都市構造評価ツールの社会実装
| 実施事業者 | 一般財団法人計量計画研究所 / 株式会社福山コンサルタント / エアロトヨタ株式会社 |
|---|---|
| 実施協力 | 栃木県宇都宮市 / 群馬県前橋市/埼玉県蓮田市 / 埼玉県松伏町 / 愛知県安城市 / 徳島県徳島市 / 福岡県北九州市 / 福岡県久留米市 / 佐賀県武雄市 / 熊本県玉名市 |
| 実施場所 | 栃木県宇都宮市 / 群馬県前橋市/埼玉県蓮田市 / 埼玉県松伏町 / 愛知県安城市 / 徳島県徳島市 / 福岡県北九州市 / 福岡県久留米市 / 佐賀県武雄市 / 熊本県玉名市 |
| 実施期間 | 2025年11月〜12月 |

3D都市モデルを用いた都市構造評価ツールを開発。持続可能な都市構造の実現に向け、「まちづくりの健康診断」と連動した評価指標の算出・可視化により、実効性のある計画立案・見直しを支援する。
本プロジェクトの概要
人口減少・高齢化が進む中、地域の活力維持と生活機能の確保により、あらゆる人が安心して暮らせるよう地域公共交通と連携したコンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりを進めることが求められている。このコンパクト・プラス・ネットワークの実現に向けては、各地方公共団体において立地適正化計画を策定し、具体的な施策や達成目標を設定している。また、立地適正化計画を継続的に改善・発展させていくためには、施策の効果や都市構造の変化を客観的・理論的に把握することが重要である。一方で、立地適正化計画策定の根幹となる都市構造評価指標の算出においては、施設情報、統計情報、交通情報をはじめとした、多様な都市関連情報の性質に関する深い理解と、それらの情報を組み合わせて課題抽出や施策検討を行う高度な分析力が求められる。こうした専門性の高さが障壁となり、地方公共団体で都市構造評価指標の算出業務を内製化することは容易ではなく、業務の多くを建設コンサルタント等の外部専門家に委託しているのが実情である。その結果、地方公共団体側の意図や地域特性が十分に反映されにくく、計画・施策推進における精度の不十分さ、業務効率の低下、委託コスト負担の増大といった課題が生じている。
本プロジェクトでは、2024年度に開発した「都市構造評価ツール」を基盤とし、マップ表示の正確性向上、カスタマイズ機能の充実、対応データの拡充を図り、地方公共団体職員が施策の効果や都市構造の変化等をより把握しやすい環境を整える。加えて、国土交通省が作成する「まちづくりの健康診断」と連動した評価指標を算出可能とすることで、データ整備や効果的施策の抽出などを容易にし、立地適正化計画の運用・評価・改善のプロセスをより効果的・効率的に駆動させるツールへと発展させる。さらに、地方公共団体職員を対象とした体験会やヒアリングを実施し、改善後の「都市構造評価ツール」の有用性や汎用性を評価するとともに、都市計画関連業務の支援ツールとしての社会実装可能性を検証する。

実現したい価値・目指す世界
人口減少や高齢化が急速に進行する社会においては、特に地方都市において、医療や福祉・商業等の生活機能を持続的に確保すべく、地域公共交通と連携した街づくり「コンパクト・プラス・ネットワーク」が推進されている。コンパクト・プラス・ネットワークの実現に向けては都市全体の構造を俯瞰しながら、医療や福祉施設・居住区域の最適化を図る必要があり、その指針を示すガイドラインである「立地適正化計画」に基づいた迅速な施策検討・実行が求められている。
立地適正化計画の策定・運用過程では、都市構造の現状分析や課題抽出のために多種多様なデータが必要となる。一方で、必要なデータの種類や収集方法が十分に標準化されておらず、データの集計・可視化にはGIS等の専門的な分析環境や知識が求められるため、地方公共団体での内製対応は容易ではなく、外部委託に依存するケースが多い。この結果、委託コストの負担や、分析内容及び前提条件に関する情報連携のためのやり取りに時間を要している。
