土地・不動産・建設業

紛争解決事例(中央建設工事紛争審査会)

 中央建設工事紛争審査会では、年間概ね40~50件の申請があり、そのうち6割近くの事件が解決しています。
 以下は、ほんの一例です。
 
 なお、審査会の手続きは、他のADR機関も同じですが、建設業法に基づき非公開ですので、当事者名や当事者の特定につながるような内容は公開しておりません。以下の事例でもこれに留意し、先例として参考になる事件について大まかな結論部分のみ公開しています。
 
 
1.注文住宅等で一般個人の方が申請した事例
[1]あっせん事件(申請から解決までの期間 4カ月 審理2回)(工事瑕疵)
 新築住宅工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(個人)から、「被申請人(請負人)が、両者合意の工事請負契約と異なる内容の契約書に詐言を用いて申請人に押印させたうえ、本件契約の履行に当たっても言葉を左右し、再三にわたり誠意ある対応に欠けることがあったので、申請人としては本件契約を解約し、被申請人に対し、仮契約金として申請人が交付した金100万円を返却せよ」とのあっせん申請があった。被申請人は、「契約内容を一方的に変更した事実は存在せず、また、着工時期に建築に着手出来なかったのは、契約金の入金が遅延し、最終の建築プランが未確定だったためであり、主張している経緯は事実に反する」との答弁をした。 最終的には、「申請人及び被申請人は本件請負契約を合意解除し、また、申請人は既払いの100万のうち60万円は本件契約に関する諸経費と認め、残りの40万円を支払う」旨の和解が成立した。
 
[2]調停事件(申請から解決までの期間 4カ月 審理2回)(工事瑕疵)
 新築住宅工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(個人)から、「被申請人(請負人)は、申請人に対し、建築物の瑕疵に関し、瑕疵補修及び工事遅延代金等として3,600万円支払え、及び計画道路上に建築させた責任について追求したい」との調停申請があった。被申請人は、「契約及び打ち合わせどおりのものを設置しており、また、計画道路上の問題は担当者が説明した」との答弁をした。 最終的には、「被申請人は、本調停事件につき金300万円の支払い義務のあることを認める」旨の調停が成立した。
 
[3]調停事件(申請から解決までの期間 7カ月 審理4回)(工事瑕疵)
 新築住宅工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(個人)から、「被申請人(請負人)は、申請人に対し、建築物の瑕疵に関し、損害賠償金として1,090万円を支払え」との調停申請があった。被申請人は、「保証期間は過ぎているが、被申請人は誠意を持って対応し、無償で補修工事を行ったのであるから、これ以上の損害賠償義務まで負うものではないと思量する」との答弁をした。 最終的には、「慰謝料として金100万円及び調停費用のうち10万円を支払う」旨の調停が成立した。
 
[4]あっせん事件(申請から解決までの期間 3カ月  審理2回)(契約解除)
 マンション建築工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(個人)から、「被申請人(請負人)は、申請人に対し、本件工事請負契約の解約に応じ、申請人が預け入れた400万円を返金せよ」とのあっせん申請があったが、被申請人は「あっせんの趣旨を争う」との答弁をした。 最終的には、「本件契約が合意解約されたことについて双方異議なく同意し、被申請人は申請人に対し、既受領の400万円を返金するとともに、申請人は被申請人に対し和解金として50万円を支払う」旨の和解が成立した。
 

2.建築関係工事に関する事例(1.を除く。)

発注者・請負人間の紛争解決事例

 
[1]仲裁事件(併合事件)(申請から解決までの期間 1年7カ月 審理14回)(工事代金・工事瑕疵)
 個人住宅新築工事の請負契約に基づく紛争で、「発注者は、請負人に対し工事残代金900万円を支払え」、「請負人は、本件施行内容は約束された性能・品質を確保しえない欠陥があるため、本件施行部分を除去し、改めて施行をやり直す費用として1,300万円等を支払え」と両当事者から申請があった。最終的には、「発注者は、請負人に対し、本件仲裁事件につき和解金として600万円を支払う」旨の和解が成立し、審査会は、和解の内容をもって、理由を付さない仲裁判断をした。
 
