俊乗房重源は、東大寺再建用の木材を河川を利用して海まで運ぶため、必要な河川改修を行ったことでも知られています。その中では、関水(せきみず)を造ったり、迫戸白坂から植松に至るまで流路を直線的に変更するなど、上流から下流まで驚くべき河川工事を行いました。この工事は木材搬出を目的とした治水工事でしたが、東大寺再建後は農耕や交通運搬に及ぼした影響は大きく、かんがい用の井出(取水堰)になったり、日用物資を運ぶ川舟の通路にもなりました。
関水(せきみず)とは、水嵩がないと木材は浮いて流れないため、浅いところに堰(せき)を設けて水をたたえる(水嵩を増す)とともに、左岸側又は右岸側に巾数m、長さ数十mの石畳の水路(船通し)を付設し、その水路を通して木材を流した施設のことです。重源により佐波川の各所に118箇所も造られたと伝えられていますが、多くは洪水によって破壊されるなどしたため現存は1箇所のみとなっています。