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河川局

審議会等の情報
河川審議会について


1.水災害・土砂災害における危機管理の現状


1.1 自然的条件

 我が国はアジアモンスーン地域に属し、年間平均降水量は約1700oである。その降雨の大半は梅雨期、台風期に集中し、豪雨が発生しやすい気象条件下にある。

 また、国土は、約7割が山地であり、急峻な地形、脆弱な地質のため、土石流、地すべり、がけ崩れ等の土砂災害が発生しやすい国土条件にある。さらに、世界有数の火山・地震国であるため、火山噴火に起因する火砕流、土石流等や地震に起因する山腹崩壊、がけ崩れ等の土砂災害が発生しやすく、また、沿岸部における津波・高潮等さまざまな形態の災害の危険性を内包している。

 
1.2 多様な形態の水災害・土砂災害

 水災害・土砂災害は、その現象ごとの災害形態に特徴がある。

 大規模な洪水、津波・高潮による破堤氾濫は、広域的な被害をもたらす危険があり、特に主要都市が沖積平野上に発達している我が国においては、莫大な被害額、基幹施設の機能停止といった重大な事態をもたらす可能性がある。

 土石流、がけ崩れ、火山噴火に起因する土砂災害、津波等は、現象の発生から人家等への到達までの時間が短く、また、その破壊力はきわめて大きいため、人的被害が発生しやすい。

 土砂災害は、豪雨、融雪、地震、火山噴火等、発生の誘因が多様である。また、地震による地盤のゆるみが、その後の降雨による崩壊を助長する等、二次災害として発生する場合もある。

 
1.3 社会的条件

 我が国の主要都市は洪水の氾濫によって形成された沖積平野、扇状地に発展しているところが多く、災害に対して潜在的に危険な地域に位置している。

 沿岸部の都市では、いわゆるゼロメートル地帯となっている地域も多く、地盤沈下等の影響もあり、津波・高潮による災害の危険がある。また、火山噴出物等によって形成された台地周辺や山地に接した扇状地に発展した都市では、がけ崩れ・土石流等の土砂災害の危険がある。

 我が国では、人口の約2分の1、資産の約4分の3が河川の氾濫区域に集中しており、水災害・土砂災害に脆弱な国土条件となっている。

 
1.4 大規模な水災害・土砂災害が発生した場合の被害想定

 我が国では、昭和20年から30年代にかけて、カスリーン台風、アイオン台風、伊勢湾台風等の大型台風の度重なる襲来、戦災による国土の荒廃及び低い治水施設整備水準等が重なり、大きな水災害・土砂災害が多発した。

 現在の我が国は、当時に比べて、人口は約1.5倍、国内総生産は約10倍(実質)に増加している。特に洪水等の発生する危険性の高い沖積平野、扇状地上の都市部に人口、資産が集中した。このような大都市部では、自動車交通の発達、水に弱い電子機器に依存した生活や生産システムの普及、地下鉄、地下街、ビルの地下部分等地下を利用した施設の整備等により、これまでにはなかった形態の災害が広範に発生する懸念がある。昭和57年の長崎水害では、多数の自動車利用者が被災するといった災害も発生した。また、平成5年の鹿児島水害では鹿児島市の中心街が浸水し、都市機能が麻痺する事態となった。

 今、仮に利根川においてカスリーン台風と同規模の台風が襲来し、昭和22年と同じ地点で破堤したとしてその被害を想定すると、氾濫面積は約560平方キロメートル、被災人口は約210万人、被害額は約15兆円以上にのぼると推定される。氾濫区域内には、約11万箇所の事業所、約50箇所の変電所、約50箇所の電話交換局、9箇所の浄水場・下水処理場、2箇所の地下鉄駅、約120万台の自動車が存在する。これらのほとんどは利根川氾濫を想定した水害対策は行っていないため、当該地域のライフラインも大きな被害を被るおそれがある。このような災害では、氾濫地域のみならず、国内、海外に対しても社会的・経済的混乱をもたらす可能性がある。

 なお、世界的にみると1991年(平成3年)以降、アメリカ(ミシシッピ川等)、ヨーロッパ(ライン川、オーデル川等)、アジア(長江、ガンジス川等)で大水害が発生している。また、フィリピンのピナツボ火山の噴火とその後の火山泥流による災害も記憶に新しい。このように水災害・土砂災害が多発する原因は明らかではないが、地球温暖化、大規模エルニーニョ現象と地球規模での気候変動が集中的な豪雨等をもたらす傾向にあるともいわれている。

