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第1回大臣会合~議論の概要

1.各課題の議論の概要

 第1回インフラ担当大臣会合で討議された課題は次の通りである。
  (1)アジア太平洋地域の平和と繁栄に資するインフラ整備の推進
     アジア太平洋地域は、今や世界の成長をリードする地域として重要な地位を占めるに至り、今後、さらなる発展をめざして躍動を続けている。このように同地域の世界に占める位置づけが高まる中で、その平和と繁栄は世界全体の安定と発展に大きく寄与する。
     この意味で、アジア太平洋地域の人々の生活向上と産業の振興を支え、同地域に豊かさをもたらすインフラ整備の推進の意義は極めて大きい。
  (2)インフラ整備のための施策と技術の向上
     アジア太平洋地域には経済的・社会的に様々な発展段階の地域があり、インフラ整備のニーズがそれぞれ異なるが、交通渋滞、飲料水の不足、居住環境の悪化等、共通の課題が数多く存在する。このことから、参加国等は、それぞれのニーズに適合したインフラ整備のための施策と技術を、他国の経験も生かすなど、連携して向上させるよう努めるものとする。その際、インフラ整備における政府と民間部門の役割及び連携についても重視していく必要がある。
  (3)アジア太平洋地域の相互支援と交流の推進
     インフラ整備が、社会経済の持続的発展を実現する最も有効な方策の一つとの共通認識のもとに、その促進を図るためアジア太平洋地域内の相互の支援と連携を積極的に推進することとする。あわせて、当地域内の人材と情報の交流を、今後一層活発化することが必要である。

2.各分科会における議論の概要

  (1)交通インフラ分科会 (座長:チリ ラゴス公共事業大臣)
     交通インフラの整備進展は、社会・経済の発展に大きく貢献してきたものの、同時に、様々な問題を引き起こしてきたとの意見があった。一方で、地域社会の問題の解決や地域経済社会の集積・連携を促すために、さらなる道路整備の必要性も認識された。
     今後とも一層効果的な道路整備を推進するとともに、交通需要マネジメントや高度道路交通システムに取り組む必要があるとの意見に各国は理解を示した。また、多様かつ安定的に道路財源を確保するシステムの確立とその活用が重要であるとの意見が多かった。
     これらを踏まえて、インフラ整備の必要性は、その規模と範囲において大きく、政府の積極的な取り組みと民間の活発な参加が不可欠であることを共通の認識として確認し、今後、人類の英知を集め、21世紀に向けた交通インフラ整備に関する新たな取り組みについて各国が検討を行うことに合意した。
  (2)水分科会 (座長:インドネシア モフタール公共事業大臣)
     すべての社会活動は、水の量と質に大きく依存しており、健全な都市の発展には適正な水の量と質のコントロールが必要である。しかし、現状では都市の急激な発展に伴い、関係者の努力にもかかわらずこの水の量と質のコントロールが十分になされていない。この結果、都市型洪水の発生、水不足、地下水位の低下、水質汚染等の種々の水問題に直面し大きな社会経済問題、環境問題を引き起こしている。
     今後の健全な都市の発展のためには、都市の水問題に関してその重要性を再認識し、治水、水資源の開発と保全、水質環境保全等を総合的に考慮した水の量と質のコントロールを図っていく必要がある。このため、従来行われてきた施策を推進するとともに、さらに、水の量と質を総合的にコントロールするための技術的、制度的、組織的な検討および整備を行う必要性を確認した。
     参加各国が互いに直面する都市の水問題に関し意見交換できたことは非常に有益であった。参加各国は今後密に情報交換、相互協力を実施し、もって都市の水問題の解決に努力することをここに同意する。
  (3)まちづくり分科会 (座長:中国候建設大臣)
     各国・地域によって状況はさまざまではあるものの、大都市地域への人口集中は著しく、災害危険度の増大、交通混雑、生活環境の悪化などの都市問題・住宅問題を招いている。
     これらの改善のためには、安全・利便・快適といった観点が基本となるが、とりわけ、都市基盤施設の整備による都市の安全性の向上、良質な住宅および住環境の整備による居住環境の向上等が重要な課題であること、また、限られた資源の有効利用、再利用を図るための技術開発を積極的に推進することにより、地球環境問題にも積極的に貢献することが確認された。
     また、今後とも情報交換と相互協力を行っていくことが同意された。
  (4)国際協力分科会 (座長:日本森建設大臣)
     インフラ整備の重要性は各国共通の認識であるが、早急な整備を図る必要性や整備資金の不足等の理由から、BOT等の民間部門を活用する手法に期待する国が多かった。
     ただし、その場合でも政府の果たすべき役割は依然として大きいとの指摘も支持された。国境を越えて整備されメリットが所在国以外に広く及ぶ国際インフラに関しては、その意義が評価され、整備を促進すべきとの意見が大勢を占めた。
     建設産業の育成は、インフラ整備のために重要との認識が共有された。また、全地球的な環境問題に関しては、環境情報を地理情報とリンクさせて整備する等、積極的な取組みの必要性が認識された。

    以上を踏まえ、参加国は、インフラ整備の主要課題について様々な形態のパートナーシップを活用しつつ、積極的な取り組みを行うものとすることで合意した。

3.今後の取り組み

  (1)本フォーラム
     今後、閣僚レベルの会合によって継続させていくことを確認する。その会合では、インフラ整備、住宅整備、都市開発等の幅広いテーマを扱うものとする。このため、開催の時期、民間との連携等、開催に必要な事項について、今後定期的に開催することとする高級事務レベル会合で検討する。
  (2)インフラ整備に関する国際的情報データベース
     各国・地域のインフラ整備計画、建設関連制度、建設技術等の国際的に有用な幅広いインフラ整備関連情報のデータベースの構築を協力して行う。
  (3)研究機関交流の促進
     アジア太平洋地域における建設技術、建設経済等に係る研究機関交流を積極的かつ着実に推進していく。さらに、これら研究機関の交流と前記の高級事務レベル会合の連携を図る。
     今回、アジア太平洋地域の国と地域が、経済発展と国民生活の向上を支えるインフラ整備の重要性について共通の認識を確認し、交流と協調の推進について、意見の一致をみることができたことはきわめて有意義なことであった。世界の潮流を踏まえて、この会合がアジア太平洋地域の発展と連帯の新たな一歩となることを念願する。

4.次回以降の開催について

     本会議では分科会、閣僚会議などを通じて終始活発な議論が交わされた結果、インフラ整備、住宅整備、都市開発等の幅広いテーマを扱う閣僚レベルの会合を今後とも継続していくことなどが合意され、アジア太平洋地域においてインフラ整備に関する国際協力・協調を推進していく方針が確認された。
    この結果を受けて、翌年の平成10年6月18日及び19日には、「アジア太平洋地域インフラ担当大臣会合」第1回高級事務レベル会合が東京で開催され、16ヶ国のインフラ整備担当の19の行政機関から次官級代表の参加を得た。

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