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現場のリアルな課題をどう乗り越える? 3D都市モデル活用の最前線を学ぶ自治体交流会

「PLATEAU自治体交流会 in 大阪・堺」 レポート

国土交通省の「Project PLATEAU」は、3D都市モデルの普及に向け、2026年6月3〜5日に「第4回 PLATEAU自治体交流会 in 大阪・堺」を開催した。3日間のプログラムでは自治体同士で活用事例やノウハウを共有するため、事例紹介やツール体験、ワークショップなどを実施。参加自治体は各地の取り組みや課題を持ち寄り、3D都市モデルを活用した地域課題解決のための具体的なヒントを探った。

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撮影:
高橋 智

現場を熟知する自治体関係者からの「生の声」が不可欠

開催初日となる6月3日のプログラム冒頭、主催者を代表して、国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課 デジタル情報活用推進室長 高峯聡一郎氏が挨拶を述べた。

国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課 デジタル情報活用推進室長 高峯聡一郎氏

高峯氏は「質・量ともに刷新した」と4回目を迎える「PLATEAU自治体交流会」に期待を寄せた。従来まで2日間だったプログラムが3日間に増えたことや、座学の研修に留まらず、意見を出し合い、アイデアを募る議論へと進んだ意義を説明した。そのうえで「この貴重な機会を通じて交流を深めるだけでなく、参加者の知識も深めていける会にしたい」と強く呼びかけた。

続けて、新たな「PLATEAUビジョン」の策定に向けた展望についても言及した。プロジェクトの現在は「さらなるブラッシュアップが必要な、改善の余地を残した段階」であるとし、ビジョンをより完成度の高いものにするためには、現場を熟知する自治体関係者からの「生の声」が不可欠であると説明した。会場に多くの同省職員が同席していることにも触れ、「いかなるタイミングでも構わないので、PLATEAUをより良くするための独創的なアイデアを積極的に共有してほしい」と協力を仰いだ。

次に、開催地を代表して堺市 建築都市局 都市計画部長 秋津風文彦氏が登壇した。

堺市 建築都市局都市計画部長 秋津風文彦氏

秋津風氏は、Project PLATEAUが都市の計画に極めて重要な取り組みであることを強調し、堺市が抱える人口減少や都市構造の変容、頻発する自然災害といった多様な課題に対し、地域の持続的な発展を実現するためには、デジタル技術の導入が避けては通れないと述べた。

また、今回の交流会について、先進的な取り組みを実践している自治体やこれから本格的な導入を進めようとしている自治体が一堂に会する大変貴重な機会であると述べ、「日頃はなかなか得られない現場の知恵や事例を持ち帰っていただくことで、それぞれの地域における取り組みをさらに前進させる契機となることを期待している」と語った。

続いて、国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課 デジタル情報活用推進室 課長補佐 濱田海生氏が登壇し、7年目を迎えた「Project PLATEAU」の基本理念や、日本各地で進む先駆的な活用事例、そして本交流会におけるワークショップの狙いについて解説した。

国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課 デジタル情報活用推進室 課長補佐 濱田海生氏

濱田氏からは、国主導の3D都市モデルのデータ整備から、地方公共団体向けの補助事業が始まって以降、地域主導のデータ整備と防災施策等の高度化が急速に進んでいることや、その一方で、整備後の活用が限定的になっている現場の課題について言及した。

また、PLATEAUの3D都市モデルは3D形状に加え「都市計画基礎調査に基づく属性情報」を保持している点が最大の特徴だ。濱田氏は、意味を持つ属性情報によりコンピュータによる機械判読が可能となり、高度な分析やシミュレーションが実現できるとその優位性を強調した。また、国際標準規格「CityGML」を採用したオープンデータであるため、隣接自治体の情報も含めて即座に活用できる利点も挙げられた。

最後に濱田氏は、2026年も新たに60の自治体と5件の民間プロジェクトが採択され、整備予定が約380都市まで拡大している現状を報告した。一方で、自治体現場からは「モデルを整備したものの、具体的な活用や継続的な運用に結びついていない」という課題も浮き彫りになっていると指摘。今回の3日間の交流会は、こうしたデータの「宝の持ち腐れ」を防ぎ、行政実務への具体的な導入を体験する場であると説明した。

