1.
建築物単体の基準及び建築規制制度の枠組みの在り方
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(1)
自由度の高い新たな建築基準体系の構築
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建
築基準の性能規定化
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建築物の単体に関する基準については、原
則として、建築物に要求される性能項目、性能水準及びその検証方法(計算方法、試験方法等)を規定する「性能規定」へと見直すべきである。
その際、要求される性能項目としては地震、強風、積雪等に対する構造安全性、火災に対する安全性、避難時の安全性、環境・衛生上の安全性等とし、これら
の性能水準については国民の生命、健康、財産の保護のため必要最低限のものとする必要がある。
なお、利用者が少なく、利用される時間も短い施設(畜舎、園芸用施設、機械収納式の倉庫等)及び屋外的利用がなされる施設(駐車施設、スポーツ練習場等
の上屋等)については、その利用状況、形態等に応じた性能水準とする必要がある。
また、検証方法については国際規格等との調和に配慮する必要がある。さらに、そうした国際規格の策定を行うISO(国際標準化機構)等の国際機関へ積極
的に参画するとともに、諸外国の認証・試験・検査機関との相互認証に関する協議、海外規格の受入れ等を推進する。
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[2]
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性
能規定化に対応した審査制度等の整備
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性能の検証を簡易に行えるよう、要求され
る性能水準へ適合しているとみなす具体的な材料、工法、寸法等の仕様を整備する。その際、国が自ら示す仕様のみならず、民間企業・団体等が作成する設計・
施工要領や部材の仕様を認定する制度を創設し、多様な材料、工法等の円滑な導入を図るとともに、これらの仕様を効率的に検索できるようにするための情報シ
ステムの整備等の措置を積極的に講じる。
また、性能規定による設計及び建築確認を円滑に実施するため、設計者、建築主事に対する講習、研修等を実施するとともに、性能について評価・試験等を行
う民間団体等を拡充する。
なお、超高層建築物等の特殊な建築物については、建築主事による審査が困難であることから、高度な審査能力を有する機関を活用することを検討する必要が
ある。
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[3]
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技
術開発の進展等に対応した規制項目の見直
し
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現行の規制項目のうち、室内の居住環境の
確保のための規制(住宅の居室の採光、住戸内の日照確保、地階における住宅等の居室の禁止、居室の天井の高さ等)については、照明、換気、防湿等の技術の
進展、住宅政策の充実等による居住水準の向上等の社会的状況の変化に鑑み、規制項目からの除外又は内容の見直しを行う。また、既に社会的使命を終えている
もの(学校の木造の校舎の基準等)についても規制項目から除外することを検討する。
一方、高齢者・身体障害者等への配慮、省エネルギー対策、省資源対策、建築材料に含まれる化学物質の影響への対策、フロン、生活排水等による環境汚染対
策、防災上重要な建築物に対する要求性能の強化等の新たな社会的要請については、現段階ではハートビル法や省エネ法等の誘導的施策の充実や情報の公開、研
究開発の推進、先導的な事業の推奨等を積極的に進めることを基本として対応する。
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(2)
民間企業・団体等を活用した執行体制の整備
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[1]
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民
間企業・団体等による建築確認・検査の実
施
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建築主が自らの選択により、効率的で、か
つ、的確に建築物の安全性等を確保することを可能とするため、一定の要件を満たし信頼の置ける民間企業・団体等が、建築主の依頼により、建築計画の確認、
施工時の中間検査や工事完了時の完了検査等を実施する途を開くべきである。
このような民間企業・団体等の要件としては、技術能力として性能規定化に対応した高い確認・検査能力や一定の確認・検査組織等を有すること、保険制度の
活用等による事故や紛争等に対応した責任体制を有すること、第三者性として対象建築物の設計者、工事監理者、工事施工者等との利害関係を有さないこと等が
必要であり、今後、建築物の用途、規模、敷地状況等に応じた地方公共団体の関与の在り方も含め、具体的な要件を検討する必要がある。また、公正・適正な業
務を確保するための厳正的確な監査と不正行為を行った者に対する厳格な処分の実施等が必要である。
さらに、適法性の確保のために必要な検査業務の内容等については、建築物の用途、規模、構造、品質確保体制等を踏まえて適切な設定が行われる必要があ
る。
なお、建築確認・検査を設計者等の自己認証に委ねる範囲を拡大することについては、設計・施工段階での品質確保の体制、自己審査・自己検査の公正さを担
保するための方策等も含め、その可能性について今後さらに検討する必要がある。
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[2]
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地
方公共団体の体制整備
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外部の確認・検査機関の活用等により、地
方公共団体の総合的な確認・検査能力の向上を図るとともに、住宅金融公庫融資住宅の審査・検査についての合理化措置を講じ、違反対策等に携わる職員の充実
等の体制整備を図る。また、建築確認・検査等に要する費用負担の在り方等についても、地方の自主性に委ねることを検討する。
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[3]
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違
反対策の充実
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民間による建築確認・検査を推進すること
等を通じ、行政においては違反対策のための執行体制の充実を図り、違反是正等を強力に進めるとともに、罰則の適用や建築士、建築士事務所、工事施工者等に
対する処分を強化するなど、総合的な違反対策を進め、規制の実効性の確保に努めるべきである。
なお、現行の違反是正手法のほかに、違反建築物所有者に対し経済的制裁を課すなどの新たな手法についても、長期的課題として検討する必要がある。
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(3)
実効性確保のための措置の充実
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[1]
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適
法性確保のための工事監理制度及び検査制
度の充実
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工事が適法に実施されることを確実にする
ため、工事監理の徹底及び検査制度の充実を図る。工事監理を徹底するための措置としては、適法性確保のため重要な事項(主要な材料の品質・性能、主要な接
合部、配筋等の施工状況等)の工事監理結果について建築主事に対する報告を求めるとともに、建築主の工事監理者選任義務を徹底するための措置を検討する。
また、現在必ずしも十分に行われていない施工時の中間検査を強化するとともに、工事完了時の完了検査を徹底する。その際、検査の実施率を向上させるた
め、住宅金融公庫等の融資において検査の活用等を図るとともに、建築物の概要及び検査実施等の情報を登録するデータベースを整備し、登録された情報を公開
することにより受検を促す等の措置を講じる必要がある。
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[2]
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建
築士等の業務責任の明確化
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建築士等の業務責任の明確化を図るため、
建築設計・工事監理業務標準委託契約約款の整備等により契約慣行を改善するとともに、情報開示等の業務体制の整備を図る。
また、長期的課題として、建築設計資格者の国際交流の円滑化等に対応した建築士制度の在り方及び建築設計・工事監理に関する紛争処理体制の在り方につい
て検討する必要がある。
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[3]
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維
持保全に関する制度の充実
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既存建築物の安全性等の確保に向けて、維
持保全計画の作成の徹底、定期調査・検査報告制度の充実を図るための既存建築物データベースの整備と情報の公開、他の行政機関が行う検査との連携の強化等
を検討する必要がある。
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[4]
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敷
地情報の管理の充実
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敷地に関し、確認申請図書の記載と実際の
状況とを的確に照合できるよう、敷地情報の管理を充実する必要がある。このため、近年における地図情報システムの進展を踏まえ、建築確認申請に係るデータ
ベースの活用により敷地台帳の一層の充実を図るとともに、敷地情報の開示について検討する必要がある。
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