イタリア(Italy)

概況

イタリアの国土面積は約30万km²で日本とほぼ同規模であり、人口規模は約半分となっている。とはいえ、約6,000万人を数える人口は、欧州連合の中では独、仏、英に次ぐ第4位である。国土面積は相対的に小さいため、欧州の中で最も人口密度の高い国のひとつとなっている。その地理的条件から、歴史的に地中海諸国と密接な関係を維持してきたことが、イタリアの地域性・歴史を形づくってきた。北部のミラノ市、トリノ市、ジェノバ市のいわゆる工業の三角地帯が経済の中心であるのに対して、ローマ市やフィレンツェ市が観光や政治の中心地となっている。また、南部は依然として農業を主産業としており、近代的発展の必要性が叫ばれている。

国勢概要

国名 イタリア共和国
国土面積 約30.1万km² (日本の約5分の4)
人口 60.7百万人(2016年1月)(日本の約半分)
人口密度 202人/km²
都市人口比率 69%(2015年)
GDP 18,158億ドル(2015年:IMF)
一人当たりGDP(名目) 29,867ドル(2015年:IMF)
産業別
就業人口比率
第一次産業3.9%
第二次産業28.3%
第三次産業67.8% (2011年)
経済成長率(実質) 0.6(2011年)、▲2.8%(2012年)
▲1.7%(2013年)、▲0.4%(2014年)
▲0.8%(2015年)(IMF)

(情報更新:2017年3月)

イタリアの地図

イタリア地図

資料:http://europa.eu/abc/maps/members/italy_en.htm

イタリアの地方制度

イタリアの地方制度は、州(regione:15の普通州と5の特別州の合計20州)、県(provincia:110県)、コムーネ(市)(comune:8,101市町村)の3層構造となっている。人口規模は日本の約半分であるものの、地方自治体の県やコムーネ数が多い。つまり、規模が小さくとも自治組織としての歴史が長く、安定しているともいえる。

州は1970年以降に順次成立し、中央政府の権限の一部を委譲された。また、2001年の憲法改正により、各地域組織の関係に関する改正が行われ、新たな行政形態として大都市圏(Citta' metropolitana)が追加された。空間計画に関しては、国は財政面からの支援および調整を含むアドバイスを行い、実質的には州が主導している。州が主導する地域レベルのプランニングはイタリアの都市政策の特徴となっている。地域の発展と地域資源の保存を第一の目的とし、各地方自治体の法定都市基本計画との調整を図りながら、法定都市計画の中で最も高い上位性を確保している。

国土政策関係の主要な機関

政策分野 機関名 ホームページ
インフラ/交通 インフラ・交通省
Ministero delle Infrastrutture e dei Trasporti
http://www.mit.gov.it/mit/site.php
文化/環境 文化遺産・観光省
Ministero dei Beni e delle attività Culturali e dei turismo
http://www.beniculturali.it/mibac/export/MiBAC/
地域経済開発 経済開発省
Ministero dello Sviluppo Economico
http://www.sviluppoeconomico.gov.it/
州の地域政策 ラツィオ州
Regione Lazio
http://www.regione.lazio.it/web2/contents/ptpr/

国土政策に関わる主要な施策

イタリアでは、地域レベルの課題に対しては、1942年に制定された都市計画法に基づいて解決が図られてきた。都市計画法において構築された都市マスタープランはすでに全国の市町村に普及し、近年それらの見直しの時期に入っている。1972年から州が設置され、都市計画の承認はすべて州に移った。いくつかの先進地域では、州政府が独自に州法を定め、早急に対応が必要な地域の成長管理や環境保護に対処しようとする動きが起こっている。

今日の空間計画に関わる主要なツール

イタリアの国土・地域整備政策は、1861年のイタリア統一以降、南北イタリアの格差是正という経済的側面を軸に進められてきた。1965~70年を対象とした第一次長期経済計画から、経済的に劣る南イタリアの開発が国の経済政策として組み込まれることになった。

イタリアにおいては、国土計画のような地域計画を超える上位の空間計画はない。全国スケールの計画図としては、高速道路や鉄道等に限られている。なお、EUの地域政策を受けて、国土を超えた計画と構造基金に基づく国の資金配分プログラムが1990年代から実施されている。