続いて、ブラウザ上で手軽に3D都市モデルを活用できるWebアプリケーション「PLATEAU VIEW」の紹介が行われ、初期から開発・保守・運用を担う株式会社Eukaryaの山本義孝氏が登壇した。

株式会社株式会社Eukarya Project Group 営業 山本義孝氏

PLATEAU VIEWは、PLATEAUの3D都市モデルを、Webブラウザ上で手軽に表示・活用できるシステム。専門的なソフトをインストールすることなく、誰でも無料で利用できる点が大きな特徴だ。

山本氏は、PLATEAU VIEWの最も重要な強みは、単に都市を3Dの立体調で見せるだけでなく、建物一つひとつに組み込まれた「目に見えない情報」を確認できる点にあると説明した。建築年(築年数)や建物の用途、構造(木造・鉄筋など)、計測された高さといった詳細なデータが含まれており、画面上で建物を選択するだけでそれらの情報を一目で把握できる。そのため、津波や洪水といった各種ハザードマップを建築物モデルと重ね合わせることで、どの建物がどれだけの浸水リスクに直面しているかをレベル別に色分けして分析することもできると説明した。

また、現在のデータを重ね合わせることで、状態や視点をそのまま保持したURLを発行できる「シェア機能」や避難ルートを直感的に伝える「ストーリー機能」などもあり、自治体のワークショップや庁内会議、住民への合意形成のツールとして広く活用できる機能も備えていると強調した。

5つの自治体がPLATEAU活用事例を発表

続いて、大阪府堺市、和歌山県すさみ町、京都府舞鶴市、島根県松江市、神奈川県藤沢市の5つの自治体によるPLATEAU活用事例が発表された。

盛土規制から自動運転、消防訓練まで、堺市の3D都市モデル活用(大阪府堺市)

堺市 都市計画部 都市計画課 土地利用係長 海谷利樹氏

人口約80万人、面積約149平方キロメートルの大阪府堺市は「未来をつくるイノベーティブ都市」を掲げている。2022年度からProject PLATEAUに参画し、整備を進め、2024年度には市域全域の3D都市モデルの整備が完了した。

2024年度から2025年度には、盛土規制法の改正に伴う業務量の大幅な増大という課題に対し、3D都市モデルの地形データを活用することで業務効率化を図るシステムを開発した。このシステムは、山間部のような現地調査が危険な箇所も確認できるほか、調査内容などもデジタル台帳として一元的に管理できるものとなっている。

また、2025年度には「過去と現在の2時点の地形データから地盤変位を可視化するシステムの構築」や「自動運転バスのシミュレーション作成(仮想空間上での歩行者の飛び出し検証など)」「人流データを可視化しストリートファニチャーの配置を再現する歩行空間の活用検討」という3つのユースケースを実施した。

さらに2026年度からは、新たに消防分野への展開を開始しており、3D都市モデルを活用した訓練用のドライブシミュレーターを構築することで、緊急走行の訓練環境を整え、危険予知能力の向上や安全対策の検討へとつなげていきたいと説明した。

今後は、各部署の日常業務の中で当然のように3D都市モデルが使われる状態を目指している。防災、交通、都市計画などの分野へ展開し、共通基盤として定着させるために、課題に対してピンポイントで解決策を提案していくことで、庁内での活用を広げていきたいと語った。

津波到達3分のリアルに立ち向かう。限界集落が挑む次世代防災(和歌山県すさみ町)

すさみ町役場 地域未来課 前田航汰氏(写真左)、すさみスマートシティ推進コンソーシアム 防災WG (ソフトバンク株式会社) 木村篤氏(写真右)

和歌山県すさみ町は、南海トラフ巨大地震発生時に最大20mの津波が3分で到達し、10カ所以上の避難所が孤立するという、極めて深刻な被害が想定されている地域である。この状況に対応するため、町では2023年から2025年にかけて、町内全域約174平方キロメートルにおよぶ広大な3D都市モデルの構築を行った。完成した3Dマップは、複数の災害リスクを重ねて表示できるのが特徴で、町内38の地区ごとに住民向け説明会を開催し、避難経路を確認するなど、防災意識の向上を図っている。

