建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について
最終更新日:2025年1月7日
このページでは、建設業法・入契法の改正(令和6年6月14日公布)におけるポイントについて、解説しています。
施行日は公布から3ヶ月以内(令和6年9月1日施行)、6ヶ月以内(令和6年12月13日施行)、1年6ヶ月以内(今後期日を定める予定)の3段階に分かれております。
建設業は、社会資本の整備・管理の担い手であるとともに、災害時における「地域の守り手」として国民生活や社会経済活動を支える極めて重要な役割を担っています。
一方、就労条件などを背景に就業者の減少が続いており、建設業がその重要な役割を将来にわたって果たし続けられるようにするため、担い手の確保に向けた取組を強化することが急務となっています。また、昨今の急激な資材価格の高騰を受けて現場技能者の賃金の原資となる労務費等がしわ寄せを受けないよう、高騰分の適切な価格転嫁が求められているところです。
こうした状況を踏まえ、1. 処遇改善 2. 資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止 3. 働き方改革と生産性の向上 を大きな柱に、「持続可能な建設業」の実現に向け、今般の法改正が行われました。
施行:公布日から3ヶ月以内・6ヶ月以内・1年6ヶ月以内
今回の法改正では、建設業者に処遇確保を努力義務化したうえで、国が取り組みの状況を調査・公表することとしました。
また、これまで技能者の労務費における相場観が不明確だったために労務費が削られてきたことを踏まえ、中央建設業審議会(建設業法に基づき国土交通省に設置された会議体)で「労務費の基準」を作成・勧告できることとしました。「労務費の基準」に照らし、著しく低い労務費等で見積を依頼した発注者は、国土交通大臣が勧告・公表を、著しく低い労務費等で見積を提出した受注者は指導・監督をすることとなります。
「労務費の基準」の作成について
技能者の皆様の労務費が適正に確保され行き渡るよう、上記のとおり今回の法改正において「労務費の基準」に関する規定が新たに設けられました。これにより、著しく低い労務費等による見積の提出・変更依頼が禁止され、違反した受注者(建設業者)に対しては現行規定に基づき国土交通大臣等から指導・監督が、違反した発注者に対しては国土交通大臣等から勧告・公表措置がなされることとなります。
詳細については、令和6年9月以降、中央建設業審議会に設置されるワーキンググループにて検討される予定ですので、プレスリリース等をお待ちください。
施行:令和6年12月13日
資材価格の高騰や資材不足といったリスクの負担がこれまで受注者に偏ってきたために、価格転嫁が適正に行われず労務費が削減されてきたことを踏まえ、資材高騰に伴う請負代金等の「変更方法」を契約書の法定記載事項として定めることとしました。
また、労務費へのしわ寄せを防ぐため、資材高騰が生じるおそれがあると認めるときは、請負契約の締結をするまでに受注者から注文者に対して、関連する情報(「おそれ情報」)を必要な情報として通知しなければならないこととしました。この場合、実際に資材高騰が生じたときは、受注者から注文者に対して請負代金の変更協議を申し出ることができ、注文者は当該協議に誠実に応じるよう努めなければならないこととなります。これらにより、価格変更協議が促されることとなります。
「おそれ情報」について
1.「おそれ情報」の対象となる事象について
おそれ情報の対象となる事象としては
(a) 主要な資機材の供給の不足若しくは遅延又は資機材の価格の高騰
(b) 特定の建設工事の種類における労務の供給の不足又は価格の高騰
であって、天災その他自然的又は人為的な事象により生じる発注者と受注者の双方の責めに帰することができない事象が挙げられます。
一例として、(a)であれば、自然災害により特定の資材の工場が被災したことで資材の需給バランスが崩れ価格高騰に繋がりうる場合、(b)であれば、特定の種類の工場の建設需要が急激に増加し、当該種類の工場の建設に不可欠な専門工事を担当する技能者の獲得競争が発生したことで労務費の上昇が生じ、請負代金の変更に繋がりうる場合などが考えられます。
2.「おそれ情報」の通知方法について
おそれ情報の通知にあたっては、おそれ情報とあわせて、当該事象の状況の把握のために必要な情報(以下「根拠情報」という。)を通知することが必要です。根拠情報としては、建設工事の受注予定者が通常の事業活動の範囲内で把握できる客観的な情報を用いる必要があり、メディアの記事、資材業者の記者発表、公的主体などにより作成・更新された一定の客観性を有する統計資料などがこれに該当します。
通知する際には、見積書の交付時などにあわせて行う必要があり、おそれ情報を発注者が確認したことを記録するため、通知書面やメール等を受発注者双方が保存しておくことが望ましいものと考えられます。
〔働き方改革〕
施行:公布日から6ヶ月以内・1年6ヶ月以内
令和元年より段階的に施行されている「働き方改革関連法」では、建設業への適用が令和6年以降とされてきたところ、適用に備えこれまでの法改正でも働き方改革に努めてまいりました。その結果大きな改善も見られたものの、建設業の働き方は引き続き他産業に比べ厳しい状況といえます。
そうしたことを踏まえ、長時間労働を是正し、週休2日も確保していくため、受注者の発意による著しく短い工期による請負契約の締結を禁止することとしています。また、「しわ寄せ防止」に示した請負代金の変更協議と同様に、資材の入手困難などが生じるおそれがあると認めるときは、受注者から注文者に対して関連する情報を請負契約の締結までに通知しなければならないこととしました。この場合、実際に資材の入手困難などが生じたときは、受注者から注文者に対して工期の変更に関する協議を申し出ることができ、注文者は当該協議に誠実に応じるよう努めなければならないこととなります。
〔生産性向上〕
施行:公布日から6ヶ月以内
近年、工事現場におけるデジタル技術の活用(タブレット端末を通じた工事関係者間における設計図面や現場写真などの共有や、現場作業員が装備するウェアラブルカメラなどを通じた監理技術者等との間における工事現場の映像・音声の遠隔・リアルタイム共有など)により施工管理業務の効率化が進められていることを受け、ICTの活用を条件に、監理技術者等の専任規制を合理化することとしました。

- 国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課
- 電話 : 03-5253-8111(内線24756, 24754)