4.自然的環境や景観など都市環境の保全のための制度の充実
(1)風致地区による地域の実情に応じたきめ細かな規制
近年、都市部における緑地の消失が進み、従前まとまった形で存在していた緑地が小規模に分散してきており、これをきめ細かく保全する必要が高まっている。緑地に限らず、貴重な自然的環境や美しい景観は、たとえ小規模なものであっても、可能な限りその保全を図る必要がある。
これに対応し、緑地等の保全を視野に入れて土地利用規制を行う手法である風致地区について、小規模なものについては、都市計画の決定権限及び規制内容を定める条例の制定権限を都道府県から市町村に委譲し、地域の実情を熟知した市町村が主体となって、きめ細かく緑地等の保全を図ることを可能とすることが必要である。さらに、地域の実情に応じ、きめ細かな規制を行うため、風致地区毎に、当該風致地区の維持に関する方針を策定し、それに応じて許可基準を柔軟に設定できるようにする必要がある。
(2)非線引き都市計画区域のうち用途地域が定められていない区域における特定の用途の建築物の規制の導入
現行の未線引き都市計画区域においては、必要に応じて用途地域が定められることとなっているが、開発行為、建築行為が単発的に、また密度的にも疎にしか行われず、目指すべき市街地像が明確でない地域については、用途地域を指定してすべての建築物の用途を規制するまでの必要性はなく、いわゆる「白地地域」として、特段の土地利用規制が行われていない。しかし、近年のモータリゼーションの進展等を背景に、相対的に土地利用規制が緩いこの地域に、店舗、ホテル、レジャー施設、パチンコ屋等の建築物が立地し、騒音、振動、交通混雑、煤煙等の発生により、当該地域の良好な環境の形成又は保持の観点から支障が生じる場合が増加している。
このような状況を踏まえ、また、非線引き都市計画区域を制度上位置付けるのに併せて、非線引き都市計画区域のうち用途地域が定められていない区域において、地域の実情に応じ、当該区域において良好な環境の形成又は保持の観点から立地が望ましくない用途及び規模の建築物を特定し、その立地を制限する、新たな土地利用規制手法を導入することが必要である。
<具体的な制度構成のあり方>
○ 非線引き都市計画区域のうち用途地域が定められていない区域における新たな用途規制手法として「特定用途制限地域」(仮称)を創設することが必要である。都市計画制度体系上は、用途地域を定めてすべての建築物の用途(規模を含む)を規制するまでの必要はないが、良好な環境の形成又は保持の観点から、特定の用途の建築物のみを制限する必要がある場合に定める新たな地域地区と位置付ける(決定主体は、非線引き都市計画区域の用途地域の決定主体が市町村であることとの整合性を図り、市町村決定とする。)こととすべきである。
なお、都市計画では制限すべき用途の概要を定めることとし、具体的な建築制限は、建築基準法に基づく条例で定めて、建築確認で当該条例の制限の内容を担保する方法によることが適切である(現行の特別用途地区と同様の整理)。
(3)用途地域が定められていない区域における容積率、建ぺい率規制の見直し
用途地域が定められていない区域における容積率規制、建ぺい率規制については、建築基準法によって、容積率400%、建ぺい率70%を原則としつつ、それぞれ100%、50%まで規制を強化できる仕組みとされている。しかし、用途地域が定められていない区域は、その区域の特性からして、あるいは、将来の用途地域の円滑な指定を行うため、一般的には低密度な土地利用におくことが相当と考えられ、400%、70%という相当高い数値を原則とする現行の仕組みは、必ずしもそれに十分に対応しうるものとはなっていない。
このため、用途地域が定められていない区域における容積率、建ぺい率について見直し、第一種低層住居専用地域並みの厳しい規制(容積率50%、建ぺい率30%を下限)もメニューとして追加し、土地利用の状況に応じて必要な規制を行うことにより、良好な市街地の環境を確保することを可能とすべきである。
(4)廃棄物の処理施設や処分場の積極的な都市計画決定
廃棄物処理施設(最終処分場を含む。)については、都市生活において必要な基盤施設であり、必要十分な数、規模、能力の施設が確保されなければ、都市環境の保持に重大な支障をもたらすおそれがある。このため、一般廃棄物処理施設であると産業廃棄物処理施設であるとを問わず、特に公益性の高いものにつき、都市施設として積極的に都市計画決定していくべきである。特に、産業廃棄物処理施設については、一般廃棄物処理施設と異なり、排出者である民間事業者の責任において処理されるものとの考えから、これまでほとんど都市計画決定がされていない。しかし、産業廃棄物処理施設についても、廃棄物処理行政と十分な連携をとりつつ、広域的行政主体である都道府県が主体となって、関係する市町村や住民の理解を得て都市計画決定を行い、その整備を進めていくことが望まれる(従来の決定主体は市町村)。
(5)自然的環境や景観など都市環境の保全のための総合的取組
都市における貴重なストックである緑地等の自然的環境、田園景観や美しい街並み等の維持を図り、全体として良好な都市環境を保全していくためには、上述した風致地区制度の改正、いわゆる白地地域での建築物の用途規制の導入、容積率、建ぺい率等の規制の土地利用の状況に応じた見直しなどに加え、現行の緑地等の保全に関する諸制度の活用、前述した開発許可基準の条例による上乗せなどを積極的かつ総合的に運用していくことが必要である。さらに将来的には、後述するとおり、財源措置や税制のあり方を含めた総合的な方策を講じていく必要があり、今回の措置はその第一歩ととらえるべきである。
○「V.具体的に講ずべき施策」のフロントページに戻る 2.線引き制度及び開発許可制度の地域の実情に応じた柔軟性の確保 |