また、高齢化率が50%を超える町であるため、平時だけでなく災害時のサポートが可能なシステムが必要だと考え、町ではドローンの活用を進めている。特に重視しているのは、3Dマップ上でのドローン航路の可視化だ。これが可能になれば、遠隔から自動飛行でドローンの運用ができるようになるため、医薬品輸送、お弁当配送、点検放送などを安心安全に行えるようになるという。

今後の展望としては、災害時には広域的な自治体間の連携や自衛隊との協働へつなげ、平時には地方の地域活性化に寄与する持続可能なモデルを目指す方針だ。そのほか、SAR(合成開口レーダー)衛星を活用した建物データとの差分検知システムの実証に加えて、関西大学が進める「南海トラフ研究会」からも知見の提供を依頼されており、外部の研究機関とも緊密に連携しながら、PLATEAUを活用した防災ノウハウのさらなる高度化を進めている。

都市計画マスタープランを3Dで可視化。共同研究で見据える持続可能な街づくり(京都府舞鶴市)

舞鶴市 建設部 都市計画課 計画係長 上田健人氏

都市計画において、経験や主観に頼りがちだったという舞鶴市。客観的なデータに基づく形へ転換するため、共通のデータ基盤となるPLATEAUの導入に踏み切った。また行政としての説明責任を果たすためにも、散乱していたデータが3D空間上に集約され、一度に提示できる情報量が格段にアップすることは、正しい判断をするためにも役立つと語る。

この「共通のデータ基盤」を最大限に活かしながら、舞鶴市では2025年から、以下のように段階を踏んだ全庁的なPLATEAUの活用を進めている。

●2025年:市街化区域等の3D都市モデルを整備し、ハザードマップの3D可視化によるリスクコミュニケーションの実践
●2026年:市が抱える都市構造上の課題や目指すべき都市像の可視化のため、駅前周辺の街なかエリアをシミュレーションした「まちづくりビジョン」の作成
●2027年:総合計画などあらゆる政策分野で3D都市モデルを住民説明のツールとして展開(予定)

都市計画分野以外への横展開も着実に進む一方で、全庁的な活用に向けた庁内理解の促進や独自システム・シミュレーションソフトの維持管理、土地利用の転換に応じた都市モデルの定期的な更新にかかる予算の確保が今後の課題として挙げられる。これらの解決に向け、舞鶴市内にある国立高専との共同研究なども視野に入れ、さらなる展開をしていきたいと語った。

見せる景観まちづくり&合意形成を加速させる松江市の仕組み(島根県松江市)

松江市 まちづくり部都市政策課 計画係 主任主事 山本のどか氏

島根県松江市では2024年から景観計画の見直しを開始し、新たに「景観事前協議制度」の導入と「眺望基準」の刷新を行った。新基準では、松江城天守閣からの基準線が再設定され、新築する建物の高さ制限が厳格化された。しかし、従来の2D図面や数値計算では、予定建築物がこの複雑な基準を満たしているか的確に判断することが困難であり、事前の協議に時間と労力を要していたという。

この問題を解消するために構築されたのが、3D都市モデルを活用した「景観まちづくり支援ツール」だ。同ツールでは、PLATEAUの正確な位置・標高データの上に予定建築物の3Dデータを瞬時に配置し、マウス操作で高さを自由に調整できる。さらに、視点を天守閣からの景観に切り替え、建物の干渉をリアルタイムに可視化できる。ツールの効果は劇的で、シミュレーション画面では、「基準不適合」と「基準適合」が一目で判別できるようになり、これまでの複雑な眺望判定が数分で判断できるため、合意形成が圧倒的に加速した。

ツール完成から3カ月の段階だが、今後は松江城を見渡す重要ポイントである「視点場」の追加設定や建物の色彩調整、景観形成基準全体の改定へと全面的に応用していく計画だ。さらに、2025年は地元の松江高専の学生たちが独自にPLATEAUを学ぶ授業に市役所側がコミットしてアドバイスを送る体制を構築。2026年には高専と共同で地域ハッカソンを開催する予定など、未来を見据えたデジタル人材育成のエコシステムも機能し始めている。

3つの壁の突破とユニークな庁内展開戦略(神奈川県藤沢市)

