j007-Report

新たに国土交通省が整備した全国56都市の3D都市モデル。その多様な可能性を引き出すため、ビジネスモデルコンテストを開催した。

3D都市モデルを活かし、ビジネスのプロトタイプを作り上げる。

文:
重森 大
編集:
北島 幹雄 (ASCII STARTUP)
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PLATEAU Business Challenge 2021

Project PLATEAU(プラトー)では2020年度に引き続き、参加型のイベントを開催。初回となった2021年6月26日、27日は「PLATEAU Business Challenge 2021」と題し、3D都市モデルを活用したビジネスモデルを参加者が競った。新型コロナ感染症拡大防止の各種施策が施され参加人数は絞られたが、高校生から建設業関係者まで幅広いメンバーが集まった。会場となったのは、国内最大級のイノベーションセンターであり、多くのスタートアップやイノベーション・新規事業部門が入居する東京虎ノ門のCIC Tokyoだ。

初日はそれぞれが持ち寄ったアイデアを1分で説明し、参加者同士で投票、上位8チームに分かれることになった。途中、エムスクエア・ラボの加藤百合子氏、セブン銀行の松橋正明氏、OGC CityGML仕様策定ワーキンググループ設立委員の石丸伸裕氏がメンターとして会場入り。各チームに10分間ずつのメンタリングを行った。メンタリングを通じて思いを強くするチームも、方向性を修正するチームもあったが、いずれもアイデアの精度は高まっていった。

2日目の夕方、8つのチームは成果発表のときを迎えた。審査員はCoral Capitalの西村賢氏、アクセンチュアの藤井篤之氏、そして国土交通省でPLATEAUを担当する内山裕弥氏の3名。データ活用、ユースケースの新規性、ビジネスモデルの有効性の3点を基準に、各チームのビジネスモデルを審査した。

ビジネスチャレンジ審査結果

PLATEAU Business Challenge 2021の審査結果は以下の通りとなった。今回はその中から入賞したビジネスモデルを紹介する。

グランプリに選ばれた「車窓からAR」は、電車の窓をスクリーンとして活用することで、ARコンテンツを見せようというアイデアを披露。3D都市モデルの活用によって、建物データを特定地点でのコンテンツの見え方のシミュレーションに生かし、また建物の高さデータと3DCGコンテンツをインタラクティブに繋げる点で品質の高いコンテンツ作成が可能となる。スマートフォンをかざしたりARグラスをかけたりすることなくARコンテンツを楽しむことができ、非日常感や高い没入感を演出すると語った。観光地での活用も想定しており、現実の街並みを背景にアニメや映画のキャラクターが登場すれば、観光コンテンツの創出にもつながるだろう。

車窓からAR

準グランプリを受賞したのは、チームムササビの「ビル風発電ステーション」だ。3D都市モデルのデータからビル風をシミュレートし、安定して強い風を得られるポイントを割り出して風力発電機を設置。カーボンニュートラルな電力の地産地消を提案した。発電した電力で電動アシスト自転車を充電したりするほか、災害時にはスマートフォンの充電などの用途に開放する。将来的にはエリア内に大量の発電拠点を設けたマイクログリッドの構築や、ビル風を利用した都市部でのドローンハイウェイ構築という壮大な未来も語られた。

ビル風発電ステーション

審査員奨励賞には、チームNice Guysの「リアル店舗連動型インフルエンサーARライブコマース」が選ばれた。特定のエリアでスマートフォンをかざすことで、実際の街並みに巨大なインフルエンサーが現れ、パフォーマンスを行ったり近隣のお店を紹介したりする。VR空間ではなく実際に現地に行かなければ楽しめないARコンテンツとすることで、ファン同士のつながりを生み出し、現地の建物情報から実店舗への送客にもつなげる。

リアル店舗連動型インフルエンサーARライブコマース

都市空間をデジタル化することで実現するビジネスモデルを競った、PLATEAU Business Challenge 2021。本イベントは、7月17日・18日に開催される「PLATEAU Hack Challenge 2021」へとつながっている。今回煮詰めたビジネスモデルを成果物として深めても良いし、新たなアイデアを持ち込んでも良い。Hack Challengeでは実際に動作するものを作り上げるところまでが求められるハッカソンとなる。より具体的で面白いチャレンジが生まれることになることだろう。