[2]仲裁事件(申請から解決までの期間 4カ月 審理2回)(工事代金)
 マンション新築工事の請負契約に関する紛争で、申請人(請負人)から、「被申請人(発注者)は、申請人に対し、工事残代金4億9,000万円等を支払え」との仲裁申請があった。被申請人は、「申請の趣旨は認めるが、会社が事実上の倒産状態にあるため、具体的な支払い計画を提示できない、平成13年中には返済計画を作成したい」旨の答弁をした。なお、被申請人は審理に一度も出席しなかった。 最終的には、申請人の主張どおりの仲裁判断がなされた。
 
[3]仲裁事件(申請から解決までの期間 5カ月 審理2回)(工事代金)
 マンション新築工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(請負人)から、「被申請人(発注者)は、申請人に対し、請負残代金として4,700万円等を支払え」との仲裁申請があったが、被申請人は、「真実の発注者は被申請人ではなく契約は無効である」と答弁した。 最終的には、申請人主張どおりの仲裁判断がなされた。
 
[4]仲裁事件(申請から解決までの期間 1年6カ月 審理6回)(工事代金・工事瑕疵)
 会社社宅新築工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(請負人)から、「被申請人(発注者)は、申請人に対し、工事残代金として1,300万円、追加工事代金150万円、計1,450万円を支払え」との仲裁申請があったが、被申請人は、「請負工事は完成しておらず、そもそも申請人が建築した建物には重大な瑕疵がある、また、申請人主張の追加工事等の合意の事実はなく、申請人の工期が遅れただけであり、仲裁を求める趣旨を争う」と答弁した。 なお、申請人会社は審理途中で倒産し、破産管財人が申請人となった。最終的には、申請人の主張どおりの仲裁判断がなされた。
 

元請負人・下請負人間等の紛争解決事例

 
[1]調停事件 (申請から解決までの期間 3カ月 審理2回)(工事代金)
 個人住宅の建築工事請負契約に基づく紛争で、申請人(下請負人)から、「被申請人(元請負人)は、申請人に対し、変更工事代金等として700万円を支払え」との調停申請があった。被申請人は、「変更工事は見積りの合意がないまま行われたものであり、また請求額は過大である」旨の答弁をした。 最終的には、「被申請人は未払い工事代金が360万円であることを認める」旨の調停が成立した。
 
[2]調停事件 (申請から解決までの期間 4カ月 審理1回)(工事代金)
 ビル改修工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(下請負人)から、「被申請人(元請負人)は、申請人に対し、工事残代金として400万円を支払え」との調停申請があった。被申請人は、「申請人と話し合った結果、200万円で合意し支払っている」旨の答弁をした。最終的には、「被申請人が申請人に対し、和解金として200万円を支払う」旨の調停が成立した。
 

3.土木関係工事に関する事例

発注者・請負人間の紛争解決事例

 
[1]調停事件(申請から解決までの期間 1年8カ月 審理9回)(工事代金)
 墓地敷地造成工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(発注者(地方公共団体))から、「被申請人(請負人)は、申請人に対し、工事前払金2億9,000万円のうちから施工済代金を控除した残代金を支払え」との調停申請があったが、被申請人は「残代金は当初見積りを上回る現場管理費用に費やし返還すべき金員はない」と抗弁した。 最終的には、「和解金として被申請人が申請人に2,000万円を分割して支払う」旨の調停が成立した。
 

元請負人・下請負人間等の紛争解決事例

 
[1]調停事件(併合事件)(申請から解決までの期間 2年1カ月 審理11回)(工事瑕疵・工事代金)
 公共下水道幹線工事の請負契約に基づく紛争で、「元請負人は、下請負人に対し瑕疵補修代金及び立替金として2,500万円を支払え」、「下請負人は、元請負人に対し工事残代金800万円等を支払え」と両当事者から調停申請があった。 最終的には、「和解金として元請負人が下請負人に200万円支払うとともに、従前の主張、紛争の一切を水に流し、今後の取引関係の円滑な進展のために相互に協力する」旨の調停が成立した。
 
[2]調停事件(申請から解決までの期間 7カ月 審理4回)(工事瑕疵・工事代金)
 道路高架橋設置工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(2次下請負人)から、「被申請人(下請負人)は、申請人に対し未払い代金1,500万円を支払え」との調停申請があった。被申請人は、「追加工事について請負金額を定めることなく工事だけが先行してしまったこと、発注元が提示する請負代金が予想外に低かったこと等を理由に申請の趣旨を争う」旨を答弁した。 最終的には、「被申請人は、申請人に対し、和解金として800万円を支払う」旨の調停が成立した。
 
