1.都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設
(1)マスタープランの構成と法的位置づけ
都道府県マスタープランについては、市町村の自主的なまちづくりの制約要因となるおそれがあるなど、法定化の必要性の有無を含め十分な検討が必要であるとの意見が多い。 また、その対象範囲については、都道府県全域とすることは不適切であるとの意見が多く、また、相互に関連する複数の都市計画区域を対象とすべきとの意見もある。 |
<市町村マスタープランとの関係>
・都道府県マスタープランの法定化は、市町村の自主的かつ主体的なまちづくりの制約に繋がるおそれがある。(有識者、全国市長会、全国農業会議所、不動産協会、ランドスケープコンサルタンツ協会、島根県、宮城県、神戸市、鶴ヶ島市、盛岡市、呉市、石巻市、白河市)
・都道府県マスタープランは、市町村マスタープランを拘束しないものとし(都道府県マスタープランに「即する」とするのは不適切)、その自主性を損なうことがないようにするべき。(有識者、日本都市計画学会九州支部、仙台市、横浜市、名古屋市、京都市、福岡市、北九州市、越谷市、熊谷市、狭山市、与野市、三郷市、妻沼町)
・都道府県マスタープランと市町村マスタープランとの整合性が図られるよう、相互関係、役割分担等を整理するべき。(個人、有識者、事業関係者、日本造園学会、日本建築学会、日本都市計画学会九州支部、日本都市計画家協会、全国市長会、日本チェーンストア協会、日本ショッピングセンター協会、不動産協会、日本商工会議所、島根県、香川県、愛媛県、神奈川県、広島県、大阪府、京都府、埼玉県、福島県、鹿児島県、茨城県、栃木県、宮崎県、群馬県、新潟県、埼玉県、千葉県、山梨県、大阪市、札幌市、横浜市、京都市、広島市、名古屋市、福岡市、北九州市、塩釜市、茨木市、秩父市、川口市、春日部市、飯能市、古川市、神辺町、三良坂町、富谷町)
・都道府県マスタープランと市町村マスタープランの二層制とすることは、制度を複雑化させ、好ましくない。(会津若松市、白河市)
・都道府県マスタープランに基づく規制と市町村マスタープランに基づく規制とが二重規制にならないようにするべき。(経済団体連合会、全国宅地建物取引業協会連合会、浦和市、大宮市)
<都道府県の総合計画等との関係>
・都道府県マスタープランと、都道府県の総合計画や国土利用計画法・農業振興地域の整備に関する法律等の他の法令に基づく計画等との関係を整理し、整合性の図られたものとするべき(個人、有識者、全国市長会、経済団体連合会、全国農業会議所、ランドスケープコンサルタンツ協会、埼玉県、岩手県、福島県、群馬県、札幌市、福岡市、熊谷市、大町市)。都道府県マスタープランは総合計画等の内容そのものとなりかねず、その位置づけは理解しがたい(個人、事業関係者、宮城県、香川県、茨城県、島根県、浦和市)。
・整備、開発又は保全の方針との相互関係、役割分担等を整理するべき。(事業関係者、日本都市計画学会九州支部、日本都市計画家協会、栃木県、青森県、札幌市、福岡市、大阪市、京都市、熊谷市、川口市、大宮市、松伏町)
<都道府県全域を対象範囲とすることについて>
・都道府県マスタープランが都市計画区域外も含めた都道府県全域を対象にすることになれば、国土利用計画法等の上位の法体系を侵害することになる。(個人、事業関係者、岡山県)
・行政区域の大部分が都市計画区域外であるため、都道府県の全域についてマスタープランを策定することは困難。(和歌山県、山口県)
・当分の間都市計画区域への編入を予定しない市町村については、都道府県マスタープランの対象地域から除外すべき。(佐賀県)
・都道府県マスタープランが都道府県の全域を対象とするとすれば、実効性のある住民反映措置を講じうるのか疑問。(茨城県、福岡市、北九州市、浦和市)
・策定対象範囲は、都道府県全域とするのではなく、連坦する広域生活圏を一体的にとらえた区域とするべき。(日本商店街学会、日本ビルヂング協会連合会)
・都道府県マスタープランは複数の都市計画区域を含む都市圏単位で策定できるようにするべき。(個人、兵庫県、大阪府)
・都道府県マスタープラン中の都市計画区域ごとに定める方針等は、都市計画区域が連担するエリア等においては、各都市計画区域を一括して策定して定めることを可能とするべき。(茨城県、福井県、栃木県)
<その他>
・非線引き都市計画区域においてもマスタープランの策定が可能となることに賛成。(日本都市計画学会九州支部、山梨県)
都道府県マスタープランの法的性質や役割については、以下のとおり評価が分かれている一方、市町村マスタープランについては、現行制度の維持を積極的に評価する意見が多い。 |
<都道府県マスタープランの役割>
・都道府県マスタープランの役割は、市町村間、近隣都府県間の広域的調整機能とするべき。(個人、日本商工会議所、全国商店街振興組合連合会、建築業協会、日本建設業団体連合会、不動産協会、全国中小企業団体中央会)