 
1.5 危機管理の現状


1)
法制度等

 防災に関する制度は、明治以降徐々に整備されてきた。その制度は、地域の安全は地域で守ることを基本としている。

 水災害・土砂災害における危機管理は、災害対策基本法を基本とし、水防法、河川法、砂防法、海岸法、消防法、気象業務法、自衛隊法、警察官職務執行法等、関係法令が組み合わされて実施されている。

 防災に関する計画として、災害対策基本法では地域防災計画等、水防法では水防計画が法定計画として定められることとなっている。

 防災対応の第一線は市町村が担い、都道府県及び国はこれを支援することを基本としている。地域が防災の第一線を担う考え方は諸外国も同様である。


2)
災害対策に必要な情報伝達

 水文、気象観測網の整備の進展、情報処理技術の進展により、昭和20年から30年代の大災害時には把握できなかった降雨や河川水位の状況がリアルタイムで把握できるようになり、防災関係機関、一般住民への情報提供も可能となりつつある。防災体制も、これら観測データの入手を前提として立案されるようになってきている。

 水災害・土砂災害対策に必要な気象、水文等の情報は気象庁及び国、都道府県の河川管理者から、関係機関に提供される。リアルタイムできめ細かな情報を関係機関へ提供するシステムもあるが、その普及は必ずしも十分ではない。

 気象警報は気象庁、洪水予報は気象庁及び建設省の共同、水防警報は国及び都道府県の河川管理者において発表され、関係機関に伝達されている。

 また、津波注意報(注意報・警報)は気象庁の発表により、指定公共機関が自動的に津波予報を放送するシステムが整備されている。

 これらの情報等に基づいて、住民に対する避難勧告、避難指示等を行うことは市町村長の責務となっている。


3)
災害危険情報の公表

 水災害、土砂災害の危険区域を示した資料として、浸水実績図、洪水氾濫危険区域図、土砂災害危険箇所図が作成・公表されている。

 これらを基に、市町村ごとに水災害・土砂災害の危険区域、避難場所、避難経路等を示した洪水ハザードマップ及び津波ハザードマップ、土砂災害危険区域図の作成、住民への公表が始まっているが、全国的に見て、その整備が完了した市町村はわずかである。高潮災害については、高潮氾濫区域図や高潮ハザードマップも作成されておらず、一部の地域で高潮による氾濫予想が行われ、消防機関等に情報伝達されているのみである。

 自然災害に関する情報の住民への伝達には、マスメディアが重要な情報源となっている。気象業務法では、気象警報等の住民への伝達に関するマスメディアの協力について規定されている。


4)
住民の避難誘導のための基準等

 危険が切迫したと判断される場合には、市町村長は当該地域の住民に対して避難勧告、避難指示等を出して、住民の防災行動を喚起、支援している。その判断基準は地域防災計画等に規定されることとなっているが、未整備であったり、具体的な基準となっていないものが多い。

 都道府県は、住民の土砂災害に対する警戒避難に資するため、既往の土石流災害の発生事例等の検討結果に基づき、「土石流警戒避難基準雨量」等を設定しているが、基準の精度や判断の難しさから、一部の市町村を除き住民の警戒避難に十分活用されていない現状にある。


5)
ボランティアの活動

 阪神・淡路大震災を踏まえ、防災計画にボランティア活動が位置づけられるようになっている。

 水災害・土砂災害発生後の二次災害の防止及び被災地の復旧・復興を支援する制度として、防災エキスパート制度、砂防ボランティア制度等が設置されている。


6)
水災害・土砂災害に強いまちづくり

 水災害・土砂災害の危険地域において、住宅等の開発を制限することについては、都市計画法、建築基準法に規定がある。

 水災害については、昭和50年代より、河川整備と流域における治水対策を総合して行う総合治水対策を、また、昭和60年代より、計画で想定している規模を超える洪水等に対処するため、土地利用計画と一体となった高規格堤防の整備や地域水防災対策等を行っている。

 土砂災害についても、昭和50年代より、砂防設備等の整備に加え、警戒避難体制の確立を合わせて実施する総合的な土砂災害対策を実施しており、昭和60年代からは火山噴火警戒避難対策等を行っている。





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