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河川局

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記者発表

利根川水系等7水系に係る河川整備基本方針の策定について




<利根川水系等7水系の河川整備基本方針の概要>


 河川整備基本方針は、各水系における治水、利水、河川環境等の河川管理の長期的な方針を、総合的に定めるものである。その内容には、工事実施基本計画で記載されていなかった河川環境の整備と保全や維持管理等に関する方針も明らかにしているとともに、計画規模を超える洪水や整備途上段階での洪水による被害の軽減についても記載している。


 治水計画の基本事項でもある基準地点における基本高水のピーク流量、計画高水流量は、後志利別川、菊川、大分川、九頭竜川については、最新データも加えてその内容を検証した結果、既定計画を踏襲することとしている。
 利根川については、基準地点八斗島において基本高水のピーク流量を22,000m3/sとし、既定計画では洪水調節施設により6,000m3/sを調節し計画高水流量を16,000m3/sとしていたが、河川整備基本方針では洪水調節施設により5,500m3/sを調節し計画高水流量を16,500m3/sとした。同じく鳴瀬川では基準地点三本木での計画高水流量を3,100m3/sから3,300m3/sにした。九頭竜川については、九頭竜川本川の中角地点のみであった基準地点を、中角地点に加え、日野川の深谷地点、足羽川の天神橋地点をそれぞれ基準地点とした。
 高津川については基本高水のピーク流量を基準地点高津で4,200m3/sだったものを5,200m3/sに見直した。


 流水の正常な機能を維持するため必要な流量については、後志利別川、菊川、高津川については既定計画では定められていなかったものを新たな検討を行い記載した。利根川、鳴瀬川、九頭竜川、大分川については利水の現況、動植物の保護等を考慮し改定を行った。


7水系の河川整備基本方針の主な特徴的内容は次のとおりである。


○利根川(流域面積:16,840km2

 利根川は、古くから日本一の大河という意味を込め「坂東太郎」と呼ばれ、高密度に発展した首都圏を氾濫区域として抱えるとともに、その社会・経済活動に必要な多くの都市用水、農業用水を供給するなど、首都圏さらには日本の政治・経済・文化を支える重要な河川である。流域は1都5県にまたがり、流域内人口は日本の総人口の約10分の1にあたる約1,200万人に達している。このような状況を踏まえ、水源から河口まで一貫した計画のもとに河川の総合的な保全と利用を図る。
 災害の発生の防止又は軽減に関しては、利根川は流域面積が大きく支川も多いため防御すべき地域も多いことから、それぞれの地域で特性にあった治水対策を講ずることにより水系全体としてバランスよく治水安全度を向上させることが利根川水系の治水の基本であるという考え方のもと、現況の河川の安定状況も踏まえ、洪水をできるだけ河道で分担して処理するものとする。河道で処理できない流量については、上下流や本支川のバランスに配慮しながら、河道が有する遊水機能を一層増強し洪水を貯留するとともに、既設洪水調節施設の徹底した有効活用を図った上で、洪水調節施設を新たに整備する。また、氾濫した場合の壊滅的な被害が予想される区間について、計画高水位を上回る洪水流量による浸透・越水等に対して高い安全性を有する高規格堤防を整備する。
 基本高水のピーク流量は基準地点八斗島において22,000m3/sとし、既定計画では洪水調節施設により6,000m3/sを調節し八斗島地点の計画高水流量を16,000m3/sとしていたが、洪水調節施設により5,500m3/sを調節し同地点の計画高水流量を16,500m3/sとする。利根川から江戸川への分派については、利根川の取手地点の計画高水流量を10,500m3/sとし江戸川の松戸地点の同流量を7,000m3/sとするこれまでの両川のバランス関係を保持する。利根川下流部から東京湾への放水路については分派地点を布川地点の上流から下流に移し、印旛沼を調節池として活用しながら、分派量を1,000m3/sにする。小貝川からの合流量は田中調節池等の調節により本川の計画高水流量に影響を与えないものとする。
 八斗島地点上流においては、以下のような既設洪水調節施設の徹底した有効活用を図るとともに、洪水調節施設を整備し、洪水調節流量5,500m3/sを確保する。

・河道内調節池の掘削増など河道の有する遊水機能の一層の増強

・既存洪水調節施設の再開発による機能向上(利水容量の治水容量への振替も含めたダム群の連携・再編やダムの嵩上げ)