藤沢市 計画建築部 都市計画課 主査 丹野勝太氏

神奈川県相模湾沿いに位置し、江の島などを有する人口約44万人の藤沢市では、PLATEAUの庁内展開を進めるにあたり、自治体職員が直面する特有の「壁(予算・組織・理解の壁)」が存在したという。また、まちづくりの意図が住民へうまく伝わらない「伝えられない壁」も存在しており、これらの壁に対し、藤沢市はいくつかのユースケースを展開した。

●災害リスクの可視化:従来のハザードマップでは伝わりにくい高所への避難イメージを、3D都市モデルを用いて直感的に理解できる情報へ変更
●都市計画の安全性検証:火災延焼シミュレーションを実施し3Dで可視化することで、平面図では難しい情報伝達・検討を可能に
●若年層へのアプローチ:3D都市モデルをゲームの「Minecraft(マインクラフト)」空間に変換し、楽しみながら遊んでもらい、自発的にまちづくりや防災に興味を持ってもらう取り組みを実践

また、庁内展開を円滑に進めるための工夫として、藤沢市独自のユニークなアプローチも紹介された。例えば、他部署からの相談に対して即座にデータを供与できるよう、日頃から準備を整えておく「おすそ分け」の精神や、2D地図では堪能できない3D特有の「ワクワク感」を共有することで、物理的・心理的な壁を乗り越える取り組みを実践しており、さらなる活用拡大を目指していきたいと展望を語った。

PLATEAUの具体的な活用方法や運用の本音を語り合う「ユースケース座談会」

1日目の午後には、自治体職員たちの交流会が開かれた。職員同士が、PLATEAUの具体的な活用法や導入・運用のプロセスにおける実務上の課題について語り合うセッションだ。職員は10班に分かれ、それぞれ異なる自治体の職員とチームを組み、各班に配置されたファシリテーターを中心に議論を行った。

本座談会では、以下の3点を主な目標として掲げた。

●他の関心のあるユースケースや具体的な導入プロセスの把握
●単発での実証実験で終わらせず、日常業務においてPLATEAUを「継続利用」するための手法や「運用体制」のイメージの具体化
●自庁での横展開に向けた「次の一手」を見いだすこと

参加者はこれらの狙いに基づき、「興味のあるユースケース」やデータ整備後の課題となる「PLATEAUの継続利用」について、それぞれの実務目線から意見交換やノウハウ共有を行った。

グループディスカッション後には、各班でどのような意見が交わされたか、成果を共有する場が設けられた。発表では、実務担当者ならではの「リアルな悩み」と「今後の展望」などが率直に語られた。

特に共通の課題として上がったのが、PLATEAUの導入や予算化における財政部局への説明の難しさである。「なぜ2Dではなく3Dが必要なのか」という費用対効果の説明や庁内のPCスペック・回線速度といったインフラ面の制約が多くの自治体でネックとなっていた。また、人事異動に伴う担当者の交代による「運用の維持」や「後継者不足」「補助金の継続性への不安」などのリアルな壁が浮き彫りとなった。

一方で、これらの課題を乗り越えるための前向きなアプローチも多数共有された。防災や観光など、他部署の課題解決へ積極的に働きかけることによって、庁内での活用の広がりも見いだされている。さらに「PLATEAUの利用自体を目的にするのではなく、地域の課題を解決する手段として捉えるべき」という指摘や推進を牽引するキーマンの重要性も語られ、今後の横展開への大きなヒントとなった。

3D都市モデルを実務に活かす!「ユースケースツール体験」にみる自治体ソリューション

座談会の後と2日目の午前中には、講義形式で具体的な活用法をインプットする場としてユースケースツール体験が実施された。3つの具体的なユースケースツールをもとに、PLATEAUの3D都市モデルが実際の行政課題にどのように適用されているかを体系的に学ぶことが狙いだ。座談会で浮き彫りとなった「なぜ3Dが必要なのか」「実務にどう活かすのか」というリアルな疑問に対し、実際の操作やデータ活用のプロセスを体験することで、自庁での実践に向けた具体的な解決策を持ち帰ることをゴールとした。

ツール①まちづくり可視化シミュレーションツール(株式会社フォーラムエイト)

