建設産業・不動産業

参考資料2 先進組合事例集

1.事業協同組合
 
メーカーと協力して研究開発
○A防水事業協同組合
1.組合の概要
主にアスファルト防水工事を行う工事業者で構成。大手防水材メーカーの系列組合。メーカーと協力の上、研究開発や人材育成事業を積極的に実施。昭和31年に設立され、40年以上の歴史を持つ。組合員数は130事業者。
2.成功事業の概要
(1)研究開発事業
  組合において、環境問題に対応した新工法(屋上緑化工法や外断熱防水工法等)を開発。
工事業者は、良質な防水材がなければよい施工ができず、メーカーは良い防水材を開発しても適正な施工が行われなければ無意味、という姿勢のもとで、メーカーと積極的に意見を交え、一体となって研究開発を進めている。
さらに、メーカーに対して、消費者としての立場からのアドバイスや情報提供を行い、新防水材(より安全で、煙が少ない、においの少ない防水材等)の開発に協力し ている。
(2)共同検査事業
一般的に「共同検査は、組合員の工事を他の組合員がチェックするものであり、感情的にしこりを残す」との指摘があるが、当組合は同志的な結びつきが強く、組合員 間の信頼関係や技術の向上に向けての積極的な意識のもとに実施している。また、検査については、詳細なマニュアルを作成し、明確な基準を定め、客観的なものとしている。

研究開発と保証事業を効果的実施
○B施工協同組合
1.組合の概要
建築物の改修、補修、防水工事を行う工事業者で構成。研究開発事業や共同保証事業に積極的。平成2年の設立だが、任意団体として昭和54年から活動。組合員は137事業者。
2.成功事業の概要
(1)研究開発事業
  旧来のタイル張りの浮き補修工法に換え、タイルそのものに穴を空け、注入口アンカーピンを通すことによって補強するという工法を開発。組合の技術委員会で議論しているうちに、そのアイディアが出された。
また、壁、柱の補強材として、最近用いられている炭素繊維シートのパネル工法を開発。パネル化により、シート工法では必要であった下地をはつったり、処理することによる騒音やほこりの問題を解決。また、施工品質の向上も図った。
若い世代(40歳代)の集まりであり、それぞれが各自の意見を尊重しようとする雰囲気がある。技術委員会の関東ブロックは、月に1回定例会を開会しているが、電話1本でいつでも即集合できる体制をとっている。
(2)共同保証事業
  上記の特殊なタイル改修工法の工事については、組合で施工保証を行っている。工法自体を信頼し、組合の検査なしで実施している。
(3)資格試験実施事業
炭素繊維シートの巻き付け技術については、組合で資格を設定し、検定試験を行っている。技術開発と人材育成とをつなげて組合事業への需要を生み出している。

情報システムを活用した事務代行事業
  ○C管工事協同組合
  1.組合の概要
   
市内の管工事業者により昭和37年に設立。現在組合員は103事業者。一般水道工事の給水装置工事申請にかかる事務代行のほか、金融事業、教育情報事業等を実施。
    2.成功事業の概要
      従来手作業で作成していた市の水道工事申請に必要な各種図面の作成及び見積に、いち早くCADシステムを導入。組合員の要請に応じて迅速に事務処理を遂行。
      (1)情報化の経緯とその内容
        昭和57年度より、組合に新規事業開発委員会を設置し業務改善策の研究を開始。59年度には、中小企業団体中央会の「活路開拓ビジョン 調査事業」を実施、コンピュータ化による申請手続きの効率化が必要との結論を得る。引き続き検討を進め、平成2年に組合事務所内のLANに接続された独自のCADシステムを開発して導入。その後改良を重ね、平成7年にはパソコン対応総合設備用CADシステム「SSC-TCAD」を開発・導入した。
システムは、建築図面(原図)を図面自動入力装置で読み取ってCADデータ化し、給水装置工事申請に必要な平面図、アイソメ図等をわずかな修正作業で作成するもの。また、必要な部材の種類、数量の算出から積算作業も自動で行い、工事積算見積書等を作成するほか、事業所別履歴管理や請求処理等まで行える。
      (2)成果
      システムの導入により、組合員及び組合の業務処理が一気に効率化され、組合への求心力も高まり、業界労働環境の改善や、行政官庁との連携意識が強化された。

