j006-Report

国土交通省が主体となり、3D都市モデルの多様な可能性を引き出すため、アイデアソン・ハッカソンを開催した。ハッカソン部門の記録。

国土交通省が主体となり、3D都市モデルの多様な可能性を引き出すため、 アイデアソン・ハッカソンを開催した。ハッカソン部門の記録。 3D都市モデルの活用方法を探る、Project ”PLATEAU”(プラトー)のオンラインアイデアソン・ハッカソン。アイデアソンから約1ヵ月を経て、2021年2月13日土曜日、実装モデルを競うハッカソンが開催された。防災あり、SDGsあり、ゲームありと多様なジャンルからの提案が展開された。ハッカソンということで実装レベルにも注目が集まったが、いずれも高い完成度を見せ、審査員をうならせた。 アイデアソン同様、メンタリングでは、パノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー)の齋藤精⼀氏、アジア航測株式会社 黒川史子氏、Hiroshima MotionControl Network 尾石元気氏が加わり、実装プロダクトへのアドバイスを実施。 最終的にプレゼンに臨んだのは、以下の12チーム。成果発表では、川田十夢氏(AR三兄弟長男)、千代田まどか氏(ちょまど)、千村保文氏(沖電気工業)、石丸伸裕氏(日立製作所)、筒井祐治氏(国土交通省)、遠藤諭氏(角川アスキー総合研究所)の6名の審査員が、グランプリ、準グランプリ、奨励賞を選定。また、参加者全員が投票で選ぶオーディエンス賞も設けられた。

文:
重森 大
編集:
北島 幹雄 (ASCII STARTUP)
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ハッカソン審査結果

ハッカソンの結果は以下の通りとなった。今回はその中から入賞作品を紹介する。

影の功労者「都市SYM 〜人もデジタルツイン〜」

アイデアソンで発表した構想を大きく転換して、見事グランプリを獲得したのがこのチーム。都市の主役は建物ではなく人だと語り、CityGMLデータ上で人流シミュレーションを行う仕組みを構築した。

この災害人流シミュレーションは「実用レベルではないか」と審査員からも高い評価を得ていた。

CityGMLのデータを読み込んだだけでは交差点などの情報はないため、道路情報を画像データとして読み込み、交点を解析したうえで経路探索を行い、人の動きをシミュレート。一定範囲の人がエリア外に出るように設定してシミュレーションを行うことで、災害時に街頭エリアから避難するために要する時間や、時間的に最も遠い場所を見つけることができる。

TOKYO SURVIVAL「TOKYO SURVIVAL 〜 防災を「自分事」とするために」

半数以上の人は日頃から災害対策への備えができていないと言われる。その状況を解決するために、災害をジブンゴト化するアプリを作ってみせたのが、TOKYO SURVIVALだ。アイデアソンと同じく、準グランプリを獲得。

3Dマップ上で地震や水害からの避難経路を作成、確認し、図上防災訓練を行うことができる。実際のデモでは学校の避難訓練を模して、審査員もアプリ上での避難経路作成を体験した。飲料メーカー、スポーツ用品メーカー、ゲームなどとのコラボレーションで災害訓練のモチベーションを高めたいと、マネタイズも視野に入れたプレゼンを行った。完成度の高さを審査員全員が評価した。

GOLGOs「23区が生む太陽光エネルギーで電気自動車はどれだけ走れるのか?」

変革期にあるエネルギーをテーマに据え、なおかつわかりやすさにポイントを置いて実装してきたのがチームGOLGOs。こちらもアイデアソンと同じく奨励賞を受賞した。

可視領域、面積、高さなどから、ビルが持つ太陽光発電のポテンシャルをシミュレートし、「ビルのSDGs力」として可視化。さらに発電した電気で新幹線、EV、電動アシスト自転車がどのくらいの距離を走れるのか地図上に示してみせた。

チームRTG「REAL TOKYO GAME 〜東京がまるごとゲームの舞台になるプラットフォーム〜」

オーディエンス賞で参加者の支持を集めたのは、チームRTG 。CityGMLから作成したバーチャルな東京を、まるごとゲームの舞台にして遊んでしまおうと考えた。といってもゲームそのものの制作を目指したのではなく、ゲームをつくり、楽しむためのプラットフォームを提案してきた。ユーザーにはゲームをつくる楽しみ、共有する楽しみ、都市を舞台に遊ぶ楽しみを提供するという。

実際に港区東麻布のCityGMLデータを元にゲームフィールドを作り、Voxelアートを作るゲームをインターネット上に展開し、審査員や参加者が体験できるプレゼンを行った。

100名を超える参加希望者が出た今回のアイデアソン/ハッカソンで、参加者は素晴らしい成果物を披露してくれた。これにとどまらず、ビジネスやアートでの活用、さらには遊び心のあるエンターテインメントなど、3D都市モデルには多くの可能性が秘められている。本オープンデータを使った試みは継続予定であり、さらなる発展・活用を期待したい。