ホーム >> 政策・仕事  >> 河川トップ  >> 審議会等  >> 過去情報

河川局

審議会等の情報
河川審議会について


1.都市と河川の関わり


1.1 急激な都市化と河川の変貌

 都市内を流れる河川は大きく二つに分けられる。一つは都市の中だけを流れ、その都市で適切な施策を講じることにより、治水対策が可能な河川である。もう一つは、上流から水とともに恵みや災いを運んでくる比較的規模の大きい河川である。

 昭和30年代から始まった急激な都市への人口、産業の集中や流域における開発は、都市内の河川を軸とする水循環系にも大きな影響を与えた。都市内の中小河川では、相次ぐ大型台風の襲来もあって水害が多発するようになり、水質汚濁をはじめとする河川環境の悪化に悩むこととなった。また、洪水処理機能の向上を中心とした整備は、河川と人々の日常生活との関係を一層希薄なものとした。

 都市内を流れる河川は大きく二つに分けられる。一つは都市の中だけを流れ、その都市で適切な施策を講じることにより、治水対策が可能な河川である。もう一つは、上流から水とともに恵みや災いを運んでくる比較的規模の大きい河川である。  昭和30年代から始まった急激な都市への人口、産業の集中や流域における開発は、都市内の河川を軸とする水循環系にも大きな影響を与えた。都市内の中小河川では、相次ぐ大型台風の襲来もあって水害が多発するようになり、水質汚濁をはじめとする河川環境の悪化に悩むこととなった。また、洪水処理機能の向上を中心とした整備は、河川と人々の日常生活との関係を一層希薄なものとした。

(1)
多発する水害と治水対策

 流域の開発や都市化の進展により、緑地や農地等の浸透域が減少した。その結果、洪水はより短時間により多く流出するようになった。また、低平地での市街化の進展や地盤沈下等により、洪水による被害ポテンシャルが増大した。この様な都市型水害が初めて指摘されたのは、昭和33年の狩野川台風においてであった。

 財政上の制約のなかで、緊急に都市の治水安全度の向上を図るため、洪水処理を中心とした河川整備が行われた。川沿いに住宅や工場が密集した都市においては、河川用地の確保が困難であり、限られた用地の中で洪水を処理するために、河床を掘り下げ、河岸を直壁としたいわゆる三面張のコンクリート護岸やコンクリートの直立した構造の堤防も数多く造られた。

 その一方では、依然として大都市内に無堤地区が存在し、水害の危険があった。

 昭和40年代後半になって、都市部における洪水の流出増を線的な河川のみで対応するのは限界があると認識され、流域全体で面的に流出負荷を受け持とうという総合治水対策が始められた。

(2)
河川環境の悪化

 都市内においては、上流域における取水量の増加、浸透域の減少や下水道整備による取排水系統の変化等により、河川水や湧水が枯渇、減少した。

 都市への人口集中に下水道の整備が追いつかず、家庭からの生活排水は、河川をはじめとする公共用水域に直接排出された。また、工場廃水も十分な処理が行われないまま河川に排出されるようになった。このような自浄能力を超える汚濁負荷の増大は、急速に河川の水質悪化をもたらし、悪臭を放つ河川も増加した。河川水質の悪化や洪水処理中心の河川整備によって、都市内の中小河川の多くは生物の生息が困難になった。

 さらに、これらの河川は、周辺住民の要望もあって、埋め立てや蓋かけがなされ、道路などに利用された例も多い。

 昭和45年に制定された水質汚濁防止法に基づく排水規制、また下水道の整備、浄化用水の導入や河川水の直接浄化等の対策が行われ、昭和50年代に入ると、都市内の河川の著しい水質汚濁は相当改善された。その後、都市内の河川の水質は徐々に改善しているものの、依然として十分でない河川も多い。

(3)
河川に関係する伝統的な行事の廃絶

 河川環境の悪化や、都市への人口集中に伴う生活スタイルの変化によって、都市内においては、流し雛、灯ろう流しなどの川にまつわる伝統的な行事の多くがすたれ、川を介した地域住民の交流も途絶えたところが多い。

(4)
まちづくりと連携した河川環境の形成

 社会全体の生活水準が向上した昭和60年代になると、住民の多様なニーズを踏まえ、地域の個性を活かしたうるおいのある河川整備や、川沿いのまちづくりと一体となった河川整備が行われるようになってきた。

 平成2年には、環境への意識の高まりの中で、河川に棲む生物に配慮した川づくり(多自然型川づくり)が全国的に始められた。さらに、平成7年には、河川審議会答申「今後の河川環境のあり方について」において、生物の多様な生息・生育環境の確保が打ち出され、平成9年には、「河川環境の整備と保全」が河川法の目的に位置づけられた。

1.2 都市内河川の抱える課題

 これまでの河川整備は、多発する水害に対応し、都市における治水安全度を向上させるため、洪水処理対策に最大限の努力を払ってきた。その緊急性があまりにも高かったがゆえに、必ずしも河川の生態系や河川利用への配慮を十分に行ってきたとは言い難い。

