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河川局

沿岸域管理研究会 提言


IV.沿岸域管理に関する基本的方向性



1.沿岸域を総合的に管理する施策の検討
 持続可能な場として沿岸域を総合的に管理する施策としては、以下のような枠組みを構築していくことが有効であると考えられる。

(1)国と地方の役割分担の考え方
 国として、今後沿岸域の管理のあるべき基本方針を策定する必要がある。
 また、各地域では、都道府県を基本とする地方公共団体が、関係する市町村・都道府県と連携しながら、自然の区分を一定の系として、国が策定する基本方針に基づいて各地域における総合的な基本計画を策定することが必要である。

(2)基本方針等に盛り込む想定事項
 
【1】基本方針へ盛り込む項目の例として以下の様なものが考えられる。
・将来の沿岸域のあるべき方向性
・基本計画を策定するための基本的な事項
・防災体制の整備に関する基本的な考え方
・干潟や砂浜の保全等、沿岸域の自然環境保全のための基本的な考え方
・海域の水質改善に関する事項
・利用における基本的な考え方
・防災・環境・利用を調整するための基本的な考え方
・既存制度との調整に関する事項
・地球温暖化に伴う海面上昇等に対応する国土保全に関する事項
・計画策定・実現のための組織体制に関する事項
・一般市民やNPO等との連携に関する事項

【2】基本計画へ盛り込む項目の例として以下の様なものが考えられる。
 なお、各地域では、外海と内湾で全く性質が異なるなど、地形の特性、背後地の人口分布、利用度合、環境の状況等に応じて、重点を置くべき事項が異なることにも留意すべきである。  
・当該沿岸域のあるべき方向性
・防災・環境・利用の主要課題と対応方策
 自然と共生する防災施設の整備
 持続可能で総合的な土砂管理
 ソフト面の防災体制の充実
 良好な水質の保全
 動植物の生息・生育地等の保全のための車両進入の抑制等の措置
 各種利用間の相互調整
 利便施設を含めたアクセスの確保
 計画推進のための組織づくり
 防災・環境・利用を踏まえた適切なゾーニング
 なお、計画は社会情勢の変化等に応じて随時見直しを行っていく必要がある。

 また、これらの枠組みも含めた施策面の充実、強化に向け、引き続き検討する必要がある。


2.沿岸域における防災対策の推進
 沿岸域における防災対策は、これまで堤防・護岸、離岸堤など海岸線に沿った対策が主であったことから、今後より高い防災水準を効率的に実現するため、長期的・広域的な視野での防災施策の検討が必要となる。また、施策実施の際には、環境と利用とが調和した防災へのニーズが高まっていることにも留意する必要がある。

(1)ハード・ソフト両面による防災施策の推進
 高潮災害や津波災害等を防ぐためのハード面(施設の整備等)とソフト面(予測・予報体制、観測・監視体制、避難・誘導体制等)両面が調和した施策の実施が重要となる。ソフト対策については、体制の充実強化を図るとともに、特に、警戒・避難のためのハザードマップの作成を推進する必要がある。

(2)地球温暖化に伴う海面上昇等に対応した国土保全施策の実施
 海面上昇・気候変動等による国土防災上の影響の把握、地球温暖化を考慮した短期的・長期的な国土保全対策方針(ハード面・ソフト面の両面からの対策)の策定、潮位・波浪等に対する観測・監視体制の強化などについて、関係機関との緊密な連携のもと、長期的・広域的な保全対策のあり方を検討する必要がある。

(3)国土保全の観点からの総合土砂管理の推進
 海岸の侵食対策の実施にあたっては、山地・河川等から海岸に土砂を適正に供給することが必要であることから、山地・河川から河口部・海岸・海域に至る土砂の流れを踏まえた、持続可能で総合的な土砂管理を積極的に推進する必要がある。


3.沿岸域管理推進のための具体的な取組事項

(1)沿岸域の情報整備の推進
 国民が沿岸域に関心を有し、沿岸域保全の必要性への認識を高めるとともに、関係者相互が意志疎通を図り、適切な沿岸域管理を推進するために、沿岸域に係る情報の収集・整理を行い、その結果を提供・公開する必要がある。

(2)沿岸域に係る調査・研究の推進
 沿岸域毎に、防災・環境・利用の視点からの沿岸域の特性や沿岸域に及ぼす影響の要因・度合などについて調査するとともに、その対策についての研究を推進し、沿岸域の施策に反映していくことが必要である。また、沿岸域の広域的かつ多様なニーズを把握するよう努める必要がある。

(3)沿岸域管理の円滑かつ適正な調整の推進
 円滑かつ適正な調整を図るため、沿岸域に係る住民・NPOを含む関係者間による「望ましい沿岸域の管理に関する協議会(仮称)」を各沿岸域で設置し、沿岸域における諸問題等について緊密な意見交換を行うことが必要である。また、沿岸域は関係する機関が多岐にわたっていることから、各種施策を検討していく際には、各分野を所掌する関係省庁・関係部局と連携を強化する必要がある。
 さらに、一般の人々の沿岸域についての認識を高めるため、関係者が連携し沿岸域の重要性についてのPRに取り組んでいくことが必要である。


4.一般海域の管理のあり方についての検討
 一般海域においては、総合的に管理するという観点のみならず、高い公共性を有するとの観点からの検討を行う必要がある。
 海砂利の採取については、様々な取り組みが行われているにも拘わらず、未だ海岸の防災や沿岸域の環境への影響が懸念されている。一方で、代替材に関する検討も一部地域で行われている。このため、これらの代替材の検討を引き続き継続するとともに、防災・環境の観点も踏まえた制度の検討が必要である。
 また、新たな利用形態に適切かつ迅速に対応するために、防災・環境・利用の調和のとれた管理のあり方についての検討が必要である。

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