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河川局


3.流域対策

 (1)雨水の流出域での対策

 雨水の流出域においては、森林の適切な管理等による保水機能の保全や調整池等の設置による流出の抑制が、河川への洪水流出を増大させないための対策として効果を発揮すると考えられる。

 このうち、開発等に伴い、保水機能が損なわれる場合には、調整池等の貯留施設を設置し、流出抑制策を講じることが行われてきた。また、既成市街地等で既に保水機能を失っている地域では、機能回復の観点から、公的施設に貯留施設を設置するなどの対応が重要である。

 さらに、土地の有効利用の観点から、調整池等をビオトープ等に利用するなど多目的施設として活用することも重要である。

 このような対策を適切に推進するとともに、以下の点についても具体的に対応を進めるべきである。

 なお、雨水の流出域における貯留等の流出抑制対策は、雨水の流出域以外においても必要な対策であるため、河川の特性等を踏まえ、適切に実施することが必要である。

@貯留施設等の機能の担保
 開発事業者等が設置した調整池については、その機能の担保のため、地方公共団体と協定を締結すること等が重要である。しかし、所有者が替わった場合にその効力が失効し、調整池が消失するなどの問題を発生している場合もあることから、調整池の設置及び管理に際しての特段の配慮事項を整理した「宅地開発に伴い設置される流出抑制施設の設置及び管理に関するマニュアル」(本年7月に都道府県等に通知)の適正な運用を含めて、以下の対策を講ずるべきである。

<公的組織への移管>
 開発事業者が設置した調整池については、原則として、地方公共団体等が所有権を確保するなどを含め公的組織に移管を進めるものとする。
 この際、調整池を多目的施設として活用するための方策についても検討すべきである。
<河川管理施設として位置づけ>
 公的管理を行う調整池のうち、調整池の規模や、その効果等を勘案し、治水計画上の位置付けが可能なものについては、河川管理施設として位置付けることも検討すべきである。
<民間管理施設の機能担保>
 民間が管理する調整池についても、その改変を防止するため、地方公共団体等が土地に対する一定の権原を確保する等の対応を図るよう検討すべきである。

A貯留施設等の適正な設置・運用
 調整池等の貯留施設や浸透ます等の浸透施設、それらの機能を併せて持った貯留・浸透施設について、流域全体の治水安全度の向上等の観点から以下の対策を推進すべきである。

<貯留施設の適正な運用>
 本川のピーク流量低減の観点からすると、調整池等の貯留施設の設置位置や下流の状況等によっては、放流方式等を変更すること適切な場合もあるため、貯留施設の運用方法について十分検討を進めるべきである。
<貯留施設等の設置基準の総合的検討>
 宅地開発に伴って設置する調整池については、直下流への影響のみを考慮するよう指導がなされているが、宅地開発を指導する自治体と河川管理者との連絡体制の強化を図り、下流域全体への影響を含めた総合的な検討を進めるべきである。 また、増加する小規模開発に関しては、開発される流域や河川の治水安全度の状況等を踏まえ、治水上の効果を総合的に検討した上で、貯留施設や浸透施設の設置について検討を進めるべきである。
<地域住民による対応>
 各戸貯留や浸透ます等の個人レベルの流出抑制対策については、住民の負担を伴うことや、個々の効果がわずかであるため、必ずしも十分には実施されていないのが実情であるが、地域全体で整備を行うことにより環境面での効果を含め、一定の効果が期待できるため、その整備の在り方について今後検討すべきである。

 (2)洪水の氾濫域での対策

 洪水の氾濫域では、被害の最小化や生活基盤の確保等の観点から、地域の特性を踏まえると、霞堤等の遊水機能の保持や土地利用状況に応じた安全度の設定等の対策を講ずることが適切な場合がある。また、河川沿いの樹林帯は、氾濫した場合の流水の減勢や堤防の保護に有効であるため、その適用場所、配置方法等について検討を進めるべきである。

 これらのことも踏まえ、以下のような対策を推進すべきである。

@洪水氾濫形態別の対策
 洪水の氾濫域は、地形特性による洪水の氾濫形態の違いから、平面的に広がりを有し氾濫水が拡散していく「拡散型氾濫域」と、山間部等で河川の横断方向に広がりがなく氾濫水が拡散しない「非拡散型氾濫域」に区分されるが、それぞれの対策について次のとおり検討すべきである。

