運輸安全

運輸安全マネジメント制度の経緯

 
1.ヒューマンエラー防止のための制度


  平成17年に入って、ヒューマンエラーが原因と考えられる事故等が多発しました。これらの事故・トラブルの多くに共通する因子として、システムの構成要素の1つである人間が、与えられた役割を果たせなかったことによるエラー、いわゆる「ヒューマンエラー」との関連が一般的に指摘されました。国土交通省は、その原因、背後関係の調査、再発防止及び未然防止の方向性を検討するために、「公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会」を設置し、その検討会の中で、今回の安全管理体制についての一つの方向性を出しました。 
 「ヒューマンエラー」には、信号の見落としや管制指示間違いなどのうっかりミスや錯覚等により「意図せず」に行ってしまう狭義の「ヒューマンエラー」と、時間の短縮を図る状況に追い込まれて安全手順違反をするなど、行為者がその行為に伴う「リスク(危険性)」を認識しながら「意図的に行う不安全行動」があり、特に「意図的に行う不安全行動」の原因として、「不安全行動」を容認するような「職場環境・企業文化」というものがあるということが、上記委員会から指摘されました。また、その「不安全行動」を防止するためには、運輸事業者において経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制を構築し、その安全管理体制の実施状況を国が確認する仕組みを導入することで、事業者内部における「安全意識の浸透」や「安全風土の構築」を図るメカニズムを組み込む必要性があることも指摘されました。そのためには、事業者が「PDCAサイクル」の考え方を取り入れた安全管理体制を構築し、その体制の継続的な運用・改善に取り組むこと、国が事業者における安全管理体制の確認を行う「安全マネジメント評価」を実施すること等が必要と、新たな方向性が示されました。

 

 

2.運輸安全マネジメント制度の開始

 「公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会」の指摘を踏まえ、平成18年10月に「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律」(運輸安全一括法)が施行されました。本法律の施行により、事業者は、鉄道事業法や関係省令等に従って、安全管理体制を構築し、構築した安全管理体制を記載した安全管理規程を作成し、それを国土交通省に対して届出を行うことや安全管理体制を構築、改善すること等について責任と権限を有する安全統括管理者(副社長、安全担当部長など)を選任し、国土交通省に対して届出を行うこと等が義務付けられ、また、国土交通省は、運輸安全マネジメント制度を開始しました。
 従前より、鉄道事業法等に基づき、国土交通省において保安監査を行っておりますが、運輸安全マネジメント制度は、この保安監査といわば車の両輪として安全のより一層の確保を図ることをねらいとしています。また、運輸安全マネジメント制度は、行政が事業者を指導、監督するという立場ではなく、行政と事業者が一体となって、運輸の安全性を向上させるための方策を共に進めていこうとする姿勢で臨んでいます。
 
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