地域社会への貢献で活性化
  ○D建設業協同組合
    1.組合の概要
      地区内5町村の建設業者により、ダム流域の建設省直轄工事の共同受注を主な目的として、昭和54年に設立。現在組合員は28事業者。
    2.成功事業の概要
      (1)地域社会への貢献活動
        「土木の日」の地区内一斉清掃、道路パトロールを行い、地域社会・行政より賛意を得る。また、行政と連携して地区のゲートボール大会やソフトボール大会、小学生図画コンクールの開催等を行い、これが年々盛大になり地域住民の好評を博している。なお、これらの事業実施にあたっては、地域社会への貢献活動として受注高の2%を拠出。事業は組合の各委員会で審議され、事業計画の一環として実施されている。
      (2)福利厚生事業
        福利厚生事業を強化し、組合員とその従業員の健康・安全面での管理を充実。
健康管理面では、組合主導で全組合員に健康診断の受診を指導・奨励、法令に基づく健康診断を組合員の全従業員に対し完全に実施。また、損保会社を斡旋し、労災の上乗せ保険等への加入を勧奨している。
労働安全面では、組合会館において組合職員の有資格者による安全訓練を実施し、組合員に対する安全管理の徹底を図っている。
このほか、技術向上のための測量大会や各種研修会を開催しているほか、他業種組合の青年部や異業種との交流会等も精力的に実施している。

得意分野のキャパシティーの広さで共同受注
  ○E造園建設協同組合
    1.組合の概要
      造園業者で構成。昭和57年に設立し、官公需適格組合の証明を昭和62年に取得。共同施工方式で共同受注事業を実施。主に東京都や住宅・都市整備公団の工事を受注。研究開発にも積極的。組合員は14事業者。
    2.成功事業の概要
      (1)共同受注事業
        共同施工方式で実施。都立公園や、歩道の緑化整備、河川敷公園などを手がけた。
最初は単なる草刈や伐採のような軽微な随意契約工事をいとわず受注し、発注者との信頼関係のもとに、実績を積み上げてきた。官公需適格組合の証明を得てから受注が伸びるようになるまで5年かかった。
業界や発注者のイベントにも積極的に参加。地方の組合員が分担して参加するため、より多くの大会にも出席できた。また、組合として、1企業では対応できないような大きなイベントにも参加できた。
営業活動では、組合であるが故にそれぞれ得意分野を持った業者がおり、キャパシティーの広さを強調。単なる造園業者のみで構成しているのではなく、土木工事もできる者、石工事が得意な者などがおり、発注者の要求を十分に満たすことができることをPRした。
      (2)研究開発事業
        伐採した木の枝をリサイクルして他の目的に使用することを開発。
① 細かく粉砕して肥料にする方法
② チップ(木片)を凝固させ、園路として敷設する方法
③ 公園の滑り台やブランコの下にクッションとして敷く方法
        組合員は、技術開発のために月1回は組合事務所に集合し、積極的に意見交換を重ねている。

充実した責任施工体制で共同受注
  ○F建設事業協同組合
    1.組合の概要
      中小の総合工事業者で組織され、共同受注を積極的に実施。昭和59年から組合活動を開始しているが、任意団体として9年間連携してきた。共同購買や研究開発の事業も実施。組合員は12事業者。
    2.成功事業の概要
      分担施工方式で共同受注事業を実施。東京都と住宅・都市整備公団の工事を受注。その成功のポイントは次のとおり。
      (1)東京都と住都公団の工事にターゲットを絞って共同受注
        組合の能力に応じた規模の工事を受注することに心がけてきた。また、景気動向に関わらず、同一の発注者からの継続的な受注活動を行い、互いの信頼関係を築いた。
      (2)企画調整委員会の活用
        定期的に組合の企画調整委員会を開会し、現場からの詳細な報告を聴取している。報告に了承できないとされた事項がある場合は、企画調整委員会が自ら現場に出向き当該事項の処理をすることとしている。
      (3)責任施工体制
        理事企業のみの連帯責任にとどまらず、全ての組合員が連帯責任を負うという仕組みを確立。また、工事についての瑕疵担保保証は10年に設定し、この義務は脱退組合員にも同期間課している。
      (4)組合のPRについて
        理事や組合員、事務局メンバーが各発注担当課に頻繁に足を運び、名刺のみならず組合の実績、特徴を詳細に記した組合新聞を添えて置くこととしている。
      (5)組合での研究開発について
        組合において、環境対応型の外壁保護工法を開発するなど、研究開発による他業者との差別化を図り、受注増につなげている。

