発酵食品
鯖は、小浜の食において重要な役割を占めています。
歴史的に小浜近海には魚が豊富に獲れ、住民は長きにわたりそれを貴重な動物性たんぱく源としていました。
冬季や漁に出られない嵐の日に備え、保存するため、魚を発酵させた「へしこ」が作られました。
この食べ物には、鯖が使われることが多いですが、他の種類の魚からも作ることができます。
「へしこ」は、しょっぱいながらも独特の旨味で好まれており、数百年以上もの間、地元で食されています。
「へしこ」は、地域の重要なアイデンティティであり、小浜のマスコット「さばトラななちゃん」も、前ポケットにいつも「へしこ」を入れています。
通常、鯖の「へしこ」の仕込みは、4月から6月にかけての晩春に始まります。
鯖は背開きにして、塩漬けされます。熟成には数週間かかります。
夏が過ぎたころ、鯖は米ぬかで覆われ、桶の中で漬け込まれます。
漬け込まれている間に、鯖は旨味成分に富んだエキスを出し、そのまま少なくとも6ヶ月間発酵させられます。空気にさらされない限り、数年間保存が可能です。
これらを経て、美味しい伝統の保存食が出来上がります。
酒のおつまみに最適で、ご当地の郷土料理の多くに材料として使われています。
一般的に、スライスしたものを軽く炙ったり、お茶漬けにいれて食されます。
小浜の「へしこ」は、現在の寿司より昔にあった、地域特有の「なれずし」を作るのにも使われています。
「へしこ」の薄皮をむき、余分な塩分が抜けるよう水に漬けます。
その後、「へしこ」の中に米と麹を詰め、更に米と麹の入った樽に漬け込みます。
「へしこ」は完全に漬け込まれ、上に重しがのせられます。
乳酸菌により、約2週間で発酵します。
その結果、高級なチーズにも似た香りの甘みと風味豊かな「なれずし」が出来上がります。
「なれずし」は、「へしこ」以外の塩漬けした魚を使って、日本の他の地域でも作られています。「なれずし」は、お正月あたりに出される珍味で、酒にも良く合います。