救世観音像
7世紀につくられた高さ179cmのこの観音像は、法隆寺の宝物の中でも最も謎めいた存在のひとつである。クスノキの一材から彫り出された彫像で、全身が金箔で覆われている。観音像でありながら、聖徳太子をモデルとしていると考えられている。この像の保存状態は素晴らしい。というのも、ほとんど外光にさらされたことがないからだ。法隆寺ではこの像を「秘仏」とした。すなわち、この像を聖徳太子ご自身とみなして丁重におまつりし、むやみに公開することをしなかったのだろう。この像は夢殿の中で静かに、何世紀にわたって供養され護られて来たため、法隆寺の僧侶でさえも目にすることはなかった。エルンスト・フェノロサ(1853~1908年)と岡倉天心(1863~1913年)が明治時代(1968~1912年)に法隆寺を訪れ、寺の僧侶たちの厳しい警告にもかかわらず、この像の封印を解くことを決定した。救世観音に対する崇拝は非常に強大なものになっていたので、これを守る僧侶たちは、堂の扉を開ければ雷が落ちるだろうと忠告した。現在はこの観音像は毎年2回、春と秋に期間を決めて一般公開されている。