環太平洋造山帯に位置し、その成因に規定されて地質が脆弱で地形も急峻であるため山地の侵食が生じやすい。山地部で生産された土砂は水によって下流に運ばれ、谷の出口で扇状地を形成する。さらに下流に移動し、砂、泥分を主体とする沖積平野を形成し、海に至り、海底に堆積したり漂砂となって移動し、海岸線などの海岸地形を形成する。

 このように土砂移動を地形地質年代のスケールで見ると、河川の土砂運搬作用によって形成された土地の上に我々の生活空間が形成されている。

 土地利用が高度化し、人口が増加するに従って人間の生活空間が活発な土砂移動の場へ進出し、突発的な土砂の移動により人命や財産を失う甚大な土砂災害が発生することになる。

 また、土砂は水と異なり、連続性をもって流れるものではなく、堆積と移動を繰り返しながら不連続的に移動する。

 以上のような土砂と人間生活との関係や土砂の運動特性から、土砂に係わる問題は、山地・山麓部、扇状地部、平野部、河口・海岸部等のそれぞれの領域毎に様々な形で発生している。山地部では、荒廃山地からの流出土砂による河床上昇が洪水氾濫の危険性を増大させ、山腹崩壊、地すべり、土石流による災害が生じている。また、河川にダムなどが築造されると、貯水池に土砂が溜まり、それを取り除く工夫をしなければダムの貯水能力を小さくするとともに、下流への土砂移動が遮断される。一方、下流の平野部、河口・海岸部では、河床低下、河口閉塞、海岸線の後退等の問題が発生している。

 土砂に係わる問題は我々の生活の安全性を損なったり、施設の機能低下をもたらすことに留まるものではない。河川や渓流あるいは海岸は、生物の生息・生育の場であり、散策、スポーツ等の利用の場でもある。そして、地域の風土・文化を形成する重要な要素でもある。河川、海岸の微地形及びその変動の原因ともなる土砂の運動や侵食・堆積現象は、そのような河川等が有する多様な機能を育む重要な要因となっている。一度に大量に土砂が運ばれてきたり、上流からの土砂供給が遮断されている状態で大洪水等が発生すると、微地形は一変する。そして長い時間をかけて徐々に変化していく。その途上において、河川上流や漂砂源からの土砂供給の遮断、人為的な掘削、構造物の設置などに影響されて、元の姿に戻らない場合もある。生物の生息・生育環境や景観等は地形が一変するような大異変及びその後に長い時間をかけて変化していく過程にわたって大きな影響を受けている。以上のように、土砂に係わる問題は、洪水時、平常時を問わず、河川や海岸の安全、利用、自然環境の面と深く係わっているのである。そして、ところによっては、このまま放置できない程度にまで顕在化しているところもあり、その解決は緊急の課題となっている。

 従来、このような問題に対しては、山地・山麓部、扇状地部、平野部、河口・海岸部等のそれぞれの領域での対応で解決が図られ、成果が得られてきているのであるが、とくに、原因と影響の範囲が広い場合、領域の関係者間の意志疎通の問題もあって、領域ごとの対応では限界がある場合もある。このような場合も含めて、土砂に係わる問題を流域の源頭部から河口・海岸部を一貫して長時間に及ぶ現象として捉えることが必要になっている。

 このような状況のもと、総合土砂管理小委員会は問題解決のための新たな視点として、流域の源頭部から海岸までを一貫した土砂の運動領域を「流砂系」という概念で捉え、それにもとづいた総合的な土砂管理の考え方、具体的施策の方向性などについての議論を重ねてきた。ここにその結果を取りまとめたので、関係する行政機関と十分連携しつつ、この報告に従って施策の実現が図られることを期待するものである。





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