ミャンマー(Myanmar)

地方ブロック図

地方ブロック図

資料:Myanmar Information Management Unit, 'Maps' (ホームページ)

概況

ミャンマーの国土は、インドシナ半島の西部を占め、国土のほぼ中央をエヤワディ川が南下し、広大な沖積平野を形成している。北は中国、東はラオスとタイ、西はインドと国境を接し、南はアンダマン海とベンガル湾に面している。

ミャンマーは130以上の民族で構成される多民族国家であり、巨視的に見て、エヤワディ川に沿って南北に広がる国土の中央部は総人口の約70%を占める最大民族のビルマ族が、東部・西部の山岳地域は多くの少数民族が居住する地域となっている。

最大の人口を有する都市はエヤワディ川河口のヤンゴン(英国占領後の首都)、第二都市はこの川の上流でヤンゴンの北約590kmのマンダレー(英国占領前の最後の王朝の首都)であるが、2006年、首都は、両都市の中間でヤンゴン北約340kmに位置する新都市ネーピードーに移転された。

国勢概要

国名 ミャンマー連邦共和国
Republic of the Union of Myanmar
国土面積 68万km² (日本の約1.8倍)
人口 5,141万人
(2014年9月(ミャンマー入国管理・人口省暫定発表))
人口密度 76人/km²
都市人口比率 34.1%(2015年)
名目GDP 約568億ドル(2013/14年度:IMF推計)
一人当たりGDP 1,113ドル(2013/14年度:IMF推計)
産業別
就業人口比率
第一次産業26.3%
第二次産業27.5%
第三次産業46.2% (2016年推計)
経済成長率 8.25%(2013/14年度:IMF推計)

(情報更新:2017年3月)

整備が見込まれる計画体系

  空間計画 社会・経済開発計画
国レベル 国家空間開発計画
National Spatial Development Plan
国家総合開発計画(20カ年長期計画)
National Comprehensive Development Plan
短期五カ年計画
管区域/
州レベル
地域空間開発計画 国家総合開発計画(地域計画編)
郡レベル 郡空間開発計画

国及び地方の関係と計画体系

ミャンマー連邦は、7つの管区域、7つの州、1つの連邦直轄区域、5つの自治地域と1つの自治地区で構成される。管区域と州は同等の地位を有し、ビルマ族が多く住まう地域に管区域、少数民族が多く住まう地域に州が設置されている。管区域や州は県により構成され、県は村、区、町、村落区により構成されるのが基本となっている。三大主要都市のネーピードー(連邦直轄区域全域)、ヤンゴン(ヤンゴン管区域全44郡のうち4県33郡に該当する地域)、マンダレー(マンダレー管区域全7県のうち1県に該当する地域)には各々都市開発委員会が設置され、市役所に相当する任務にあたっている。

2012年12月現在、国土政策に係る計画体系は、2011年に誕生した現政権の下での整備が検討中の段階にある。整備が見込まれる体系としては、国家計画・経済開発省所管の国家総合開発計画体系(経済計画・政策分野別計画が中心の長・短期計画)と、建設省所管の国家空間開発計画体系のふたつがある。両体系一体化の意向もみられる。

行政体系

行政体系

(注)現在、連邦領は首都ネーピードーのみである。また、サガイン管区域内の1自治地域を除く全自治地域・自治地区はシャン州内にある。

資料:行政体系は2008年ミャンマー連邦共和国憲法、計画体系は国家計画・経済開発省及び建設省ヒアリング結果より作成

国土政策に関わる政府機関等

計画名又は行政分野 担当機関
国家総合開発計画(20カ年長期計画) 国家計画・経済開発省
短期五カ年計画
国家空間開発計画 建設省
ヤンゴン管区域総合開発計画 ヤンゴン管区域政府
ヤンゴン都市圏戦略都市開発計画
Strategic Urban Development Plan of the Greater Yangon

国土政策に関わる主要な施策

国レベルの社会経済計画の制度概要(国家長期計画及び短期計画)

他国の社会経済計画に該当するミャンマーの現行システムは、国家長期計画(現行計画は2001/02~2030/31年度の30カ年計画)と短期5カ年計画(計画期間は、長期計画を5年毎に分割)で構成されている。

2012年12月現在、国土政策に係る計画体系は、現長期計画(30カ年計画)が、策定からちょうど10年経過したことを機に、残り20年間を対象とする2030/31年度までの20カ年計画(国家総合開発計画)として全面見直しする予定で、国家計画・経済開発省により準備が進められており、計画づくりのコンサルタント役を国連開発計画(UNDP)が務め、都市的な視点が欠けぬよう国連人間居住計画(UN-Habitat)が助言することとなっている。計画の構成は、第1部が経済発展目標等のマクロ・フレームワーク、第2部が16の政策分野各々の分野別計画となることは概ね決まっているほか、第3部以降に地域(管区域及び州)別計画や特定地域の開発計画等が入る可能性がある。分野別計画は各関係省庁、地域別計画は、郡レベルでの議論を経て各管区域・州が立案したものを国家計画・経済開発省が取りまとめ、大統領が委員長を務める国家計画委員会に提出する。その後、国民会議で審議が行われる。