国土・地域整備に関わる主な計画

計画 策定主体
州の広域計画(PTR)
広域風景計画(PTPR)
県の広域調整計画(PTCP) 県または大都市圏レベル
大都市圏計画(PRGI) 県または大都市圏レベル
都市マスタープラン(PRG) 市町村
広域的な空間整備の体系
イタリアの法定都市計画の基本的枠組みは、1990年の新地方自治法による地方分権以降、上位の計画から順に、①州政府の広域計画(Piano Territoriale Regionale)、②県の広域調整計画(Piano Territoriale di Coordinamento Provinciale)ならびに大都市圏計画PRGI、③市(コムーネ)のマスタープランPRG、④地区計画PPとなっている。
最上位のプランとして、20の州政府ごとに広域計画PTRが策定されている。広域計画は、特定の土地利用規制、特定の面的開発、道路網や鉄道といったインフラの計画をその内容としている。州の広域計画は、県・コムーネ・民間主体等が参画して案が作成され、州議会の承認を得て決定される。
ガラッソ法による広域風景保全
こうした法定都市計画の枠組みとは別に、1985年に制定されたガラッソ法(Legge Galasso:環境価値の高い地域の保護に関する緊急規定法)に基づく広域風景計画(Piano Territoriale Paesaggistico Regionale)も重要な地域整備ツールである。各州政府は風景計画の策定を義務づけられるとともに、環境保全の規定に従い、検討の上、広域計画PTRに組み込まれる形で普及している。2004年に改正され、改正法に対応した風景計画をラツィオ州が作成した。現在では、風景計画は州政府のつくる重要な広域計画のひとつとなっている。

EU施策との関係

国はEUの政策と州の政策の間の調整役を果たしている。EUの構造基金を活用するにあたり必要となる全国オペレーティング計画には州も参加する。オペレーティング計画は州の空間計画とは整合を取りつつ並行して策定され、ラツィオ州とロンバルディア州では事実上EU構造基金を受け入れるために作成されている。

都市再生広域開発プログラムによる地域開発
1998年3月のEU構造基金に関するEU議会の提案を受けて、公共事業省は同年に「都市再生および持続可能な広域開発プラグラムPrusst」(Programmi di riqualificazione urbana e di sviluppo sostenibile del territorio)を定めた。このプログラムにより、各地への分散投資が促進され、異なる州を連結する広域スケールの交通システムの整備や歴史的建造物の再生、工業系施設の複合的再生転用が進展した。
この「Prusst」の延長上で、2012年11月に「競争力と持続可能な開発の展望の前提条件」(Ipotesi per una prospettiva di sviluppo competitivo e sostenibile)を定めた。この中で、国際競争力の強化に資する交通網の整備とロジスティクス計画を策定した。

ラツィオ州風景計画

ラツィオ州風景計画

資料:Regione Lazio "Piano Territoriale Paesistico Regionale"より

大都市圏の空間整備計画

人口約254万人を有する首都ローマを中心に約300万人規模の大都市圏を抱えるラツィオ州では、1999年制定の州法の規定により、地域レベルの計画を進めている。主要な分野別計画は、景観保護・環境整備、河川・水域等の管理、採掘活動管理、交通網整備等である。環境保全政策として、2004年に改正されたガラッソ法に対応する形で2006年に風景計画が採択され、市の都市計画の上位のプランとして位置づけられている。ローマの無秩序な拡大を防ぐため、広域計画と風景計画を組み合わせ、グリーンベルトを整備していくことが計画されている。

南部開発

1994~1999までにEU構造基金の対象となる州(人口一人当たりGDPがヨーロッパ平均の75%以下の地域)は8州あったが、EUが東欧まで拡大したことにより、カンパニア州、ブッリャ州、カラブリア州、シチリア州の4州に減少した。

南部開発の目的は、南部の競争力の強化、生産能力の向上である。そのためには交通や輸送に関するインフラ整備が必要になる。

2007~2013の全国戦略フレームワークによって、123億ユーロが投資されるが、そのうち85%が南部開発に当てられる。

*123億ユーロの内訳は、EU構造基金が28.7億ユーロ、国が31.1億ユーロ、未開発地域開発基金が63.3億ユーロ

(情報更新:2013年3月)