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河川局

審議会等の情報
河川審議会について


2.河川制度の改正の方向


 以上のような要請に応えて、次のように河川制度を改正すべきである。


2−1. 河川環境の整備・保全

 近年、豊かでうるおいのある質の高い国民生活や良好な環境を求める国民のニーズの増 大に伴い、環境や地域づくりの観点から河川の持つ多様な自然環境や水辺空間としての機 能等に着目し、河川環境を適正に保全し、これを享受しようとする要請が高まっている。 今日では、河川は単に洪水・高潮の防御(治水)や水資源(利水)の機能を持つ施設とし てではなく、豊かな自然環境を残し、地域の中においても良好な生活環境の形成に重要な 役割を担うものとして高く評価されるようになっている。
 こうしたニーズを踏まえ、現在、治水や利水のための河川工事に際して環境への配慮を 行うのはもとより、多自然型護岸の整備、水質の浄化、魚道の設置、水生動植物の保護増 殖等、自然環境の保全や河川の景観の整備など、河川環境の整備や保全を目的とした河川 工事や河川の維持管理が鋭意進められている。
 しかしながら、もともと治水・利水を主眼としてつくられた現行の河川制度においては 、河川環境の整備及び保全のための制度が整っておらず、社会経済が変化する中、河川管 理の実態面において種々の問題が生じているところである。こうした問題の解決を図るた め、河川制度において次のような所要の措置を講ずることが必要である。


(1)  河川法の目的への環境の位置付け

 河川法第1条は、法目的を明らかにするだけでなく、河川管理の根本原則とされている (第2条)ものであるが、これには、「河川について、洪水、高潮等による災害の発生が 防止され、河川が適正に利用され、及び流水の正常な機能が維持されるようにこれを総合 的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ 、公共の福祉を増進すること」と規定されており、「河川環境」(河川の持つ自然環境、 河川と人との関わりにおける生活環境)を明確に位置付けたものとはなっていない。
 これは、現行河川法がもともと、治水・利水を主眼にしたものであったためであるが、 その後、経済成長に伴う都市化の進展や産業の高度化、国民生活水準の向上、地球環境問 題に対する関心の高まり等といった社会経済情勢の変化に伴い、良好な環境の整備と保全 を求める国民のニーズが増大し、河川管理についても、この国民のニーズに沿ったもので あることが求められるようになってきた。
 このため、従来から、河川法第1条の目的に掲げられた「河川の適正な利用」又は「流 水の正常な機能の維持」に種々関連させながら、環境関連の河川工事等社会経済の変化に 応じた河川管理を行ってきたところである。
 しかしながら、

  •  近年の国民のニーズに応え、河川環境の一層の整備や保全を図るには、河川管理の目 的に「河川環境」を明確に位置付け、国民の前に明らかにしていくことが必要であるこ と、

  •  特に、河川工事全体に占める環境関連の事業の割合が相当程度に達し、今後もさらに 伸びることが予想される現在、河川法の目的として「環境」に関する事項が明記されて いないことは、河川管理の実態に必ずしも沿ったものとは言い難いこと、

  •  近年、環境の中の重要な要素となっている河川内の生態系等の自然環境の保全、河川 のうるおいある水と緑の景観や風致の整備といった観点は、「河川の適正な利用」や「 流水の正常な機能」ではなく、正面から「河川環境」として捉え直すことが適当である こと

などから、河川法の目的に「環境」に関する事項を明記し、治水、利水機能の向上と併せ て良好な環境の形成と保全を進めていくことが適当である。
 また、この「環境」を目的に位置付けることは、以下の個別の環境に関連する施策の充 実、及び2−2.「地域との連携による治水・利水・環境の総合的な河川整備の推進」に も結び付くものである。
 なお、「環境」の目的への位置付けを踏まえ、河川整備に当たっての環境への配慮に係 る技術的基準を明らかにしていくことが必要である。


(2) 水と緑のネットワークの整備

 清らかに流れる「水」と目に鮮やかな「緑」は、生活にうるおいと安らぎを与え、豊か で質の高い国民生活に重要な意味を持つ身近な自然として貴重な存在となっている。都市 化の進展等により都市内を中心に「水」と「緑」が失われつつある現在、河川の流水(「 水」)と河川に沿って繁る樹木(「緑」)は、国民生活にとって重要な自然環境ともなっ ている。
 このような「水」と「緑」について、他の関連施策との連携をとりながら、治水上の機 能と併せてネットワークとして整備し、優れた環境の形成と災害の防止又は軽減を図るた め、次のような施策を講じる必要がある。

