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河川局

歴史・風土に根ざした郷土の川懇談会 -日本文学に見る河川-

歴史・風土に根ざした郷土の川懇談会
-日本文学に見る河川-
第十回議事録

平成17年2月28日(月)

4.懇談
 
○芳賀委員長
   それじゃ、時間はそう長くありませんが、どうぞ皆様、ご意見やご質問をお出しくださいませ。尾田さん、いかがですか。
○尾田委員
   ミシシッピーは確かにおっしゃるとおり、アメリカでは唯一というか、川だと思いますし、洪水は当然、1カ月あるいは2カ月かかるという。ただ、洪水がそういう長い期間にわたって続くというのは、日本の川以外は大体そうなんですね。例えば、同じ島国でもフィリピンの川なんかは、これはどうしてなのかよく考えてみないといけないですけど、利根川と同じぐらいの流域面積の川でも、やっぱり10日とか20日間ぐらい、ずっと洪水が続きますので。
○芳賀委員長
   フィリピンで?
○尾田委員
   はい。
○渡邊臨時委員
   ヨーロッパはすごいですよね。
○芳賀委員長
   ヨーロッパは明らかに。
○尾田委員
   ナイルなんかはまさにそうですけど、セーヌにしても、小さなあんな川でも1カ月ぐらい続きますよね。多分、日本だけが非常に特異なんです。
○渡邊臨時委員
   一遍に流れちゃう。
○尾田委員
   特異な川で。逆に言うと、それだけいろんな問題が一番先鋭的に出ますので、日本の川というのは、そういう意味では、世界の人から見れば、何というか箱庭的なおもしろさを感じるのではないかなと思います。
 アメリカ文学とかいう視点で、アメリカは、建国されて300年にも足りていないですよね。
そういうところで川をどう見るかという、ハックルベリー・フィンのそういう見方も、多分、歴史的な背景のない中でパッと向き合った人たちの物の見方という意味では、ある意味では非常におもしろいなと思って、今、聞かせていただいておったんです。
 日本が抱えている歴史、あるいは日本の文化、文学というものでとらえられている川を今の時点でどう考えて、それをどう再生というか、生み出していくという、そういう視点で物を見たとき、少し別のニュアンスかなという、そんな感じで聞かせていただいておりました。
○渡邊臨時委員
   私ももちろん、川に対していろいろ対策はしていると思いますけれど、住民から見ればもうしょうがないんだという気持ちを文学者は描いているんじゃないかということなんです。何もしてないんじゃないと思います。
○尾田委員
   いや。ミシシッピーも、これはアメリカ工兵隊がみずから直営というのか、直轄というのか、管理している川でして。
○芳賀委員長
   工兵隊ですか。
○尾田委員
   そうです。工兵隊です。コア・オブ・エンジニア。
corpsというのはフランスのコールですね。
○渡邊臨時委員
   そうですね。Troubled Waterの真ん中の。
○尾田委員
   センターの、中心という意味の。
○渡邊臨時委員
   真ん中にあるUS army corps of engineersですね。
○尾田委員
   彼らが直轄で管理して、いまだに直轄で管理しているわけですけれど、多分ものすごい、いろんな意味での投資がなされている川で、だからこそ、いろんな洪水が起こったときにflood wayといいますか、起こったりいろいろしておるんですけれども、ものすごい、一番人間の手の加わっている川の1つだろうと思います。
○芳賀委員長
   そうですか。
○尾田委員
   はい。
○渡邊臨時委員
   それにもかかわらず、こういうことが起こってくるわけですか。
○尾田委員
   当然です。それはもう、人間が制御できるような代物ではありませんので、川というのは。
○渡邊臨時委員
   大きいだけにですね。
○尾田委員
   はい。
○芳賀委員長
   アメリカの工兵隊がミシシッピー管理をやるようになったのはいつからなんですか。
○尾田委員
   工兵隊がつくられてすぐですね。ですからものすごい古いと思います。
○芳賀委員長
   そうですか。このマーク・トウェインの時代ですか? 南北戦争の……。
○尾田委員
   南北戦争のころはもうあるんじゃないでしょうか。工兵隊の設立は何年か、それは調べればすぐわかると思います。(注:設立は1802年。河川や道路の調査計画を開始したのは1824年。)
○芳賀委員長
   大体、ミシシッピー流域は、南北戦争でいえば南軍の川。じゃあ、両方にまたがるわけですね。
○渡邊臨時委員
   両方です。そうです。
○芳賀委員長
   うん? 両方で封鎖したのですか?