初めに、株式会社フォーラムエイトから「まちづくり可視化シミュレーションツール」に関する講義、実習が行われた。本ツールは、山口県周南市を舞台にしたシミュレーション環境を使用し、膨大な3D都市モデルを重畳してもスムーズに動作する高い処理性能を備えている。機能面では、あらかじめ設定したカメラワークで街を案内する「スクリプトアニメーション(動画書き出し機能)」などを有し、VR技術によって言語化しにくい合意形成を円滑化することができる。

このプログラムは、主に次の3点を目的として行われている。

●ツールの基本操作やデータ活用のプロセスを、実技を通じて習得すること
●一つの計画から複数の比較案を作成・提示し、説明資料として役立てる手法を理解すること
●VRや3Dビジュアルを用いることで、言語化しにくい合意形成をいかに円滑化できるか、その有効性を具体的にイメージすること

実習では、「高度なデジタルツイン体験ワークショップ」が行われ、参加者は仮想空間内に道路を引き、人流や車両の動きを制御する操作に自ら取り組んだ。道路平面図に基づいた設計や、車線・歩道の幅員変更を伴う断面編集、樹木やストリートファニチャーの配置など、リアルタイムに街並みが構築されていく過程を体験。実務において重要な検証作業の流れを直接確認する機会となった。仕上げとして、スクリプトアニメーション機能を用いた街のガイド体験が行われた。膨大なデータを扱いつつもスムーズに動くパフォーマンスの高さや、スクリプトを活用した効果的なプレゼンテーション技法が紹介され、参加者はVR技術が秘める圧倒的なポテンシャルを実感した。

ツール②景観まちづくり支援ツール(株式会社シナスタジア)

「景観まちづくり支援ツール」は、直感的な操作性とフォトリアルな3D表現を両立しており、庁内の利用環境に適したオフライン動作にも対応している点を特徴とする。住民目線でまちなかを確認できるウォークスルー機能をはじめ、日照や天候の変化のシミュレーション、既存建物の撤去、200種類以上のアセット配置など、多彩な機能を搭載している。さらに、任意のエリアの高さ規制の検証や、可視領域と不可視領域を自動で判別し、色分けして表示する高度な解析機能も備えており、視覚的で説得力ある資料の作成を支援する。

本セミナーでは、ツールの主要機能や操作方法を学ぶとともに 、景観審査や屋外広告物審査の実務における3D都市モデルの具体的な活用シーンを理解することを目的とした講習が行われた。3Dによる視覚表現を効果的に活用することで、住民への説明、審議会、庁内関係者や事業者との協議など、合意形成が求められる さまざまな場面において、円滑な意思疎通と説得力の高い資料作成の実現を目指すものである。

セミナー前半では、ツールの特長と多岐にわたる機能の紹介があり、後半では、参加者が「景観業務を担当する行政職員」という設定で実務を体験するワークショップが実施された。ワークショップでは、新たに計画された大型建築物が伝統行事に必要な眺望を妨げないかを確認する景観審査や、集客施設に設置する壁面広告物について、壁面に占める広告面積の割合を自動算出する屋外広告物の審査など、実際の業務に即した活用方法を体験した。

多くの自治体で導入が進む本ツールの操作体験を通じて、3D都市モデルが、住民説明や審議会、事業者との協議における相互理解を深め、円滑な合意形成を支援する有効な手段であることを学ぶ機会となった。

ツール③都市構造評価ツール(株式会社福山コンサルタント)

「都市構造評価ツール」は、立地適正化計画の策定や見直しを支援するQGISのプラグインだ。3D都市モデルが未整備の地域であっても、建築年や用途といった基本的な調査データさえあれば導入できる仕組みとなっており、行政による計画策定のPDCAサイクルの内製化を促し、コストを抑えつつ業務の質を高める実践的なツールとして紹介された。

従来、コンサルティング会社に依存しがちだったデータの収集・加工・指標算出を自動化し、無償かつオープンな環境で「まちづくりの健康診断」を可能にする。本ツールにより、担当職員が都市の現状を共通認識として早期に把握し、議論や意思決定の迅速化を図ることができるという。

講義の場では、本ツールが「無償」で提供されるに至った背景や、その利便性について解説がなされた。実習では、サンプルとして宇都宮市のデータが組み込まれた環境を活用。居住誘導や防災といった6つの主要指標を選択することで、重ね合わされたマップや経年グラフから、居住誘導区域や浸水リスクエリアにおける人口増減や新築状況をはじめ、整備されたLRT周辺で進む人口増加や宅地開発の広がりを詳細に分析・把握するプロセスを体験した。

