2)地盤変動量の効果的な測定 |
地球温暖化による海面上昇量が数mm/年であることを勘案すると、地盤変動の把握は、これに対応してより高精度なものとする必要がある。
地盤変動量を高精度に観測するためには、海面に対する相対的な動きではなく、地球の不動点に対する地盤の動きを把握する必要がある。このためには、地球重心を不動点とし、GPS(Global
Positioning System)やSLR(Satellite Laser
Ranging)、VLBI(Very Long Baseline Interferometer)等の宇宙測地技術を組み合わせて、潮位観測の基準点の位置をITRF座標系(International
Terrestrial Reference Frame:国際地球基準座標系)等で継続的に測定することにより、地盤変動に伴う観測基準点の動きを把握するのが効果的である。そのため、潮位観測施設にGPS等を設置して継続的に観測を行っていくとともに、近年、地盤変動を観測するために構築された電子基準点網とこれらの施設を関係づけておくことが効果的な方策と考えられる。
なお、GPS等を設置して潮位観測を実施する箇所を選択する際には、精度の点から、当該箇所の地盤変動の傾向は、一定である若しくは微少であることが望ましいといえる。 |
|
3)データ整理の確立と観測・監視体制の充実 |
得られた観測結果を、海面上昇検出を目的として活用するには、それに対応した形で再整理していく必要がある。従来より、関係機関では様々な地点において潮位観測を実施してきたが、その結果を航路維持、防災など、各々の目的に添って解析し、整理してきた。過去の観測結果も、地球温暖化という長期的な現象を把握するためには非常に重要な情報であるが、その整理方法が必ずしも地球温暖化に伴う海面上昇検出という目的に対応しているとは言い難い。
そこで、地球温暖化に伴う海面上昇という現象を念頭において過去の結果の再整理を行うこととともに、今後、地球温暖化に伴う海面上昇に対応したデータの整理手法を検討すること等について、関係機関で連携することが必要である。
また、我が国周辺の海面上昇の実態が把握できるよう、地形の特性に応じて、関係機関の潮位観測施設を適切に連携させることが重要である。
さらに、海面の変動は全地球的な現象であるため、海外の観測機関との連携、データや情報の交換も推進すべきである。
なお、観測・監視体制の充実という面では、災害時の被害が多く見込まれる人や資産が集中している沿岸域を中心に体制を強化することも重要である。 |
|
4)適切な予測の実施 |
得られた観測結果を的確に予測に反映させるとともに、予測を定量的に実施し、その結果を基に地球温暖化による海面上昇の状況を判断することが重要である。 |