イ)拡散型氾濫域での対策
 拡散型氾濫域では、氾濫の被害が広範囲に及ぶため、根幹的な生活基盤や生産基盤を守るための連続堤方式等の河川整備を行うことが基本である。
 しかし、霞堤や二線堤等についても、治水上の効果を適切に評価し、積極的に活用すべきである。
<霞堤の機能の担保>
 霞堤には、洪水時の流水を一時的に貯留し流量低減の機能を発揮するものと、流量低減の機能は期待しないが超過洪水への対応や氾濫水を河道内へ早期に戻す等の機能を発揮するものがある。これらの機能を担保するため、これらの地区内の建築物の立地等について土地利用方策が必要である。
<二線堤等の活用>
 二線堤等の活用の実績は少ないが、二線堤は氾濫箇所から一定以上の範囲に洪水を拡散させないなど、被害の範囲を限定する観点からすると有効な手法である。鹿島台町等での実例も踏まえ、氾濫流を制御する方策やその整備手法について検討を進めるべきである。

ロ)非拡散型氾濫域での対策
 非拡散型氾濫域では、限られた平地部を農地や宅地として利用していることが多く、連続堤方式とした場合、地域の基盤である宅地や農地の大半が堤防敷地として失われてしまうこともあることから、連続堤以外の方式と土地利用方策を組み合わせた対策を講ずることが有効な場合がある。この場合、土地所有者等の理解と協力が不可欠であり、連続堤方式によって失われる土地との比較等の状況を勘案し、地域の意見を反映する手続きを経た上で、対策を決定する必要がある。
 なお、連続堤方式を採用しない場合には、洪水時に氾濫する地域が生ずることとなるが、このような洪水氾濫時においても、人命や建築物等の安全性を確保することが必要であるため、土地利用状況等に応じて氾濫域を安全度を高くする必要のある地域とその他の安全度が変わらない地域に区分し、それぞれの地域に応じた対策を検討することが必要である。
<安全度を高くする必要のある地域での対策>
 既に建築物等が立地しており安全度を高くする必要がある地域においては、連続堤方式に代えて、河川事業により、輪中堤や宅地嵩上げ等の対策を行うことが必要である。
<安全度が変わらない地域での対策>
 安全度が変わらない地域では、新たな建築物の立地のあり方等について検討が必要である。

A連続堤以外の方式による人家の立地がない氾濫域での土地利用方策
 拡散型氾濫域及び非拡散型氾濫域では、連続堤方式を採用しない場合に、洪水時に氾濫する地域が生ずることとなる。このような地域では、洪水を安全に流下させる機能や霞堤などの貯留機能等(河川としての機能)が求められる場合と、河川としての機能は求められないが、新たに建築物が立地する場合に安全を確保することが求められる場合とがあり、それぞれに応じた土地利用方策が必要である。

イ)河川としての機能を確保する場合の方策
 河川としての機能を確保する場合には、霞堤において流量低減の効果を有する場合や、非拡散型氾濫域の「安全度が変わらない地域」を洪水の流下域として活用する場合などがある。これらの地域においては、流域の安全を確保するために、流量低減に必要な貯留機能等の確保や洪水の安全な流下の確保などが必要であり、そのための対応方策として現行の河川区域の指定が考えられる。

ロ)河川としての機能を求められない場合の方策
 河川としての機能を求められない場合には、霞堤において氾濫水を早期に河道に戻す機能を期待する場合や、非拡散型氾濫域の「安全度が変わらない地域」において洪水時に一時的に湛水する区域となる場合などがある。これらの地域においては、安全な土地利用を確保するために、浸水区域の周知などの情報提供により、適正な土地利用を誘導することが求められている。また、新規に立地する建築物については、少なくとも住居の用に供する部分が浸水することがないよう措置すること等が必要であり、そのための具体的制度について検討が必要である。

B極めて大きな実績洪水が発生した河川での対策
 一般の河川整備においては、再度災害防止の観点から、少なくとも近年発生した実績洪水に対して安全となるよう対応することが基本となっている。しかし、近年頻発している集中豪雨等により極めて甚大な洪水被害を受けたところでは、その規模の洪水に対応できるよう河川改修を行った場合に、下流が流出量の増大に対応できない事態や、地域の基盤である宅地や農地の大半を堤防敷地として失ってしまうような事態を生ずるため、計画規模を実績洪水に対応させることが好ましくないような状況が生じている。 このような場合においては、実績洪水に対して人命や建築物への被害を最小化するため、土地利用方策を組み合わせた対策が必要である。
 このため、河川管理者は実績洪水が発生した場合における氾濫区域において、浸水区域や浸水深の実績についての情報を公表し、融資や助成制度の活用により建築物の移転や耐水化が促進されるよう努めるともに、関係機関と協力して建築物を新築する場合の制限について検討を行うことが必要である。

