これからの水源地に関して、水源地の現況や、社会を取り巻く動向、国土行政、河川行政の動向を踏まえると、次のような事項が課題としてあげられる。
○ 高齢化・少子化に対応した施策の展開
ダム事業が進められている水源地は、一般的な中山間地と同様に、活力が慢性的に低迷しているケースが多い。特に、高齢化・少子化が進展していくなかで、広域的な交流や連携等を通じ、高齢者等が安心して水源地に暮らせるような施策が必要になっている。
○ 水源地の適正な管理
これまで、ダム事業に際しては、ダム事業者を中心に「ダム事業による地域への社会的な影響の緩和」の観点から、さまざまな対策が実施され、一定の効果が得られた。しかしながら、ダム事業終了後一定期間を経過した水源地において、ダムの治水、利水、環境機能を確保するためには、水源地の適正な管理が必要になっている。
○ 自然環境の保全への関心の高まり
水源地の多くは、豊かな自然に恵まれており、全般的に自然環境の保全の面で流域の中で重要な役割を担っている。近年の地球環境保全への関心の高まりをも踏まえ、水源地の自然環境の保全を積極的に推進することが必要になっている。
○ 流域圏に着目した国土の総合的な整備
国土のグランドデザインや河川審議会の答申のなかでも、流域圏を単位とした総合的な施策のあり方や、健全な水循環系・国土管理に向けた総合行政のあり方が提案されており、水系を軸とした連携を念頭に置いた水源地の総合的な整備が必要になっている。
このような課題を踏まえ、今後は、建設段階、管理段階を通じて、流域圏の中での水源地の位置づけを明確化し、図−7に示すように、ダム事業の促進という観点からの水源地対策から、管理段階も含めた水源地の自立的・持続的な振興という観点からの水源地の総合的な整備へ転換していくことが必要である。

図−7 水源地の総合的な整備の体系図
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