前記に指摘された沿岸域の課題は、以下に掲げるような特性を有している。これら特性に対応しつつ、持続可能な利活用を図っていくために、沿岸域を総合的に管理していく必要がある。
1.沿岸域は外部からの影響に対し敏感
沿岸域は河川や陸域、海域を含む一体的な区域であり、狭い範囲の中に非常に多様な系が存在し、かつ相互に連携している。よって、水質の悪化や高潮災害の例に見られるように、外部からの影響を受けやすく、かつ影響に対し、敏感に反応する。また、一旦影響を受けると、修復し、現状に復するのに長時間を要する。
2.起こりうる事象の原因が複雑に関連
砂浜の消失の例にも見られるように、沿岸域で生じている問題は、沿岸域が非常に複雑な系を有していることから、様々な原因が存在している。また、その原因がさらに他の問題の原因となっているなど、問題と原因が相互かつ複雑に干渉している。
3.防災・環境・利用の各々の事象が複雑に関連
埋立等の開発が水質の悪化や侵食に影響を与えたり、海砂利採取が環境の悪化や侵食の一因となるなど、沿岸域では防災・環境・利用の各々の事象が相互に干渉しあっている。
4.各々の方策だけでは沿岸域での災害を食い止めることが困難
海岸の前面で災害を食い止める役割を果たす施設の整備、沖合での観測網の整備、災害に強い土地利用の推進など各々の方策のみでは、津波や高潮等による沿岸域での巨大な災害を食い止めることは困難である。
5.長期的・広域的に影響
地球温暖化に伴う海面上昇による影響のように、日本全域において将来にわたって継続的に自然環境・社会経済等が影響を受ける。
6.沿岸域に関係する者や機関が多数
沿岸域では、公共施設や区域の管理者、埋立等の開発主体、環境団体、レジャー等の利用者、地域の住民など、関係する者や機関が多岐にわたっている。 |