bz25-04

建築計画ボリューム可視化事業 

実施事業者 株式会社くわや
実施場所千代田区 / 中央区 / 港区 / 新宿区 / 文京区 / 台東区 / 品川区 / 中野区 / 杉並区 / 豊島区 / 北区 / 荒川区 / 板橋区 / 足立区 / 江戸川区
実施期間2025年11月~2026年1月
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3D都市モデルの属性情報(都市計画決定情報、道路、土地利用、建築物)をもとに、選択した敷地の建築可能なボリュームを自動で算出するシステムを開発。建築計画ボリュームの概略を簡易に検証可能となることで、不動産事業の初期計画段階のDX化を目指す。

本プロジェクトの概要

建築計画に係る法令は数が多く、またそれぞれで地方自治体の管轄窓口が異なるため、各法令情報の取得と確認作業に多大な手間が発生しており、これは建築士や事業者のみならず、地域の円滑な都市開発や都市更新を阻害する社会課題となっている。土地の有効利用の検討に際して、敷地ごとに異なる複雑な法令制限下の検証を行うニーズはあるが、建築計画ボリュームの検証は専門的知識を持つ者が専門ソフトを用いて行なうため、検証自体の簡易化や即時確認を実現することが困難である。多くの不動産事業者は建築計画ボリューム検証の外注を前提としている一方で、土地の売買が確定しない段階ではコストにより検証を見送らざるを得ないこともあり、その見送りに起因した機会損失がある。

本プロジェクトでは、3D都市モデルの属性情報をインプットして東京都23区の広域における敷地諸条件を解析し、その結果に基づいて建築計画ボリュームを検討可能とするソリューションを開発する。建築設計事務所や不動産事業者の実務に有用な仕組み化を目指し、自動算出による時間・費用削減効果を土地有効利用の検討協議における期間やコストの効率化や、建築計画検証作業時間の効率化に関する検証を通じて、社会実装可能性を評価する。

実現したい価値・目指す世界

近年、高度経済成長期に作られた建物の老朽化や気候変動に伴う災害リスクの高まり、都市の防災力向上の必要性を背景に都市開発・都市更新のニーズが高まっている一方、建築計画に要する時間の長さが着手の遅れにつながる状況が生じている。建築計画には、建築基準法や都市計画法等の法令に加え、地方自治体独自の条例など、複数の規制が複雑に関係しており、これらの管轄窓口は建築・防災・まちづくり等の各部局に分散しているため、法令情報の確認作業に多大な手間が発生している。この非効率な確認プロセスは、建設プロジェクトの長期化やコスト増大を招く要因となっており、地域の円滑な都市開発や老朽化した建物の更新を阻害する社会課題となっている。建築計画ボリューム検証のみでも、地方公共団体各課の建築指導課や都市計画課、道路課等の他、土木事務所や国道事務所への確認を要することもある。また平面計画検証の際には地方公共団体各課の公園緑地課や水道課の他、清掃事務所、電気ガス会社等への確認も必要となる。地方公共団体ウェブサイト上で一部情報を入手できる環境は整いつつあるが、都市計画法や建築基準法の基礎知識を有しない者では情報の正しい取捨選択および活用が難しい。

現代の建築設計の環境は高度化が進み、建築設計専門のCADソフトを用いた設計を行なうことが一般的である。

しかし、設計の前提となる土地情報は、既存のデータベースなどから実務に即したCADデータを入手することは困難な場合が大半である。そのため、敷地ごとに費用をかけて測量を行なうか、紙ベースの資料や解像度の低い地図情報を基に、設計者の手作業でCADデータを作成することが一般的であり、時間と労力を要している。

