(4)適切な組み合わせによる効果的な対応策の検討 |
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1)基本的な考え方 |
得られた海面上昇の予測結果に基づいて、対応策について検討していく際には、「施設を中心とした対策」「土地利用の変更等を中心とした対策」「防災体制の充実等を中心とした対策」のメリット、デメリットを明確に整理し、対象となる地域の地域特性や自然条件等を判断材料にしながら各対策を組み合わせることで、柔軟な対応策をとっていく必要がある。(図5.1 戦略的なシステムフロー図)。
例えば、人口や産業が密集している地域では、施設整備を中心とした対応策とし、自然環境を保全すべき地域では、海面上昇の度合いを勘案しながら、内陸への移転を誘導するなど、各地域をその状況に応じた対策別にゾーニングすることが考えられる。
また、海面上昇に対する諸施策(施設整備、土地利用など)を行うにあたっては、国民の合意が重要であることから、海面水位の観測データや予測結果の情報公開を積極的に進めて国民の認識向上を図り、対策の各段階において、国民の十分な合意が得られるよう努めていくことが必要である。
さらに、各対策を実施するにあたっては、常に費用対効果の手法を取り入れながら、効率的な対策となるよう努めることが重要である。 |
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2)施設を中心とした対応策 |
国民の安全、生活を守る主な手法として、施設等の整備を中心とした防護対策がある。具体的には、海面上昇や高潮、波浪の増大による沿岸域での安全性低下を避けるように、海岸施設、河川施設等の整備を行うものである。(図5.2 沿岸域施設の防護を中心とした対応策)また、海面上昇に対して生活基盤を保持するためには、港湾施設、下水道施設、道路(橋梁)等について、海面上昇の影響を補うための整備を行っていく必要がある。
ただし、実際の整備の際には以下の点に留意する必要がある。 |
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施設の計画や耐用年数を踏まえた効率的な整備の推進 |
地球温暖化による海面上昇は長期的かつ広範囲に影響を及ぼす現象であるため、これに対応した整備も、広範囲かつ長期的な取り組みになる。そこで、効率的に整備を進めるためにも、現在の施設の整備状況や施設の老朽度を勘案し、施設の改築時に順次対応していくなど、計画的な整備に取り組んでいくことが重要である (図5.3(1) 名古屋地区の整備状況、図5.3(2) 名古屋地区の整備状況)。 |