・洪水調節施設の治水機能を最大限に活かせるように気象予測や情報技術の進展等を踏まえたより効果的な操作ルールへの変更


 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、渇水時における地盤沈下の防止、河川環境の保全や近年の少雨化傾向にも対応した利水安全度の確保のため、既存施設の有効利用を含む種々の手法による水資源開発施設の整備とともに、関係機関と調整しながら広域的かつ合理的な水利用の促進を図る。
 また、広範囲な水需要地域への供給、渇水時における被害の最小化を図るため、上流から下流までの地形特性を踏まえた水資源開発施設の整備等により広域水融通ネットワークを構築し、水資源の有効活用による効率的な水運用を実施する。さらに利根川は流域が大きく、多くの流入支川や水利用があることから、河川の流況も踏まえつつ、河川流量を縦断的かつ時期的に的確に確保し管理するため、多地点での低水管理を実施する。


 利根川は、渓谷、高水敷、遊水地、湿地、礫河原、湖沼、干潟、ヨシ原等良好な景観を有し多様な動植物が生息・生育する豊かな自然環境があり、一方、都市内及び近郊に位置するため多くの人々がスポーツ、観光、自然観察に訪れるなど人とのかかわり合いが極めて高いことを踏まえ、現在の豊かな河川環境を保全する。このため流域の自然的、社会的状況を踏まえ、河川環境の整備と保全が適切に行われるように、河川空間の利用については自然共生型のものへ転換し、空間管理や水環境管理の目標を定め、地域と連携しながら地域づくりにも資する川づくりを推進する。


○後志利別川(流域面積:720km2

後志利別川は、その源を瀬棚郡今金町の長万部岳(標高972m)に発し、上流部で渓谷をつたい、美利河湖へ流れ山間部を蛇行し、下流部で今金町及びせたな町市街部を貫流し、日本海へ注ぐ自然環境豊かな清流河川である。
 過去に大規模な水害により甚大な被害が発生しており、近年でも、下流部の低平地で内水被害が発生している。
 このような状況を踏まえ、災害の発生の防止として、良好な河川環境の保全にも配慮しながら河道掘削、堤防の拡築等の対策を実施する。また、これまで8度水質日本一となった清流河川であることを踏まえ、水質が良好で多様な動植物が生息する後別利川の河川環境について、地域と連携しながらその保全に努める方針とした。


○菊川(流域面積:158km2

 菊川は、掛川市粟ヶ岳(標高532m)に発し茶の生産が盛んに行われている丘陵地に挟まれた低平地を蛇行しながら流下する河川である。低平地が広がる中流域は、度重なる浸水被害を軽減するため、かっての蛇行河川を捷水路に改修してきた。
 流域には約2割を占める内水域が広がり、観測史上最大となる昭和57年9月洪水では、内水域の浸水被害等流域全体に大きな被害を生じる出水に見舞われ、国安地点では、基本高水のピーク流量相当の洪水となり、また上流の加茂地点では、計画高水流量を大きく超過した。
 このような状況を踏まえ、昭和57年9月洪水の実績をカバーできるよう計画高水流量を一部変更した上で沿川地域を洪水から防御するために、堤防の新設、拡築、河道掘削及び護岸整備等を実施し、また内水域の浸水被害軽減については、関係機関と連携・調整を図りながら対策を推進する。
 また、「東海地震に係る地震防災対策強化地域」及び「東南海・南海地震防災対策推進地域」に指定されていることから、必要に応じて堤防・水門等の耐震対策等を講じる。


○大分川(流域面積:650km2

 大分川は、由布岳(標高1,583m)を源流とし、由布院盆地を貫流し、中流の峡谷部を流下した後、大分平野を経て別府湾に注ぐ河川である。下流部は、河床勾配が緩くなり支川七瀬川が合流するほか、低平地に人口・資産が集積する大分市街地が形成されていることから、氾濫した場合には大規模な被害が発生しやすい。
 沿川地域を洪水から防御するため、流域内の洪水調節施設により洪水調節を行うとともに、堤防の新設、拡築、河道掘削及び護岸整備等を行うことにより、計画規模の洪水を安全に流下させる。さらに、東南海・南海地震防災対策推進地域に指定されていることから、堤防の耐震対策等を講ずる。
 また、新たな水資源開発を行うとともに、広域的かつ合理的な水利用の促進を図るなど、各種用水の安定供給や流水の正常な機能を維持するため必要な流量の確保に努める。
 大分川の良好な河川景観を保全し、多様な動植物の生息・生育する豊かな自然環境を次世代に引き継ぐよう努める。下流部においてアユ、ウグイ、ヨシノボリ等の産卵場を保全するとともに、汽水域において多様な生物が生息する干潟やヨシ原の保全に努める。


