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河川局

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河川審議会について


3.都市内河川の整備方策

 かつては、「川沿いの空地を利用して利便施設をつくるべきである」、「水質が悪化した川を埋めるべきである」、という地域住民の意向に応じて整備を行った事例が多くあるが、ここには問題点もあった。

 時代により住民の意見は当然変化するので、短期的な視点のみではなく、長期的な視点、将来の状態を考慮した整備方策をたてることが必要である。


3.1 都市内河川整備の基本方針

1)
しっかりとした公共空間の確保

 川沿いに通路や緑地などの公共空間を整備することにより、都市の防災機能の向上を図るとともに、都市の中に身近な自然を有する水辺空間を保全・創出する。

(1)
河川を活かした防災都市づくりの推進

 河川のもつ防災機能を活かし、災害に強い都市づくりを進めるため、河川を地域防災計画等に積極的に位置づけ、以下に示す整備を推進する。

 川沿いの建物の不燃化を図りつつ、川沿いに十分な幅員の管理用通路や緑地帯を整備することによって、火災時の延焼遮断機能を向上させる。安全な避難路、緊急車両用通路を確保する。河川水を緊急時の消火用水・生活用水として利用可能な河川構造とする。河川に流れ込む水路とのネットワーク化を図る。また、緊急時の物資輸送を行うため、舟運利用を可能とする。

(2)
水と緑のネットワーク形成

 建築物が近接して、川沿いに歩けない河川については、河川管理用通路を確保することによって、川沿いに歩けることを基本とする。さらに、川沿いに公園や緑道を配置する。河川管理用通路にも緑を配置し、市街地の中に水と緑のネットワークを形成する。

(3)
身近な自然の保全と創出

 河川及び沿川地域に残された身近な自然を保全する。都市内の身近な自然を回復させるため、沿川地域の環境との連続性に配慮した多自然型川づくりを一層推進する。また、河畔林の保全、樹林帯の整備に努める。

(4)
親水性の確保

 都市内の身近な水辺として、親水性が求められる河川については、子供や高齢者も安全に水辺に近づけるようにする。川沿いの土地利用から、河川用地の確保ができない場合には、上流域での調節池の設置や河川の二層化等によってせせらぎを復活することも検討する。

(5)
都市の中の水辺空間の復活

 うるおいのある都市空間の形成を図るため、市街化の過程で埋められた、あるいは暗渠化された河川等の水辺を、まちづくりと一体となって再生する。その際に、下水処理水などの再利用も積極的に推進する。

2)
河川空間の特性を活かした河川の整備

 地域の歴史、風土、文化を踏まえ、沿川地域と河川が調和した、まちの賑わいや新しい魅力を創出するための水辺空間を整備する。このために必要となる河川の構造や占用許可準則の見直しを行う。

(1)
良好な河川景観の形成

 まちづくりの観点から、川沿いの地域はうるおいのある都市景観を形成することとし、護岸等の河川管理施設について景観に配慮する。市町村が主体となって沿川地域の建物の高さ、色、デザイン等を規制・誘導する。

 さらに、河川に背を向けた街並みから河川に顔を向けたまちづくりを目指し、市街地においては川沿いに従来以上の幅を持った通路を配置する。このため、区画整理等市街地整備と一体的に河川整備を行う場合においては、可能な限り川沿いに街路・緑地等の空間を整備するよう調整を図る。

 河川景観を考える上で「水が澄んでいる」ことは重要な要素の一つである。このため、沿川地域の住民参画によって、各家庭からの排出負荷を低減させ、併せて、河川に流入する水路を含め、河川の浄化を推進する。

(2)
歴史、風土、文化を活かした河川整備の推進

 地域の歴史、風土、文化を伝える景観を有する河川については、その保全・紹介に努める。また、河川の整備を行う際には、沿川地域の景観との整合を十分考慮する。さらに、河川を介した交流や伝統行事が行われている地域においては、それらの活動を支援するような河川整備を行う。

 このように、自然環境のみではなく、地域の様々な深みのある、個性を反映した「文化・芸術のインフラストラクチュア」として河川を捉えることも重要である。

(3)
にぎわいの創出

 まちの魅力を高め、人々を呼び込み、地域の活性化に役立つように、河川空間を利用したイベントの開催を推進する。また、河川空間へのテラスや遊歩道等の設置について検討する。

(4)
沿川地域と一体となった新たな河川整備

 親水性を活かした魅力的な水辺空間を形成するため、治水上の影響を十分検討の上、建物と護岸の一体的整備、民有地への河川水面の引き込み等、沿川地域と河川を一体的に整備する。また、密集市街地において土地の有効利用を図るため、建物と河川や調節池を一体的に整備する。

 一方では、川沿いの公共的空間は、河川環境の整備や都市の再構築を進める上で非常に価値がある空間である。沿川地域に恒久的に公共的空間を存続させるためには、財政上の制約等もあるが、極力、公有地として確保することが望ましい。

(5)
舟運の利用

 都市内の陸上交通の混雑の緩和、二酸化炭素をはじめとする環境負荷の低減を図るため、河川舟運の利用を推進する。このため、陸上交通との結節点としての船着き場の整備方策を検討する。また、緊急時、平常時ともに利用されるための方策が必要である。

 さらに、河川水面の適正な利用を行うため、不法係留船対策を推進する。

(6)
レクリエーション利用

 都市内に残された貴重な自然空間としての河川の特性を最大限活かし、散策路や親水空間としての整備を進め、水とふれあえる機会を創出する。

 また、身近な水辺空間として、河川の特性を踏まえた上でレクリエーション利用について検討する。

(7)
ライフラインとの一体的整備

 都市内におけるライフラインの整備を推進するため、掘込河道の河川管理用通路や地下河川等の河川の連続した地下空間を上下水道や情報通信インフラ整備に利用する。さらに、河川管理用光ファイバーの有効活用とその収容管路の民間開放を推進する。