さらに、集計や可視化を外部委託としている場合、可視化の観点や整理の切り口が地方公共団体内で十分に共有されにくく、現状分析や課題抽出の段階から、関係部局を交えた議論を柔軟に深めることが難しくなる。こうした業務構造は、コストや時間といった表面的な負担に留まらず、課題抽出の精度や計画検討全体の効率性を阻害する要因ともなっている。
2024年度の「3D都市モデルを活用した都市構造評価ツールの開発」では、3D 都市モデルを活用した都市構造評価指標の分析・可視化システムを開発した。3D都市モデルが保持する多様な属性情報を計算過程に活用することで、従来必要としていたデータの統計加工・指標算出工程の一部を代替するとともに、3D都市モデルを活用した可視化環境を備えることで、多様な指標を分析目的ごとに直感的に理解・分析可能とした。
なかでも、多くの都市構造評価指標において流用される圏域居住人口については、居住人口推定アルゴリズムを開発し算出に用いた。3D都市モデルから集計した建築物の延床面積を基にメッシュ人口を案分することで、算出精度の向上と算出方法の統一化が図られ、算出結果への信頼性向上と地域間での比較検証を容易にした。
また、宇都宮市職員を対象とした実証実験を通じて、業務内製化による委託コストや計画策定・関係者調整に要するリードタイムの削減、立地適正化計画の効果の可視化による合意形成の促進、都市計画・施策の品質向上といった業務効果に加え、ユーザビリティの観点からも本ツールの有用性を検証した。その結果、いずれの観点においても、参加者から総じて高い評価を得た。
一方、立地適正化計画に係る業務での活用に向けては、「対応データの拡充」と、「分析者以外への情報伝達の容易化」の二つの観点から改善が必要であることが示唆された。
対応データ拡充の観点では、隣接する地方公共団体も含めた各種データの可視化による市域を超えた都市構造の把握や、各評価指標に関連する地方公共団体独自の保有データとの連携が重要となる。2024年度の開発では、実証都市の都市構造評価指標の算出に必要なデータに限定してインプット対応を行っていたが、エビデンスとしての有用性を高めるためには、広域的な分析や地方公共団体独自の保有データも含めた関連性の分析が必要であるとの指摘が得られた。
また、分析者以外への情報伝達の容易化の観点では、内製化に伴う業務効率化に向けて、分析条件や分析結果の解釈について、担当者間で共通理解を形成することを支援する機能が求められる。具体的には、都市構造評価指標の可視化画面において、集計条件及び結果を正確に理解可能とするための表示や操作性の改善が考えられる。2024年度の実証では、既存業務の効率化余地の確認を目的として、立地適正化計画の策定または改定業務を行う上で必要となる各種作業(現状の把握・分析、資料作成、職員教育、担当者間の引継ぎ、発注手続き)に関する作業時間や作業負担の軽減可能性について検証した。その結果、施策・企画等の立案や現状把握・分析、資料作成など、個人単位で完結する作業については、時間や労力の削減が期待できるという意見が多かった。一方、担当者間の引継ぎ等、他者との協調を要する業務に関しては、システムや評価指標の共有、分析条件の伝達等に一定の工数を要することへの懸念が示された。
本プロジェクトでは、国土交通省が定める「まちづくりの健康診断」(2025年度に取組開始)で定義される都市構造評価指標について、関連データの収集、データ集計・可視化までを標準化することで、専門知識を有さずとも容易に評価指標や都市構造の変化を把握することができ、その後の現状分析や課題抽出、対応方針の検討、合意形成等の効果的な実施を支援するためのツールを開発する。本システムは、「都市構造評価指標の算出機能」と「算出された評価指標の可視化機能」によって構成され、都市構造評価指標は国土交通省が保有する「まちづくりの健康診断」と整合させることにより、都市計画関連業務における有用性を高める。