一通りの操作体験を通して、今後の重要な局面はデータの読み解きにあることが浮き彫りになった。ツールによって一瞬での可視化が可能となった今、そこから課題を抽出して具体的な示唆を導き出すステップにおいては、依然として目視による議論や要因の探求といった人間特有のアプローチが不可欠であるとされた。

地域の“健康”状態をデータから読み解いてみよう!
「コンパクトシティの課題を見定め、PLATEAUを活用して持続可能な街づくりの処方箋を考える」

2日目の午後と3日目には、「PLATEAU × 持続可能な都市を考えるアイデアソン」を実施した。一般社団法人 コード・フォー・ジャパン GovTech推進コンサルタント 石塚清香氏がファシリテーターを務め、メンターとして株式会社アナザーブレイン代表取締役 久田智之氏、青山学院大学 地域社会共生学部教授 古橋大地氏が参加し、専門的な知見から議論を支えた。最終日3日目午後の成果発表では、コメンテーターとして、国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課 デジタル情報活用推進室 課長補佐 濱田海生氏が加わり、活発な意見交換が行われた。

一般社団法人コード・フォー・ジャパン GovTech推進コンサルタント 石塚清香氏
青山学院大学 地域社会共生学部 教授 古橋大地氏
株式会社アナザーブレイン 代表取締役 久田智之氏
国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課 デジタル情報活用推進室 課長補佐 濱田海生氏

今回のアイデアソンは、少子高齢化やインフラの老朽化といった現代の街づくりが直面する諸課題に対し、議論とアイデア創出の場を目的として開催された。「コンパクトシティ」の概念をテーマに掲げ、街の現状を人間と同じように「健康診断」するというアプローチで進んだ。「PLATEAUの3D都市モデル」や「都市構造評価ツール」を用いて未来の都市構造をシミュレーションすることで、経験や勘に頼るのではなく、客観的なデータに基づいた課題抽出が可能となる。このように地域の「健康状態」をデータから客観的に把握し、持続可能な都市運営のための「処方箋」を導き出すという、極めて実践的な内容となった。

本プログラムは、以下の4つのプロセスを経て進行した。

●都市構造評価ツールによる、街の健康状態の診断(サンプルモデルとして宇都宮市を採用)
●診断結果に基づいた課題と仮説の抽出と、目指すべき将来像の整理
●解決策の検討と、サービスキャンパスキャンバスを用いた具体化
●各グループによる成果発表および講評

当日は、初日の座談会と同様に参加者がAからFの各グループに分かれて議論を展開し、最終的にその成果を発表した。以下に、全6グループの発表事例を紹介する。

「逃げ友スイッチ」で挑む、浸水区域の逃げ遅れゼロ化計画

Aグループは、デジタル技術と地域コミュニティを掛け合わせ、災害時の逃げ遅れをなくすための避難支援システム「逃げ友スイッチ」を提案した。これは、浸水リスクを抱える地域において、住民が孤立することなく全員で安全に避難できるよう設計された、相互扶助型のシステムである。この取り組みの核となるのが、平時からの「逃げ友」づくりだ。近隣住民同士でペアやグループを事前に組織し、顔の見える関係性を築いておく。災害時には、システムが検知した水位情報に基づいて避難の合図が発令され、これに呼応して 「逃げ友」同士が協力して避難を行う。これにより、要配慮者の介助を含めた「1人にしない移動」を実現し、地域全体での安全な避難完了を目指す構想だ。

提案の背景には、診断の結果見えてきたハザード区域内での新築住宅建設の継続と新規入居者が増加、そこから立てられた新住民間でリスク認知が十分に浸透していないという仮説があった。さらに、住民側の「正常性バイアス」や情報伝達の不備、行政の縦割りに起因する実態把握の難しさといった障壁も存在する。しかし、これらの課題を克服することで、支援対象者の確実な把握や避難に伴う心理的不安の払拭が可能となる。 それは単なる住民の安全確保に留まらず、地域コミュニティの活性化という新たな付加価値を生み出す一助になると説明された。