○渡邊臨時委員
   多分、北軍のほうでしょうかね。いずれにせよ、長期戦。
○芳賀委員長
   北軍のほうで河上交通を封鎖した。
○渡邊臨時委員
   そうです。
○芳賀委員長
   なるほど。それはそうですね。南のほうに兵糧が行かないように。
○尾田委員
   航路をですね。
○渡邊臨時委員
   そうです。
○尾田委員
   航路を封鎖した。
○芳賀委員長
   なるほど、工兵隊ですか。
○尾田委員
   corps of engineers。
○芳賀委員長
   今もあるんですか、その工兵隊。
○尾田委員
   あります。今も管理していますし、フランスとのつながりはものすごく強いです。
○芳賀委員長
   何で? もともとルイジアナあたりとか。
○尾田委員
   Ponts et Chaussees土木学校とかああいうシステム。
○芳賀委員長
   Ponts et Chausseesね。
○尾田委員
   はい。一番先につくられたPonts et Chausseesです、王立ですから。それとの関係がずっと深いみたいですね。
○芳賀委員長
   土木技術はフランスからですか、アメリカでも。
○尾田委員
   舟運ですから、やっぱり。そういう関係でそっちの技術が入っているんだと思います。
○芳賀委員長
   日本でも、古市公威でしたっけ。あれはフランスに。
○尾田委員
   あれは、そうですね、フランス。あれもEcole des ponds et Chausseesですね。
○芳賀委員長
   でも、フランスは何でそんなになったかな。フランスは、せいぜいセーヌ川とかロワール川ぐらいしかない。こんな巨大な川はない。
○尾田委員
   ですが、よく似たもんですね。
○芳賀委員長
   まあ、そうですね、管理については。
○尾田委員
   感じから言いますと、川の感じは。
○芳賀委員長
   大小違いますね。
○渡邊臨時委員
   ヨーロッパですと国にまたがっているということは問題ないんですか。アメリカですと、州にまたがってるところはありますけれど。
○尾田委員
   いや。ですから、今はやっぱりtrans boundary(注:国境を越えて)、それは大問題。
○渡邊臨時委員
   大問題でしょうね。
○尾田委員
   はい。河川の管理としては。
○芳賀委員長
   ダニューブ川とかライン川。
○渡邊臨時委員
   ええ。
○尾田委員
   そうでしょう。ラインはそうですね。今ダニューブが、ヨーロッパ統合に向けて新しく入りましたですね、東欧諸国が。これはやっぱり大問題ですね。
○芳賀委員長
   なるほど。
樋口先生、どうぞ。
○樋口委員
   日本と大分違うなという感じ。
○渡邊臨時委員
   そうですね。
○樋口委員
   繊細な風景と。上流のほうへ行くと、日本の川と似てくるんでしょうか。
○渡邊臨時委員
   ええ。上流でフライフィッシングやっている川は、日本の中流ぐらいの大きな川なんですね。
○樋口委員
   ですからあの映画を見えると、すごい親近感を持って見ることができますけど、こういう川を見るとスケールが全く違うなという印象を持ちますけど。
○久保田委員
   水源というのはたどれないんですか。
○渡邊臨時委員
   多分そうだと思いますけど。
○芳賀委員長
   あっちもある、こっちもあるから。
○久保田委員
   幾つもあって。
○渡邊臨時委員
   どの川が支流であるかということは、大変なんじゃないでしょうか。
○久保田委員
   ラインなんかだと、一応ここが水源だというのがありますよね。ラインとかドナウは。
○芳賀委員長
   ドナウとかね。
○久保田委員
   ああいうのはないわけですね。
○渡邊臨時委員
   ないというか、考えられないと。
○久保田委員
   考えられない。
○芳賀委員長
   でも、一応、ミネソタあたりがミシシッピー川といったんですね。
○渡邊臨時委員
   ええ。ただ、ミシシッピー川は上流のほうはそういうことですけど、本流もまたミシシッピーといってますから。
○芳賀委員長
   もちろんそうですね。
○尾田委員
   ただ、ずっとたどっていけば、ミシシッピー川の本流はここだというのは、多分決めていると思います。日本の利根川だって、それはいっぱいあるわけですけど、ここだと言っているだけです。
○芳賀委員長
   それは黄河だって。
○尾田委員
   どこでもそう。どの川でもそうです。
○渡邊臨時委員
   ただ、アメリカの場合ですとほんとうに広いというんでしょうか。つまり河口は、アメリカ合衆国が細長い長方形としますと、真ん中あたりから対角線で西の一番上まで行っているんですね。最初、モンタナのあれは、ミシシッピー川の上流であるとは思わなかったんですね。流れる方向も北へ向かっているわけですから。
○芳賀委員長
   あ、そうですね。1度北へ行っているから。
○渡邊臨時委員
   北へ行って、右へ行って、また下って。
○尾田委員
   それは信濃川でも、千曲で西北へ流れて、それから東北へ向きを変えていますし、それは……。
○久保田委員
   山に遮られていくんですか。
○渡邊臨時委員
   でしょうね。つまり、大陸分水嶺になります。このマクレーンという作家も、これはどこにもあるんですけれど、ちょっと変な話ですけどおしっこをして、こちらはオレゴンへ行く、こっちはメキシコ側へ行く、そういう話を書いてあるわけですね。そのあたりから流れ出すわけですから。
○芳賀委員長
   日本だと、この研究会でも何遍も出てきたんですが、川はあちこちの歌枕になって、『万葉』『古今』『新古今』なんていうけれども、ミシシッピーは。
○渡邊臨時委員
   ないと思いますね。
○芳賀委員長
   そこがちょっと、歴史の乏しいところですね。(笑)
○渡邊臨時委員
   先生がおっしゃるようにアメリカ自体が歴史が乏しいし、文化は乏しいと、そこにいくんですね。
○尾田委員
   乏しいし、短いですから。
○渡邊臨時委員
   ええ。
○芳賀委員長
   そうそう。
○尾田委員
   乏しいというと語弊があるから。
○芳賀委員長
   それは、でも、セーヌ川もやっぱり歌枕じゃないですね、あれは。ラインは歌枕ですかね。
○五味委員
   母なるとか父なるとか、そのような言い方はあるわけですね。
○芳賀委員長
   ミシシッピーについては?
○渡邊臨時委員
   ミシシッピーもそうなんです。ケルアックなんていう人は全く東部の人間ですけれど、そして、多分、彼が見たミシシッピーというのは非常に貧弱な川だったと思うんです。ところが感激しているわけですよね。
○芳賀委員長
   なぜ貧弱なんですか。水が少ないときだから?