3.2 河川を活かしたまちづくりの総合的な整備方策

 まちづくりに河川を活かすことが今後益々重要になるが、この際、様々な視点から都市の中の河川を考え、「流域」「沿川地域」「河川区域」といった区分で考え方を整理することが有効である。  また、市街地の河川についての計画を明らかにし、事業執行の効率性を高めるという観点から、原則として、都市内の河川は都市計画決定を行うこととする。  特に、DID(人口集中地区)を含めた既成市街地内では、市街地開発事業等の都市整備と連携して、同時に河川整備を行うよう計画・事業について調整することが重要である。

1)
河川を活かしたまちづくり構想の策定

 河川は都市の重要な構成要素であり、まちづくりについての総合的な構想の中に、河川を積極的に位置づける。

 広域的な視点からの河川の計画については、「河川整備基本方針」を踏まえ都道府県が策定する都市圏のマスタープランとしての「整備・開発・保全の方針」に、一方、個別の都市との関わりについては、「市町村の都市計画に関する基本的な方針(市町村マスタープラン)」等に位置づけることにより、整備・利用を推進する。

 また、河川の持つ特性である防災機能、環境機能を活かすため、関係機関との連携、他の施設との適切な役割分担の下「地域防災計画」や「緑の基本計画」等に位置づける。

2)
「河畔まちづくり計画(仮称)」の策定

 河川と沿川地域を一体的に整備・利用するため、相互の構造、デザイン、整備スケジュールの整合を図り、河川の特性を発揮させるよう整備方法、利用方法について調整を図ることが重要である。

 そのため、地域の総合的な計画である「整備・開発・保全の方針」「市町村マスタープラン」に基づき、「河川整備計画」の策定、見直しと同時期に、市町村が主体となって地域の創意工夫及び河川の持つ防災、環境といった特性を活かした「河畔まちづくり計画(仮称)」を策定する。

3)
「河畔まちづくり計画(仮称)」に基づく河川整備

 沿川地域の良好なまちづくりを推進するためには、都市の重要な構成要素としての河川の特性を十分活かすことが必要である。そのため、沿川地域と整合を図り、治水機能に加え、防災機能、空間機能、環境機能を併せ持った河川を都市施設として積極的に都市計画決定し、まちづくりに資する河川を積極的に整備する。

また、「河畔まちづくり計画(仮称)」に位置づけられた河川の整備や利用に関して、市町村の役割の拡大を図るとともに、河川の占用についても地域特性に応じて柔軟に対処する。

3.3 役割分担のあり方

 河川と沿川地域が一体となったまちづくりを進めるためには、市町村、地域住民及び河川管理者をはじめとして、関係機関の密接な連携のもとに、適切な費用負担を行い、それぞれの役割を果たすことが必要である。なお、実際の整備に当たっては、統一的なマニュアルを作らず地域レベルで、現地の状況に則して、自由に工夫できるような条件整備を行う。

1)
市町村の役割

 市町村は、まちづくりの主体であり、また、地域住民の意向をとらえやすいことから、河川を活かしたまちづくり構想や「河畔まちづくり計画(仮称)」は、河川管理者の協力を得ながら市町村が主体となって策定する。

 また、まちづくり、地域づくりの視点から都市内河川の整備・管理について、地域の実情に応じ市町村が主体的に行うことができる仕組みを検討する。

2)
住民参画の促進

 都市内の河川を身近な環境空間としてとらえ、まちづくりの中に組み込んでいくためには、沿川地域の構想・計画策定への地域住民の単なる参加ではなく、自律性を持ち、共同で計画策定を進める参画でなくてはならない。そのためには、河川を利用した環境教育の場の設定や、現況の治水安全度等の河川に関する情報提供など、普段から地域住民と河川との接点を絶えず持つことが必要である。

 また、構想・計画策定段階のみならず、河川整備や維持管理の段階においても、地域住民や市民団体が積極的に参画しやすい体制づくりを進める。

 例えば、ビオトープの整備、水質保全をはじめとする河川環境のモニタリングや環境教育のフィールドとしての活用について、地域住民やNPOと連携をとり、「川に学ぶ」という観点も含めたパートナーシップによる管理のあり方について検討する。

 さらに、地域住民の意見を計画に反映し、河川整備とまちづくりの一体的な計画策定を行うために必要な人材の養成・活動に対する支援方策について検討する。

3)
河川管理者の役割

 市町村が、河川を活かしたまちづくりの構想、計画を策定することを促進するため、河川管理者は河川整備の構想、計画内容、整備スケジュールや利用条件に関する情報を積極的に提供する。また、「都市の環境管理」という視点からも、まちづくりに河川の特性が十分活かされた形で「市町村マスタープラン」及び「河畔まちづくり計画(仮称)」が策定されるよう支援する。

 さらに、地域住民やNPOの主体的な河川に関する活動を積極的に支援することとし、情報の提供方法についても、インターネットの活用による体系的な情報提供(ホームページのリンク等)、公報誌への掲載等様々な手段を活用する。

4)
民間事業者の参加

 河川整備に民間事業者のノウハウ、資金等を導入するため、川沿いの民間建築物と一体となった護岸等の整備、民有地への河川の引込みなど、民間事業者による水辺空間の整備方策について検討する。





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