4.既成市街地再整備のための新たな制度

(1)多様な建築計画を可能とする新たな都市計画制度等の検討    


 多様な建築計画を可能とする新たな制度の創設に対し、概ね賛成とする意見が主だったものの、様々なインセンティブを併せて付与すべきであるとの意見、既存の建築規制等に関わる制度の見直しが必要であるとの意見も数多く見られた。                  

<全般>

・多様な建築計画を可能とする制度を創設することに賛成。(個人、有識者、事業関係者、日本商工会議所、不動産協会、全国宅地建物取引業協会連合会、経済団体連合会、日本都市計画家協会、和歌山県、徳島県、福岡県、神戸市、川崎市、仙台市、石巻市、鴻巣市、与野市、松伏町)

・容積率の割増、形態制限の特例等を行う地域地区制度が多様化・類似化しているため、既存制度を再編整理し、一元的な使いやすい制度とするべき。(個人、建築業協会、日本建設業団体連合会、経済団体連合会、日本ビルヂング協会連合会、岡山県、札幌市、大阪市、北九州市)

・どの地区で何をしたらどのような特例が与えられるのかを明確にするとともに、多様な選択が可能となるようなメニューの提供が必要。(事業関係者、経済団体連合会)

・既成市街地のための新たな制度には、景観、美観、歴史といった視点を盛り込むべき。(個人、日本建築学会、全国農業会議所、千葉市)

・容積率を一律に緩和すると、都市環境、住環境の悪化を招くため、優良開発に限定すべき。(個人)

・住民の意見を聴くなどの所定の手続を導入すべき。(個人)

<インセンティブの付与に係る制度提案>

・容積率、建ぺい率の全般的な緩和が必要。(個人、有識者、事業関係者、全国宅地建物取引業協会連合会)

・公共施設の整備水準が高い等の一定の街区においては、ベースの用途地域で定められている容積率等の制限を柔軟に変更できる制度が必要。(有識者、事業関係者、横浜市)

・容積移転や用途入替えの手法、容積割増項目の見直し、街区の統合への優遇策、天空率・緑被率等の新たな環境基準の導入等を検討するべき。(個人、事業関係者、不動産協会)

・住居系の用途について、容積率、建ぺい率の一層の緩和を可能とするべき。(浦和市、越谷市)

・地域経済・社会の活性化に寄与する商業業務施設等を建設した場合には、住宅建設事業に比べ、容積率、形態制限等をさらに緩和する制度を創設するべき。(都市開発協会)

・高齢者対策等を講じる建築物には、建築基準等の規制緩和を行うとともに、財政上の措置も併せて充実させるべき。(日本ショッピングセンター協会)

・商業・業務用建築物についても、住宅と同様に、廊下、階段等の共用部分は容積不算入とし、地下室部分についても容積率制限を緩和するべき。(都市開発協会)

・低未利用地を有効に活用するため土地の整形、集約化を促進する施策を推進するべき。(事業関係者、大阪商工会議所)

<その他の制度提案>

・地域地区制度、地区計画制度の制限緩和が必要。(日本ビルヂング協会連合会)

・基準容積率のダウンゾーニングを行い得る仕組みを検討するべき。(岡山県)

・斜線規制、日影規制を緩和・廃止すべき。(個人、事業関係者)

・斜線制限について、前面道路の反対側の境界線から適用距離の緩和(あるいは道路斜線制限の廃止)を図ることが必要。(全国宅地建物取引業協会連合会)

・容積率の決定の指針を示すべき。(福岡県)

・市街地再開発事業及び土地区画整理事業等の法定事業については、権利変換の手法の見直し、事業期間の短縮、複雑な手続の緩和等が必要。(日本チェーンストア協会)

・土地の統合化を前提とした「再開発すべき地区」を定め、細分化された土地のままでの新たな建築を禁止することにより、再開発の円滑化を図るべき。(事業関係者)

・防災上、また、有効な土地利用の観点から、都市部の土地には一定の床面積以上の建築物の建築しか建築できないようにすべき。(個人)

・防災性の高いまちづくり、災害発生後の迅速な復旧・復興等のための新たな制度の体系化が必要。(日本都市計画学会、日本建築学会)

・大都市における地下利用を計画的に推進するため、新たな地域地区制度を設ける必要がある。(事業関係者)

・特定行政庁等が用途地域の制限緩和を認めるような方式については反対。(有識者)

・既成市街地における歴史的建造物等の保全制度を設けるべき。(青森県)

<既存制度の活用、税制上の優遇措置等>

・商業活性化等のため、特別用途地区の積極的な活用を図るべき。(日本都市計画学会、大阪商工会議所)

・連坦建築物制度の普及、特定街区制度の一層の活用を図るべき。(全国宅地建物取引業協会連合会)

・容積率の割増や緩和の措置の導入に伴うインフラの整備の充実が必要。(全国住宅宅地協会連合会)

・事業者と行政の間の相談制度を設けるべき。(建築業協会、日本建設業団体連合会)

・既成市街地の再整備を実施する上での税制上の優遇措置や財源の充実を行うべき。(北九州市)立体買い換えの税制特例の適用対象地域を三大都市圏の一定地域から、政令指定都市あるいは中核市以上の都市にまで拡大して適用するべき。(全国宅地建物取引業協会連合会)

・中心市街地活性化法を軸とする税制優遇措置等の拡充を図るべき。(全国宅地建物取引業協会連合会)

・歴史的環境の保全等を図りつつ既成市街地の再整備を進める必要があり、建物への助成とともに土地についての優遇策が必要。(名古屋市)

