ホーム >> 政策・仕事  >> 河川トップ  >> 審議会等  >> 過去情報

河川局

審議会等の情報
河川審議会について


3.総合的な土砂管理の展開


(1)
総合的な土砂管理に向けて

 山地・山麓部、扇状地、平野部、河口・海岸部等の領域で起こっている土砂に関する問題は、個別の領域の問題として対策を行うだけでは十分ではない場合があり、その場合は影響が及ぶ流砂系の問題として解決を図るべきである。

 その際、流砂系の土砂の実態把握を前提として、前項で述べた基本理念に基づき、総合的な土砂管理計画を策定し、的確な対策を実施することによって、土砂の量と質のバランスのとれた安全で自然豊かな親しめる河川・海岸の実現を目指すべきである。

 そのため、当面、ダム貯水池の堆砂、砂利採取による河床低下、海岸部の侵食等の問題が顕在化している流砂系において、土砂移動の量と質についての予知・予測が必ずしも精度よく行えない現状を踏まえ、モデル的に流砂系の土砂の実態把握を行い、効果や影響を見ながら土砂を供給するなどの対策を実施するべきである。

 また、土砂管理上問題のある流砂系をもつ河川等において、これまでの土砂移動状況について既存のデータを活用して分析を行い、総合的な土砂管理計画の策定を目指して土砂の量と質に関するモニタリングを行うとともに、予知・予測手法の向上を図るための研究を推進することが必要である。

 具体的な施策としては、次のようなことを行うべきである。

(2)
総合的な土砂管理のために推進する施策

 1)
モニタリングの推進

 土砂管理上問題のある流砂系において過去の土砂移動状況について分析を行い、土砂の量及び質について流砂系を一貫したモニタリングを組織的、体系的に実施する。また同時に土砂移動と環境との関係を把握するための調査、研究を推進する。

 2)
土砂を流す砂防の推進

 山腹崩壊、地すべり、土石流など土砂移動による災害防止対策およびその一環として森林の保全・育成による土砂流出防止を一層推進するとともに、砂防ダムの機能、下流の保全対象等への影響について検討を行い、有害な土砂を捕捉し、量、質の観点から適切な土砂を下流へ流すことのできる砂防ダムの設置並びに既設砂防ダムのスリット化を推進する必要がある。

 3)
流砂系内土砂再生化システムの構築

 ダム、床止工等の河川管理施設または砂防ダム、遊砂地等の砂防設備等に堆積した土砂について、その目的や機能を損なわない範囲で除石し、養浜が必要な海岸あるいは河床低下が著しい河川などに活用する施策を推進することが必要である。この際、除石する土砂の量及び質(粒径・構成等)について十分に留意することが必要である。

 4)
ダムにおける新たな土砂管理システムの確立

 大規模な人工構造物であるダムは、大量の水を貯めると同時に大量の土砂を貯めており、流砂系における土砂の連続性を遮断し、下流への土砂供給量を減少させる施設となっている。そのため、ダムの所期の目的を損なうことなく、ダムから土砂を排出し、適正に下流に土砂を流すための施策を検討することは、総合的な土砂管理を進める上で必要不可欠な課題である。

 具体的には、新たなダム計画において土砂を下流へ流すための土砂管理システムの確立、既設ダムの堆積土砂を排出するためのシステムの整備、既設利水ダムにおいて堆積土砂を排出するための施策、ダム下流の土砂移動を考慮したダム放流の検討が必要である。

1.
新たなダム計画における土砂管理システムの確立

 従来、ダムの計画堆砂容量は100年間に流入する土砂の量で決められているが、ダムの機能は100年間で終わりではなく、可能な限り長くその効用を機能させなければならない。また、今後、総合的な土砂管理を考えていく上で適正に土砂を下流に供給するシステムが必要である。

 そのため、ダム貯水池計画における堆砂計画の見直し、ダム貯水池への流入土砂量の抑制、貯水池直上流の貯砂ダムの設置、貯水池内土砂の人為的排除、排砂管、排砂門による排砂の強化といった各種対策の組み合せにより、永久的なライフサイクルコストを考慮した土砂対策を検討し、今後建設されるダムにおける土砂管理システムを確立する必要がある。

2.
既存ダムの土砂排出システムの整備

 ダムへの堆砂による治水・利水上の障害、維持管理費の増大等の問題に加え、新規ダム建設の状況の厳しさの懸念等を考慮すると、既存施設の有効利用を図る必要がある。そのため、特に、土砂堆積が著しく進んでいる既設ダムについて、土砂を排出するための操作方法の見直し、土砂を排出する施設の設置等の各種事業を推進し、当該ダムに期待されている機能の回復を図る必要がある。

 また、その他のダムについても、既存施設のさらなる有効活用に資するため、積極的に土砂の排出のための対策を推進し、新たな容量の捻出を図り、清流回復等の河川管理上必要な目的に活用する等の施策を行う必要がある。

3.
既存利水ダムにおける土砂排出施策の検討

 総合的な土砂管理を行う上で、発電ダム等の利水ダムにおいて排砂を推進することは必要不可欠な課題である。関係する管理者の協力を得て、土砂の排出を進めることは当然のこと、河川管理上の必要な行為として、土砂を流下させるための事業に対する優遇措置等の施策の検討も必要である。

4.
土砂の移動を考慮したダム放流の検討及び実施

 ダムによる流砂系における土砂供給量の減少は、河床変化等の物理的な影響だけでなく、洪水調節による流量変化の平滑化を原因とする掃流力減少のための水みちの固定化、高水敷の樹林化等の河川環境の変化となって現れる。そのため、ダム放流方法の決定にあたっては、河川の有する本来の自然の変化を考慮することが総合的な土砂管理を考える上での重要な視点となる。

 しかしながら、土砂移動が生物の生息生育環境に与える影響や効果については、現時点では明確とされていないため、今後、人工洪水、フラッシュ操作等のダム放流の変化による河川環境に与える影響・効果を現地で試験的に確認し、生物の生息生育環境も考慮した適性な土砂移動の確保のためのダム操作について、調査研究を進めていく必要がある。

 5)
河川構造物の適正な維持管理

 河床低下により安全性が低下している河川横断構造物等については、取り付け護岸や護床工の補強対策を必要に応じて講ずるほか、砂防設備やダムの土砂を流下させる施策の推進とともに下流への土砂の直接的な供給などにより、河床の管理という視点も十分考慮し、適正な土砂管理を行う必要がある。

 6)
適正な砂利採取

 河積が十分に確保された河川では、砂利採取は河床の過剰な低下や環境への悪影響を与えるので禁止の方向を堅持するが、堆積傾向にある河川では、河道および海岸の維持と砂利供給を調整しつつ、適正な砂利採取を行うことが重要である。

(3)
関係機関との連携

 総合的な土砂管理を効率的かつ効果的に推進していくため、問題点の抽出を行うとともに、各流砂系の状況に応じて砂防、森林、ダム(発電ダム等の利水ダムを含む)、河川及び海岸(港湾、漁港を含む)等の関係行政機関の一層の連携を図ることが必要である。

(4)
総合的な土砂管理の実施に向けて

 総合的な土砂管理を行うにあたっては、関係機関、学識経験者及び地域住民等が意見交換しその成果を施策に生かすことや、積極的に情報公開を行うことが重要である。





Copyright© 2007 MLIT Japan. All Rights Reserved.

国土交通省 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3

アクセス・地図(代表電話)03-5253-8111