不動産事業者は、その土地でどの程度の規模の建築が計画可能か検証を行なったうえで売買等の検討を行なうことが多いが、その建築計画ボリューム検証や建築平面計画検証は建築士への外注を前提としており、その都度外注が発生することで不動産取引のコストアップ要因となっている。また、建築計画ボリューム検証は、関係法令の複雑さゆえに専門的な知識を要するため、簡易に検証を実施することが難しく、検証を実際に行なう敷地や条件は限定的となるほか、計画可能なボリュームを即時確認することは困難である。

2024年度の「3D都市モデルを利用した建築計画ボリューム検証出力サービス」では、全国の都市の一部範囲(那覇市、茅野市、三鷹市それぞれ4km2)でのシミュレーション開発を行い、システムにおける3D都市モデルに含まれる建築計画上の制約に関わる情報をもとに、選択した敷地の建築可能なボリュームを自動で算出する機能の有用性の検証を行った。システムの精度検証として、専門の既存ソフトウェアでの検証結果、建築士による従来手法の検証結果、実際の法令規制内容との比較を行い、不動産事業の初期計画段階において活用可能な精度を確認することができた。これにより、3D都市モデルを活用することで建築計画ボリュームの検証や出力が可能なことを確認し、東京都区部等にみられる様々な高度地区の条件や日影規制の細かな位置指定がない地域では個別の条件設定を加えることで対応可能なことを確認できた。しかしながら、事前に3D都市モデルのデータを変換しシステム内で保持する仕組みであったことから、利用可能な範囲が限定的であるという課題や、東京都区部等でみられる様々な高度地区の条件や日影規制の細かな位置指定を情報で取得する方法の課題が残った。

今回の実証検証では、3D都市モデル及び国土地理院地図を基に作成した3Dマップや、対象敷地選択機能から任意に指定した敷地に対し、建築可能なボリュームの検証を行うことで、従来、不動産事業者等が建築設計事務所に依頼し、法令確認や敷地形状・接道条件のCADデータ化を経て実施していた一連の作業の自動化を実現した。これにより、建築設計事務所や不動産事業者における作業時間および費用の大幅な削減を可能とした。

本システム自動化に関するフローは、ユーザー側で敷地を選択あるいは描画後に、システム側で該当箇所の緯度経度情報等から該当する3D都市モデルの都市計画情報データをサーバーから取得し法令を確認、周辺の接道状況を3D都市モデルの道路情報データをサーバーから取得したうえで幅員を算定、一連の工程後にデータをCAD出力することを可能としており、従来の作業を3D都市モデル活用により自動化を行っている。

本開発では昨年のシステムを改修し、東京23区内の与条件を読み込む機能を実装、当エリアでの検証について従来の作業から上述の自動化を実現した。

その他、昨年度事業では実装をしていない「敷地形状の調整」や「諸条件の調整」、「建物形状の一例の出力」を実装することで、ユーザー側で実際に行いたい条件設定を実現するとともに「高層建物における日影規制」に対応し、中高層建物においても適正な算定を可能とした。

本ユースケースでは建築計画ボリューム検証に係る時間や労力の削減を図るものであるため、その建築計画可能なボリュームの検証結果を利用する者と、検証を行う者である、不動産事業者および建築設計事務所をターゲットとしている。これらのユーザー該当する民間事業者にアンケート・ヒアリングを行い、本システムの価値を検証する。

3D都市モデルと地理空間情報を基盤に、敷地選択から法令確認、建築可能ボリューム算定、CAD出力までの一連の検証プロセスを自動化することで、従来は専門家や多大な時間・費用を要していた建築検討を誰もが迅速かつ客観的に行える環境を実現し、土地の有効利用や高度利用へ貢献、不動産・建築分野における業務効率化と新たな価値の創出を目指す。

対象エリア(赤枠内:千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・台東区・品川区・中野区・杉並区・豊島区・北区・荒川区・板橋区・足立区・江戸川区)の地図(2D)
対象エリア(赤枠内:千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・台東区・品川区・中野区・杉並区・豊島区・北区・荒川区・板橋区・足立区・江戸川区)の地図(3D)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

