6.都市計画の決定システムの合理化

(1)都市計画の透明性の確保と住民自らの意思によるまちづくりの促進    


 都市計画の決定に当たって、決定手続の透明性を高め、行政の説明責任をより強く求める方向で制度を充実すべきであるとの意見が多かった一方で、具体の都市計画決定の必要性や理由を書面で作成し、公表することに難色を示す意見も出された。                    

<総論>

・都市計画手続について、行政の説明責任や透明性を高め、市民参加の要請に応えるという方向での検討に賛成。(個人、有識者、事業関係者、日本都市計画学会九州支部、日本都市計画家協会、経済団体連合会、日本商工会議所、大阪商工会議所、全国宅地建物取引業協会連合会、大阪府農業会議、岡山県、京都府、愛媛県、越谷市)

・都市計画の透明性を確保する手法については、法律で全国一律に定めるのではなく、自治体独自の手法を取り入れることができる仕組みとするべき。(仙台市)

・都市計画の決定過程において、より多くの関係住民や関係団体の参加とその意見の反映を可能とする仕組みを整備すべき。(建築業協会、日本建設業団体連合会、全国農業会議所、全国宅地建物取引業協会連合会、全国商店街振興組合連合会、日本都市計画家協会、塩竈市)

<都市計画を定める必要性や理由の公表>

・都市計画を定める必要性や選択理由の書面を公表することに賛成。(横浜市、広島市、北九州市)

・都市計画図書の公衆への縦覧、理由の公表等については、インターネット等を利用するなどより多様な周知方法を整備するべき。(事業関係者、大阪商工会議所、日本ショッピングセンター協会)

・都市計画を定める必要性やその選択理由の書面公表については、一部の反対者等がこれに異議を申立て、円滑な決定が阻害されるおそれもあること等から、再考するべき。(茨城県、福岡市、鶴ヶ島市)

・都市計画を定める必要性や選択理由を示すのならば、現行の「計画書」の理由の部分を充実すればよい(名古屋市、大阪市)。一律に書面を公表すべきとするのではなく、理由等を示しにくい都市計画については、そうした対応を可能とするべき(北九州市)。

・必要性や選択理由はあくまでも参考資料として位置付け、都市計画の決定内容として法的効果を持たせるべきではない。(福岡市)

<その他提案>

・都市計画決定権者に対し、意見書への回答義務を課し、意見書がどう扱われたかを市民に広く報告するべき。(岡山県)

・地権者、専門家、自治体の三者によるワークショップ制度を位置づけるべき。(事業関係者、浦和市)


 国として全国共通に存在する社会的課題とそれへの都市計画上の対応の考え方を「都市計画ガイダンス」として示すことには、概ね賛成とする見解が示された。                  

<賛成>

・国がガイダンスを示すことに賛成。(個人、有識者、宮城県、広島県、札幌市、川崎市、福岡市、北九州市)

・都市計画基準の充実を図るべき。(愛媛県、宮城県、広島県、広島市、北九州市、鴻巣市)

・都市計画基準やガイダンス等の国が策定する指針は、地方自治体の主体性・自主性を阻害しないよう、柔軟な制度運用を妨げることのないものとすべき。(個人、事業関係者、全国市長会、日本建築学会、大阪府、福岡市、京都市、千葉市、札幌市、川崎市、廿日市市、茨木市、相馬市)

<慎重意見>

・中心市街地の活性化や、高齢社会の対応は大都市圏よりも地方都市の方が深刻な問題として受け止めており、それに対応するガイダンスを全国一律で作れるのか疑問。アドバイザー制度はどうか。(個人)


 地区計画の策定要請制度の拡充については、賛成とする意見が多い一方、民間での紛争を惹起するきっかけとなるおそれがある等との懸念も示された。                  

<賛成>

・地区計画の策定要請制度の拡充に賛成。(個人、有識者、日本商工会議所、経済団体連合会、不動産協会、日本ショッピングセンター協会、日本建築士会連合会、岡山県、広島市、福岡 市)

・要請に対する見解の公表等を行うことに賛成。(経済団体連合会)

・地区整備計画の変更についても要請を認める方向とすべき。(富谷町)

<慎重意見>

・一定割合の地権者による要請を認めることについては、少数意見の切り捨てに繋がり、民民間の紛争が発生する可能性が高まるなどかえって問題が多いため、行うべきではない。(個人、事業関係者、札幌市、仙台市、福岡市、北九州市、大阪市)

・地区計画は住民の総意によって定められるものであり、一定の割合の地権者の合意により地区整備計画の策定要請を認めることは不適切(北九州市、京都市、横浜市)。

・現状においても、住民から地区計画の策定について相談があった場合は、関係権利者との十分な話し合いを経ながら柔軟に対応しており、要請制度の拡充は不要(札幌市、与野市)。