(2)地区計画制度の改善    


 地区計画制度の一般化、整理統合、区域要件の緩和については賛成とする意見が主だったものの、計画事項を限定列挙から例示列挙にすることには、賛否両論が見られた。また、一層の規制緩和を望む意見も見られた。                             

<地区計画の一般化、整理統合>

・地区計画制度を一般化することに賛成。(個人、有識者、事業関係者、不動産協会、経済団体連合会、日本商工会議所、福井県、福島県、徳島県、北九州市、石巻市)

・地区計画制度を一般化する際には、地区計画が市民に分かりやすい制度となるよう整理するべき。(個人、事業関係者、日本都市計画家協会、山口県、横浜市、北九州市)

・規制強化型と緩和型の二類型に分ける等、各種地区計画等の制度の整理統合を図るべき。(経済団体連合会、不動産協会、日本都市計画学会、福井県、埼玉県、岡山県、福岡市)

<区域要件の緩和>

・地区計画の区域要件を緩和することに賛成。(個人、経済団体連合会、不動産協会、全国宅地建物取引業協会連合会、福島県、和歌山県、愛媛県、石巻市、熊谷市)

・市街化調整区域や非線引き白地地域、また、準都市計画区域においても積極的に地区計画を活用できるようにするべき。(個人、事業関係者、埼玉県、福井県、大阪府、広島県)

・現行の要件の下でも、必要に応じた地区計画を自由に定めることが十分に可能ではないか。(名古屋市)

<計画事項の例示列挙化>

・地区計画に記載する事項を限定列挙から例示列挙に改め、多様化することに賛成。(有識者、事業関係者、不動産協会、経済団体連合会、福島県、岡山県、大阪府、神戸市、横浜市、福岡市、川口市、石巻市)

・地区計画に記載する事項を限定列挙から例示列挙にすることは、行政裁量の範囲の拡大、権利制限の強化につながるため好ましくない。(建築業協会、日本建設業団体連合会、名古屋市)

・地区計画において新たに定められることとなる項目について、建築基準法に基づく条例化を行って制限することができるか等、建築基準法上の整理が必要。(埼玉県、横浜市、川崎市、京都市)

・例示列挙に改めると、地区計画の内容が限りなく建築協定に近くなるため、地区計画と建築協定の関係を整理すべき。(茨木市)

<地区計画による規制緩和>

・一定水準以上の公共施設を整備する場合等に、用途地域等での規制内容を緩和することに賛成。(経済団体連合会、福岡市)

・公共施設でなくとも、機能として公的役割を果たし得る施設を備える優良プロジェクトであれば、地区計画において規制内容を緩和すべき措置を講じるべき。(個人、日本チェーンストア協会)

・具体の規制又は緩和が市町村の相当程度の裁量でできることが必要。(個人、福岡市)

・地区計画の区域内において用途、容積率、高さ等の緩和を可能とするべき。(有識者、経済団体連合会、不動産協会、島根県)

・再開発地区計画や住宅地高度利用地区計画による用途制限の緩和について、公聴会を省略する等の手続の合理化を図るべき。(横浜市)

・将来の土地利用計画を明確にすること、また、地区計画等の計画決定事実のみで、計画の必須事項が実現されないままに規制緩和を認めることは禁止するべき。(個人)

・緩和型地区計画は、公共施設の整備状況、周辺の土地利用状況を十分踏まえて策定することが必要であり、明確な数値基準、適用できる用途地域の範囲などを示す必要がある。(茨木市)

<その他>

・従来の地域地区では制限の変更等の面で機動性に欠けるということであれば、地区計画制度の拡充で対応すべき。(有識者)

・提案型の地区計画制度を原則とするべき。(不動産協会)

・地区計画の担保手段として、是正命令・罰則規定の法定化や違反建築物に対する処置の強化を検討すべき。(事業関係者)

・地区計画は、地域住民にとって最も身近な都市計画であり、まちづくりの意識を浸透させる意味でも、住民主体のわかりやすく弾力的な制度運営が必要。(福島県、茨木市)

(3)都市施設の立体的整備


 都市計画に占有空間の概念を導入することについては、基本的に異論がない。          

・占有空間の概念を導入することに賛成(日本商工会議所、大阪商工会議所、兵庫県、福岡県、徳島県、愛媛県、千葉市、名古屋市、大阪市、神戸市、北九州市、大宮市、石巻市、呉市、塩竃市)。都市施設の立体的整備は必要な措置であり、立体的歩行空間整備が促進されるよう配慮すべき。(日本商店街学会)重要な公共施設の地下空間における立体区域を都市計画に定めることができるようにすることが必要。(事業関係者)

・占有空間の都市計画決定のモデルを示すべき。(名古屋市)

・法53条の建築許可について、制限範囲や許可基準のモデルを示すべき。(名古屋市)

・民間施設と都市施設を共同設置する場合は、民間施設の永続性が確保できる場合に限定して運用するべき。(愛媛県)

・占有空間の都市計画決定は、土地の高度利用を目的とする企業重視の提案であり、反対。(個人)

・地下空間の高度利用は、暴騰した地価が原因で考え出されたご都合主義の便法である。(個人)

・既成市街地における公園、道路等のオープンスペースとしての機能が発揮されうるよう、制度を運用すべき。(埼玉県)

・立体道路制度を適用する際に、地区計画等を必須要件とする現行制度を改めるべき。(事業関係者)


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1.都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設   
2.都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方   
3.線引き制度及び開発許可制度の見直し   
4.既成市街地再整備のための新たな制度   
5.環境問題等への対応のための制度の強化   
6.都市計画の決定システムの合理化