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クリエイティブコーディングからLOD3.3の国宝松江城、ドローン飛行や環境シミュレーターなど3D都市モデル活用の多彩な事例が登場

「PLATEAU LT 09」レポート

2025年11月5日、PLATEAUの3D都市モデルを活用するユーザーによるライトニングトークイベント「PLATEAU LT 09」がオンライン形式で開催された。10組の発表者が登壇し、それぞれ5分間のプレゼンを実施。PLATEAUを用いた作品制作の裏側やPLATEAU活用の新たなアイデア、取り組みなどが紹介された。

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大内 孝子(Ouchi Takako)
編集:
北島 幹雄(Kitashima Mikio)/ASCII STARTUP
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進行・解説は久田智之氏(株式会社アナザーブレイン 代表取締役/みんキャプ運営委員会 委員長)、西村智氏(自治医科大学、PLATEAU AWARD 2024イノベーション賞受賞「3D都市世界体験型リハビリ・トレーニング」)、小関健太郎氏(PLATEAU AWARD 2023グランプリ「PlateauKit + PlateauLab」)がコメンテーターとして参加した。

進行とコメンテーターを務めた久田智之氏(左上)、西村智氏(右上)、小関健太郎氏(下)

PLATEAUを使ったVRChatワールドづくり(うっぴー氏)

最初に登場したのは、うっぴー氏。作品「虎ノ門深海水族館」でPLATEAU AWARD 2024エモーション賞を受賞したが、今回は「PLATEAUデータを活用したVRChatワールドづくり」として、その制作の裏側を発表した。

「虎ノ門深海水族館」、VRChat上に深海相当の200メートル級の水槽があるワールドを作成した

土日に科学館のボランティア活動を行っているうっぴー氏。そこでの活動がワールド制作のきっかけになった。「虎ノ門深海水族館」はVRChat上に作成した虎ノ門ヒルズのビルを丸ごと水槽にしたワールド。アバターとして自由に歩き回ることができる。深海のスケール感を実在のビルを使うことでリアルに体感できるというコンセプトだ。

うっぴー氏は制作の工程を4つに区切って紹介した。

PLATEAUのfbx形式のデータは横断歩道やガードレールも含めて詳細なモデルになっており、VRChatに配置するだけで綺麗な見た目のワールドになるが、虎ノ門ヒルズ森タワーの細部や水深を表示するリングを表現するためにBlenderでの編集を行った。次に、それらの素材をUnityに読み込みマテリアルに設定していくのだが、対応が必要だった点としてビルのUV展開(3Dモデルを2Dの平面状に展開すること)を挙げた。うまくいかない部分を手動で調整したという。

ビルを水槽にするというコンセプトを表現するために、虎ノ門ヒルズの4つのビルは透け感のあるグラデーションのマテリアルに設定し、他の建物や道路標識を黒系の単色にし、世界観を統一した。ただし、東京タワーだけはそのまま残した。また、ワールドに展示している画像や動画の転載については、権利者のJAMSTECなどに許諾を得た。この許諾確認は、自分にとって勇気が必要な行動だったと振り返った。

久田氏は、海の中のものを地上のビルに持ってくるという発想はなかなか思いつかないとコメント。西村氏は、PLATEAUの活用を考えるときに、建物をリアルに表現することを追求する方向性もある一方で、柔らかい表現の場としての活用法もあるのだと感じたと述べた。小関氏は技術的な細かいハードルを丁寧にクリアされているところがすごく印象的だったと述べた。

PLATEAUとモバイル3Dスキャンを活用した取組等の方向性(藤井友也氏)

藤井氏は、兵庫県デジタル戦略課で地域情報の3D化に取り組んでいる。きっかけは、2020年のProjectPLATEAUの開始、加えてiPhoneProシリーズにLiDAR機能が搭載されたこと。スマホ等のモバイル端末を活用して地域の情報をデジタル化し、共有・体験する取り組みができないか、そうした取り組みを通じて若い世代が地域に興味を持つきっかけにできないか、と考えたのだ。

まず、どういうことができるのかをテストするために、iPhoneのLiDARアプリ「Scaniverse」で撮影したデータとPLATEAUのLOD2データを組み合わせ、Clusterなどのデジタル空間に再現した。

