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河川局

審議会等の情報
河川審議会について


2−2.地域との連携による治水・利水・環境の
    総合的な河川整備の推進


 一方、河川環境の整備や保全を求める国民のニーズに的確に応え、また、河川の特性と地域の風土・文化を踏まえて地域の魅力を引き出す河川管理を実施していくためには、河川管理者だけによる河川整備でなく、地域との連携が不可欠である。
 治水や利水とは異なり、河川環境や地域づくりのあり方は地域によって多様であることから、河川整備について、環境や地域づくりの観点から捉え直すため、地方公共団体や流域の住民との役割分担を明確にし、その主体的な参加を促す必要がある。
 この場合、治水、利水の観点から、河川管理者が責任を持って水系一貫で管理するという原則は維持する必要があるが、これと矛盾しない範囲で、具体的な計画面でできる限り地域の意向を反映することが必要である。
 現在でも、河川整備においては、個々の事業の実施に当たり、地元地域の関係者等への説明や意見の聴取、環境面での配慮が行われているところであるが、上記の趣旨を踏まえ、河川整備のもととなる計画の策定とその策定手続のあり方について制度的な検討を行い、河川管理者が責任を持ちつつも、より地域との連携が得られるように措置することが重要である。
 なお、地域との連携を強化するため、地方分権の推進の観点からも、国の関与の縮減に努めるべきである。


(1) 現行制度における河川整備の計画とその課題

 河川は、上流から下流まで一つの水系をなし、河川整備の円滑かつ着実な実施を通して洪水防御等の機能を効果的に実現していくためには、水系を一貫した計画的な整備を図ることが不可欠である。このため、現行制度においては、総合的な河川管理を適正に実施していくため、河川管理者は、「工事実施基本計画」を定めることとされている。
 この工事実施基本計画は、水系全体を見渡しながら科学・技術的、社会的及び財政的諸制約の中で段階的に進めていかざるを得ない河川整備の特質にかんがみ、長期にわたる最 終的な河川整備の目標形を念頭に、河川工事の実施についての基本となるべき事項(基本高水とそのダムと河道の配分、主要地点の計画高水流量、主要な河川工事の概要等)が定められている。
 また、その手続としては、一級河川の場合に河川審議会の意見を聴くこととされているが、基本的には河川管理者が自らの判断で策定すべきものとされている。
 このような河川整備の計画制度については、次のような課題がある。

1)具体的な河川整備の計画の策定
 工事実施基本計画は、上記のように長期的かつ抽象的な事項を定めるものであり、具体的な河川整備がどのようなものとなるのかは必ずしも明らかではない。このため、地域にとって川がどのような姿になるのかがよく分からず、これが河川管理と地域住民とを遠ざける一因となっている。
 このため、河川整備に当たっては、近未来の具体的な河川整備(川づくり)の姿を地 域住民等の前に明らかにしていくことが重要であるが、河川整備は水系全体の整備計画との関係で個々の事業計画が決まるものであり、個々の事業計画だけでなく、水系全体を見渡した近未来の具体的な河川整備の計画を提示すべきである。
2)治水、利水及び環境の総合的な河川整備
 現在、個々の事業の実施段階においては河川環境への配慮等の措置を講じているが、そもそも地先の河川環境のあり方は、治水、利水と十分に整合をとったかたちで、水系全体の総合的な河川管理の中で検討する必要がある。このため、河川整備の計画については、水系全体の治水、利水のあり方を踏まえた上で、環境と調和のとれた総合的な計画とする必要がある。
3)地域の意向の反映
 河川環境の整備や保全を求める国民のニーズに的確に応え、また、河川の特性と地域の風土・文化を踏まえて地域の魅力を引き出す河川管理を実施していくためには、地域との連携が必要である。
 このような観点から地域の理解と協力を得て河川整備を進めるため、具体的な「川づくり」を今後どのように進めて行くべきかについて、河川管理者が責任を持ちつつも、地域がより主体的に計画づくりに参加することが求められている。
 このため、河川整備の計画の策定に当たっては、地方公共団体や地域住民の意向を反映するための手続を制度的に導入すべきである。
4)流域全体の各種施策との連携
 河川管理は河川という自然を相手として科学・技術的、社会的及び財政的諸制約の中で一定の限界を持たざるを得ず、例えば流域全体の中での総合的な治水対策、節水対策の実施等、地域の協力を得ながら諸施策を実施することが不可欠となっている。
 このためにも、計画に基づく段階的な河川整備の効果について、ハザードマップ等と併せて情報として地域に提示し、災害時のみならず平常時から危機管理意識の形成を図り、河川整備について理解を求めるとともに、これを補う流域全体の施策を推進すべきである。


(2) 今後の方向

 以上のような課題を解決し、豊かでうるおいのある質の高い国民生活や良好な環境を求める国民ニーズの増大等の最近の動きに的確に応えるためには、河川整備の計画について、次のような方向で改正すべきである。

1)工事実施基本計画の見直し
 工事実施基本計画は、長期にわたる最終的な河川整備の目標形を念頭に、河川工事の実施についての基本となるべき事項(基本高水とそのダムと河道への配分、主要地点の計画高水流量、主要な河川工事の概要等)を定めるものであるが、上記のような課題に対処するため、同計画を、河川整備の最終目標である事項と具体的・段階的な河川整備に係る事項に区分し、後者については、具体的な川づくりが明らかになるようさらに具体化・詳細化するとともに、地域の意向を反映する手続を導入する必要がある。
2)長期的な河川整備の基本方針
 従来工事実施基本計画で定められていた事項のうち、長期的観点に立った水系全体の治水・利水・環境の総合的整備の方針、全国的なバランスによって決まる基本高水、その上下流のバランスのとれた配分を決めるダムと河道の流量配分(計画高水流量配分)については、河川整備の最終目標として、河川管理者が客観的な第三者の意見を聴いて 定める必要がある。
 このため、このような河川整備の基本方針となるものについては、一級河川については河川管理者(建設大臣)が河川審議会の意見を聴いて定めることとするほか、二級河川については、都道府県河川審議会が設けられているところでは、河川管理者(都道府県知事)が当該都道府県河川審議会の意見を聴いて定めるべきである。
3)具体的・段階的な河川整備の計画
 従来工事実施基本計画で定められていた主要な河川工事の概要は具体性に欠き、具体的な川づくりが必ずしも明らかでなかったため、上記の基本方針に即して、水系全体にわたる今後20〜30年間の段階的な河川整備の計画を作成し、具体の「川づくり」の姿を地域に提示しつつ、地域の意見の十分な反映に努めていくべきである。この場合、単に河川工事の内容に止まらず、河川の維持や河川の保全と利用(例えば、河川を区間に分けて運動ゾーン、親水ゾーン等と位置付けて利用するなど)に関する事項についても記載し、河川整備の全容が明らかになることが望ましい。
 また、この計画は、流域の総合的な治水対策等の推進に資するため、河川の整備効果等の様々な情報を流域に発信するような内容とすべきである。
 さらに、河川管理者は、当該計画の決定に当たっては、治水、利水と河川環境の整備又は保全や地域づくりとの調和を図るため、地方公共団体の意見を聴取するとともに、必要があると認める場合には、専門的な学識経験者の意見聴取と併せて、公聴会・説明会の開催、公告・縦覧等地域住民の意見を反映するための措置を講ずることとすべきである。




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