○渡邊臨時委員
   そうです。だから私などは、何でこんな小さな川と思っちゃったんですけれど。(笑)
○尾田委員
   ミシシッピーのイメージはファザーですか、マザーですか。
○渡邊臨時委員
   ファザー。英語文では、the Father of Watersと言っていますね。
○芳賀委員長
   何でファザーなんですかね。
○渡邊臨時委員
   そうですね。母なる川という感じではないと思います。
○芳賀委員長
   母なる大地であって、父なる川ですか?
○渡邊臨時委員
   このFather of Watersというのは普通辞書に出ています。
○芳賀委員長
   それはミシシッピーに限らず。
○渡邊臨時委員
   限らずだと思います。
○芳賀委員長
   それは変ですね。
○尾田委員
   イギリスだってそうですかね。
○久保田委員
   どうでしょうね。
○尾田委員
   フランス語はラ・セーヌだし。
○芳賀委員長
   ラ・セーヌだし、男性名詞の川もある。
○尾田委員
   男性と女性、両方ありますね。
○芳賀委員長
   男性名詞のロワール川もあるんですね。
○尾田委員
   両方ありますね。
○芳賀委員長
   『谷間の百合』のほうは男性名詞のル・ロワール。
○久保田委員
   ラインは父じゃないですか、母ですか、ライン川は。
○尾田委員
   ドイツ語はどっちですか、冠詞は。
○芳賀委員長
   どっちですかね。
○尾田委員
   どっちでつけます?
○芳賀委員長
   あれ、冠詞で決まるのかな。
○渡邊臨時委員
   でしょうね。
○五味委員
   日本は坂東太郎だとかいうと男性ですね。
○芳賀委員長
   男性ですね。
○久保田委員
   男の子ですね。
○渡邊臨時委員
   神様じゃないんですね。
○芳賀委員長
   暴れ川は男性なんじゃないですか。
○久保田委員
   神様じゃないですね。
○芳賀委員長
   神ではないんじゃないですか。
○尾田委員
   いや。ただ、神でもあるんじゃないですか。竜神。
○久保田委員
   九頭竜川なんていうのはね。
○尾田委員
   川を竜で表現しますから、それは僕は神になっているんだと思いますけど、日本でも。
○久保田委員
   竜神信仰はあるでしょうね。
○渡邊臨時委員
   碓氷峠のところが利根川の最上流だと思いますけど、鈴木大拙か何かの石碑があって、山深くして水清しというのがありますけれど、そこは水神と言っていますね。それは水の神様といっても、むしろわき水に対する水神という。
○尾田委員
   いや。あと、水神はそうですけど、竜神って。
○渡邊臨時委員
   竜のイメージは川なんですよね。
○光田委員
    水の神で一番思い出すのは貴船なんですね。貴船川。あの神様は、淀川水系をさかのぼってきて貴船に至って、ここに住もうとお思いになったと書かれていますよね。
○芳賀委員長
   ああ、そうですか。
○光田委員
   ですから、それは入り込んできた神で、途中の神とトラブルを起こしたとは書いてないから。
○芳賀委員長
   そのものが神じゃないのですね。
○光田委員
   あれは水源を守っている神なんです、おそらく。山は神格で海も神格なんですが、川は境界領域で、山から発するがゆえに清らかで禊ぎをする場所になると思うんですが。神にまみえるときは、だから、川で禊ぎをして清らかになって会うんでしょうね。
 ただもう1つ別に、橋なんかの工事をするとき人柱を立てるという伝統がありましたね。これは明らかに川の神に身をささげているわけで、弟橘媛(おとたちばなひめ)が荒ぶる海に身をささげて海を鎮めたのと同じパターンですね。だから民間信仰では、川が神であるというのは別の流れとしてあったんだと思うんです。今でも西日本中心に、例えば立ち小便を川に向かってするときに……。
○芳賀委員長
    罰が当たりますね。
○光田委員
   罰が当たるとか、「川の神こらえなされ」という呪文を必ず唱えよという習慣がありますから、やっぱり神格としての神も、別の流れとしてはあったと思います。
○芳賀委員長
   島根県の簸(ひ)川なんていうのは、あれはそれ自体が神様みたいな。
○光田委員
   あれは須佐之男がさかのぼっていくんですね。そこに翁といますね、手摩乳(てなづち)、脚摩乳(あしなづち)が。あれは、でも、川の神でしょうかね。どうなんでしょうか。
○芳賀委員長
   あれは翁のほうが川の神。
○光田委員
   そうですかね。2人の間にできたのが稲の神ですね、姫が。
○芳賀委員長
   稲田姫ですね。
○光田委員
   櫛稲田姫ですからね。そういうところがあるかもしれませんね。
○高橋委員
   神話では、一般的な言い方として、山の神に対して川の神という言い方があります。それは、文字で書かれたのを見ると中国の影響なんでしょうけど、河伯なんていうふうな書き方してますから。そういうのとまた違うと思うんですけど、平城京あたりまで踏まえてのことなんだと思うんですけど、広瀬の神様がやっぱり川の神として祀られていますね。今、話の出ていた須佐之男なんか、これはいろんな要素が入ってきているのであれですが、しかし一般的には、やっぱり川の神としてのイメージもあるし、それは大体蛇体神としてのイメージで考えられていますよね。
 僕がむしろさっきお話を伺っていて気になったのは、おやじの川というふうにおっしゃった、あれがどんなレベルから言われているのかということなんですけど、さっきおっしゃった川の性のとらえ方からだけなんですか?