一方、短期計画は、第一次計画の1992/93 ~1995/96年度が4カ年計画、1996/97年度を初年度とする第2次計画以降第4次計画までは五カ年計画であった。2011/ 12~2015/16年度は第5次計画の計画期間にあたるが、2011/12年度、2012/13年度はそれぞれ単年度計画のみが国民会議で承認され、第5次計画の残り3年間の計画は、3カ年計画となる場合と、単年度毎の計画となる場合の双方の可能性がある。

国レベルの空間計画の制度概要

現在のミャンマーのフィジカルプランの基本法は、1951年制定の国家住宅・都市・農村開発法である。この古い法律の規定は、もはや今日の情勢に合うものでないことから、この法律を所管する建設省は、この法に替わる国家空間開発計画法の法案作成を進めている。2012年12月現在、この法案は、全国、地域(管区域及び州)、郡の3つの空間レベルの空間計画の方針、土地利用規制、開発許可基準等を内容としている。地域と郡の中間の行政レベルの県には、郡計画の取りまとめ役の役割を与える案となっている。建設省は、国家計画・経済開発省が策定する国家総合開発計画と空間計画を体系的に一体化することも視野に入れている。

ヤンゴン圏の2040年住宅開発計画案(建設省提案)

ヤンゴン圏の2040年住宅開発計画案(建設省提案)

資料:Department of Human Settlements and Housing Development (DHSHD), Ministry of Construction

ヤンゴン都市圏開発計画の概要

ヤンゴン市内33郡と市域外の隣接6郡の計39郡を対象に、2040年を目標年次とする、ヤンゴン都市圏開発計画(マスタープラン)の作成が、ヤンゴン管区域政府及びヤンゴン市開発委員会(YCDC)を協力相手先とした国際協力機構(JICA)の協力で進められ、2013年初旬にまとまる予定である(2012年12月現在の情報)。2011年末には、建設省からYCDCに対し、2040年の計画案が提案され、YCDCは、その提案を踏まえたYCDC案を2012年半ばに管区域政府に提出した。JICAのマスタープランは、このYCDC案に詳細な調整を加えているもの、すなわち、建設省案、YCDC案、JICAプランは、一連のものである。JICAプランでは、2012年現在約510万人のヤンゴンの人口が2040年に1000万人に達するとの予測のもと、外環状道路を整備し、複数のサブセンターを配置する将来都市構造が示される見込みである。

なお、ミャンマーでは、地方政府における都市計画専門職員の人材不足により、地方政府の都市計画は建設省が策定してきた。YCDCでは今日スタッフが育ち、ほぼ自らの手で計画がつくれるようになってきたが、依然建設省が支援を続けている。建設省の計画提案を受けたYCDC案の作成という、上記の計画作成手順は、こうした事情の反映である。

その他空間開発上、影響が大きい施策の例

成長地域と経済回廊の配置計画

成長地域と経済回廊の配置計画

資料:DHSHD

首都移転

2006年10月10日、ミャンマー政府は公式にネーピードー遷都を発表した。2001年に計画づくりが始まり、2003年に着工された首都移転は、2005年の竣工と同時に省庁移転が始まり、2006年3月に概ね移転完了した。

ネーピードー遷都の理由には、①国土中央に位置し、全国への統制やアクセスがしやすいこと、②豊かな穀倉地帯で気候も温暖なため、都市活動や居住の基盤が安定すること、③ヤンゴンは、サイクロン・津波等に脆弱で、被災すると政府機能に障害が出る恐れがあること――等があった。

交通面は、ヤンゴン・マンダレー間の高速道路開通に続き、2011年10月ネーピードー国際空港が完成した。商都ヤンゴンとの機能連携は、通信環境の整備や高速道路の改良等で改善を図るとしている。

ネーピードーの人口は約100万人に達したが、行政都市のため、将来人口はさほど増えないと予測されている。

成長地域と経済回廊

国家経済発展の牽引役として、成長地域と経済回廊が注目されており、国家計画・経済開発庁は、成長地域に経済特区(SEZ)を重点的に設ける考えを示している。建設省の成長地域と経済回廊の捉え方は右図の通りであり、成長地域(計画地)を8カ所挙げている。一方、国家計画・経済開発省は、ヤンゴン、マンダレー、タウンジー(シャン州の州都)の3カ所のみの名を挙げており(ただし今後増える可能性についても言及)、具体的な指定地域は未確定である。

2011年1月に制定された「ミャンマー経済特区法」に基づき、これまでにSEZの指定を受けているのはダウェー、ティラワ(ヤンゴン)、チャオピューの3カ所(右図上の臨海部の成長地域のうち、南側から順に1番目、2番目、3番目)である。これら3カ所のSEZは、国外からの今後の投資の中心地になるとみられている。

Daw Mie Mie Tin
  • 情報更新日:2013年3月3日
  • 寄稿者:Daw Mie Mie Tin(ミャンマー建設省人間居住・住宅開発局都市・地域計画課課長代理(建築家/プランナー))