国土交通省 Ministry of Land, Infrastructure and Transport Japan
 二十 一世紀を展望し、経済社会の変化に対応した新たな建築行政の在り方に関する答申(別紙)

 MLITホーム > 住宅・建築 > 建築行政 > 建築行政に 係るこれまでのお知らせ等 > 新たな 建築行政の在り方に関する答申 > 別紙



II.改革に当たっての基本的考え方
  経済社会の構造的変革に的確に対応した新たな建築規制体系の構築と住宅をはじめとする市場の構造改革等を図るためには、設計から施工、さらには維持保全に 至るまで、建築物が満たすべき基礎的要件を明確にし、その確実な実現を図るという建築行政の原点に立ち返り、次の基本的考え方に基づいた抜本的改革に取り 組む必要がある。


(1) 規制緩和による選択の自由の拡大

 建築物単体の基準については、建築主や消 費者が多様な選択を行うことができるよう建築設計の自由度を高め、新技術、新材料の開発や導入が円滑に行える新たな基準体系へと再構築すべきである。
 その際、規制が広く社会に受け入れられ有効に機能するためには、規制の目的と必要性について国民の理解を得ることが不可欠であることから、規制項目や規 制対象を必要最小限のものとするとともに、必要な規制については基礎となる考え方を明らかにした上で、建築物が満たすべき性能項目・性能水準を明確かつ客 観的なものとすべきである。さらに、我が国の建築市場の国際化を踏まえ、国際調和に配慮した規制体系とすることが必要である。
 また、集団規定については、街区レベルを視野に入れつつ、複数の建築物について、これを一体のものとして建築規制を適用する手法を充実する必要がある。
 さらに、都心部等における新たな居住空間の形成や低層住居専用地域における市街地環境の確保など、市街地特性に対応した密度規制の在り方について見直し を行うべきである。


(2) 新たな経済社会に対応した行政執行体制や市場の整備

 効率的な建築規制の執行体制を実現するた め、これまでの行政と民間の役割分担を抜本的に見直す必要がある。特に、従来、行政が行ってきた建築確認・検査等についても、今後は行政側の十分な体制整 備を期待することが困難であることや、建築産業の成長拡大を通じて建築士等の建築生産業務に携わる専門技術者の絶対数が確保され、民間による多様なサービ スの提供が期待できる状況になっていることを踏まえ、建築規制制度における民間の役割を積極的に拡大すべきである。具体的には民間企業等が、建築確認・検 査を行政に代わって行う仕組みを構築し、行政による直接的な対応を中心とする枠組みから、監査や処分の厳正な実施等の間接的コントロールにより制度の適正 な運営を確保する方式へと移行すべきである。
 また、地域特性に対応したまちづくりを進めるため、地方公共団体の役割を一層重視する方向で制度を充実するとともに、住民の参加と協働によるまちづくり の支援を強化する必要がある。さらに、地域によって建築活動や建築産業の状況が大きく異なっていることから、建築規制を実効あるものとするためには、その 執行体制が地域の実情を踏まえた適切なものである必要があり、各地方公共団体が地域の特性に対応した的確な執行体制を自ら整備する途を開くことが重要であ る。
 我が国の住宅市場の高コスト構造の要因として、消費者が的確な情報を入手することが困難なこと等により市場が有効に機能せず、その競争性が十分に確保さ れていないことが挙げられる。このため、共通のルールの下で消費者が住宅の性能・価格に関する客観的な情報を確実に入手できる条件整備等を図り、自由で競 争性の高い市場へと構造改革を進める必要がある。これにより産み出される投資余力が住宅・住生活の質の向上に向かうことが期待される。
 さらに、これに併せて住宅産業の新たな展開を構想しつつその構造改革を進めることが必要である。具体的にはリフォーム等の住宅に関連する各種サービスを 提供するライフサイクル産業や、住生活全般にわたるサービスを提供する総合住生活産業への発展も含めて今後一層の活性化が期待されるが、良質かつ低廉な住 宅の安定的供給を図るためには、品質管理、技術開発等、生産供給体制の強化・充実に係る施策を進めることが必要である。加えて、住宅供給の相当部分を担う 中小住宅生産者からなる生産体制を地域住宅産業として捉え、市場競争力の強化を図ることが市場全体の競争性の向上等を図る上で重要である。


(3) 建築主の自主的努力を活かした建築規制の実効性の確保等

 建築物の安全性等の確保や周辺環境との調 和は、第一義的には建築主が自己の責任において確保すべきであるという原則を再認識すべきである。特に、近年、分譲住宅供給の普及等に見られるように、建 築主と最終利用者が異なる場合が増加していることを視野に入れ、的確な情報開示のもと、建築主が自覚と責任を持って工事監理や検査を活用し、自主的に建築 物の品質確保や周辺環境との調和の実現を図ることを促進すべきである。
 また、建築主のために設計・工事監理等を行う専門技術者としての建築士等の役割が、今後益々重要度を増すことが予想されることから、その責任と役割の明 確化を図り、的確に業務が遂行される仕組みをさらに充実すべきである。
 さらに、住宅については、市場において資産価値の高い長期耐用性のある住宅に対する合理的な消費者ニーズの形成を通じて、住宅の品質確保や維持管理に対 する消費者の意識の向上を図ることが必要である。併せて、住宅の生産・供給者自らが、品質管理・保証等の充実により、市場における信頼性の向上を図ること を推進すべきである。

目次< 前 のページ    次のページ >







Copyright© 1997 MLIT Japan. All Rights Reserved.