○渡邊臨時委員
   オール'マンリバーというような言い方で。
○芳賀委員長
   オールドマンですね。
○渡邊臨時委員
   ole、オールという発音。
○芳賀委員長
   ole、それはオールドのことですね。
○渡邊臨時委員
   そうです。おやじの川と。
○高橋委員
   あれを聞いていておもしろいなと思ったんですけど、日本では演歌にある『おやじの海』というとらえ方がありますけど。(笑)おやじの川って初めて聞いたものですから、どこからそういうような言い方をしてくるようになったのか。
○芳賀委員長
   随分違いますね。
○渡邊臨時委員
   そうですね。そして、フォークナーの"The Wild Palms"も2つ、全く関係ない話を章ごとに組み合わせているんですけれど、一方はThe Wild Palmsで、もう1つはThe Old Manで、ミシシッピーのことなんです。
○芳賀委員長
   このパームというのは手のひらのこと?
○渡邊臨時委員
   いいえ、棕櫚(シュロ)。『野性の棕櫚』です。
○樋口委員
   インディアンはどういうふうにとらえていたんでしょう。
○渡邊臨時委員
   さあ、そこまでは調べていませんが。
○高橋委員
   もう1つ、日本の川の神様で女性神を考えているらしいと思われるのは、福井県の和紙をつくる、あそこの由来譚が。
○芳賀委員長
   どこですか?
○高橋委員
   川上御前というのが何とか姫というふうに言われていますね。そのくらいしか、僕は日本の川で川の神が女性神だというのを知りませんけど。あとはやっぱり日本でも、多分、男に考えていたんじゃないかと思うんですね。
○芳賀委員長
   川は?
○高橋委員
   はい。
○芳賀委員長
   そうですかね。
○高橋委員
   ただ、神話に出てくる罔象女(みずはのめ)大神というのが、性がどっちなのかなというのはちょっとわかりませんけどね。
○光田委員
   あれは女性じゃないんですかね。
○高橋委員
   女(め)というから、多分、女性だと思うんですけど。
○光田委員
   海の神も女性ですね。宗像三女神とか住吉三女神。あ、底筒男(とこつつのお)という言い方もあるか。男性神もいますね。山の神が女性だというのは、あれはどこから来ているんですか。(笑)
○五味委員
   どんどん変わりますからね。(笑)男が女になったり、女が今度は子供になったり。
○芳賀委員長
   あ、そうですね。変わりますからね。
○五味委員
   もう次々変わるから。
○光田委員
   山の神にはオコゼを供えるというでしょう。山の神は醜女なので、オコゼを供えて、あなたよりもっと醜いものがこの世にあると。お慰めするという言い方ありますよね。だから、わりと伝承としては古いんじゃないですか。それから、こんなところで言うのは何ですけど、前をまくってお慰めするという言い方あるでしょう、山の神。男がね。
○芳賀委員長
   あ、そうですか。男が?
○光田委員
   醜男が前をまくってお慰めする、ごらんいただいてという、そういう伝承ありますから。
○芳賀委員長
   三輪山なんか、ああいうのは男でしょう。
○光田委員
   大物主ですからね、あれは男性神です。
○芳賀委員長
   で、蛇になって女を襲うんだから。
○芳賀委員長
   アメリカ文学の中にはインディアンの神話はどれぐらい入っているんですかね。マーク・トウェインとかヘミングウェイ、フォークナーぐらいなら。
○渡邊臨時委員
   ほとんど入っていないんだろうと思います。
○芳賀委員長
   もっとたっぷりいると。
○渡邊臨時委員
   ええ。これ、現代になってから入ってくるわけです。20世紀になって。それまでは、申しわけないんですけれども、無視されていたわけです。
○芳賀委員長
   それは相当強引ですね。要するに植民地文化ということですね。
○渡邊臨時委員
   そうです。つまり、白人の文化なんです。
○芳賀委員長
   そうですね。
○尾田委員
   それはやっぱり征服するほうの立場ですからね。
○渡邊臨時委員
   ええ。それが20世紀の。
○尾田委員
   メキシコあたりなんか、もうひどいもんですもんね。全部破壊して、破壊したものを使って教会つくったりしてますからね。
○芳賀委員長
   そうそう。
○渡邊臨時委員
   アメリカでは、結局、60年代のああいう動きの後で反省して、彼らの権利を。
○尾田委員
   ヨーロッパの連中はめちゃくちゃしてますよ、これは。
○芳賀委員長
   それはそうですよ。
○尾田委員
   ひどいもんだ。
○渡邊臨時委員
   しかし、それでいながら、ミシシッピーという名前だけはインディアンからいただいているということなんですけど。
○芳賀委員長
   そうですね。ミズーリですよね。
○渡邊臨時委員
   そうです。ほとんどそうなんですね。
 それから、ギリシア神話をちょっと見てきましたら、呉茂一先生の古い本ですけど、『ギリシア神話』では、一般に河川というのは自然をおそれ、崇拝する原始人の心理からして神格化されがちなもので、ギリシアでも河川は大小それぞれ対応する権威を与えられて神として祀られ、時には祭祀や社殿をさえ供えることがあったと。犠牲を捧げ、供え物を供えて、都市ごとに祀るのが通例となっていたと。
○芳賀委員長
   男女の別の話。
○渡邊臨時委員
   ええ。これで見ますと、ただし、系譜から言うと定説のように、これらの河川の神々はオケアノスの息子の川ポタモスはギリシア語で男性名詞なので、息子と書いていますから、やはり娘という感じが強いんじゃないかと思うんです。