 市街地では、他の地域に比べ川沿いの土地利用が輻輳しており、また生活様式が多様なことから、沿川地域と河川との関わり方も異なっている。しかし、これらの都市の特性に着目した河川の構造についての特別な基準はなかった。また、沿川地域の住民の河川に対する様々な要望が、河川整備に直接反映される仕組みもなかったこともあり、河川整備にそれぞれの都市の個性を尊重することは少なかった。

 一方、まちづくりの主体である市町村は、河川整備に関する権限がなかったこともあり、まちづくりの中で河川の特性を活かすという発想も希薄であった。さらに、河川の利用面についても河川管理者の裁量によるところが多く、市町村としては河川を都市空間として利用しにくかった面もある。

 河川とまちづくりを一体的に進める手段に「都市計画」がある。しかし、河川が基本的には現状の土地利用をもとに計画、整備されるのに対し、まちづくりは将来計画を中心に計画されていることもあり、計画エリア、整備スケジュール等が異なることも多い。そのため、河川を都市計画に位置づけ、まちづくりに活かす取組みはほとんど行われてこなかった。また、人工物である都市の中で、自然公物たる河川は、扱い難い面があったとも言える。

 このように、河川とまちづくりがそれぞれ別々に計画、整備されてきた結果、都市内の河川はDID(人口集中地区)を中心に、現在、防災、環境、河川利用の面で、以下に示すような多くの課題を抱えている。

(1)
都市の防災

 都市内の河川は、埋め立てによって水面の消滅や川幅の減少が進み、従前河川が持っていた火災時の延焼遮断の働きを損なっている。また、川沿いに近接して建てられた建築物は、河川へのアクセスを阻害し、災害時の河川への避難や消火用水としての利用などを困難にしている。さらには、地域防災計画において、河川や河川敷地が緊急時の避難路や避難地、緊急輸送路として位置づけられておらず、本来、河川が持ちうるこれらの役割が十分活かされていない。  なお、災害の規模、種類によっては、河川があるために通行を阻害し、河川自体が危険な存在となりうることも忘れてはならない。

(2)
河川環境

 都市内の密集市街地では、河川に近接し背を向けた形で家屋が建ち並び、川沿いに連続して歩けないところが多い。また、河川整備による高い堤防、コンクリートの直立堤防、切り立った護岸、張り巡らされたフェンス等によって、人々は水とふれあうことができなくなったばかりでなく、河岸に近づくことさえ不可能となった。

 このため、都市内河川の多くは、狭くて暗い景観を呈している。また、それぞれの地域が持つ歴史、風土、文化が活かされず、画一的で個性のない河川景観となっているところも多い。さらに、川と街並みが一体的にデザインされておらず、ちぐはぐな都市景観を形成している。

 都市内の河川では、水循環系の変化から生じた河川流量の減少、水質の悪化やコンクリート護岸に代表される河川施設の構造等が環境へ様々な影響を与えている。生物の生息・生育環境の悪化により、汽水域をはじめとして生物間の食物連鎖に影響を与えている。また、悪臭の発生やうるおいの喪失、さらにはヒートアイランド現象等、日々の生活環境にも悪影響をもたらしている。

(3)
河川利用

 土地利用が高度化した都市においては、河川空間に対しても様々な利用が望まれている。しかし、これまで洪水処理機能の確保が河川整備の最優先課題とされてきたことから、河川に対してまちづくりや地域活性化の役割が求められることは少なかった。一方、河川は洪水処理を万全に行おうという視点が強かったため、これに少しでも支障を来す恐れがあるものは排除してきたことから、ライフラインの収容空間として利用すること等を積極的に認めてこなかった。

 今日、地球温暖化等の解決に資することから、その利用が期待されている河川水熱の有効利用(ヒートポンプ)やエネルギー使用量の小さい河川舟運の再構築に対する取り組みがなされており、これらに対する各種の基準やルールづくりが急がれているところである。なお、河川審議会の答申を受け、河川における船舶の通航ルールの準則が先般定められたところである。

 また、近年の水上レジャーに対するニーズの高まりは、都市内の河川にもプレジャーボートの増加をもたらした。一方、それらの所有者のモラルの欠如、係留施設の不足等に起因して、多数のボートが河川内に不法係留されており、公共水域の利用や災害及び安全上の問題にとどまらず、都市の環境上多くの問題を引き起こしている。

 以上のように、現時点で全国的に見れば、都市内河川は多くの課題を抱えている一方、これまでにも様々な事業・施策を組み合わせて、河川を活かした良好なまちづくりが行われてきた事例もいくつか挙げられる。

 そのような例として、西宮市において夙川沿いに計画的に緑地を配置した夙川公園や、広島市において古川の沿川地域における地区計画により川沿いの景観に配慮して整備された街並み等がある。

 このような事例で共通するのは、川を身近に感じ、まちづくりに川を活かそうとする地域の熱意であり、このような地域の要望に応え、支援する方策が必要である。





Copyright© 2007 MLIT Japan. All Rights Reserved.

国土交通省 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3

アクセス・地図(代表電話)03-5253-8111