都市構造評価ツールの社会実装
実施事業者 | 一般財団法人計量計画研究所 / 株式会社福山コンサルタント / エアロトヨタ株式会社 |
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実施場所 | 栃木県宇都宮市 / 福岡県久留米市 / 熊本県玉名市 / 愛知県安城市 / 埼玉県松伏町 |
実施予定 | 2025年07月〜2025年12月 |

3D都市モデルを用いた都市構造評価ツールを改修。「まちづくりの健康診断」と連動した評価指標を算出、定量的に可視化することで、立地適正化計画の実効性向上とコンパクト・プラス・ネットワークを推進する。
本プロジェクトの概要
人口減少・高齢化が進む中、地域の活力維持と生活機能の確保により、あらゆる人が安心して暮らせるよう地域公共交通と連携したコンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりを進めることが求められている。このコンパクト・プラス・ネットワークの実現に向けては、各地方公共団体において立地適正化計画を策定し、具体的な施策や達成目標を設定している。また、立地適正化計画を継続的に改善・発展させていくためには、施策の効果や都市構造の変化を客観的・理論的に把握することが重要である。一方で、都市構造の変化を把握するには、人口統計データや交通動向データ等、多種多様なデータを収集する必要があり、データ整備コストの高さが課題となっている。
本プロジェクトでは、2024年度に開発した「都市構造可視化ツール」を基盤とし、マップ表示の正確性向上、カスタマイズ機能の充実、対応データの拡充を図り、地方公共団体職員が施策の効果や都市構造の変化等をより把握しやすい環境を整える。加えて、国土交通省が作成する『まちづくりの健康診断』と連動した評価指標を算出可能とすることで、データ整備や効果的施策の抽出などを容易にし、立地適正化計画の運用・評価・改善のプロセスをより効果的・効率的に支援するツールへと発展させる。さらに、地方公共団体職員を対象とした体験会やヒアリングを実施し、改善後の「都市構造可視化ツール」の有用性や汎用性を評価するとともに、都市計画関連業務の支援ツールとしての社会実装可能性を検証する。

実現したい価値・目指す世界
人口減少や高齢化が急速に進行する社会においては、特に地方都市において、医療や福祉・商業等の生活機能を持続的に確保すべく、地域公共交通と連携したまちづくり「コンパクト・プラス・ネットワーク」が推進されている。コンパクト・プラス・ネットワークの実現に向けては都市全体の構造を俯瞰しながら、医療や福祉施設・居住区域の最適化を図る必要があり、その指針を示す「立地適正化計画」に基づいた迅速な施策検討・実行が求められている。
しかしながら、計画推進の根幹を担う都市構造評価指標の算出には、多様なデータの性質に対する深い理解や、データ処理・分析結果の解釈において技術的な知見が要求される。これが業務内製化の障壁となり、地方公共団体の多数が分析業務を外部コンサルタントに発注している。外注工程を挟むことによって、日常的にデータ分析をしづらく庁内検討が進みづらいことや、外注費用が嵩むことにより経済性にも課題を有する。
2024年度の実証では、「都市構造評価ツール」を開発し、実証実験の参加者から総じて高い評価を得られ、EBPM促進の観点と、既存業務効率の向上の観点いずれにおいても高い有用性を示すことができた。内部アルゴリズムに関しても、3D都市モデルから集計した建築物の延床面積を基にメッシュ人口を按分し、圏域人口を算出するアルゴリズムが既存手法に比べ精度が向上したように、3D都市モデルの活用によって都市構造評価指標の算出精度向上にも寄与できた。
一方、立地適正化計画に係る業務での活用に向けては、①対応データの拡充と②分析者以外への情報伝達容易化の2つの課題が残されている。①対応データの拡充については、2024年度では都市構造評価指標算出に必要なデータのみをインプット対象としたものの、都市構造の変化を捉える上では、地方公共団体が独自で保有する他のデータも含めた分析・可視化が必要である。②分析者以外への情報伝達容易化の観点では、主に都市構造評価指標の可視化画面において、文字の見づらさやグラフの分かりにくさ等の課題があり、指標に対する理解・解釈がしやすい表現方法への改善が必要である。
本プロジェクトでは、3D都市モデルを活用した都市構造評価指標の分析・可視化システムを構築する。本システムは、「都市構造評価指標の算出機能」と、「算出された評価指標の可視化機能」によって構成され、都市構造評価指標は国土交通省が保有する「まちづくりの健康診断」と整合させることにより都市計画関連業務における有用性を高める。
本システムを用いることで、都市構造評価指標が容易に算出され、3D都市モデル上で該当区域における居住人口や土地、建物、交通施設等の変化が地図表現やグラフ表現で可視化されることで、地方公共団体職員も直感的に都市構造評価指標の理解ができる。本システムにおけるデータ処理機能は、「フォルダ生成」「評価指標算出機能」「可視化機能」「データ出力」の4つのボタンに集約されており、各ボタンを押下するだけで、インプットデータの格納先生成からデータを用いた指標算出・可視化および出力を地方公共団体職員でも一気通貫で対応可能である。なお、本システムはオープンソースのGISソフトである「QGIS」を活用し開発することで、比較的スペックの低いPCでも動作し、かつ無償で利用できる。
また、過年度の実証実験に参加したユーザーの意見・要望等を踏まえ、①隣接する地方公共団体の都市構造の可視化、②数値レンジのカスタマイズ、③都市機能のカスタマイズ、④誘導区域を変更する場合の指標の算出等のツールの更新等が行えるようにシステムを改修することで、都市構造に関する分析者やステークホルダーの理解度向上や認識共有を図り、立地適正化計画の管理・運営を含め、より包括的かつ実践的な都市計画業務を遂行しやすい環境を整える。
誰もが容易に『まちづくりの健康診断』を行える「都市構造評価ツール」の社会実装によって、都市計画関連業務の効率化やコスト縮減、ステークホルダー等との合意形成の円滑化といった価値を生み出し、継続的な改善と実効性向上を通じて、コンパクト・プラス・ネットワークの早期実現を目指す。


