j004-Report

国土交通省が主体となり、3D都市モデルの多様な可能性を引き出すため、アイデアソン・ハッカソンを開催した。アイディアソン部門の記録。

プロジェクト・プラトーのアイデアソン・ハッカソンの初日、2021年1月16日土曜日。朝9時のスタートに合わせて、全国から参加者がZoomミーティングにログインしてきた。主催者挨拶に始まり、運営側からルール説明が行われる。参加者は、約80名。学生、エンジニア、建築経験者など、多様な顔ぶれがそろった。今回、チームビルディング、メンタリングなどアイデアソンに必須の事柄はすべてZoomで行われた。参加者同士も、メンターも、それぞれ別々の場所にいながらひとつのゴールを思い描くために協力して進んでいく。メンタリングでは、パノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー)の齋藤精⼀氏、アジア航測株式会社 黒川史子氏、Hiroshima MotionControl Network 尾石元気氏が加わり、アイデアに対して、クリエイティブやデータ、コードといった視点から参加者と議論を交わした。アイデアソン開始から8時間を経て、以下14チームのアイデアが最終発表に臨んだ。

文:
重森 大
編集:
北島 幹雄 (ASCII STARTUP)
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成果発表では、川田十夢氏(AR三兄弟長男)、千代田まどか氏(ちょまど)、藤原雄彦氏(沖電気工業)、石丸伸裕氏(日立製作所)、筒井祐治氏(国土交通省)、遠藤諭氏(角川アスキー総合研究所)の6名の審査員が、グランプリ、準グランプリ、奨励賞を選定。また、参加者全員が投票で選ぶオーディエンス賞も設けられた。

アイデアソン審査結果

アイデアソンの結果は以下の通りとなった。今回はその中から入賞作品を紹介する。

グランプリとオーディエンス賞のダブル受賞を果たした「しゃきるとん★せな」チームは、「ヘキメン」を提案した。

既存の2次元地図とは違い3D都市モデルであることを活かし、建物の壁面活用を訴える。CityGMLと人流データを組み合わせて広告価値を推計したり、日照データと組み合わせて太陽光発電の可能性を推計したりするアイデアだ。3Dモデルなので道路にいる人の視界から見える表示パネルの位置も推測できる。そこに効果的な表示を行うことで、災害時の避難誘導にも役立てるのではという発表だった。

グランプリとオーディエンス賞を受賞した「しゃきるとん★せな」はビル広告の活用かくさいを支援する「ヘキメン」を提案

準グランプリを受賞したTOKYOサバイバルは、東京を舞台にしたサバイバルゲームを提案した。

3D都市モデルがあれば、地震や津波といった自然災害をはじめ、火災などの人的災害もシミュレーションできる。こうしたデータをもとに災害時対応マニュアルを作っても一度見て終わってしまうことが多いので、継続的に災害対策を意識してもらえるゲームにしようというアイデアだ。

準グランプリを受賞した「TOKYOサバイバル」は災害対策を学べるゲームを提案した

審査員奨励賞を受賞したGOLGOsは、ビルの壁面と電柱、街路樹を太陽光発電施設にするという面白いアイデアを提案した。

着眼点の面白さとして評価されたのは、現在残っている電柱をあえて残し、そこに太陽光パネルを展開させることで「電柱樹」として発電に使うという発想だ。地中に電線を配置せず空中に電線を配置する方法は景観を損なうなどマイナスイメージで語られがちだが、そうした日本ならではの景色をポジティブに捉えている。

ビル壁面や電柱を活かして太陽光発電のキャパシティを増やそうという提案で「GOLGOs」は審査員奨励賞を受賞

3D都市モデルを活用した多彩なプレゼンが展開された今回のアイデアソン。ここから約1カ月後、これらを実際の成果物にするハッカソンが2月13日に開催となった。果たして各チームが、CityGMLの特徴である属性情報をいかにうまく扱えたか、引き続き注目したい。