2)海面上昇による影響の特性 |
沿岸域を中心に文化・産業等が発展してきた我が国では、国民の安全を守るための海岸保全施設、河川堤防や、快適な生活を提供するための港湾・道路・下水道施設など、沿岸域における様々な基盤施設が整備されてきた。(図4.5 伊勢湾のインフラ施設)(表4.2 伊勢湾の主なインフラ施設(検討対象)。
しかしながら、海面が上昇すると、砂浜の減少による沿岸域の環境や利用の問題など、平常時においても生活基盤が大きく影響を受けるほか、高潮や津波発生時には、海岸や河川の堤防高が不足してこれらの施設の安全性が著しく低下し、災害発生の危険度が増大する。また、港湾施設の利用の制限など、物流基盤への影響が生じてくる(図4.6 沿岸域施設の影響の概念図,図4.7 砂浜減少のイメージ図)。
本報告書を作成するにあたって行ったモデル地域の一つである名古屋地区における検討結果でも、現況の施設整備が現在の整備計画まで達成されたしても、今後の海面上昇の度合いによって、様々な施設に影響が生じることがわかっている(図4.8 名古屋の施設影響図)。
特に低平地では、浸水域が広大となり、甚大な被害が生じる恐れが高くなる。名古屋地区における試算では、現況の施設整備が現在の整備計画まで達成された場合は、現在の計画高潮位での影響はなくなるが、現況の施設整備状況において、現在の計画高潮位となると約430km2の面積が浸水想定領域となり、この領域内における想定人口は約137万人、浸水想定被害額は21.1兆円となる。また、この現在の計画高潮位から海面が90cm上昇すると、現況の施設整備が現在の整備計画まで達成された場合であっても、約450km2の面積が浸水想定領域となり、この領域内における想定人口は約142万人、浸水想定被害額は23.1兆円となる。(図4.9 名古屋地区の予想最大浸水領域図) |
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