水管理・国土保全

  

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紀の川の自然環境

紀の川の自然環境・景観

紀の川の源流部には、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されているイヌワシやクマタカなど大型の猛禽類が生息しています。上流部には、準絶滅危惧種に指定されているオオタカも生息しています。この様に紀の川上流部分(吉野川)では大型の猛禽類が生存し繁殖しうる豊かな自然環境が残っています。

中下流部にもハヤブサ・ハチクマといった主に小動物を狙うワシタカ類も生息するなど比較的良好な自然が紀の川には残っています。
 また、渓流部を代表する鳥で良好な渓流環境の指標となっているヤマセミ・カワセミといったカワセミ類が紀の川源流部や上流部に比較的多く生息しています。

紀の川本川の上流部や一部の支流ではオオサンショウウオや大台ヶ原の名前を冠するオオダイガハラサンショウウオ(環境省レッドデータブック絶滅危惧種に指定)も源流部に生息しています。これらが生息していることから紀の川上流部分(吉野川)では良好な河川の水質や自然環境が保たれていると考えられます。

中流部の船岡山にはツブラジイ(コジイ)群落があり、この群落は「郷土景観を代表する植物群落でその特徴が典型的なもの」として和歌山県版レッドデータブックで選定されています。
 紀の川河口部には複数の干潟が存在し、この干潟には多種多様な生物が生息しています。特にシオマネキ、タイワンヒライソモドキなどの大型の底生生物を中心に希少な生物が生息しています。

また、紀の川流域は万葉の時代の古代から歌人たちに多くの歌が詠まれてきました。
 紀の川の中流部では船岡山を挟んで紀の川の両岸に妹山・背山[万葉集では15首]があり、紀の川沿いの和歌山県と奈良県境には真土山[同8首]があります。平安時代までの紀の川河口だった付近(現在は数㎞北側に河口は位置する)には宮廷歌人の山部赤人が「若の浦に 潮満ち来れば 潟を無み 葦辺をさして 鶴鳴き渡る」と詠んだ和歌の浦[同13首]があります。これらには現在も往時を彷彿させる歴史的な自然景観が良好に保全されています。

万葉の里「船岡山」

船岡山





干潟とワンドの造成

紀の川では希少種であるシオマネキやハクセンシオマネキ、タイワンヒライソモドキといった種の生息が確認されています。 
 こうした自然環境の保全のため、ワンド・干潟の保全・造成、浅瀬・中州の保全、付属水面 ・貴重種植物群落の保全を実施しています。

このうちタイワンヒライソモドキの主な生息地が紀の川大堰の設置・運用により消滅することとなるため、代替えとなる生息環境を整備して移植を行い、現在も移植先で多数生息しています。

自然環境の保全(紀の川大堰)

紀の川下流部の環境モニタリング


底生動物の移植風景



生物移動の連続性(魚道の整備)
紀の川では、江戸時代頃より本格的に堰を築造し、田畑に水を引くことで、かんがい用水を確保してきました。
 現在、紀の川の国管理区間には、4つの堰(紀の川大堰、岩出頭首工、藤崎頭首工、小田頭首工)や橋梁など多くの川を横断するものがあります。

特に、堰では落差が大きいため流速が速く、魚道が設置されているものの、魚道機能を十分発揮していないものがありました。また、紀の川に架設されている岩出橋などの橋脚の洗掘防止のための床止め工にも落差があり、回遊魚等の移動に支障をきたしていました。

このため、平成6年に「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」のモデル河川に指定され、河川管理者と堰等の施設管理者が連携を図りつつ、魚道の設置や落差の改善等を実施してきました。その結果、河口から奈良県五條市の国管理区間の上流端まで、生物移動の連続性が確保されています。

しかし、紀の川の国管理区間には樋門・樋管等や支川合流部に落差があり、本川と支川間の生物の移動に支障となっているところもあります。樋門・樋管等や支川合流部に落差があり魚類等の移動に支障のある箇所では、落差の解消に努めるとともに、改善された魚道機能の保全に努めています。

紀の川大堰の魚道

魚がのぼりやすい魚道(紀の川大堰)






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