新しい全国総合開発計画の基本的考え方

 平成7年12月 
国土審議会計画部会


はじめに

 現行の第四次全国総合開発計画(概ね2000年を目標年次として、1987年6月閣議決定。以下「四全総」という。)が策定された後、経済社会情勢が大きく変化してきたことから、第15回国土審議会の決定に基づき、1992年春、国土審議会調査部会において四全総の総合的点検作業が開始された。その後、2年余にわたる検討を経て、1994年6月にまとめられた同調査部会報告において「国土政策をめぐる大きな条件変化に対応して、これまでの全総計画の単なる継続ではない新しい理念に基づいた国土計画の策定が必要である。」との提言がなされた。

 これを受けて、1994年11月の第18回国土審議会で、a. 来たるべき21世紀にふさわしい国土づくりの指針を示すための、四全総に代わる新しい全国総合開発計画(以下「全総計画」という)を策定すること、b. 新しい全総計画の目標年次は概ね2010年とし、1996年度中を目途に策定することを予定すること、c. その間、1995年秋に新計画の基本的考え方、1996年秋に新計画中間案をとりまとめ国土審議会に報告すること、d. 新計画の策定にあたっては、地方公共団体をはじめ、国民各層からの意見聴取に努めること等が了承され、新計画策定に向けての調査審議を行うため、同審議会に計画部会が設けられた。

 計画部会は1995年1月より調査審議を開始し、計画部会の下に設けられた専門委員会での検討成果も生かしながら、国土の長期展望と主要計画課題等について幅広い角度から検討を行ってきた。「新しい全国総合開発計画の基本的考え方」は、計画部会において、これまでの検討をもとに国土審議会に対する報告としてとりまとめたものである。

 今回の「基本的考え方」で示された、新しい全総計画が目指すべき国土づくりの基本目標と国土構造の姿、それらを踏まえた新しい全総計画における主要計画課題と戦略的政策課題及び社会資本整備の課題等について、政府、地方公共団体を始め国民各層において活発な議論がなされ、新しい全総計画の策定に向けて、幅広い合意の形成が進むことを期待するものである。


目次

I.全国総合開発計画の今日的意義と役割

1.国土をめぐる諸状況の大きな転換−戦後50年とこれからの50年−
 (1)我が国社会の方向転換
 (2)これからの経済社会の有様を規定する大きな条件変化
  1)地球時代
  2)人口減少・高齢化時代
  3)高度情報化時代
 2.全国総合開発計画の今日的意義と役割
 (1)これまでの全総計画の役割と評価
 (2)新しい全総計画の意義と果たすべき役割
 (「国土総合開発」における開発理念の変化)
  1)「開発」への要請の変化
  2)「開発」の主体の変化
  3)「開発」の視点の変化

II.新しい全国総合開発計画が目指す国土づくりの基本目標と国土構造の姿

1.国土づくりの基本目標
2.目指すべき国土構造の姿
 (1)現在の国土構造の性格と国土構造転換の必要性
 (2)新しい国土軸の形成
 (3)望ましい国土構造の姿

III.新しい全国総合開発計画における主要計画課題

1.対応を迫られる自然災害への懸念と高齢社会への不安
−生活の豊かさの基礎としての国土の安全と暮らしの安心の確保−
 (1)自然災害への懸念と国土の安全性の向上
 (2)老後の暮らしへの懸念と高齢者が安心して暮らせる地域社会の条件整備
2.価値観に応じた暮らしの選択可能性の拡大
 (1)地域の個性、多様性の尊重と地域の自立の促進
 (2)誇りの持てる美しい国土空間、地域空間の創出
3.人と自然との望ましい関わりの再編成
 (1)自然の保全、回復、創出
 (2)環境への負荷の低減
4.経済構造の変革と地域経済基盤の強化
5.アジアとの相互依存関係の深化と世界への積極的貢献

IV.主要計画課題の達成と望ましい国土構造の構築に向けた戦略的政策課題

1.地域の連携・自立による多様性に富んだ分散型国土の形成
2.地域連携の促進と新しい広域交流圏の形成による地域自立の基礎づくり
 (1)多様な地域連携の促進
 (2)新しい国土軸を形成すべき地域における地域連携の促進
 (3)国際的な視野に立って地域の自立性を高めるための広域国際交流圏の形成
  1)広域国際交流圏の機能
  2)広域国際交流圏の範囲
3.多自然居住地域の新たな位置づけと都市・産業集積の高質化
 (1)多自然居住地域(小都市、農山漁村、中山間地域等)の新たな位置づけ
  1)人々の価値観・ライフスタイルの変化
  2)小都市、農山漁村、中山間地域等の新たな位置づけと整備の方向
  3)中山間地域等における圏域の設定
 (2)都市集積の高質化
  1)都市問題の解決に向けた大都市のリノベーション
  2)都市集積の高質化と広域的活用
   ア.大都市集積の高質化
   イ.地方中枢・中核都市等の都市集積の高質化
 (3)産業集積の高質化
  1)新たな産業のフロンティアの開拓
  2)サービス経済化への対応
  3)産業集積高質化への政策的支援

V.社会資本整備の課題と国土づくりの制度的枠組みの再構築

1.新しい全国総合開発計画期間中における社会資本整備の課題
 (1)社会資本整備における機会均等の確保
 (2)投資余力の減少が予想されるなかでの社会資本整備のあり方
 (3)社会資本の概成の実現
 (4)新たな要請への重点的対応
  1)地球時代に対応した国際交流基盤の整備
  2)高度情報通信社会構築に向けての対応
  3)国土の新しい可能性を創出する技術開発への積極的取組
 (5)環境への対応
 (6)今後の整備目標のあり方
2.新しい国土づくりに向けた制度的枠組みの再構築