2024年度の実証実験に参加した地方公共団体職員の意見・要望等を踏まえ、「都市構造評価指標の算出機能」側では、①数値レンジのカスタマイズ機能、②地方公共団体の独自データである「都市機能誘導施設」のインプット機能、③誘導区域を変更する場合の指標算出機能を開発し、「算出された評価指標の可視化機能」側では、④隣接する地方公共団体の都市構造の可視化、等のツール更新等が行えるようにシステムを改修することで、立地適正化計画の管理・運営を含め、より包括的かつ実践的な都市計画業務を遂行しやすい環境を整える。また、国の指針への適合として、⑤「まちづくりの健康診断」の評価指標の定義や算出方法を反映する。
誰もが容易に「まちづくりの健康診断」を行える「都市構造評価ツール」の社会実装によって、都市計画関連業務の効率化やコスト縮減、ステークホルダー等との合意形成の円滑化といった価値を生み出し、継続的な改善と実効性向上を通じて、コンパクト・プラス・ネットワークの早期実現を目指す。

(左上:宇都宮市,右上:北九州市,左下:久留米市,右下:前橋市)

(左上:安城市,右上:徳島市,左下:蓮田市,右下:玉名市)

(左:武雄市,右:松伏町)

(左上:宇都宮市,右上:北九州市,左下:久留米市,右下:前橋市)

(左上:安城市,右上:徳島市,左下:蓮田市,右下:玉名市)

(左:武雄市,右:松伏町)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材
本プロジェクトでは、立地適正化計画検討業務における都市構造評価指標の算出業務を支援する「都市構造評価ツール」の開発を行う。本ツールは、2024年度に実施された「3D都市モデルを活用した都市構造評価ツールの開発」プロジェクトにおいて開発されたシステムを基盤とし、昨年度の実証結果を踏まえた社会実装に向けた追加要望への対応、及び国土交通省が定める「まちづくりの健康診断」の指標への適合を中心に、機能拡張、改修を行うものである。これにより、従来は建設コンサルタント等への外部委託が中心となっている都市構造評価指標の算出業務について、地方公共団体職員による内製化を支援するとともに、内製化を通じた現状分析や課題把握の精度向上、業務効率化及びコスト削減への寄与を目指す。
都市構造評価指標の算出業務においては、施設情報、統計情報、交通情報等、多様な都市関連データの特性を踏まえた高度な理解に加え、これらの情報を組み合わせて課題抽出や施策検討を行う分析力が求められる。このような専門性の高さが障壁となり、地方公共団体において当該業務を内製化することは容易ではなく、多くの地方公共団体では建設コンサルタント等の外部専門家への委託に依存しているのが実情である。その結果、地方公共団体側の意図や地域特性が十分に反映されにくく、計画・施策検討における精度の不十分さ、業務効率の低下、委託コスト負担の増大といった課題が生じている。
これらの課題を解消することを目的として、本システムは「都市構造評価指標の算出機能」と「算出された評価指標の可視化機能」の二つの機能群によって構成されている。
昨年度開発済の機能のうち、算出機能における主要機能としては、「各種データ作成機能」や「建築物モデル(LOD1)へのデータ付与機能」が挙げられる。各種データ作成機能では、250mメッシュポリゴンデータと年度別国勢調査メッシュ人口データを取り込み、250mメッシュ単位での年度別人口及び将来推計人口データを作成し、GPKG形式で保持する。加えて、施設関連データ、交通関連データ、財政関連データ等の都市関連情報を統合的に取り込み、同様にGPKGデータとして管理している。また、居住人口の推定精度が計画評価の妥当性や説明性に大きく影響するとの認識の下、昨年度の開発において、3D都市モデルの建築物モデル(LOD1)が保持する延べ床面積を用いた居住人口推定アルゴリズムを開発・実装している。