本システムは、3D都市モデルの都市計画決定情報データや道路情報データ、土地利用データ、建築物データを保有・参照することで、従来は不動産事業者等が建築設計事務所へ依頼していた、法令確認、敷地形状・接道条件のCADデータ化、ならびに任意の敷地における建築可能ボリュームの検証といった一連の作業を、システム上で自動化することを可能とする。

本プロジェクトでは、2024年度に開発した「3D都市モデルを利用した建築計画ボリューム検証出力サービス」をベースに、以下の機能を実装することで、東京都23区内での建築計画可能なボリューム検証サービスへ拡張した。

(1) 都市計画決定情報の構築機能
(2) 東京都23区内の与条件取得・読み込み機能
(3) 敷地条件の調整・設定機能
(4) 中高層建物に最適化した制限算定機能

本システムのフローは以下のとおりである。

ユーザーが建築可能ボリュームを検証したい対象敷地を選択または描画した後、システムは当該箇所の緯度経度情報等を基に、サーバー経由で該当する3D都市モデルが属性情報として持つ都市計画情報データを取得し、法令確認を行う。あわせて、周辺の接道状況についても同様に道路情報データを取得したうえで幅員を算定する。これら一連の工程を経て、検証に用いるデータを従来業務でも利用しているCAD形式での出力を可能とし、従来手作業で行っていた作業を3D都市モデルの活用により自動化する。

昨年度事業で開発した「3D都市モデルを利用した建築計画ボリューム検証出力サービス」のシステムを改修し、東京23区内の与条件を読み込む機能を実装、当エリアでの検証について従来の作業から上述の自動化を実現している。その他、「敷地形状の調整」や「敷地条件の調整」、「建物形状の一例の出力」を実装することで、ユーザー側で実際に行いたい条件設定を実現するとともに「高層建物における日影規制」に対応し、中高層建物においても適正な算定結果を出せるようにしている。

(1) 都市計画決定情報の構築機能
都市計画決定情報の構築機能については、3D都市モデルの都市計画決定情報を本サービスのシステムで取り扱いやすい形式(JSON, GeoJSON形式)へ変換を行ったほか、建築基準法の条文や東京都の条例を参照し制限情報等を加算、東京都都市計画決定情報GISを利用し3D都市モデルと組み合わせることで双方の不足を補うデータを構築した。

(2) 東京都23区内の与条件取得・読み込み機能
東京都23区内の与条件取得・読み込み機能については、昨年度事業ではクライアント内部で保持したデータのみであったものを、上述の都市計画決定情報データをサーバー経由でAPI取得できるものとし、東京都23区の膨大なデータ量をローカルで保持することなく情報の読み込みが可能なシステムとした。
また、都市計画決定情報のみではなく、3D都市モデルから建築物(LOD1)や道路情報(LOD1)のジオメトリ形状も取得できるものとし、幅員の算定や隣接建物との関係を示すビジュアライズとして利用した。

(3) 敷地条件の調整・設定機能
敷地条件の調整・設定機能については、ユーザーの操作に従い、敷地形状を柔軟に設定できると共に、都市計画の適用条件の補正を行える機能を構築した。これにより、実際の敷地条件との整合を取れるアウトプットを算出可能とした。

(4)中高層建物に最適化した制限算定機能
中高層建物に最適化した制限算定機能については、日影規制に関するボリューム算定において、昨年度事業では低層~中層建築物(高さ31m程度以下)に最適化した制限算定であったものを、中高層建築物(高さ10m程度以上)向けの算定方法を新たに実装することで、幅広い規模や条件による算定に対応できるシステムとした。

本システムの有用性検証として、有識者(建築設計事務所・ゼネコン等)を対象とした体験会を実施し、被験者のアンケートとヒアリングを通して有用性の評価を行った。

システムを使用しながら対象敷地の選択方法を説明している様子【体験会】
自動算定された建築可能なボリュームの建物形状条件を変更し、精度や算定スピードを再確認している様子【体験会】
選択した敷地で自動算定された建築可能なボリュームの精度や算定スピードを確認している様子【体験会】