○芳賀委員長
   オケアノスがOCEANになるわけ。
○渡邊臨時委員
   はい。とされていたが、神話伝説の実際ではあまり関係なく、男女は、そういうふうに書いて。
○芳賀委員長
   やっぱりね。
○渡邊臨時委員
   ええ。そして、やはり非常に多くの川の神が、それぞれの川に神様がいたというような説明をなさっているようです。
○光田委員
   生産に関係するときは女性神ととらえる傾向があるんじゃないですかね。またぎなんかは、だから、山は生産を与えてくれるものだから女性神ととらえて、さっきの和紙のお話でも、やっぱり和紙を生み出す元としての水ですから、女性神を考えてらっしゃる。
○芳賀委員長
   生産に結びつくと、なるほどね。
○光田委員
   女性神で。大物主のような意味合いは生産ではないですからね。あれはとんがっている、天に近い、屹立する象徴としての神ですから。
○芳賀委員長
   そうか。ははあ。なるほど大変ですね、これは、河川局も。(笑)日本じゅうの川を男女と、こう分けていったらおもしろいかもしれない。(笑)男川、女川、両方合わして男女(みなの)川と。(笑)
○光田委員
   おもしろいですね。それやってみたら、けっこう男川と女川が出てくるかもしれませんね。
○尾田委員
   そうですね。
○五味委員
   河川の改修なんていうときには、何かこういうふうに……。例えば、建物をやるときは地鎮祭みたいなのをやりますよね。ああいうのはやるんですか?
○事務局
   やるとおっしゃいますと?
○五味委員
   いいや。だから地鎮祭みたいな、川鎮めの。
○芳賀委員長
   水鎮祭かな。
○五味委員
   水を鎮めるような、お祭りみたいな。
○芳賀委員長
   水鎮めの。
○事務局
   工事そのもので業者が共通してやるというのはありますね。川の工事であろうが、トンネルを掘ろうが。
○芳賀委員長
   やっぱり神主さんが来てこうやって?
○事務局
   ええ。工事のときはやっていますし、終われば終わったで、また。
○光田委員
   水分り(みくまり)神社なんて、男ですか、女ですか。
○樋口委員
   ああ、水分り神社。おもしろい。
○芳賀委員長
   水分りね。いかにも女性みたいだけど。下が田んぼになるわけでしょう。
○光田委員
   あれは出産の神を兼ねてますよね。
○芳賀委員長
   そうですね。
○光田委員
   やっぱり女性神。
○樋口委員
   分る(くまる)ですかね。みこもると言いますしね。
○芳賀委員長
   でも、水を配るが水分りになったんじゃないですか。
○樋口委員
   それがさらに、こもるになった。
○芳賀委員長
   そう?
○樋口委員
   子供を守るって。
○光田委員
   子守の神様。
○樋口委員
   子守の神に変化したのね。
○芳賀委員長
   ああ、そうですか。
○光田委員
   ですから女性神のようなイメージですね。
○芳賀委員長
   ほんとうは水分と書くんですね。
○樋口委員
   水分ですよね。
○芳賀委員長
   これはみんな樋口さんの本で知ったことだけど。
○尾田委員
   日本人が思っているのは、川はやっぱり女性ですかね。女性のイメージですかね、日本人は。
○芳賀委員長
   そうですね。
○尾田委員
   今の現在人、どうですかね。
○五味委員
   母なる川ですから。
○尾田委員
   母なる川ですね。
○芳賀委員長
   それは案外、西洋から与えられたイメージかもしれないですね。
○渡邊臨時委員
   アメリカのミシシッピーはやっぱり男性のイメージが強い。ただし、フォークナーの水の描写は、これはいろいろあるんですけど女性なんですね。
○芳賀委員長
   水は本来女性的なものなのであって。
○渡邊臨時委員
   液体で、やわらかくて。
○芳賀委員長
   温かくて。
○渡邊臨時委員
   そうです。忍耐力があるとかそういう。
○五味委員
   上流ですと、やっぱり癒しの場になったり何かするから女性的な感じしますけど、下流部に行ってはんらんしたり何かをするとやっぱり男性的なイメージと。
○渡邊臨時委員
   ものすごいですよ。
○五味委員
   何かそういう。
○芳賀委員長
   竜神に変わるか。
○五味委員
   ええ。どこかでヒュッとこう。
○尾田委員
   上流は逆に、それは土石流とか出ますから。(笑)そっちのほうがずっと荒々しいイメージ。
○五味委員
   だから、それをどういうイメージを抱くかで変わってくるんじゃないかな。
○尾田委員
   いや。川もものすごい……。
○渡邊臨時委員
   ええ。だから、女性のとらえ方にもよるわけですね。
○高橋委員
   伊丹のわきを流れているのは何川でしたっけ。
○事務局
   猪名川でございます。
○高橋委員
   猪名川か。あそこにちなんでの神話で、『住吉神代記』に出てくるのは女性の神様が争う話ですね。川の神様、女性神。
○樋口委員
   『老子』の場合は玄牝(げんぴん)で、女性ですね。
○高橋委員
   そう。女性ですよね。
○光田委員
   コクシンシセツね。
○樋口委員
   幾ら使っても尽きないという。
○光田委員
   それから安曇川水系では思古淵(しこぶち)の神というのがいっぱい祀られていますね。淵の神、思古淵という。醜は強いという意味だと思うんですが、醜女の醜で、醜いと書いて。
○芳賀委員長
   淵は?