事例:姫路市の3D都市モデルとiPhoneの3Dスキャンデータを組み合わせた

さらに、兵庫県デジタル戦略課の施策として、地元の大学生等がスマートフォンでスキャンしたデータをデジタル空間にアップロードするという形で、誰もが参画できる施策を推進している。

取り組みの方向性

「普段使っているスマホでこういうことができる」という気づきから、体験の共有につなげたいという。具体的な事例として、昨年度は兵庫県立大学(協力:社会情報科学部大野暢亮教授)の学生による地元の国宝建造物の3Dスキャンや、県職員による県公館のデジタル化を試行。今年度は、兵庫県立大学などと連携して、3Dスキャンのワークショップを行ったり、ドローン空撮+地上からの3Dスキャンによりキャンパスの3D化に取り組むなどしているという。

兵庫県立大学と連携した取り組み(令和7年度)

今後の方向性として、モバイル3Dスキャンの取り組みを継続しつつ、PLATEAUとモバイル3Dスキャンを連携させて活用し、学生が地域とつながり、地域をより楽しく学ぶきっかけにしていきたいと述べた。

久田氏は、PLATEAUの3D都市モデルの中にこうした“手撮り”したものが入ってくることで人が暮らしているシーンが連想でき、見え方が変わってくると感想を述べた。西村氏は、こうした行政の取り組みがいろいろな場所に広がるとよいと述べた。小関氏は、LiDARスキャンを活用することで、自分たちが生活している空間を新たな体験の素材にできるという可能性を感じたと述べた。

PLATEAUの3DモデルをWebGL/WebGPU製のクリエイティブコーディングの素材として使用した話(長谷川巧氏)

長谷川氏はクリエイティブコーディングの素材としてPLATEAUの3D都市モデルを使用する際の制作ノウハウを発表した。Webフロントエンド実装の仕事の傍らクリエイティブコーディング作品を制作しており、PLATEAUのデータを使うキッカケはJR大阪駅前の商業施設「KITTE大阪」の企画公募だったという。ただ、応募事態は、当時新しくできた施設であったKITTE大阪のPLATEAUデータがまだなかったため、断念したという。

長谷川氏が制作したクリエイティブコーディング作品(https://unshift.co.jp/labs/plateau-tokyo-tower/

東京タワー周辺の建物データを読み込み、変形、色を変えるなどの表現を行った初期作品に対し、今回、建物が現れるアニメーションや、クリック操作によってグリッド状/ボクセル状に形を変えるギミックを実装するなどブラッシュアップを施した。パラメーターがマウスホールドや時間経過により変化し、様々な動きと表情を見せる作品に仕上がっている。

描画した輪郭線と通常の描画結果とを合成することで独特の「カッコいい」表現を実現(https://unshift.co.jp/labs/plateau-v2-tokyo-tower/

Webブラウザ(Three.js)での3D表現の負荷を軽減し、滑らかに動かすために次のような工夫が取られている。

・PLATEAUSDKforUnityで書き出す街の範囲を制限。さらに、ドローコール(描画命令)の回数を削減することで負荷を軽減
・属性情報は使用せず、建物、道路、橋、土地の起伏のデータのみを使用。また、Blenderで道路と土地の起伏を一本のオブジェクトにマージすることで、描画処理を軽減
・建物ごとに付与した値で個別での制御、表現を行う
・シェーダープログラムを活用し、建物の動き、シマ模様、色の付け方などの動的な表現はシェーダー側で処理する

PLATEAUSDKforUnityで書き出し範囲を制限し、ポリゴン数を減らした

久田氏は、こうした表現のためのワークショップがあれば興味を持つ人も多いのではないかとコメントした。西村氏は、快適にWebで動かすには、こうした技術やノウハウが必要になってくると実感したと述べた。小関氏は、各地域の新しい魅力の発信に活用することで、PLATEAUの価値を増やせるのではないかと述べた。

PLATEAU都市データを用いた、ワークショップ参加体験のフィジタル証明システムの試作(うどん/川北大洋氏)