○鳴瀬川(流域面積:1,130km2

 鳴瀬川流域は宮城県中央部の太平洋側に位置し、船形山(標高1,500m)に発し、古川市付近で人工河川である新江合川を合わせ大崎平野を貫流し吉田川と合流し太平洋へ注ぐ河川である。流域の土地利用は山地が約7割であり、約2割を占める水田は我が国有数の穀倉地帯となっている。
 吉田川と鳴瀬川の合流付近は急激に緩勾配となりまた周囲を山地に囲まれた閉鎖型氾濫地形を呈していることから氾濫被害が発生し易い地形であるとともに排水に長時間を有し、浸水が長期間に及ぶという特徴がある。同地区では昭和61年8月洪水で吉田川の左岸堤防が4箇所破堤し鹿島台町が甚大な被害を受けたため再度災害防止対策を実施しているが、さらに水害に強いまちづくりの実現に向けて二線堤等の事業も実施している。
 沿川地域を水害から防御するために、洪水調節施設の整備や新江合川の合流や鳴瀬川の豊かな自然環境に配慮しながら堤防の拡築及び河道掘削等を実施する。
 また、今後30年間に99%の高い確率で発生すると予想される宮城県沖地震に鑑み、地震・津波防災を図るため、堤防の耐震対策等を講ずるとともに防災拠点の整備を行っていく。
 鳴瀬川流域には歴史的構造物が多数残されており、後世に残す貴重な財産として保全するとともに、これまでの人々と鳴瀬川の関わりを考慮しつつ、豊かな自然環境や先人の治水及び河川利用の歴史を次世代に引き継ぐよう努める。このため河川環境の整備と保全が適切に行われるよう、空間管理等の目標を定め、地域と連携しながら施策を推進する。


○九頭竜川(流域面積:2,930km2

 九頭竜川流域は、九頭竜川、日野川、足羽川の3つの流域に大きく分かれ、下流部には県都福井市があり、九頭竜川、日野川、足羽川の3川に囲まれた区域に福井市の中心市街地が形成されている。平成16年7月には、足羽川流域を中心とした豪雨により足羽川で破堤するなどし、福井市街地等で甚大な被害が発生している。
 治水計画の基準地点について、日野川、足羽川は支川であるがその洪水防御対象区域に福井市街地があることから、九頭竜川本川の中角地点に加え、日野川の深谷地点、足羽川の天神橋地点をそれぞれ基準地点とした。
 沿川地域を洪水から防御するため、流域内の洪水調節施設により洪水調節を行う。その際、関係機関と調整しながら、利水容量の治水容量への活用をはじめとする既存施設の有効活用を図る。また、堤防の新設、拡築、河道掘削及び護岸整備等を行うことにより、計画規模の洪水を安全に流下させる。
 河川環境の整備と保全については、九頭竜川の良好な河川景観、清らかな水の流れの保全を図るとともに、多様な動植物の生息・生育する豊かな自然環境を次世代に引き継ぐよう努める。カマキリ(アラレガコ)の生息の場である中流部の瀬・淵の保全、アユなどの回遊性魚類の縦断的な生息環境の保全などに努める。


○高津川(流域面積:1,090km2

 高津川は平地に乏しく急峻な地形で、最下流において沖積平野が広がり島根県石西地域の中心都市である益田市を擁している河川である。昭和47年には既定計画を大きく上回る洪水により家屋浸水等の甚大な被害が発生している。
 この昭和47年洪水を踏まえ、治水計画を見直し、基本高水のピーク流量を4,200m3/sから5,200m3/sに改訂し、洪水調節施設、堤防の新設、拡築、河道掘削等を行い、洪水を安全に流下させる。
 また、アユを始めとする多くの魚類を育み、緑の山々と清冽な水とが調和した自然豊かな河川景観を保全、継承するとともに、地域の個性と活力、歴史や文化が実感できる川づくりを目指すため、関係機関や地域住民と共通の認識を持ち、連携を強化しながら、治水・利水・環境に関わる施策を総合的に展開する。


(参照) 河川局ホームページ https://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/gaiyou/seibi/index.html


利根川水系河川整備基本方針 (PDFファイル 863KB)
後志利別川水系河川整備基本方針 (PDFファイル 140KB)
菊川水系河川整備基本方針 (PDFファイル 177KB)
大分川川水系河川整備基本方針 (PDFファイル 147KB)
鳴瀬川水系河川整備基本方針 (PDFファイル 122KB)
九頭竜川水系河川整備基本方針 (PDFファイル 170KB)
高津川水系河川整備基本方針 (PDFファイル 189KB)


(参考)
○河川法(昭和39年法律第167号)(抄)
 (河川整備基本方針)

第16条  河川管理者は、その管理する河川について、計画高水流量その他当該河川の河川工事及び河川の維持(次条において「河川の整備」という。)についての基本となるべき方針に関する事項(以下「河川整備基本方針」という。)を定めておかなければならない。
2 (略)
3 国土交通大臣は、河川整備基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、社会資本整備審議会の意見を聴かなければならない
4〜6 (略)



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