可視化機能においては、QGISのインタフェースを基盤とし、各評価指標の経年推移についてはグラフ表現を、特定年度における地域特性については3D都市モデルに重畳した地図表現を採用している。経年推移の分析では、多様な指標群を分析目的に応じて直感的に理解・比較できるよう、選択した他指標のグラフと一覧化して表示可能なUIを設計した。また、特定年度の地域特性分析においては、選択された評価指標と関連性の高いデータのみを優先的に表示するとともに、地図の拡大率に応じてデータの表示・非表示が自動的に切り替わる仕様とすることで、地域特性や傾向を把握しやすい設計としている。
本年度は、昨年度に開発した都市構造評価ツールを基盤とし、立地適正化計画の検討や都市構造評価指標の算出業務において、より実務に即した活用が可能となるよう、機能の拡張及び改善を行う。昨年度の開発及び実証を通じて、都市構造評価指標の算出や可視化を行う基盤は一定程度整備された一方で、社会実装や実務での活用を見据えた場合、いくつかの残課題が明らかとなった。
具体的には、「対応データの拡充」と、「分析者以外への情報伝達の容易化」 の対応が挙げられる。対応データの拡充については、隣接する地方公共団体も含めた各種データの可視化による市域を超えた都市構造の把握や、各評価指標に関連性の高い地方公共団体独自の保有データ(都市機能誘導施設)との連携が重要となる。また、分析者以外への情報伝達の容易化の観点では、内製化の進展に伴う業務効率化を見据え、分析条件や分析結果の解釈について、担当者間で共通理解を形成することを支援する機能が求められる。
これらの2024年度の実証結果を踏まえた対応に加え、新たに定められた国の指針との整合を図る観点から、「まちづくりの健康診断」への適合対応を進める。以下に、本年度に実施する主な追加開発機能を示す。
1.数値レンジのカスタマイズ機能
本機能は、評価指標ごとに表示・判定に用いる数値レンジ(区分境界、階級数、上限下限等)を任意設定し、それを保持することができ、自治体規模や地域特性に応じた相対評価を可能にする。これにより、地域の実態・実状に即した分析を効率的に支援する。技術的には、指標算出値(生値)と可視化用の分類ロジック(閾値)を分離し、UIで設定した閾値をメタデータとして保持してレンダリング時に適用する方式で実現する。指標計算を再実行せずに即時反映でき、試行錯誤の速度と説明の納得感を高める点で最適である。
2.「都市機能誘導施設」のインプット機能
本機能は、自治体が独自に定義する「都市機能誘導施設」をインプットデータとして取り込むことができるように「各種データ作成機能」を拡張する。これにより、地方公共団体が策定する立地適正化計画と整合した分析が可能となり、実務での活用性と説明力を高めることができる。技術的には、他のインプットデータと同様に、施設ポイントデータ(shape形式)をGPKG形式に変換して保持・集計するETL処理(抽出・変換・格納)を用いる。共通データとの互換性を保ちつつ地方公共団体の裁量を吸収でき、横展開を行う上でも最適である。
3.誘導区域変更時の指標算出機能
本機能は、居住誘導区域・都市機能誘導区域を変更した場合に、対象範囲に応じて都市構造評価指標を再算出し、変更前後の差分を迅速に確認できる。区域案を複数比較し、根拠ある区域設定や見直し検討を効率化する。技術的には、地方公共団体が独自に作成した区域案ポリゴンデータを3D都市モデル建築物モデル(LOD1)と空間結合し、対象集合を更新したうえで建築物単位に付与した居住人口を再集計する。重い前処理はキャッシュし即時性を確保することで、区域案の試行錯誤が前提となる業務に最適な実装である。
4.隣接地方公共団体の都市構造可視化機能
本機能は、隣接自治体の都市構造(人口分布、施設等)を同一画面・同一尺度で表示し、行政界を越えた都市圏としての課題把握や比較を可能にする。これにより、行政界を超えた生活圏や土地利用等の実態を踏まえた広域連携の検討根拠を示しやすくなる。技術的には、隣接自治体データを同一座標系・同一形式で読み込み、境界を跨ぐ表示でも凡例・レンジを統一し、広域調整で重要な「同条件比較」を担保できる点で最適である。
5.「まちづくりの健康診断」への適合対応