・要請に対する見解の公表等を行うことを義務付けるのではなく、市町村の自主性に委ねるべき。(福岡市)

・市街化調整区域において、業者等の宅地開発を目的とする策定要請等の増加を防ぐため、市街化区域についてのみ要請制度の拡充を検討すべき。(長野市、妻沼町)

<合意割合の基準等>

・地権者の合意の割合について一律に規定するのではなく、実情に応じて柔軟な対応が可能な規定とするべき。(名古屋市)

・地権者の概念、合意割合についての基本となる基準は国が定めるべき。(経済団体連合会、埼玉県、広島県)

<都市計画の決定手続の迅速化等>

・都市計画の決定手続を迅速化するため、縦覧方法のOA化、住民公聴会や審議会の改正頻度を高める、手続書類の簡素化等の対応を図るべき。(日本チェーンストア協会)

・都市計画の決定プロセスにおいては、時間の概念を明確に認識することが必要であり、決定手続を条例により手厚くすることにより過度な時間がかかることのないような仕組みにすることが不可欠。(不動産協会)

・都市施設等についての長期未着手問題に対処するため、都市計画決定の弾力的な見直し、建築制限の緩和等について検討するべき。(個人、全国宅地建物取引業協会連合会、建築業協会、日本建設業団体連合会、島根県、岡山県、千葉市、二本松市)

・都市計画決定された都市施設等は年限を区切って事業化することが必要。(個人、経済団体連合会)

・都市施設等についての長期未着手問題に対処するため、都市計画施設等の区域内の建築制限の緩和等について検討するべき。あわせて、公有地の拡大の推進に関する法律に基づく買取りに対する財政支援措置及び税制上の特別措置の充実を図るべき。(岡山県)

・長期にわたる私権制限を回避するため段階的な計画決定制度を創設するべき。(千葉市)

(2)地方分権後の都市計画制度の円滑な実施    


 都市計画決定手続の条例による拡充、都市計画の専門家の活用ともに賛成とする意見が多い一方、都道府県の都市計画の案の作成については、関係市町村の主体的な関与が必要であるとの意見も数多く提起された。                                 

<都市計画決定手続の条例による拡充>

・都市計画決定手続を条例により手厚くすることができることを法律上明確化することに賛成。(個人、有識者、事業関係者、日本商工会議所、ランドスケープコンサルタンツ協会、愛媛県、福岡市、北九州市、横浜市)

・国道の変更と関連する市道の変更を同時に行うようなケースで、縦覧期間の延長を条例により行う場合、県と市とで縦覧期間に違いが出てくるときは、両者の調整をどう図るのか。(名古屋市)  

<都市計画の専門的知識を有している者の知識や経験の活用>

・都市計画の専門家の知識、経験を活用する仕組みを構築することに賛成(事業関係者、日本商工会議所、経済団体連合会、日本建築士会連合会、日本都市計画家協会、横浜市、北九州市、与野市、大曲市)

・執行体制が十分でない自治体に対し、国として人的・財政的支援を行うべき。(個人、日本チェーンストア協会)  

<都道府県の都市計画の案の作成に際しての関係市町村に対する資料の提供等の要請>

(賛成)

・関係市町村に対して必要な資料の提供等を求めることができることとすることに賛成。(日本商工会議所、経済団体連合会、福岡市)

(慎重意見)

・市町村が資料を作成するにあたっての法的根拠、役割、財政的裏付けが必要。(北九州市、名古屋市、京都市、横浜市)

・市町村の人的及び物的負担を考慮して検討を行うべき。(個人、仙台市)

(制度構成の提案)

・都市計画の円滑な運用の観点から、都道府県決定の都市計画であっても、その内容によっては、市町村が主体となって原案を作成できる旨の規定を設けるなど、原案の作成主体の見直しを含めた検討が必要。(有識者、京都府、徳島県、島根県、岩手県、愛媛県、鹿児島県)

・都市計画原案については都道府県と市町村との相互協力により作成するとの認識の下での制度構成が必要。(福島県、大阪府、与野市)

・都道府県の定める都市計画について、市町村が都道府県に意見を具申することを可能とするべき。(日本都市計画学会)

・環境影響評価を必要とする都市計画は、事業者が原案の作成と環境影響調査にかかる調査を行うべき。(福島県)


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1.都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設   
2.都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方   
3.線引き制度及び開発許可制度の見直し   
4.既成市街地再整備のための新たな制度   
5.環境問題等への対応のための制度の強化   
6.都市計画の決定システムの合理化