国土交通省 Ministry of Land, Infrastructure and Transport Japan
 二十 一世紀を展望し、経済社会の変化に対応した新たな建築行政の在り方に関する答申(別紙)

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III.講ずべき具体的施策
2. 良好な市街地形成のための建築規制の在り方


(1) 市街地空間の再構築を支える条件の整備
[1] 複 数建築物の一体的設計手法の導入

 街区レベルを視野に入れつつ、規制の適用 単位を拡大するとともに、建築物が相互に関係を持ちながら一体となって市街地空間を形成することが望ましい。このため、既存のものを含め相互の関係を調整 して設計される複数の建築物について、地方公共団体が、その配置、形態等を評価の上、全体を一体的なものとみなして規制を適用する手法を導入する必要があ る。
[2]
道 路空間と一体となった敷地内空地の形成

 内部市街地のオープンスペースは、交通機 能のみならず、環境確保のための空間としての機能の重要性が高まっていることから、道路行政等とも連携を図りつつ、歩道と建築敷地内の公開空地が一体と なった歩道状空地を環境道路として捉え、その形成を促進する必要がある。
[3]
質 の高い建築計画実現に向けた敷地規模の拡大促進

 まとまりのある空地の創出や設計の自由度 の向上を通じた建築計画の質の向上に向け、敷地規模の確保を図ることが重要である。
 このため、統合や整形など敷地条件を整備するための手法の充実について検討する必要がある。その際、敷地規模の拡大へのインセンティブとして、総合設計 制度について、市街地環境の整備改善を評価するに当たり、敷地規模に着目して容積率の割り増しを行う仕組みを導入することが適当である。
 また、敷地面積の最低限度のルールを適用する区域を、多様な手法により拡大することが望ましい。
[4]
都 市居住における共用空間の充実

 都市居住における共用空間の充実等に対応 するため、共同住宅については、廊下等の共用通行部分について、容積率制限の対象から除外することが適当である。


(2) 市街地の密度に対応した空間構成の実現
[1]
都 心地域等高密度市街地における居住空間の形成

 大都市地域等において、居住機能と業務商 業機能とのバランスの回復を図りつつ、都心部にふさわしい新たな居住ニーズに応える方向で市街地の再編を行う必要がある。このため、高層高容積住宅の供給 促進を図るべき地域を都市計画に位置づけるとともに、採光、通風、開放性等の確保に留意しつつ、日照等従来の価値観のみにとらわれない居住スタイルに対応 した市街地の形成に向けた新たな建築ルールを定めることが必要である。
[2]
中 程度の密度の市街地における土地の有効利用の促進

 我が国の都市の相当部分を占める中程度の 密度を予定する市街地については、その空間の質の向上に向け、市街地特性に対応した用途、密度、形態へと整序していくことが望ましい。しかしながら、こう した市街地では、敷地の状況や道路の配置が、中程度の密度を実現するには十分なものとして整えられておらず、形態の混在が顕著であるなど調和ある市街地が 形成されていない状況にある。このため、敷地規模の拡大やオープンスペースの確保に向け、複数建築物の一体的設計手法の導入や環境道路の形成促進を図る必 要がある。また、高さと壁面の位置を整えつつ、街並み形成の誘導を図るため、街並み誘導型地区計画と優良建築物等整備事業等のまちづくり事業との連携を進 める必要がある。地方公共団体におけるこうした手法の活用によるまちづくりの展開を見極めつつ、当該市街地における密度と形態の関係の在り方を総合的に検 討することが望ましい。
 なお、防災上危険な密集市街地においては、従前居住者の居住の安定を図りつつ、延焼等危険建築物の除却、共同協調建て替えの誘導、地区レベルの延焼遮断 帯の形成等を強力に展開することが必要である。
[3]
低 密度市街地にふさわしい環境の形成

 低層住居専用地域に立地する主要な建築物 である戸建て住宅について、工法の多様化の進むなか、収納スペースなどの内部空間の充実への要請が高まっている。
 こうした市街地における容積率制限は、公共施設への負荷の制御する手法としての側面よりも、市街地環境の確保のため空間占有をコントロールする手法とし ての側面が強いことから、この目的に対してより的確に対応しうる規制手法である形態規制を重視する方向で、規制の実効性等にも配慮しつつ、その在り方を検 討する必要がある。
 また、三階建て住宅の普及も踏まえて、敷地規模など良好な市街地環境を形成できる条件が整っている場合は、これに対応した高さ制限の設定等合理的な市街 地形成が行われ得る仕組みの導入を検討する必要がある。


(3) 地域特性に対応した多様な取り組みの展開
[1]
許 可・認定手法の充実による建築計画の誘導

 地域特性を踏まえた良好な建築計画の実現 に向け、地方公共団体の判断のもと、周辺との関係性の確保や市街地環境の整備改善への寄与を重視する方向で、個々の建築活動を誘導していくことが望まし い。こうした観点から、地方公共団体が建築計画を許可・認定する手法を充実する必要がある。
 特に、総合設計制度において、設計者の創意工夫による提案型の建築計画を積極的に評価する仕組みを導入することが必要である。
 また、良好な建築計画の誘導に向けた許可制度について、その積極的な活用に向け、判断の客観性、透明性を一層向上させるため、制度運用に係る基本的事項 を可能な限り法令等で明確に示すことが適当である。
[2]
条 例の活用による建築ルールの充実

 地域における多様な課題に建築行政が積極 的に対応するには、条例の果たすべき役割を重視していくことが望ましい。その一環として、特別用途地区制度等の充実を図ることが適当である。
 特別用途地区については、その類型が法令で列挙されているが、市街地環境確保への多様な要請があるなかで、こうした類型だけでは直ちに対応が困難な状況 も発生してきていることから、機動的かつ効率的に規制を行い得る方向での弾力化について検討すべきである。
 歴史的に形づくられた街並みを将来に継承することが望ましい地区では、基本的に現状を維持するという考え方に立って、地区の特性に対応した建築ルールを 条例で定め、周辺の建築物との関係を踏まえて、個別に建築計画を判断する新しい仕組みを検討する必要がある。
[3]
住 民の参加と協働によるまちづくり

 住民による主体的なまちづくりの一環とし て、住民が地域における建築活動の状況を把握するとともに、その情報をもとに地方公共団体に対し幅広くまちづくりの提案を行うモニター制度を導入する必要 がある。
 また、建築協定等環境向上に向けての住民による建築ルールの設定等を促進するため、地方公共団体や建築士会等における専門家派遣等の支援の充実について 検討すべきである。

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