本対応は、国土交通省が2025年度から取組開始を予定している「まちづくりの健康診断」の指標定義・算出方法を本システムに反映する。これにより、国土交通省の制度・指針との整合性が確保され、説明可能性と客観性を高めることができる。技術的には、指標定義と算出式を構造化管理する設計により、仕様変更にも柔軟に対応でき、客観性と継続性を両立できる点で最適である。
以上のとおり、本プロジェクトでは、昨年度開発のシステムを基盤としつつ、社会実装及び国の指針への適合を見据えた機能拡張を行うことで、立地適正化計画の検討業務や都市構造評価業務の内製化と現状分析・課題把握の精度高度化を支援する。
本システムの検証として、圏域人口算出アルゴリズムの有効性を確認するための精度検証と、立地適正化計画の策定・運用において有効に活用できるかを客観的に確認するための有用性検証を実施した。

検証で得られたデータ・結果・課題
本システムの実証実験としては、圏域人口算出アルゴリズムの有効性を確認するための真値(DID人口)比較等による精度検証と、立地適正化計画の策定・運用において有効に活用できるかを客観的に確認するための10都市の地方公共団体職員を対象としたアンケート調査及び有識者ヒアリングによる有用性検証を実施した。
「圏域人口算出アルゴリズムの精度評価」については、本システムに実装した「延べ床面積を用いた建築物への人口貼り付けアルゴリズム」によって算出される圏域人口の精度向上効果について評価を行った。具体的には、国勢調査の全数調査に基づく把握精度が高い「DID人口」を真値とし、本システムで算出した建築物単位の人口データに基づく数値との誤差率や、従来のメッシュ単位の人口データに基づく数値の誤差率と比較した誤差低減幅を基に評価を行った。
検証の結果、真値との平均誤差率は検証対象10エリア平均で約0.81%(目標値:5%以内)であり、従来手法からの誤差低減幅も検証対象10エリア平均で約4.96pt(目標値:0pt以上)となった。このことから、本システムに実装した「延べ床面積を用いた建築物への人口貼り付けアルゴリズム」によって、これまで土地利用状況に関わらず面積で案分していた圏域境界のメッシュ人口を、住宅の立地状況を踏まえて案分できるようにしたことで、圏域人口の算出精度が向上し、施策判断の妥当性や説明性の観点において3D都市モデルが有効であることが示された。

「本ツールの有用性検証」については、ツール利用者の視点とツール供給者の視点で検証を行った。利用者の視点では、体験会に参加した地方公共団体職員を対象に実施したアンケート調査を基に、「業務の高度化」、「業務の効率化」、「コスト削減」、「ユーザビリティ」の四つの観点から検証を行った。また、供給者の視点では、学術機関の有識者へのヒアリングを通じて、本ツールの将来的な展開・普及等の観点から検証を行った。その結果、本ツールは都市構造評価の算出業務をはじめとする立地適正化計画の検討業務において、従来の業務手法を補完・高度化する可能性が評価された。一方で、本ツールの活用を広く普及・定着していく上での課題についても明らかとなった。
「業務の高度化」については、評価指標やデータ収集方法を標準化することで、都市構造の現状把握や課題抽出が行いやすくなり、分析の一貫性や再現性が向上する点が高く評価された。特に、「まちづくりの健康診断」と整合した指標体系を用いた分析が可能となったことで、分析結果の妥当性や説明力が高まり、EBPMの基盤強化につながるとの期待が示された。一方で、可視化結果を踏まえた分析や判断には一定の専門的知見が必要であり、学習支援や事例共有と組み合わせた活用が重要であるとの指摘もあった。
また、隣接する地方公共団体に関するデータや地方公共団体の独自データを活用できるようになることで、地域特性を踏まえた、より実態に即した分析が可能になるとの評価が得られた。共通指標による分析に独自データを重ね合わせることで、施策と都市構造変化の関係を多面的に検証でき、施策の実効性向上が期待される。一方、データ形式の違いや管理方法の差異を踏まえ、汎用性と柔軟性を両立した運用ルールの整理が今後の課題として示唆された。