また、防災カルテの整備、PLATEAUの3D都市モデルを活用した避難シミュレーション、AR・VRによる防災体験の提供も提案された。一方で、これらの仕組みを実効性のあるものにするには、官民が緊密に連携する体制が不可欠であると指摘。地域が一体となって避難率向上に取り組むことで、孤独や孤立といった社会課題の同時解決も目指していく展望が示された。

濱田氏は、ARやVRを用いた体験の有効性について自治体側の実例を引き合いに出しながら、「視覚的な分かりやすさは間違いなく有効的で、ぜひどこかで実際に取り組んでほしい」と期待を寄せた。

久田氏は、水位センサーのリアルタイム情報とデジタルツインを掛け合わせる国交省の意図を汲んだ構成や、テクノロジーの先にある「人とのつながり」に着目した点を評価しつつも、「支援側の負担やマッチングの難しさに対しては、最新のAI技術などをうまく組み込んでいくと、さらに素晴らしいものになる」と前向きなアドバイスを送った。

AIを活用した「居住誘導区域」ライフマッチング戦略

Bグループは、子育て世代を対象に「AIライフスタイルシミュレーション」を用いた居住エリアのマッチングシステムを提案した。これは、利用者が自身の性格やライフスタイル、将来の家族構成といった詳細な条件を入力すると、AIの診断によって最適な居住エリアが提案されるシステムだ。さらに、補助金の有無や防災データ、将来的な土地価値までも可視化し、未来の生活を擬似的に体験できる仕組みとなっている。

同グループが診断を行った結果、人口の約43%が行政の推奨する「居住誘導区域」の外に暮らしていること、区域外の新築率が区域内を上回っていることなどが明らかになった。地価の安さや規制の緩さを背景に郊外開発が進む一方、このままでは将来的にインフラ維持をはじめとする行政サービスが滞る恐れがある。そのため、目先の利便性だけでなく、地域の30年後を見据えて区域内を選んでもらうための「行動変容」を促すツールとして、このシステムを考案したという。

実装に向けて開発コストの抑制という課題は残るものの、今後の目標として、短期的には区域内の新築率50%以上への引き上げ、中長期的には区域内人口の割合60%以上への拡大を設定している。デジタル技術を通じて住民の自発的な選択を促し、持続可能なコンパクトシティの実現を目指したいと語った。

濱田氏は、「目先の地価だけでなく地域の将来を想像させるという、住む人の幸せを真剣に考えた問いが秀逸だった」と称賛した。さらに、アイデアの具現化に悩んでいたところをメンバー間で協力をし合い形にしていったプロセスを「まさに政策がスピーディーに形になっていく理想的なチームの姿を見せてもらった」と振り返り、プロジェクトの進め方としても高く評価した。

久田氏は、AIを活用した都市計画の可能性について助言を行った。膨大なペルソナを瞬時に検証できる現状を踏まえ、自治体がPLATEAUなどのデータを活用して庁内で検証サイクルを回すことで、外部委託に頼らず施策移行までの期間を大幅に短縮できる、新たな政策立案のあり方について提案した。

駅から始まるシームレスな暮らし応援事業

Cグループでは「駅から始まるシームレスな暮らし応援事業」を提案した。居住促進区域内の施設不足や新築費用の高騰、人口減少といった課題に対し、エリアの魅力向上と定住促進を目標に掲げている。交通・子育て・医療などの面で多様な住民が魅力を感じる街づくりを進め、同区域の人口割合を4%引き上げる数値目標を示した。PLATEAUを活用し、駅からの「二次交通」の充実化を図って自家用車の移動回数を全体で10%削減すること、導入にかかる初期費用は3600万円と算出されている。

また、その魅力を住民に直接伝えるための画期的なツールとして、PLATEAUの3D都市モデルを活用した実践形式の体験学習が提案された。多様な視点からシミュレーションを行えるため、自家用車に依存しない暮らしや渋滞の緩和などを疑似体験できる。その象徴的なユースケースとして、国の補助金利用を想定して制作された「PLATEAUで初めてのおつかい」のポスター案がスクリーンに映し出された。仮想空間での移動体験を通じて居住誘導区域の真の魅力を実感してもらい、最終的な住み替えや定住促進へつなげるという、未来志向の展望が語られた。