○光田委員
   淵は深いところです。思古淵の神って、いっぱい安曇川水系にありますね。最大のあそこの神です。
○芳賀委員長
   安曇川水系ってどこですか?
○光田委員
   安曇川水系って、琵琶湖の北の安曇川に流れ込む。
○芳賀委員長
   そうですか。そうか。
○樋口委員
   安い曇。
○光田委員
   至るところに思古淵の神って。
○芳賀委員長
   ああ、そうですね。安い曇だ。
○光田委員
   はい。あれは何なんでしょうね。あれは淵の神ですから水神だと思うんですが。ほかの神を押しのけて、あそこはほぼあれ一色というぐらい。
○芳賀委員長
   あそこへ集まったんじゃないですか。
○高橋委員
   それはお醜様というのとかかわりありますか?
○光田委員
   ええ。思古淵の思古とお醜様は同じ系統でしょうね。はんらんする川かもしれませんね、醜ですから、強力な。
○高橋委員
   カッパをお醜様って。
○光田委員
   カッパのことをお醜様って言うんですか。
○高橋委員
   はい。
○光田委員
   醜の益荒男の醜です。
○高橋委員
   カッパの神様のことをお醜様って言うところもあるんです。
○芳賀委員長
   醜女の醜。
○高橋委員
   だろうとは思うんですけど、それで今伺っていて。
○芳賀委員長
   何だかいろいろと一遍に出てきちゃいましたね。
 ミシシッピーはこうやって各流域にわたって氾濫すると、それの修復費とか何かは各州が分担して? フェデラル・ガバーメントが半分ぐらい持つ? 日本では県と国とですね。
○尾田委員
   私が行ったときに、ミシシッピーで州の知事の名前で工事をやっているところがありました。
○芳賀委員長
   州、ステートですか。
○尾田委員
   ステートです。ですから、ちょっと分担しているんじゃないですかね。ちょっとそれはシステムは僕はよくわかりません。
○芳賀委員長
   洪水のたびに分担しなおすんじゃ、あれですね。
○尾田委員
   それはないでしょう。ルールがちゃんと。
○芳賀委員長
   大体ルールはあるから。
○渡邊臨時委員
   そうですね。これでも知事が来ていますし、大統領も来ているわけです。だから、やっぱり全国的なものでもあるんじゃないでしょうか。
○尾田委員
   大水害のときはエマージェンシーを何か宣言をして、そうした場合はフィーマか何かそういうのが出てきてというシステムで。ただ、それが終わった後の災害復旧をどうするかというのは、別の何か体系があるんだと思いましたね、多分。
○芳賀委員長
   ということは、州ごとということですか。
○事務局
   1993年で少し制度が変わっているんです。
○芳賀委員長
   これでですか?
○事務局
   ええ。
○芳賀委員長
   これで不備だったんですね。
○事務局
   前は基本は工兵隊が持って、ローカルは地方でやっていたのが、もう少し流域全部で見る必要があるという「ゴアレポート」というのが出て、それから、予防から何からけっこう余計に国が口を出すようになっているところがありますけれども。それでも、基本的には役割分担の世界で書いてありますね。
○芳賀委員長
   この93年の大洪水って、ルイジアナ州のほうには洪水は広がらないのですか? 上のほうであふれちゃって、下は普通なのですか?
○渡邊臨時委員
   むしろ下のほうが被害が大きいんじゃないかと思いますが。
○芳賀委員長
   それはそうですね。ルイジアナのあたりまで?
○渡邊臨時委員
   ええ。そうだと。ただし、下のほうはむしろ護岸工事がしっかりしているというようなことがちょっと書いてあったと思いますけれど。
○芳賀委員長
   上でこれだけ広いところにあふれてしまえば、下は案外行かないで済むのではないですか?
○渡邊臨時委員
   ええ。ところがこれで見ますと、どうも中流あたりが一番被害を受けている感じがあるんですね。
○芳賀委員長
   でしょう。下流はむしろ。
○渡邊臨時委員
   むしろ護岸工事をちゃんとやっているので流れていく。
○芳賀委員長
   そうか。
○渡邊臨時委員
   その中間は四方八方から合流するわけですから、大変なんだろうと思うんです。
○事務局
   事務局からお伺いしたいんですけど、さっき、ネイチャーライティングの話でダムのお話がよく出てくるんですが、ダムはダムでわかりやすいんですけど、ダム以外の話というのは、ネイチャーライティングの中では、川はどうあったほうがいいとかいうのは。
○渡邊臨時委員
   そういう何か系統だったものではなくて、非常に感覚的なもので、ここでもそうだと思いますけれど、象徴として扱っていると思うんです。
○事務局
   ほとんどダムの話でございますか?
○芳賀委員長
   どこどこのダムがけしからんとか、そういうのじゃない。
○渡邊臨時委員
   そういうことじゃないんです。もう少し一般的に。
○芳賀委員長
   じゃ、ちょっとインパクトは薄いじゃない。
○渡邊臨時委員
   ええ。
○芳賀委員長
   俳句みたいな感じ? 『奥の細道』みたいな感じ?