検証で得られたデータ・結果・課題

本実証実験では、システムの有用性検証として、建築計画可能なボリュームの検証を行う民間事業者である建築設計事務所2社、ゼネコン1社の有識者を対象に、建築可能ボリューム検証の自動化β版アプリケーションの体験会とアンケート・ヒアリング調査を実施した。

検証項目は、以下2つとし、定量・定性的な評価を行った。

(1)シミュレーションの精度と性能 
(2)シミュレーションによる従来業務の代替可能性
アンケート・ヒアリングは、合計23名(建築設計事務所:17名、ゼネコン:6名)の体験会参加者に対して実施した。

建築可能ボリューム検証の自動化β版アプリケーションの体験会では、参加者に対し操作説明び実機による操作体験を行った後、参加者へシミュレーションの精度と性能に関するアンケート・ヒアリングを行った。参加者の多くは、過去に実務で検討実績のある敷地を対象とし、従前の設計結果と本システムによる算出結果を比較することで、精度と性能の評価を行っていた。

その結果、シミュレーションの精度の評価においては、実務の初期検討段階において十分に活用可能であるとの回答が全体験者の52.1%から得られ、体験者の半数以上からその有用性が確認された。また操作性について、システム全体の使いやすさが全体験者の82.6%から評価され、操作の直感性が高いと多くのコメントが得られたことで、従来の検証業務と比較して作業負荷の大幅な軽減に寄与することが実証された。一方で、より緻密な検証業務への適用に向けて、詳細な関連条例への対応や天空率の自動算出機能を求める要望が挙げられ、これらの機能拡充およびさらなる精度向上が今後の課題と考えられる。

操作感や機能の充足についての質疑応答を行っている様子【体験会】

シミュレーションの精度の性能の検証同様、建築可能ボリューム検証の自動化β版アプリケーションの体験会にて、参加者に対しシミュレーションによる従来業務の代替可能性に関するアンケート・ヒアリングを行った。シミュレーションによる従来業務の代替可能性については、全体験者のうち82.3%が好感触を示し、本システムの導入により専門家への外注や内部工数が削減できるとの高い期待が寄せられた。特に、これまで高度な専門知識と時間を要していた法令確認や建築可能ボリュームの算出が自動化されることで、非専門者であっても迅速に初期検討を行える点が評価された。これにより、意思決定の迅速化と外注コストの抑制が可能となり、ビジネスモデルとしての有効性が確認できた。

ボリューム検証結果

今後の展望

本プロジェクトで開発した建築可能ボリューム検証の自動化β版アプリケーションは、操作体験会の参加者から総じて高い評価を獲得し、業務効率化およびコスト縮減の観点でその有用性が実証された。特に、本システムの直感的な操作性と算出スピードに対する評価は高く、建築設計事務所や不動産事業者が行う初期段階の検証業務において、業務負担の軽減およびコスト削減に大きく寄与することが確認できた。

本年度のサービス段階による体験を通して「敷地の精度」や「道路台帳との整合」の重要性が確認されたほか、「天空率」や「総合設計制度」の機能拡充の必要性が示唆された。体験者の層は建築設計や都市計画関係の従事者の割合が大きかったが、その中では「東京都23区に限らない全国的な拡張」や「条例対応」については比較的要望度合は小さかった。本年度を通して見えてきた課題の序列をつけ、サービス提供開始や機能拡充をしていきたいと考える。

短期的には早期にβ版をリリースし、提供後のフィードバックおよび本年度の実証検証で得られた知見を整理したうえで、製品版リリースに向けた開発を進める。本サービスを通じて、各種法令情報の取得・確認作業に多大な手間がかかることによって生じる「地域の円滑な都市開発や都市計画を阻害する社会課題」の解決に貢献することを目指す。