[3]仲裁事件(申請から解決までの期間 1年9カ月 審理13回)(工事代金・工事未完成)
 高速道路付属設備工事の請負契約に基づく紛争で、申請人(2次下請負人)から、「被申請人(下請負人)は、申請人に対し追加工事代金等の未払い代金2億9,000万円を支払え」との仲裁申請があった。被申請人は、「請負契約には追加工事の代金の定めがなかったこと、工事は未完成であること等を主張し、申請人の請求を棄却する」旨の仲裁判断を求めるとの答弁をした。 最終的には、「被申請人が解決金として700万円を支払う」旨の和解が成立し、審査会は、和解の内容をもって、理由を付さない仲裁判断をした。
 

4.設備・電気他関係工事に関する事例

発注者・請負人間の紛争解決事例

 
[1]調停事件(併合事件)(申請から解決までの期間 5カ月 審理2回)(工事代金)
 個人住宅の設備機器増設工事の請負契約に基づく紛争で、申請外の倒産状態の会社(請負人)の保証人から、「保証人と発注者との間の保証契約に基づく、保証人の発注者に対する債務は存在しないことを確認する」との調停申請があった。また、発注者(個人)から、「請負人の倒産、営業停止により、斡旋人でありかつ管理責任を有する保証人は、請負人に支払った700万円のうちの過払い金258万円と履行遅延違約金の合計1,790万円を支払え」との調停申請があった。 最終的には、申請外の倒産状態の会社(請負人)が利害関係人として参加し、「発注者は、保証人及び利害関係人に対し、請負契約等につき瑕疵担保責任及び保証責任に基づく一切の請求を放棄し、今後何等の異議申し立てもしない。利害関係人は本件契約に基づく未払い請負代金請求を放棄する。三者は、本件契約をめぐる紛争が合意により円満に解決したことを相互に確認する。」旨の調停が成立した。
 
[2]仲裁事件(申請から解決までの期間 9カ月 審理6回)(工事代金)
 駅前共同開発計画の消火設備工事請負契約に基づく紛争で、申請人(請負人)から、「被申請人(発注者)は、申請人に対し、工事未払い金750万円を支払え」との調停申請があったが、被申請人は、「工事下請負基本契約に基づき未払い金は下請各社に支払い済みであり申請の趣旨を争う」と答弁した。 最終的には、「両当事者で申請人主張の額を支払う」との和解が成立し、審査会は、和解の内容をもって、理由を付さない仲裁判断をした。
 

元請負人・下請負人間等の紛争解決事例

 
[1]あっせん事件(申請から解決までの期間 2カ月 審理2回)(工事代金)
 見積書による小学校機械設備工事請負契約に関する紛争で、申請人(下請負人)から、「被申請人(元請負人)は、申請人に対し、当初より工事金額に合意がないものの、工事代金として1,200万円を支払え」とのあっせん申請があったが、被申請人は、「申請人は一方的な理由で解約をした、被申請人の算出金は4,400万円で申請人に6,300万円支払っているので差額1,900万円を請求する」との答弁をした。 最終的には、「和解金として被申請人が申請人に500万円を支払うことに合意する」旨の和解が成立した。
 
[2]調停事件(申請から解決までの期間 5カ月 審理2回)(工事代金)
 注文書による超純水装置製造設備電気計装工事(導圧配管工事・空気配管工事・計装計器取付工事・配管配線工事)の請負契約に関する紛争で、申請人(下請負人)から、「被申請人(元請負人)は、申請人に対し、請負残代金として200万円を支払え」との調停申請があったが、被申請人は、「工事全体の内容を把握し了解していた申請人が急に工事を辞退しため多大の迷惑を被り、残金の支払いを保留した」と答弁した。最終的には、「被申請人は、和解金として100万円を支払う」旨の調停が成立した。
 
[3]調停事件(申請から解決までの期間 1年3カ月 審理8回)(工事代金)
 ホテル新築工事の給排水衛生設備工事、電気配線工事請負契約に関する紛争で、申請人(下請負人)から、「被申請人(元請負人)は、申請人に対し、請負工事代金及び立替払い金の残金として850万円を支払え」との調停申請があったが、被申請人は、「申請人が工事を中止した後、未済工事、手直し工事をし、金銭的負担を負っているので請求を認めるわけにはいかない」との答弁をした。最終的には、「被申請人は、300万円の支払い義務のあることを認める」旨の調停が成立した。
 
 

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