○渡邊臨時委員
   もちろん特定の川を描いていて、そこにダム工事というのはあるんだと思いますけど、それだけを攻撃しているということでなくて、やはり要するに、人工的に制御するというようなことに反対している、そういう一般論に近いんじゃないかと思うんです。
○事務局
   そうだと思うんですが、ダム以外で川の使い方をもうちょっとこう……。
○渡邊臨時委員
   それは、それぞれの作品によって違うと思いますので。(笑)日本で考えられるようなことは、そしてその扱っている川にあれば、当然あがってくると思うんです。
○芳賀委員長
   でも、まだほんとうの傑作なんて、そんなにないんでしょう、ネイチャーライティングは。
○渡邊臨時委員
   そうですね。第一級のクラシックというのはないと思います。
○芳賀委員長
   ないでしょう。僕も何か研究発表を聞いたことがあったけど、あまりおもしろくなかったですね。
○渡邊臨時委員
   そうですね。ま、そういうところはあるんですけど。ただし、数が多くなったということと、それから英文科の先生がそちらのほうに目を向けていると、そういう傾向が強いということなんです。それがあと20年くらいたちますと、総決算で傑作があるのかないのか、そういうことが出てくると思います。
○芳賀委員長
   日本ではないですか、ネイチャーライティングみたいなのは。今。立松和平とかさだまさしとか。
○渡邊臨時委員
   そうですね、今、日本ではむしろ宮沢賢治とかああいう人たちに目を向けているんです。
○芳賀委員長
   それは結構ですね。宮沢賢治は、それは偉いから。
○渡邊臨時委員
   ええ。ああいうところをアメリカの理論で解釈しようという、そういう傾向が強いと思います。
○芳賀委員長
   宮沢賢治は単にネイチャーライティングなんていうものじゃないな。
○尾田委員
   それは全然違う。
○渡邊臨時委員
   ネイチャーライティングと言わなくてもいいんですけどね。
○芳賀委員長
   もったいない。
○尾田委員
   宮沢賢治が怒るな。
○芳賀委員長
   怒る、怒る。それは斎藤茂吉だってネイチャーライティングだし、芭蕉もその系だし。
○渡邊臨時委員
   そうですね。
○芳賀委員長
   もっとさかのぼれば『万葉集』も、柿本人麻呂なんていうのは。
○渡邊臨時委員
   はい。ただ、アメリカなんかの場合ですと自然と人間は完全に対立するものとしてとらえている。
○芳賀委員長
   それはそう。
○渡邊臨時委員
   それが日本の場合ですと自然の中の一部としての人間ということで、向こうの学者は日本のそういう見方を紹介する。そういうことで、日本の研究者から見れば当たり前のことを言ってるじゃないかという面もあるんです。
○芳賀委員長
   当たり前のことね。今度のインドネシア洪水でも何十万死んだ、あれはああいうものだと、あの地域にしてはあきらめているんですかね。やっぱりあきらめもあるんでしょうね。あれはヨーロッパやアメリカとは違うでしょうね。インドネシアの、スマトラの先あたりとか。
○尾田委員
   いや。あきらめているかどうかわかりませんけど、この前、私はスリランカへあの後行ったんですが、茫然自失してますね。
○芳賀委員長
   茫然自失ですか。そうですか。
○尾田委員
   ですから、立ち直れる、その……。
○芳賀委員長
   気力を失った。
○尾田委員
   失っておられるんです。
○芳賀委員長
   そうですか。
○尾田委員
   現地の人たちからは、日本はそういう災害を受けて立ち直った経験をいっぱい持っているだろう、そういうのをぜひ伝えてほしいと。
○芳賀委員長
   ぜひ伝えるといったって、何を伝えればいい。
○尾田委員
   ですから今度、奥尻で被害を受けて、そこから立ち上がった実際の漁民の方と、それから奥尻の町の方とが現地に行って現地の人と話をするような、そういうことをやろうといって、今、若い連中、ユースの連中がそういう取り組みをしてますけれども。だから、あきらめているとか何とかいうけど、やっぱりあれは、太平洋でチリ津波が起こって日本人が被害を受けて人命を失いましたね。あのときは太平洋でそういうシステムをつくりましたけど、インド洋ですからなかったんですね。当然、あそこはプレートがもぐり込んで。
○芳賀委員長
   それはこれからつくらなきゃいけないですね。
○尾田委員
   はい。だから、あそこもつくっておけばよかった。そうしたらこんなに命をなくすことは絶対なかったはずなんですね。
○芳賀委員長
   そうですね。何時間かあったんだから、スリランカなんか。
○尾田委員
   もうものすごい時間はあったんです。同じスリランカでも、インド洋に面しているところから裏へ回り込むまで数時間かかってますから。
○芳賀委員長
   そう。あれがまたすごいですね、回り込んで。
○尾田委員
   ですから、あれは人命は、少なくとも救えましたですね。
○芳賀委員長
   そうですね。スリランカの表側、東側に来たところで、まだ西側は逃げられたでしょう。
○尾田委員
   うん。それは逃げられるでしょうし。ですからそれは、警報システムがちゃんとあれば。アチェのところは別にしましてですね。
○芳賀委員長
   でも、このマーク・トウェインやフォークナーみたいに、人間は自然と対立し、自然は時々人間を逆に逆襲するというとらえ方は、この太平洋沿岸には、インド洋沿岸にはそんなにないんじゃないですか?