さらに、3D都市モデルを用いた分かりやすい可視化により、分析担当者以外の職員や関係部局との情報共有が容易になり、庁内での共通認識形成や議論の活性化に寄与する点も評価された。言葉や数値による説明に比べ、都市構造や課題を直感的に共有できることで、論点が明確化し、現状分析・課題抽出の精度向上につながると整理されている。ただし、可視化結果があれば必ず合意形成が円滑化するわけではなく、解釈や施策への落とし込みには経験が必要であるとの慎重な意見も見られた。
「業務の効率化」については、外部委託が前提となっている地方公共団体が多い現状から、職員の作業時間削減といった直接的な効率化効果は限定的との見方が多かった。一方で、分析前提や論点整理が容易になることで、後工程での手戻りや再調整が抑制されるなど、業務プロセス全体としての間接的な効率化効果が期待されると評価された。
また、文章や数値を中心とした従来の説明手法と比較して、都市構造や課題の位置関係を直感的に把握できる点が評価され、特に、説明や調整における情報共有の円滑化は、合意形成の初期段階において有効であるとの意見が多く見られた。まずは業務高度化やコスト削減を契機として内製化が進展することで、段階的に効率化が進むものと考えられる。
「コスト縮減」の観点では、外部委託依存の解消による直接的な委託費削減については評価が分かれたが、現状把握や基礎分析を内製化できることで、委託範囲の最適化や費用対効果の向上が期待されるとの意見が示された。また、新任職員や異動直後の職員が都市構造を短時間で把握できる点から、教育・育成コストや引き継ぎ負担の軽減につながる可能性も評価された。
「ユーザビリティ」については、UIや可視化の分かりやすさは概ね高評価であった一方、情報量の多さや操作導線の分かりにくさ、カスタマイズ範囲の理解しづらさが課題として指摘され、実務・資料作成を意識した操作・表示ニーズについて確認された。操作マニュアルについても、基本操作の理解には有効だが、解釈や実務活用まで含めた支援の充実が求められていることが分かった。
以上の結果から、本ツールは、業務の高度化やコスト削減を起点として、中長期的には効率化や使いやすさの向上にも寄与し得るポテンシャルを有していることが確認された。今後は、解釈支援や運用支援の充実に加え、業務フロー上の位置づけを明確化した展開を進めることで、実務における定着と効果の最大化が期待される。





参加ユーザーからのコメント
<業務の高度化>
・都市構造の問題・課題を認識し、具体的に考えるきっかけとなる点で優れている
・他部署の職員も問題・課題を把握しやすく、円滑な内部調整を図りやすい
・近隣市との複合都市計画区域であるため、広域的に俯瞰できる点は、課題把握に役立つ
・今まで言葉で感覚的に説明することが多く解釈の幅が広くなってしまうことがあったが、様々な情報や指標が地図やグラフで見ることができるので本質を捉えやすくなり論点が明確になる
・各種具体的な数値データに基づく可視化により、主案根拠としての活用が見込める
・現在は数字や文字中心だが、可視化により計画進捗や施策効果の確認・検証がしやすくなる
<業務の効率化>
・施策立案にあたり、足りないものや、必要なものをすぐに確認することができるため、施策立案に要する時間が削減される
・予め使用するデータが明示されており迷う必要がないため、現状の把握・分析に要する時間が削減される
・コンサルに依頼せずに、職員で現状把握を行えるため、現状の把握・分析に要する時間が削減される
・会議毎に職員が作成している資料もあるため、本ツールの活用により作業時間の軽減が期待できる
・人口増減等を数値ではなく地図を用いて視覚で理解できるので説得力のある説明ができ、市民の受け入れやすさに繋がると思う
・従来から外部委託をしており、職員自体の作業時間はもともと限定的であり、業務フローを行政職員と外部委託に明確に区分することは難しいため、大幅な作業時間短縮は難しい