異業種連携で改修工事に対応
  ○Gリフォーム協同組合
    1.組合の概要
      建築工事、大工工事、塗装工事、タイル・レンガ・ブロック工事等の異業種の中小建設業者で構成。昭和63年に設立し、平成4年に官公需適格組合証明を取得。組合員は14事業者。
    2.成功事業の概要
      工事は分担施工方式で実施。運輸省や雇用促進事業団、地元の市等からビルやプール施設の補修・改修工事を受注。
コンクリート建造物の場合、施工後10年以上を経過すると外壁や屋上防水、ベランダ等の部分に劣化が現れ、適切な補修・改修を行わないと外壁剥落等の事故を引き起こしかねない。こうした工事をより効率的に行うには、異分野の中小建設業者が連携することが効果的であるとして組合を設立。
設立当初は民間の補修・改修工事を主体に行っていたが、バブル崩壊後低迷が著しく、官公需の受注に取り組む。しかし、思うようには受注が伸びなかったため、営業活動に力を注いで発注機関の理解を得たほか、会計法・地方自治法等の法律や先進組合について勉強を重ね、この結果徐々に受注が拡大した。
共同受注事業を推進する上で、以下の4点がポイント。
      ① 建築工事、塗装工事など組合員がその得意分野で補修・改修に対応。
② どのような小さな工事、緊急な工事でも確実に対応できる体制を確立。
③ 新工法や新技術についての提案を行い、発注機関の便宜に供していく。
④ 検査委員会を置いて中間検査並びに完成検査を行い、工事の万全を期している。

2 協業組合
         
一部協業の効果的実施
  ○A建設協業組合
    1.組合の概要
      昭和50年に設立。かつての農地開発関係の特殊法人が解散される際、その技術者(農用地整備に関する特殊技術の保持者)たちが母体となって組織。
組合員は27事業者であり、主たる事務所を東京に、従たる事務所(支店)を札幌等6都市に設置。
公共工事の農業農村整備事業についてのみ協業化。
    2.成功事業の概要
      設立当初から、全国規模で活動。組合員が、かつての農地開発関係の特殊法人で培われた技術を有していたため、農用地造成という特殊技術については極めて精通しており、ゼネコンに対しても技術力は引けを取らず、顧客からの大きな信頼を得ていた。また、設立当時は農用地造成工事の需要が増大しつつあった時期であり、これも受注の拡大につながっていった要因である。
また、公共工事の農村整備事業についてのみ協業化する一部協業方式を実施。一般土木建築工事については、それぞれの組合員が各自行っている。農業農村整備事業は、個々の組合員では対応できない規模の事業が多いため、この事業に限定して協業組合を活用し、全国の工事を視野に入れた活動を行っている。この明快な分業体制が効果を発揮している。

新工法を導入して活性化
  ○B建設協業組合
    1.組合の概要
      昭和45年に東海地方では、第一号として設立。組合員は中小総合工事業者。県の協業化の勧めで設立され、以来大規模工事の受注により着実に実績を伸ばしてきた。
    2.成功事業の概要
      土木・建築一式工事、とび・土工・コンクリート工事、舗装工事等全部協業で実施。個々の組合員の建設業許可は返上した。
設立前当時4社の完成工事高を合算しても7,000万円程度であったところ、協業組合の設立により、平成10年度では11億円を超えるようになった。
重機等の共同利用や各組合員個別では受注できなかった大規模工事の施工ができるようになった。
また、D建設株式会社の開発した「岩接着落石防止工法」を採用するため、当該会社と特約店契約を結び、平成元年から、その工法を用いた施工を開始するようになった。落石の恐れがある岩盤に直接接着剤を流入し、落石を食い止めるという、特殊技術を必要とする工法である。阪神・淡路大震災、北海道の落石事故等をきっかけにこの工法が徐々に認められ、当該工事の受注が急増するようになった。

協業組合設立に向けて一致団結
  ○C建設協業組合
    1.組合の概要
      平成5年に設立。中小総合工事業者4人で構成。県の協業化の勧めで設立に踏み切った。 以来大規模工事の受注により実績を伸ばしている。
    2.成功事業の概要
      土木・建築一式工事、とび・土工・コンクリート工事、舗装工事等全部協業で事業実施。 個々の組合員の建設業許可は返上した。
親の代からの資産を合体させることは相当の覚悟が必要であり、これを実行に移すには 私利私情を払拭して臨んだという。
また、設立当初の理事長は、規模からすると第2番目の業者であったが、協業組合制度 に精通し、人望もあったため選出された。その他の組合員は理事長を信頼し、全てを一任 して協業組合の運営に臨んだ。
規模が拡大したことによって、財政基盤が確立され、技術者を多数(1級11人、2級 15人)確保することができた。また、重機等も共同で購入することができ、過剰な設備 投資をしなくて済むようになった。各組合員個別では受注できなかったような大規模工事を施工できるようになったことが、協業組合設立の大きなメリットであるとしている。




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