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 既存水路を活用した良好な水辺空間の形成
 都市内における用排水路等の水路は、うるおいのある水辺空間を創出する貴重な存在 であるが、特定の目的のために設置されたものであることから、時に水路の水量が枯渇 して水質や水辺環境の悪化しているものもある。また、このような水路は、近年、都 市化の進展に伴い内水排除機能を担わざるを得なくなるものが多くなっているが、もと もとそのようなものとして整備されていないため、大雨時には効率的な排水が行われな いことが多い。
 このようなことから、都市内の既存の水路を活用して、河川から質量ともに十分な流 水を水路に導水し、併せて散在する水路等を効率的にネットワークとして結び、調節池 を設置するなど、その適正な整備及び管理を行うことにより、良好な水辺環境の創出、 洪水時の都市内の浸水被害の防止又は軽減等を図ることが求められているところである 。
 都市内の水路について、河川の流水を導水して良好な水辺環境を創出するとともに、 内水排除の促進等による洪水等の浸水被害の防止や軽減などを図るためには、河川法の 河川として管理することが必要となるが、一方で、既存の水路は河川管理者以外の他の 水路管理者がその本来の用途目的のために管理を行っているものである。
 このため、このような水路については、河川法による河川とするとしても、水路の効 用をも兼ねるものとして、既存水路の現況、本来の用途、財産帰属、管理の実態等の諸 事情を踏まえ、協議により河川管理の一部を水路管理者に委ねたり、現行河川法の規制 は必要最小限にとどめるなど、実態に即した管理を行うことができる制度を創設する必 要がある。

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 河川周辺の樹林(河畔林、湖畔林)の整備・保全
 近代河川工事においては、洪水防御等は堤防により堤外に閉じこめることによること を主としたため、かつて水害防止のために重要な役割を担っていた河畔林が、近年、都 市化の進展等の社会経済の変化に伴い、次第に失われつつある。
 しかし、こうした堤内の河畔林は、堤体が破堤した場合又は堤体から越水した場合に 氾濫水の流出を低減する治水機能があり、これを整備又は保全することが治水対策とし て大きな役割を担うものである。
 また、ダム湖周辺の湖畔林についても、河畔林と同様、近年、不在村の増加等により 適切な維持管理が行われなかったり、開発等により次第に失われつつあるが、これも、 ダム湖に流れ込む汚濁水の軽減、土砂流入の抑制等の河川管理機能を有するものである 。
 このような河畔林等は、生活にうるおいと安らぎを与える「緑」であり、環境と調和 した河川管理を進める上でも貴重な財産であることから、河川管理者による整備又は保 全を進めるため、河川管理の対象として捉えることが必要である。また、この場合、河 畔林等の土地の区域については、樹林の保全こそが重要であることから、竹木の伐採等 必要最小限度の規制にとどめるべきである。


(3) 水質事故処理対策

 近年、河川への油流出等の水質事故が増大しており、流水の清潔の保持に著しい悪影響 を及ぼすほか、水道用水等の取水を妨げ、魚類等の水生動植物の弊死や悪臭の発生を招く など、河川環境の保全や水利用の面で大きな支障となっている。
 こうした水質事故については、その原因者が特定できる場合には、当該原因者にその処 理を行わせるか、河川管理者が処理を行った場合にはその費用を原因者に負担させること が社会的にみても適当であるが、現行河川法では、このような場合の原因者負担の根拠と なる規定が存せず、河川管理者が自ら事故処理を行い、また、その費用も負担せざるを得 ないことが多い。
 このため、このような水質事故の事故処理等の河川の維持行為についても、事故の原因 者に施行させ、又はその費用を負担させることができるようにすべきである。


(4) 不法係留対策

 河川に不法かつ無秩序に係留されている船舶とその係留施設は、全国で多数に上るが、 これらは、治水上の問題(洪水時の流水の疎通阻害、船舶等の流出による河川管理施設等 の損傷、河川工事の支障等)、河川利用上の問題(他の河川使用の阻害等)及び環境上の 問題(劣悪な景観、騒音等)など、河川管理の上で様々な問題を生じている。
 こうした問題に対し、現行制度では、河川法第75条第1項に基づき監督処分を行い、 当該処分に従わない等の場合には、行政代執行法に基づき自ら当該船舶等を撤去すること ができるほか、所有者不明の不法係留船舶等に対しては同条第3項に基づき簡易代執行を 行うことができることとされている。
 しかし、このような措置のみでは、撤去した船舶等を所有者が引き取りに来ず、また、 競売に付すこともできない場合、長期にわたり河川管理者が保管せざるを得ず、保管場所 の確保等が大きな負担となるなど種々の問題を生じており、なかなか実効が上がっていな いのが現状である。
 このため、不法係留対策として、不法係留船舶の排除に伴う河川管理者の負担軽減を図 るため、不法係留船舶の一定の保管期間経過後の当該船舶の売却、廃棄や売却代金の保管 等についての制度を創設する必要がある。





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