<コスト縮減>
・データ収集や現状把握、課題分析に関しては概ね内製化が可能であるため、一定のコスト削減には繋がる
・職員が課題分析を行い、より充実した成果を出せる一方で、コンサルタントによる専門的見地からの分析、計画案策定が必要になることは変わらないため、大幅な削減には繋がらない
・費用の削減効果よりも、業務の効率化が図られる事での費用対効果が大きくなる
<ユーザビリティ>
・何のデータを収集したら良いかが概ね理解でき、フォルダ構成の設定も負担が大きいため助かる
・説明を受ければ簡単にできるが、操作マニュアルだけでは操作が難しいかもしれないので説明動画もあると良い
・市全域だけでなく地域毎に指標の変化が見られるとよい
・表示スタイルをカスタマイズできることで、資料化の際に強調などができる
今後の展望
本プロジェクトで開発した都市構造評価ツールは、立地適正化計画の策定・見直しを支援することを目的として追加開発された。実証実験では、都市構造の可視化や検討プロセスの支援といった点で一定の評価が得られる一方、活用を定着・発展させていくためには、システム機能、UI/UX、運用・普及の各側面から段階的な高度化が必要であることが示唆された。今後の展望としては、単なる可視化ツールに留まらず、計画や施策の検討を含む地方公共団体の都市計画業務全体を支援する業務基盤としての役割を担う方向への発展が期待される。
業務の高度化の観点では、3D都市モデル等を用いた可視化が、都市構造や課題の共通認識形成に有効であることが確認されたが、今後は、これを一過性の分析にとどめるのではなく、立地適正化計画の策定から効果検証といった一連のプロセスの中で継続的に活用できる仕組みへと発展させていくことが求められる。そのためには、機能や解説の充実を図り、ツールを通じて得られた知見を、計画や施策にどのように反映させるかを明確に示していく必要がある。
業務効率化の観点では、従来の立地適正化計画の策定業務や都市構造評価指標の算出業務が外部委託での実施が一般的であるため、本ツールの導入による業務効率化効果を短期的に評価することには一定の限界がある。まずは業務の高度化やコスト削減を契機として内製化が進展することで、中長期的に段階的な効率化効果が顕在化していくものと考える。
また、コスト削減の観点では、短期的な効果を求めるのではなく、業務の内製化・高度化の進展に応じて段階的に実現することが重要である。標準化可能な集計・可視化業務を職員が自立的に担うことで、外部委託範囲の縮小を図り、中長期的には知見の庁内蓄積を通じて委託内容の適正化・発注規模の最適化を進め、委託コストの抑制につなげる。
さらに、ユーザビリティの観点では、誰もが一定水準で活用できる成熟度を備えることが業務基盤化の前提となる。検証ではカスタマイズ性をはじめとして一定の評価を得た一方、初見利用時の分かりにくさも課題として挙がった。今後は情報設計や操作導線の整理等を通じて、利用負担の軽減を図る。
中長期的には、本ツールを立地適正化計画に限らず、都市計画マスタープランや関連計画の検討、防災や公共施設再編、公共交通施策との連携といった、幅広い分野へ展開し、分野横断的な都市政策検討を支える共通基盤として発展させていくことを視野に入れる。共通の都市データと業務基盤としての本ツールを活用することで、庁内連携の促進や住民説明の高度化にも資することが期待される。
本ツールの将来的な展望は、単なる可視化ツールとしての技術的な高度化にとどまらず、地方公共団体の計画策定や政策立案の進め方そのものを支える基盤としての役割を果たしていくことが求められる。そのためには、地方公共団体が行う実務に寄り添った改良と運用支援を重ね、実務への適合性と信頼性を高めていくことが重要である。加えて、国土交通省が推進する「立地適正化計画」や「まちづくりの健康診断」との整合性を継続的に確保しつつ、制度運用と一体的に活用できる環境を整備することで、本ツールが全国の地方公共団体において持続的に活用される基盤として定着していくことを目指す。