うどんこと川北大洋氏は、都市計画とブロックチェーン、AI、3Dプリンタといったデジタル技術を組み合わせ、ワークショップの体験や学びをフィジカル(物理的)に持ち帰るためのシステムを試作した。モチベーションとなったのは、自らが多くのワークショップに参加する中で感じた「参加者が得た体験や学びが参加者の頭の中にしか残らず、物理的に持ち帰るものがない」という問題意識である。なお川北氏は、現在大学院にて都市計画(空き家問題)を研究している。

都市の一部を持ち帰る「フィジタル(Phygital)」

「フィジタル(Phygital)」は、PLATEAUの建築データと地形データから成るモデルを3Dプリントで生成し、立体の参加証として持ち帰ることができるシステム。3Dプリントの成果物の側面に証明書となるブロックチェーンによるデジタル署名(NFT:Non-FungibleToken)を刻印することで、唯一無二の参加体験であることが明示できる。

フィジカルアイテムの試作工程

まず、該当のPLATEAUのデータをライノセラス(Rhinoceros)やBlender等でデータ編集し、3Dプリント用のモデルを準備する。別途作成したNFTをウォレットへ送付し、ウォレットから得たデジタル証明書(秘密鍵等の証明コード)をQRコードにして3Dモデルの側面へ刻印する。

3Dプリントは1区画あたり1〜2時間程度で印刷可能。安価なフィラメント(1kg1,900円)を使用しており、コストを抑えられるという。

今後、参加者の体験により密接に結びついた証明システムを目指すという。例えば、街歩きのワークショップでは歩いた軌跡を印字し、参加者が自分の体験した道や路地裏の記憶を、家に帰った後でも鮮明に思い出せる仕組みづくりをしていきたいとした。

久田氏は、アイデアの発端はワークショップの体験をどう持ち帰るかというところだが、それ以外にもいろいろな可能性がありそうでワクワクすると述べた。西村氏は、参加した個人個人の“その日の体験”にひもづいていることに、とてもロマンを感じると述べた。小関氏は、ワークショップの参加体験の証明というアイデアが非常によく、PLATEAUの活用というだけではなくてNFTの活用法という点でもかなり面白いと感想を述べた。

都市モデルを活用した道案内AR(hacha氏)

XRプラットフォーム「STYLY」のエンジニアであり、個人でアーティストとしても活動するhacha氏は、都市AR道案内を発表した。背景となったのは、南青山で開催したグループ展で、フォトグラメトリーと3Dスカルプティングで作った3Dプリント造形作品「自我像」を出展したこと。これをせっかくなら「もっとでっかく展示したい」と考え、「STYLY」のモバイルアプリを使って表参道の交差点のど真ん中に自身の作品を表示した。

その際に、表参道駅から展示会場まで道案内するARも作成。表参道交差点の付近500m圏内でアプリを起動すると、ギャラリーに向かって作品が行進する道案内モデルを作成した。駅の地上に出てシーンを起動すると、先のモデル(のARデータ)が道を沿うように表示され、ユーザーがそれに従って歩けばギャラリーまで辿り着ける。

hacha氏が制作した道案内AR。道案内をするのはhacha氏作の3Dプリント造形作品

技術的には、現実の特定箇所にARコンテンツを展開できるSTYLYの機能「STYLYWorldCanvas」とPLATEAU、そしてGoogleGeospatialAPIを組み合わせている。設定された座標付近でアプリを起動し、カメラで周囲をかざすことで正確な位置合わせを行い、現実の建物などにモデルをぴったりと表示させることができる。

当初は、PLATEAUデータを参照してモデルを配置しようとしたが、高さ情報をうまく取得できず、GeospatialCreatorを活用し、Unity上で都市データを表示して位置合わせを行った。Unityのパッケージ「Cinemachine」(映画撮影でカメラを動かすような擬似的な操作ができる)を利用することで、道沿いにパスを作成し、そのパスに沿ってモデルを滑らかに動かす表現を実現している。

