我が国は、北海道、本州、四国、九州をはじめ多数の島々からなっているため、狭い国土に対し約35000kmと非常に長い海岸線を有している。また、国土の7割が山地であることから、人口は居住空間が広い低平地を有する沿岸域に集中する傾向が強く、それに伴い産業も沿岸域を中心に発達してきた。例えば、海岸に面する市町村には人口の5割にあたる約6千万人が居住し、産業活動も工業製品出荷額の5割、商業年間販売額の6割が集中している(図4.3 全国に占める沿岸域の人口と工業・商業(1995年))。さらに、白砂青松の海岸に代表されるように砂浜、砂丘、干潟など様々な海岸地形が発達し、生態系や人間の営みを支える基盤としても貴重な空間であり、我が国では沿岸域を生活の基盤として利用してきた。
しかしながら、沿岸域はこのように人口、資産が集中するという利便性の反面で、高潮、高波等の自然現象に対して影響を受けやすいという脆弱性を有し、過去にも幾度となく自然災害を経験してきた。例えば伊勢湾では、伊勢湾台風により死者、行方不明者は4500人余り(愛知・三重両県※1)に達し、全壊、半壊家屋約12万5千戸に及ぶ被害が生じた(図4.4 伊勢湾台風の浸水状況図)。
※1 資料:伊勢湾台風災害誌(建設省)
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