 (3)都市水害の防御域での対策

 都市水害の防御域は、人口、資産や社会経済活動の中枢管理機能が集積する地域であるため、破堤等が生じた場合、その被害は甚大なものとなる。このため、水害が起こることをあらかじめ想定した対応をとっておく必要がある。

 具体的には、平成12年度の東海水害において顕在化した問題点も踏まえ、河川と下水道との連携を進めるとともに、水害が発生した場合にも被害を最小化することができるよう流域において水害に強い施設づくりなどの対応を進めることが必要である。

 また、ハザードマップ等の情報の周知や洪水時の情報伝達等のソフト対策を推進することにより、地域の事前の対応や、洪水時の円滑な対応を進めることが必要である。

 このことを踏まえ、以下の対策を推進すべきである。

@河川事業と下水道事業の連携強化
 河川からの氾濫によるいわゆる外水氾濫は、頻度は少ないがその被害は甚大である。一方、内水による浸水は、頻度は多いがその被害は比較的小さい。内水による浸水は、下水道や小河川の整備の遅れや外水の水位が高くなり本川に排出できないこと等から発生するものであるが、ポンプなどで内水を強制的に排出すると、外水位を上げることにつながるという関係にある。
 このように外水と内水は互いに極めて密接に関連するため、下水道からの流出の実態を的確に把握するための基礎的調査を進めるとともに、互いのどのような影響を及ぼすのかを考慮し、流域全体として安全度が向上するよう対策を推進する必要がある。

<計画段階の調整>
 大河川、中小河川及び下水道のそれぞれの浸水被害の程度や、外水と内水の双方の影響等を勘案の上、流域全体として被害を最小化することが必要である。このため、河川と下水道が一体となったシミュレーションモデルを活用すること等により、河川と下水道の適切な安全度バランスを設定するなど計画段階での調整を図るべきである。
<事業段階の調整>
 河川、下水道は計画全体を整備するのに長期間を要するため、段階的に事業を進めてきているが、河川と下水道の安全度バランスを保つ観点から、事業実施の各段階において河川と下水道が調整を図ることが必要である。
<運用段階の調整>
 洪水時の排水ポンプは、操作規則により排水先の河川の水位が一定以上になった場合に運転を停止することとされているものがある。しかし、内水により、まさに浸水している状況では、住民感情から排水ポンプを停止することが困難な場合がある。
 このため、河川管理者と排水ポンプ管理者が調整を図り、地域住民の理解を得るため十分な説明を行い、安全度バランスを考慮した適切な操作規則を作成することが重要である。


A都市水害の防御域内の施設の耐水化の推進
 洪水時においても、必要な都市機能を確保するとともに地下空間等の浸水被害を防止するため、以下の対策を進めることが必要である。

<耐水化の推進>
 洪水時においても、都市機能が麻痺しないよう、電気、ガス、水道、電話等のライフラインについて耐水化を進めるとともに、適切な防災活動が可能なように地域の拠点施設について耐水化を推進することが必要である。このため、河川管理者、下水道管理者から浸水危険区域などの情報提供を行うことが重要である。

B安全度の向上に資するソフト対策の推進
 施設整備とあわせて、以下のようなソフト対策を、適切に実施することにより、流域全体の安全度向上を図ることが必要である。

<事前情報の周知>
 洪水による被害を軽減するためには、住民一人一人が、浸水に対する危険性を十分に理解し、洪水時における行動を日頃から考えておく必要がある。このため、現在の治水施設が目標に対してどの程度整備されているのか、どの程度の雨量であれば安全なのか、どの程度の浸水が発生するのか等の情報をあらかじめ住民へ周知することが必要である。そのためには、河川管理者が氾濫シミュレーション結果等必要な情報を市町村や住民に提供するとともに、市町村はハザードマップ等を作成公表し、住民への周知を推進すべきである。
<洪水時の情報の収集・伝達>
 洪水時に浸水地域等の情報を、住民に分かりやすい形で提供することにより、円滑な避難行動が可能となり、被害が軽減されると考えられる。そのため、光ファイバー網や浸水センサー等の情報収集・伝達体制を整備することが必要である。
 また、河川管理者、下水道管理者及び地方公共団体は、地方公共団体が設置する災害対策本部等との情報伝達の迅速化を図り、リアルタイムの水位情報等災害時の情報の共有化を図るとともに、住民への迅速な情報提供の推進に努めるべきである。
<避難体制の充実等>
 地方公共団体が、洪水の発生状況に応じて、避難場所、避難経路等を確保できるよう、河川管理者は必要な情報提供を行うべきである。また、水防資材の備蓄等の面でも、河川管理者と地方公共団体との連携が必要である。


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