○尾田委員
   ちょっとわかりません。
○芳賀委員長
   人間は時々海にのまれるものだと。
○五味委員
   ああいう災害の記憶が全くないんじゃないですか。
○芳賀委員長
   そうか。ないから、あんなのは。
○樋口委員
   ないからやっぱり。
○五味委員
   生まれてないと。
○芳賀委員長
   津波というのはね。
○五味委員
   ええ。
○尾田委員
   全くないこともないようなんですけどね。
○高橋委員
   ああ、そうですか。
○芳賀委員長
   でも、あれこそ何百年に1回でしょう、こんなのはね。こちらは150年に1回と書いてある。
○尾田委員
   ただ、あれは同じところが壊れるのは数千年、数万年に1回ですけど、いっぱい壊れるところありますから、もぐり込んでいるところが。もうちょっと頻度はあるんでしょうね。
○五味委員
   もし記憶があればね。何かそういうふうなものがもうちょっとあってもいいと思いますけどね。
○芳賀委員長
   そうか。そうすると、茫然自失する以外ないか。
○尾田委員
   ほんとに茫然自失で。
○芳賀委員長
   でも、そこに奥尻の漁民が行っても役に立たないんじゃないかな。
○尾田委員
   ちょっと行ってみないとわからない。
○芳賀委員長
   あまり文化が違いすぎて。
○尾田委員
   そうかもわかりません。ただ、現地からそういう声があるというので、若い連中が一生懸命今、取り組んでますので。
○芳賀委員長
   宮村さん、何か。
○宮村委員
   いや、もう聞くだけに回ってますけど。きょうはミシシッピー川の話を聞いたですが、アメリカにはほかにそういう川を取り上げる……。
○渡邊臨時委員
   ええ、もちろんあります。
○宮村委員
   例えばコロンビア川というのは母なる川ということで。
○芳賀委員長
   コロンビア川というのがあるのですか。
○渡邊臨時委員
   ええ。
○宮村委員
   うん。コロラド川が父なる川ですね。
○芳賀委員長
   コロラドが、あ、そうですか。
○宮村委員
   同じアメリカの中でも、しかも南と北であって流れ方が全然違うので。
○渡邊臨時委員
   多くの川を取り上げていますけれど、その中で問題は、むしろ川下りとか冒険物語としてとらえられていることが多いものですから、きょうは取り上げていないわけです。小さな船で上流から河口まで下る、その間で土地の住民との交流とか、そういうタイプの小説というんでしょうか、ノンフィクションは非常に多いんですね。
○芳賀委員長
   ハドソン川は?
○渡邊臨時委員
   ハドソン川はあまり聞かないですね。
○芳賀委員長
   そうですか。
○渡邊臨時委員
   それからネイチャーライティングですけれど、いろんなグループがあるんです。そして、一番大きいのはいわゆる環境保護団体の、改革を求めるパンフレットがありますね、こういうものを大学の英文科のネイチャーライティングを研究しているあるいは書いている人たちは批判的なんです。それは文学ではないと。
 そうではなくて、例えばソローがいつも中心になるわけですけど、150年前、自然に対するものを言っている。それは言っているのは直接の何かを言っているんじゃなくて、むしろある特定の状況を変革するための主張でなくて、人間の意識を変える、そういうところにウエートがあると。それがほんとうのネイチャーライティングだというような言い方があります。
○芳賀委員長
   それはアメリカの中でですか?
○渡邊臨時委員
   アメリカの主流がそうなんです。ですから、環境団体で過激なものありますね、どこどこのダムはけしからんとか。そういうものと一線を画している。
○芳賀委員長
   そうですか。
○渡邊臨時委員
   それは両方あるんです。それじゃだめだという先生と。
○芳賀委員長
   環境と。
○渡邊臨時委員
   それは文学で、対照的なものであって、意味はないと。もっと100年単位で物を言わなきゃいけないと、そういうグループが出ていって、私の受けた感じでは後者のほうが多いものですから、どこどこのダムを廃止せよとかそういう形では出てこないという感じです。
○芳賀委員長
   ソロー、ウォールデンの後継になるのですね。
○渡邊臨時委員
   戻れという、そうなんです。
○芳賀委員長
   じゃ、安心しました。(笑)というわけでもないか。
○尾田委員
   ダムは、それはだれでもつくりたくてつくっているわけではなくて。(笑)それはやむを得ず、プラスとマイナスを考えてつくっているだけの話で。
○渡邊臨時委員
   ええ。それはわかっていますけれど、そういうグループの人たちは、やっぱりターゲットになるんですね、どうしても。
○尾田委員
   ですから、アメリカでネイチャーライティングでダムを壊そうという人は、さっき話が出たサンフランシスコとかロスに水を持っていっている、あの上流の大ダムを彼らが壊すというのは、それはそれで私はちゃんとした決心だと思いますけどね。
○芳賀委員長
   ですから、ロス、サンフランシスコがひからびてもいいと言うんですか。
○尾田委員
   そうそう。なくなっていいという決心をするなら。
○芳賀委員長
   そこまで言うならね。
○尾田委員
   うん。それなら本気の。
○渡邊臨時委員
   それは実際そうなので、そういう主張をする人たちは、主張しながら、実は文明の恩恵に。
○芳賀委員長
   そうですよ。そんなこと書くのは、電気つけて書いてるんでしょう。(笑)パソコンで書いてるんでしょう。
○渡邊臨時委員
   そうです。
○芳賀委員長
   木の葉っぱに筆で書いてるのならまだしも。
○渡邊臨時委員
   だから、そういう批判は当然あるんですけどね。
○芳賀委員長
   それで電話かけて、ファクスで原稿送っててね。それでシアーズか何かで買ったワイシャツなんか着てね。
○渡邊臨時委員
   そうです、そうです。
○芳賀委員長
   どうも。いろいろおもしろかったです。どうもありがとうございました。
 

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