1.都市計画のマスタープランの充実
(1)「整備、開発又は保全の方針」の拡充
現行都市計画制度においては、一体の都市として総合的に整備、開発及び保全すべき区域である都市計画区域のうち、市街化区域及び市街化調整区域に区分(線引き)された都市計画区域については、各区域の「整備、開発又は保全の方針」が定められ、これが事実上、都市計画のマスタープランの役割を果たしている。しかしながら、線引きされていない都市計画区域については、このようなマスタープランが存在しない。また、市街化区域及び市街化調整区域の「整備、開発又は保全の方針」についても、そのマスタープランとしての位置付けが法律上明らかになっていない。このため、この「整備、開発又は保全の方針」を拡充し、線引きされない都市計画にまでその対象を広げるとともに、マスタープランとしての位置付けを法律上明確にして、よりその機能を高めることが必要である。
<具体的な制度構成のあり方>
○ 従来の、市街化区域及び市街化調整区域の「整備、開発又は保全の方針」を拡充し、すべての都市計画区域を対象にした「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」(仮称。以下「都市計画の方針」と略称する。)を創設する必要がある。この都市計画の方針は、都市計画区域を指定した都道府県が、都市計画手続を経て定めることとし、都市計画区域内の都市計画は、都市計画の方針に即して定められなければならないことを法令上明確化する。なお、具体的な制度構成は、以下の点に留意しつつ検討すべきである。
・都市計画の方針には、都道府県決定の都市計画に関する事項か、市町村決定の都市計画に関する事項かを問わず、当該都市計画区域を整備し、開発し、保全する上で重要な事項を規定することとすべきである。また、都市計画の方針に定めるべき項目については、法令上明確にすることが望ましい。
・地球温暖化の防止等地球環境の保全に資するよう環境負荷の少ない街づくりをどのように進めるか、都市計画として各種の社会的課題(廃棄物関連施設の立地のあり方、都市の防災性の向上、高齢者・障害者を含めたノーマライゼーションの実現等)にどのように対応するかといった内容についても、各地方公共団体の判断で、必要な範囲で規定しうるものであることが必要である。
・都道府県は、都市計画の方針を定める際には、当該都市計画区域の状況のみならず、隣接・近接する他の都市計画区域の状況や都市計画区域外の状況を踏まえ、広域的観点から定める必要がある。
・都市計画の方針については、後述する市町村から都道府県への都市計画の案の申し出等の手続を通じ、市町村の意向(市町村マスタープランが定められている場合は、その内容)が、できるだけ反映されるようにする必要がある。特に、市町村決定の都市計画に係る事項を都市計画の方針に定める場合は、市町村の意向が十分に反映されなければならない。
・従来、市街化区域、市街化調整区域それぞれの性格に着目して、各「整備、開発又は保全の方針」に定められていた都市再開発方針、防災再開発促進地区等については、市街化区域と市街化調整区域を定める前段階である都市計画の方針の中では定められないこととなるため、それぞれ市街化区域や市街化調整区域において定められる独立した都市計画として再構成する必要がある。
(2)市町村マスタープランの策定促進
一方、平成4年に創設された「市町村の都市計画に関する基本的方針」(市町村マスタープラン)は、市街化区域及び市街化調整区域の「整備、開発又は保全の方針」に即して、市町村が、その行政区域の中で、自ら決定する都市計画の基本方針として定めるものであり、それぞれの市町村の自主性を極力尊重するため、手続、内容ともに自由度の高いものとして制度構成されている。この市町村マスタープランについては、既に600以上の市町村で策定されており、都市計画への住民参加を促進する契機としても効果的に運用されていることから、今後とも上述の基本的な枠組みを維持し、引き続きその策定及び事後点検を促進する必要がある。
なお、従来の「整備、開発又は保全の方針」との関係と同様、市町村マスタープランは、都市計画の方針に即して(矛盾しないように)定めなければならないものであるが、都市計画の方針の策定に先立って市町村マスタープランが定められている場合は、その内容が、都市計画の方針にできるだけ反映されるべきである。
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