久田氏からは、PLATEAUデータの高さ情報について補足説明があったほか、展示会に関連するものが道案内してくれるアイデアが楽しいとのコメントがあった。西村氏は、普段使っている道案内はテキストだけとかシンプルなものが多いので、実際に動くものが案内するのもよいと感じたと述べた。小関氏は、道案内には経路検索が絡むのでアルゴリズムを考えるとシンプルにならざるを得ないが、決め打ちでここからこれまでの道案内であれば、案内の仕方を工夫するという形で面白い体験を作る余地があると思ったと述べた。

安全な箱の中で、渋谷上空・ドローン飛行(森氏(箱庭ラボ))

合同会社箱庭ラボでシミュレーション技術を中心に開発を行っている森氏は、ドローンシミュレーター「箱庭ドローン」とPLATEAUの3D都市モデルを連携させ、渋谷上空を舞台に、安全な飛行シミュレーションを行った事例を発表した。

その動機は、渋谷のビル群を上空から見てみたいという興味と、ドローンが三次元(3D)を自由に移動する面白さだ。また、現実的な課題として、技術やコスト、そして法規制や安全性の問題(天候、衝突の危険性など)が障壁となり、ドローン飛行は非常に難しい。ハードウェア、ファームウェア(PX4など)、地上局システム(QGCなど)が必要であり、何より飛行場所の制約が大きい。

ドローン飛行の課題

ドローンシミュレーター「箱庭ドローン」

「箱庭ドローン」は、Unity上に取り込んだPLATEAUのデータをベースに、緯度経度情報を実際の地理情報と同期させ、ドローンの地上局用ソフトウェアで飛行ルートを設定し、シミュレーター上でドローンを動作させるという仕組みだ。実際に飛行シミュレーションを行ったところ100メートル上空でもビルにぶつかることが判明するなど、ビルとの距離感や安全な飛行経路を三次元で確認できることがわかった。

今後は、より複雑な自然環境の影響(ビルの周りで発生するビル風、飛行に影響を与える電波強度、海域での潮の流れなど)をシミュレーションに取り込む予定だ。ドローンがこれらの複雑な環境下で正常に動くか、また動かなかった場合にどうなるかを検証し、より安全で現実的なドローン運用技術の開発を進めていくという。現在、神戸港を舞台に、地図データと電波強度データ、乱気流のシミュレーションデータを組み合わせて検証する取り組みを進めている。

久田氏は、自動車やバイクの教習ではシミュレーターが進んでいるが、ドローンもそうなっていきそうだと述べた。西村氏は、街のデータでも上空となると、まだデータ化されていないものもたくさんありそうだと感じたとコメントした。小関氏は、風のデータなどが入ってくるとより本格的になってくるし、例えばそれをVRでリアルタイムに体験できたりするとますます面白そうだと述べた。

国宝松江城をLOD3で整備しました(松江市narai氏)

松江市は、国宝・松江城を全国でも珍しい高精度なLOD3.3で整備している。島根県松江市まちづくり部都市政策課のnarai氏はその計測プロセスと活用計画を紹介した。

松江市の3D都市モデルは、市の全域をLOD1で、中心市街地とその周辺をLOD2で整備しているという状況である。その中で、松江城は市のシンボルであり、特に松江城の天守は複雑な構造を持つため、LOD3(外壁面、窓、ドアなどの再現)を超えたLOD3.3で整備しようと考えたのである。

松江城の3D都市モデル

具体的には、既存の航空レーザー計測だけでは上空からのデータしか得られないため、不足する細部データを補うためにドローンを使ったUAV写真撮影で天守全体のテクスチャを取得し、UAVレーザー計測で屋根形状を把握。さらに、LidarSLAMを用いた計測で軒下や梁などの細部を補完した。そして、これらのデータを統合してLOD3.3モデルを構築したという。

作業フローのイメージ

今後、整備した高精度の松江城LOD3.3モデルを景観事前協議などへ活用することを目指すという。というのも、松江城近隣に高層マンション建設計画があり、それを含め「松江城の何が見えるか」を細かく設定するよう景観基準の見直しが検討されている。松江城の周囲に「視点場」を設定し、新規建設の事前協議の際、3D都市モデル上で新築建物がその視点場からの景観基準(松江城の何が見えるか)を満たしているかどうか、窓口で業者と確認できるようにするということになる。LOD3.3の精巧さを生かした景観シミュレーションにより、業務の効率化を図ることができるとする。

