国土交通省 Ministry of Land, Infrastructure and Transport Japan
 二十 一世紀を展望し、経済社会の変化に対応した新たな建築行政の在り方に関する答申(別紙)

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III.講ずべき具体的施策
3. 住宅市場の構造改革と住宅産業の新たな展開


(1) 住宅市場の条件整備

 市場選択の多様性を確保するため、規制緩 和の推進、輸入住宅・海外資材等の導入の円滑化、中古住宅の性能・維持管理体制等の情報提供の推進、借地借家方式を活用した住宅供給促進策の充実等を図る ことが必要である。
 また、消費者が、住宅取得から居住の段階に至るまで、安心して的確な行動を行えるよう支援するため、住宅性能表示制度の整備を中心に、第三者的な専門家 の積極的な活用を含めた総合的な住情報提供体制の整備、多様な方法による住宅性能保証・完成保証の体制整備を進めることが必要である。併せて、長期耐用住 宅ストックの形成に向けた合理的な消費者ニーズを形成していくことが必要である。
 加えて、品質管理体制の充実と第三者的な検査体制の整備等を進めるとともに、法律・建築の双方の専門家の協力による紛争処理体制・原因究明体制の充実を 図ることが重要である。


(2) 住宅生産・供給体制の強化・充実

 消費者の信頼が得られる生産体制の整備と して、品質管理・環境マネジメント体制の充実を支援するとともに、品質管理の優れた住宅生産システムを公的に位置づけ、積極的な活用を図ることが必要であ る。
 また、住宅生産の合理化・高度化を図るための体制整備としては、すまいづくりまちづくりセンターの活用等による技能者育成、中高層住宅の生産を担う中小 建設業者の生産合理化のためのオープン技術の開発普及、住宅生産情報ネットワーク(住宅CALS)の構築、住宅や住宅資材・部品の規格化・標準化に関する 研究開発と検証成果の普及等が必要である。
 さらに、住宅分野の環境対策の一層の充実を図るとともに、室内汚染物質の低減対策のための研究開発を進めることが必要である。
 加えて、消費者が多様な選択肢を確保できるようにするため、リフォーム・維持管理のための第三者的なコンサルティング体制の整備等、中古住宅に係る性能 表示制度や保証体制の整備等を進めることが必要である。


(3) 主要な施策
[1]
住 宅性能表示制度の整備

 住宅性能表示制度の構築に当たっては、
1)
性能に関する共通言語の創出の 観点から、表示の内容、方法等について、可能な限り工法・業態間に共通的なルールを策定すること
2)
共通ルールが的確に機能するた め、社会的必要性と熟度に応じて、必要な担保措置を講ずること
3)
表示の前提となる評価方法につ いては、自己評価を原則とするが、必要に応じて、第三者評価が選択できるようにすること
4)
新築住宅に限らず、中古住宅に 関する性能表示制度を整備するとともに、住宅の性能に関する情報の蓄積・提供を図ること
等の点に留意することが必要である。
 一方、性能と価格による的確な比較選択が行われるよう、性能表示と併せて、住宅価格の内訳について、消費者に分かりやすい情報の提供を推進することが重 要である。
[2]
長 期耐用住宅ストックの形成に向けた消費者ニーズの形成

 流通市場において資産価値の高い長期耐用 住宅に対する合理的な消費者ニーズを形成するため、スケルトン部分の標準化による低コスト化を進めるとともに、インフィルの多様性の確保、周辺環境整備の 充実等を図った、モデル的な住宅団地の整備を進めることが有効である。この際、多様性と合理性のバランスに配慮した計画手法の開発・普及を図ることが有効 である。また、歴史的な蓄積の中で、社会的に認知されたストックプラン集の作成・普及を図っていくことも有効である。
 さらに、省エネルギー対応、高耐久、バリアフリー化等の良質な住宅に対する消費者ニーズの誘導を図るため、住宅金融公庫融資制度の充実・普及を図ること が必要である。
[3]
優 良な住宅生産システムの公的位置づけ

 住宅生産分野における品質管理体制の充実 を図るため、品質管理の優れた住宅生産システムを公的に位置づけ、消費者に対する情報提供等を進めることが必要である。
 このための制度の構築に当たっては、
1)
生産者の規模、採用される工 法・構造に関わらず、共通的な制度とすること
2)
住宅生産の各プロセスで品質管 理のための体制が整備され、設計段階で設定された水準の住宅性能が確実に発揮されるシステムであること
3)
適切な第三者性のある適法性の 審査が行われるものについて建築確認・検査を合理化する等の措置の適用の検討を行うこと
等の点に留意することが重要である。
 また、システムの整備を計画している生産者に対して、設備投資、研究開発等に対する支援方策を検討することが重要である。
[4]
地 域住宅産業の構造改革と支援施策

 地域住宅産業が、今後とも住宅市場の競争 性の向上等の社会的要請に応えていくためには、その構造改革を進めることが重要であるが、この際、中小住宅生産者は、現下の地域住宅産業をとりまく社会情 勢を踏まえ、地域の消費者需要と自ら整備する生産体制との整合性を確保することが重要である。
 木造軸組工法等による中小住宅生産者で構成される地域住宅産業の生産体制の強化を図る上での課題は、指向する生産体制に応じて多岐にわたるが、中小住宅 生産者は、その経営規模が比較的小さいことから単独でこれらの課題に対処することには限界があり、各地域において具体の施策が円滑に推進されるための枠組 みの整備を進めつつ、住宅市場全体の競争性の向上のための誘導・補完の施策として、公共セクターによる総合的かつ積極的な支援を行っていく必要がある。
 このため、
1)
現場生産性や施工精度の向上に 資する新木造構法の開発、地域型木造住宅の開発への支援等による合理化工法等の開発・普及
2)
消費者ニーズの動向に対応した 企画・設計手法や経営手法の開発・普及並びに設計業務の情報化の推進等への支援、住宅性能保証制度の充実等による営業企画等の体制の充実
3)
合理的な流通システムや共同で 資材等の調達を行うシステムの開発への支援、住宅資金の早期交付による決済方法の改善に資する住宅完成保証制度の整備等による資材等流通の合理化の推進
4)
生産者団体等が新たな技能者育 成システムを整備する際のシステムの企画、訓練施設の整備への支援等技能者の確保・育成の推進
5)
建築基準の性能規定化への対 応、住宅性能表示制度及び優良な住宅生産システムの公的位置づけに係る制度の活用を円滑に進めるための取り組みへの支援
等を進めることが重要である。
[5]
社 会的財としての住宅の役割を重視した住宅供給の推進

 個々の住宅は私的に消費される財である が、同時に、住宅が集合し、道路・公園等の都市基盤施設と一体となって、まちなみを構成し、全体としての居住環境を形成する社会的財としての性格を有する ことから、個々の住宅の質の向上を図ることはもとより、社会的財としての住宅の役割を重視した住宅供給を推進することも重要である。
 このため、住宅生産・供給において、住宅の社会的財としての役割を一層重視し、住文化の継承やまちづくりへの貢献等に配慮した住宅づくりに積極的に取組 む住宅生産者等を支援するとともに、地域住民等が主体的に行う住宅・まちづくり活動への支援を行うことが重要である。
[6]
モ デルプロジェクトの推進

 住宅市場の構造改革と住宅産業の新たな展 開の方向をより具体的かつ詳細に示す「住宅産業ビジョン」を、広く消費者や住宅生産者等に周知・普及するとともに、その実現を先導的に進めるためのモデル プロジェクトを積極的に展開していくことが必要である。

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