「住民」という場合、地縁的な意味でそこに住んでいる人、あるいは地域に直接的な利害を有する人という限定的な意味で使われる場合が多い。「市民」という場合、「住民」のように地縁や特定の利害関係で結ばれているといった意味はなく、「住民」をも含んで「参政権を持つ国民」といった幅広い意味で用いられる場合が多い。本提言では、河川管理にかかわるパートナーシップの主体が地縁的な人々に限定されるとは限らないとの考え方から、「市民」という言葉を幅広い意味を持たせて用いた。
(参考)
これまでの公的な文書では、「市民」ということばより「住民」ということばが使われる場合が多い。(河川審議会答申など)
地域のコミュニティを形成する代表的な団体である町内会、自治会などが全員加入のため、受け身の付き合いの場になったり、形骸化している場合もあり、非民主的とか前近代的とかのイメージで見られることもある。また、行政の下請け機関としてみられる場合もある。「住民」という言葉にこれらのイメージがまつわりつくこともある。
「市民」という用語には、「町民」や「村民」と同じ意味で「○○市の住民」という意味があり、そこから派生して都市住民という意味があるが、本提言では「市民」にこのような意味を含めていない。
地縁的な意味合いの強い「住民」という言葉に対置して、それとは違う意味合いを強調して「市民」という言葉を用いる場合がある。例えば、「市民」という言葉にあるテーマに対して(特に地縁的な意味での)利害関係を有しない人という意味を持たせたり、そこから派生して利害とは無関係に自発的な個人意思で参加してくる人という意味を持たせることがある。また、それらの裏返しの意味として、地域に根づいていないために責任に関係しない人などのニュアンスを帯びる場合もある。「市民」という言葉にはこのような様々なイメージが付きまとうが、本提言で用いる「市民」の意味にはこのような様々なイメージを込めて用いていない。