西村氏から、ドローンを使ったUAV写真撮影等詳細なデータを撮る意味は大きいが、一方でマネタイズも含めて、うまく回るスキームがあると良いとのコメントがあった。小関氏は、普通の建物は細かく作っても改装で変わってしまうことも多いが、歴史的建造物は細かく作り込むことでまさに永続的な価値が生まれると思うと述べた。

PLATEAU CityHack Challenge 2025に参加した話(OEC氏)

OEC氏は、2025年8月に行われたハッカソン「PLATEAU CityHack Challenge 2025」に参加し、オーバーツーリズムの解決を目指した作品「LIVING CITY MIRROR」を制作した。今回のLTでは、その制作工程について発表した。

「LIVING CITY MIRROR」は、観光客の混雑分散を目指し、「現在の町の今を表示する」ことで観光客の流れを最適化することを目的としたシステムだ。

コンセプトは、都市の「今」の可視化

時間帯ごとの混雑状況の予測を表示するほか、YouTubeライブカメラなどを地図上に表示し、現在の状況(人出、天気、トイレ、バス情報等)を確認できる。また、空いている観光地を優先的に巡った観光客に対し、(「徳を積む」というコンセプトで)「Zenトークン」をプレゼントするインセンティブシステムを取り入れた。空いている場所を巡ることでレベルが上がり、「わびさびマスター」になるというアイデアも構想していたが、これは実装が間に合わなかった。

PLATEAUのほかに核になる技術はブロックチェーン技術を活用した位置証明だ。「誰が」という個人情報なしに「いつ、どこにいたか」という事実だけを証明するゼロ知識証明(ZK)を用いて、プライバシーに配慮しながら改ざん不可能な信頼性の高い情報で運用する。

ハッカソンでは京都市を舞台に開発した。PLATEAUの3D都市モデルを地図上にプロットし、空いている時間帯を色で可視化して表示している。

快適な場所は地図上だけではなく一覧でも表示

OEC氏はハッカソン当時を振り返って、オンラインとオフラインのハイブリッド開催でDiscordを通じたコミュニケーションが可能だったこと、中間で自治体職員のメンターからのフィードバックが得られた点が非常に役立ったと述べた。

久田氏は、最近ではバスの混雑度も出るようになっているので、徐々にそうした整備が進めば、よりシミュレーションしやすくなるだろうと述べた。西村氏は、観光情報は情報密度に差があり手薄なところはデータを取りにいかないといけないが、それも取り組みの一歩と感じたと述べた。小関氏は、Web3といった技術が意味のある形で使われており、それも価値のひとつになると述べた。

PLATEAU-2D(鈴木裕之氏)

鈴木裕之氏は、2025年9月開催のハッカソン「PLATEAU Hack Challenge in Tokyo」で制作した「PLATEAU-2D」の制作過程を発表した。「PLATEAU-2D」は、3D都市モデルのデータを活用し、道路沿いの建物を横から見た立面図に特化して表示するシステムだ。

基本的な仕組みはこうだ。ユーザーが地図上でスタートとゴールを設定してルートを決定すると、その道路沿いに存在する建物が自動的に抽出され、横スクロールの2Dビューとして描画される。技術的には、GeoJSONを利用し、独自にパース処理を実行して、道路沿いの建物を立面図として投影。あえて完全な3Dではなく、HTML5のキャンパスを使って2Dにこだわった描画をしている。

コア機能「3D→2D」、ルートを設定すると2Dの建物が描画される

制作の出発点は、PLATEAUのユースケース成果物である「3D都市モデルを利用したネットワーク生成ツール」にあった。このツールが道路データをノード(点)とルート(線)に分解してくれる点が非常に有用だと感じたのである。また、街を歩く際、人が最も見たりアクセスしたりするのは建物のファサード(正面部分)であるという点に特化することで新しい面白さが生まれると考えた。もちろん、2D横スクロールゲームへの愛(「マリオ大好き」という個人的な動機)もあったという。

