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地震や豪雨に、データでどう備える? さいたまで防災×データのアイデアソン

「PLATEAUアイデアソン2025 inさいたま」レポート

2026年2月11日、さいたま市大宮区のエムズスクエアで、シビックテックさいたま主催(後援:さいたま市、協力:国土交通省、株式会社武蔵野銀行)の「PLATEAUアイデアソン2025 inさいたま」が開催されました。昨年度に続き2回目の開催となる今回は「防災」をテーマに3D都市モデルの活用アイデアを出し合いました。

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松下 典子(Matsushita Noriko)
編集:
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「防災」をテーマにアイデアを考える

本イベントは、国土交通省が推進する「PLATEAU」の3D都市モデルデータを活用し、さいたま市で何ができるかを考えることを目的に実施されたもの。昨年に続く2回目の開催となる今回は、さいたま市民など14名が参加しました。

さいたま市では近年、大雨による洪水や内水氾濫、地震発生時の火災延焼などへの備えが課題として意識されており、市民生活にとって身近なテーマです。

こうした災害リスクに対応していくためには、市民参加型での防災まちづくりの推進や、防災意識の醸成による自助・共助の強化が必要不可欠となっています。

このような課題を解決していくため、3D都市モデルをはじめとするデータを活用し、「災害リスクや避難情報をよりわかりやすく伝える方法はないか」「具体的な行動変容につなげられないか」といった防災対策のアイデアを考えることが今回のテーマとなりました。

まずはPLATEAUを知るインプットから

当日は、エンジニアやデザイナーだけでなく、地域のことに関心を持つさまざまな立場の人たちが参加しました。専門的な知識がなくても取り組めるよう、前半にはインプットの時間を設け、PLATEAUの概要や活用事例を学ぶ構成となっています。

インプットでは、PLATEAUの概要説明、事例紹介、ハンズオンが行われました。

最初に登壇したのは、国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課 企画専門官の十川優香氏。「PLATEAUって?なにができるか知る」として、PLATEAUのプロジェクト概要や、3D都市モデルでできることについて説明しました
続いて、株式会社福山コンサルタント 新領域推進室の黒木幹氏が登壇。「データをつかった地域の事例を知る」として、具体的な事例を紹介しながら、防災分野におけるデータ活用の可能性にも触れました
ハンズオンでは株式会社Eukarya CPOの荻原優希氏が講師となり、「PLATEAU VIEWでデータをさわってみる」として操作方法を解説。参加者は「さいたま市版PLATEAU VIEW」にアクセスし、実際に画面を操作しながら、建物や地形データの表示方法を体験しました
ハンズオンの様子

地震も豪雨も、避難も訓練も。「防災」をテーマに議論

後半はアイデアソンです。「データをつかって“防災について”なにができるか考える」をテーマに、参加者14名がランダムに3チームに分かれて議論をおこないました。

ファシリテーターはシビックテックさいたまのクワハラシズカ氏
インプットで登壇した十川氏、黒木氏、荻原氏も各チームを回りながら助言し、参加者とともにアイデアを整理していきました

住民の行動を促す災害タイムラインや避難アプリを考案

イベントの最後には、PLATEAUの3D都市モデルを活用した3つの防災アクションとして、各チームが成果を発表しました。

チーム1:住民の主体的な行動を促す「動的防災システム」

チーム1が提案したのは、災害情報をリアルタイムで可視化し、住民が自ら判断して行動できる仕組みです。従来の2Dで表現された静的な防災マップではなく、想定される被災状況の変化を時系列で、かつ立体的に把握できる動的なシステムを構想しました。ローコードで構築された3Dインターフェースにより、Webやモバイルから即座に状況を把握可能にし、リアルタイムの危険度を可視化。狙いは、従来の一斉通知型から脱却し、住民が自ら「いつ、どう動くか」を判断できる環境を構築することです。

チーム2:車種・手段別の「道路冠水リスク可視化システム」

チーム2は、大雨や水害時の道路状況をリアルタイムに可視化する仕組みを提案しました。大雨時のアンダーパス冠水深を推定し、車種ごとの通行可否を判定するアイデアです。危険箇所を避けた最適な避難ルートを提示し、水害時の「移動の安全」を確保します。さらに、道路のくぼみや側溝周辺のリスクも可視化し、危険な道路を避けたルートの自動提案や通行止めの即時通知につなげることを想定しています。

チーム3:土地勘のない場所でも迷わない「バーチャル避難訓練」

チーム3が提案したのは、自宅や旅行先での被災を想定した、日常的に使える避難シミュレーションアプリです。学校や職場では避難訓練が行われている一方、自宅から避難所までの訓練は十分とはいえません。また、旅行先など土地勘のない場所での被災も視野に入れ、日常的に避難経路をシミュレーションできる仕組みを構想しました。教育現場や自治体の訓練、一般公開を通じて、場所を選ばない「防災の習慣化」を目指します。

「自分事」から見えた、既存対策の限界とデータの可能性

成果発表後、インプットでの登壇者がそれぞれ発表を振り返り、感想を述べました。

「今回は防災にフォーカスしてアイデアを出していただきましたが、『今あるマップなどの情報では足りない』という問題意識が共有できたこと自体が大きなステップだと感じました。個人の状況や場所の特性に対応できるのがデータのポテンシャルです。PLATEAUは3Dにこだわる必要はなく、ほかのデータと連携しながら可視化やアプリ構築につなげられるところが強みです。今回の発表では、その具体的な可能性が見えてきたように思います」(国土交通省 十川氏)

「災害時にリアルタイムのデータを取ること、効果的な避難訓練を行うこと、そして自主的に逃げてもらう仕組みを考えること。この3つは災害対策として重要なポイントです。どの発表にもその視点が感じられました」(株式会社福山コンサルタント 黒木幹氏)

「みなさんが“自分事”として、どんな課題を解決できるかを考えているのが印象的でした。生成AIを活用して短時間で発表スライドをまとめる体験も、いい学びになったのではないかと思います」(株式会社Eukarya 荻原氏)

今回のアイデアソンでは、情報収集や発想の整理、発表資料の作成といった段階で生成AIが活用されました。こうしたAI活用は、PLATEAUの整備するデータそのものにも広げることができます。PLATEAUの3D都市モデルはオープンデータとして公開されています。大量のデータを扱うことを得意とするAIと組み合わせることで、その活用はさらに広がっていきそうです。