沿岸域管理研究会 提言 |
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我が国は、四方を海に囲まれ、長い海岸線延長を有していることから、海や海岸との関わりが非常に深い。また、国土は南北に長大であり、寒冷帯から亜熱帯に至る環境が分布しており、また寒流・暖流の両潮流を有していることから、各地に多様なルーツを持つ文化が形成されている。
その中でも、特に、豊潤な土壌、豊富な水産資源や鉱物資源を有し、生態的、社会経済的価値の高い沿岸域は、癒しの場や景観の場としての精神的、文化的価値も有し、古来より人口の集積が進み、海上交通の拠点として、また、水産業や農業・工業・物流・レクリエーションなどの場として利用、開発され、人々の暮らしを支えてきた。 このように国民共有の財産である沿岸域は、一方で各機能が緊密かつ複雑に干渉し合う場であるため、陸域・海域からの影響に敏感でもある。また、災害による影響を直接に受けやすい。特に近年では沿岸域における利用・開発等に伴い、海岸の侵食や海域の水質悪化、干潟の喪失など、沿岸域において様々な問題が生じてきている。 また、技術の進展とも相まって将来沿岸域で起こりうる新たな開発・利用の形態に適切に対応していく必要がある。今後地球温暖化に伴う海面上昇等が予想される中、これへの対策も必要になろう。 さらに、環境などの側面からの国際的な沿岸域保全の必要性が高まる中、我が国としても積極的に対応する必要がある。 そこで、上記の諸問題に適切に対応するため、平成12年10月に本研究会が設置され、21世紀の日本が進むべき沿岸域のあり方を示すべく集中的に検討を行ってきた。 今回、本研究会は、沿岸域で生じている諸問題や、沿岸域を適正に保全していくための方向性を提言としてとりまとめたので、報告する。 今後は、本提言の趣旨を踏まえ、制度や事業などの施策を、関係各機関が連携しながら一層充実していくことを期待する。 なお、本提言において「沿岸域」とは、陸域及び海域とが接する区域でかつ、人の社会・経済・生活活動が継続して行われる、又は自然の系が連続していることにより、一体として管理する必要がある区域を言う。また、「一般海域」とは、日本の領海のうち、海岸法・漁港法・港湾法に規定された区域を除く区域を言う。 |
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