2Dビューの建物と地図上の3D建物は連動し、建物の用途属性に基づいたスタイルが、2Dの建物デザインに反映されている。また、2Dビュー側でクリックした建物が3D地図上でも表示される。探索モードの他、ピザや新聞を配達して遊ぶゲームモードもある。

探索モード

今後、ユーザーによる編集・デザイン設定、および、作った内容をWebで公開・共有できる機能を搭載する予定とのこと。アップロードした画像を編集して建物モデルに適用するなど、一部の機能はテスト的に実装済みだ。将来的には、都市計画で使われる連続立面図への応用を検討しており、AI技術と組み合わせることで実用的なツールになる可能性を探っているという。

久田氏は、これはもうパッと見たときにいいなと思った作品だとコメント。西村氏は、2Dだからこそ想像する部分があると再発見したと述べた。小関氏は、上からではなくて、横の2Dのデータは普通はない、そこを形にされたのがすごいと指摘した。その上で、2Dの操作性はより広い層に触ってもらえる可能性があると述べた。

まちスペース:PLATEAUデータによる環境シミュレーション(Hiro_OGI氏)

Hiro_OGIこと、応用技術株式会社の廣澤邦彦氏は、PLATEAUの3D都市モデルとWeb技術を組み合わせたクラウドベースの環境シミュレーションサービス「まちスペース」を紹介した。環境コンサルタントとして環境シミュレーション業務に携わってきた廣澤氏は、従来のアプローチによる環境シミュレーションの課題を次のように捉えている。

・データ準備が大変
・専門的な知見が必要
・予測結果が平面で表示されることが多く分かりにくい

「まちスペース」は、PLATEAUによる正確な3Dの建築物データとWebGL(Cesium等)技術の発展を組み合わせることで、クラウドベースで行った環境シミュレーション結果をPLATEAUのデータの中で3Dで可視化することを目指す。

環境シミュレーションをPLATEAUデータで可視化できる「まちスペース」

2023年11月にリリースし、主な機能は日影計算(平面および建物壁面での計算に対応)、騒音(音響)計算。騒音計算では建設機械など音源を設定し、騒音の影響範囲を予測が可能。また、騒音対策として遮音壁の効果計算にも対応している。年内を目処に、ビル風(風況)シミュレーション機能を搭載予定だ。ユーザーが所有する計画建物のCADデータ(IFC等)を取り込み、その建物を反映させた計算を実行するというもの。

騒音解析の結果例

現在はデータの計算係数などを制限しつつ無償で提供しているが、今後、機能を追加していく中で有償化も検討しているそうだ。都市のデジタルツインとして、大規模開発の事前の検討や意思決定に貢献することを目指すという。

久田氏は、騒音問題が近年問題になっていることから、それがシミュレートできるところがいいと述べた。西村氏は、音や振動など、3D都市モデルで応用することができるさまざまなファクターがまだ多くあることに気付かされたとコメントした。小関氏は、市民と行政のコミュニケーションという場面にも広がっていく可能性を感じたと述べた。

毎回レベルアップする一方、より手軽な発表も歓迎

本イベントの総括として、最後に久田氏、西村氏、小関氏から、次のようなコメントがあった。

久田氏:過去、私も1回目か2回目のLTで発表して、その後、MCをさせていただいていますが、毎回の発表レベルが上がってきていて、本当にすごいと思っています。ただ、完成度が上がっているうれしさと同時に、LTをもっと手軽な発表の場としても使ってほしいという思いもあります。LTなので、敷居は高くありません。「こんなのを作ってみた」とか「これ、見てほしい」という方も、今後のLTにぜひ参加してください。

西村氏:技術的に、多くの方がスクラッチ(ゼロベース)でコーディングからされていることに驚きました。また、多くがPLATEAUのデータだけでなく、ライブカメラ、天候、通信環境データ、GeoJSONなど、多様な外部情報とリンクすることで価値を生み出そうと模索されていることが印象的でした。まだまだやれる課題があるということを再発見した感じです。本当にありがとうございます。

小関氏:自分もLTで発表したいなと思っていたのですが、今回はコメントする側になりました。いろいろな発表をお聞きして、私も非常に刺激になりました。次は、私も発表したいと思います。

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