・都道府県マスタープランは、個々の都市計画に対しどの程度の拘束性を持つのか整理が必要。(福岡市)
・都道府県マスタープランの、個々の都市計画に対する優位性・拘束性を確保するべき。(岡山県、広島市)
・都道府県マスタープランを、開発許可の基準の一つとして位置付ける等、拘束力の強いものとするべき。(日本商工会議所、全国商工会連合会)
・都道府県マスタープランの位置づけとしては法的拘束力を持つものでなく、開発許可の際に参考にする程度のものとすべき。(茨城県)
<市町村マスタープラン>
・市町村マスタープランについては、自由度の高い現行制度を維持するべき。(福井県、川崎市)
・市町村マスタープランを、開発許可の基準の一つとして位置付ける等、拘束力を強めるべき。(日本商工会議所、全国商工会連合会)
・個々の都市計画に対する市町村マスタープランの拘束力を高めるべき。(有識者、大阪商工会議所、広島市)
(2)マスタープランの内容
都道府県マスタープランに定めるべき内容については、できるだけ限定的にすべきであるとの意見が多い一方、市町村マスタープランについては、現在の内容構成をそのまま維持するべきとの意見が強い。 |
<都道府県マスタープランの内容>
・都道府県マスタープランに定めるべき内容について、都道府県マスタープランと市町村マスタープランの役割分担を明確にすべき。(栃木県、群馬県、新潟県、埼玉県、千葉県、山梨県、東京都、長野県)
・都道府県マスタープランに定めるべき内容は、二以上の市町村に跨る広域的な事項など必要最小限のものに限定するべき。(個人、有識者、事業関係者、日本ショッピングセンター協会、不動産協会、建築業協会、日本建設業団体連合会、岡山県、茨城県、福井県、千葉市、塩竈市)
・都道府県マスタープランは、あくまで広域的なマスタープランとして定めることとし、詳細については市町村マスタープランが定めることとするべき。(個人、事業関係者、日本都市計画家協会、山形県、山口県、神奈川県、三重県、横浜市)
・都道府県マスタープランに定めるべき内容を法定化することに賛成。(茨城県、徳島県)
・都道府県マスタープランに定めるべき内容は、定型化するのではなく、例示列挙とするなど自由度の高いものとするべき。(有識者、日本造園学会、福岡県、広島県、埼玉県)
<市町村マスタープランの内容>
・市町村マスタープランに定めるべき内容については、現行制度どおり市町村の自主的な裁量に委ねることとするべき。(事業関係者、全国市長会、群馬県)
・市町村マスタープランに定めるべき内容を法定化するべき。(有識者、茨城県、東京都)
(3)マスタープランの決定・変更の手続
都道府県マスタープランの策定手続については、関係機関等との調整ルールの確立とともに、住民意思の反映を求める意見が多い。 |
・都道府県マスタープランの策定に際し、国の関与は必要最小限にとどめ、都道府県の主体性を尊重すべき。(大阪府、青森県、愛媛県)
・近隣都府県や圏域との整合性が図られるよう、隣接府県との協議の視点を明確にする等の措置を講じるべき。(日本都市計画家協会、不動産協会、全国商店街振興組合連合会、経済団体連合会、京都府)
・都道府県マスタープランの決定・変更に当たっては、市町村との協議を行うこととする等、市町村と調整が必要。(有識者、新潟県、茨城県、徳島県、三重県、横浜市、北九州市、福岡市、古川市、与野市、府中市)
・都道府県マスタープランと市町村マスタープランの策定については、相互の調整ルールを確立することが必要。(埼玉県、山梨県、神奈川県)
・都道府県マスタープランの決定・変更に当たっての、農政サイド等の関係機関との調整ルールを確立するべき。(茨城県、佐賀県、長崎県、長野県、栃木県、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、群馬県)
・マスタープランの策定、変更において、住民意見を反映させるための手続を検討すべき。(個人、有識者、埼玉県、新潟県、山梨県、栃木県、神奈川県、長野県)
・マスタープランの策定に関して議会の役割を強めるべき。(個人、有識者)
マスタープランの定期的・機動的な見直しを求める意見が多い。 |
・マスタープランの定期的な見直し、フォローアップ、モニタリングを行う仕組みを整備するべき。(個人、事業関係者、日本建築学会、経済団体連合会、大阪商工会議所、日本ショッピングセンター協会、不動産協会、三重県、群馬県)
・定期的な見直しスパンに限らず、必要に応じて機動的な見直しができることとするべき。(日本商工会議所、北九州市)
1.都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設
2.都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方
3.線引き制度及び開発許可制度の見直し
4.既成市街地再整備のための新たな制度
5.環境問題等への対応のための制度の強化
6.都市計画の決定システムの合理化