発表終了後、濱田氏は「初めてのおつかい」というコンセプトに興味を示しつつ、「子どもが自宅から駅までどのようなルートや手段で安全に移動できるのかを、PLATEAUを使って可視化し、理解できる仕組みは、全く新しい発見である」と高く評価した。

続いてアドバイザーの久田氏からも、ビジュアルの持つインパクトの強さについて肯定的な意見が寄せられた。地方都市特有の「駅前が寂れ、郊外の大型ショッピングモールでの車生活が中心となる」という空洞化現象に対し、手遅れになる前に駅を基準とした施策を打ち出すことの重要性が語られ、公共交通を通じた家族全体の幸せなライフサイクルのストーリーが見事に描かれているとコメントした。

災害リスクを恐れない街へ。住民の命を守る 「立地適正化計画」

診断の結果として「居住誘導区域」と「浸水想定区域」の重複という深刻な現状に着目したDチームは、都市の持続可能性と防災のあり方について提案を行った。本来であれば「健康で長生きできる持続可能な街を作る」という目的のために設定されるべき居住誘導区域だが、その一部に災害リスクが潜んでいるという矛盾が生じている。この課題を打破するため、チームは立地適正化計画の見直しと誘導区域の再検討を行い、ハード・ソフトの両面から防災・減災整備を推進するという「あるべき姿」を掲げた。

このビジョンの実現に向け、以下の3つのアプローチが示された。

●財源の確保:国の「都市構造再編集中支援事業」の補助金を最大限に活用する
●民間活力の導入:地元の民間不動産事業者と連携し、移住・定住を円滑に進める共同事業を推進する
●普及・啓発活動:Web広告やインフルエンサーを起用し、事業の有効性を広く発信する

これらの取り組みを通じ、短期的には安全な区域への人口誘導と浸水区域の人口抑制、および確実な避難誘導体制の構築を目指す。そして中長期的なゴールとして、立地適正化計画を根本から見直し、「住民の安全」と「持続可能な都市」が真に両立する社会を実現したいと説明した。

濱田氏は、AIが発達した現代において正しい情報を瞬時に知るアプローチとして非常に重要であると指摘した。また、具体的な予算感も含め、「今後の議論を活発にする、将来の発展性を持った行政らしい政策に落とし込める提案だ」と評価した。

久田氏からも、「市議会にそのまま提出しても最初の草案になり得るほど、現実的で確実な素晴らしいアイデアだ」と称賛の言葉が送られた。また「PLATEAUなどのテクノロジーともっと掛け合わせて、さらに弾けたプランを作る余地もあった」と今後に向けた期待を語った。

公共サービス縮小の危機を見据えた「バスなし体験移住促進イベント」

Eグループからは、将来的な過疎化が見込まれる地域から利便性の高いエリアへの移住を促し、地域の人口密度を維持するためのプロジェクト「バスなし体験移住促進イベント」が発表された。これは、将来的に過疎化が進む周辺地域から、利便性の高い居住誘導区域へと住民の移住を促すことで人口を集約し、誰もが徒歩や公共交通を利用して生活に必要なサービスを受けられる環境を維持することを目的としている。しかし、その実現に向けては、人口減少に伴う公共交通の維持が困難であるという「現状」の課題と、居住誘導区域の絞り込みという施策実行に対する住民からの激しい反発という「ハードル」の2点が示された。

これらに対する具体的な解決策として、過疎化が進むエリアの住民に向けた「地域の防災イベント」を企画した。その内容は、あえて1週間にわたるバスの運行停止に加え、電気と水道をそれぞれ1日ずつ計画的に遮断するという踏み込んだものだ。インフラ停止による不便さを身をもって経験してもらい、その一方で、徒歩や鉄道で快適に過ごせる都市拠点エリアの暮らしをPLATEAUで疑似体験してもらう。このように移住の利点を直感的に可視化することで、住民の行動変容を促す構想が示された。

発表後、濱田氏は「本当にインフラを止めてしまうとなると、私が上司なら頭を悩ませる難しい提案だ」と苦笑しつつも、「住民に今の生活は未来永劫続くわけではないという厳しい現実を肌で感じてもらうイベントとして、時間軸を意識したとても素敵な取り組みだ」と評価した。

久田氏からも「アイデアベースとしては素晴らしい。ぜひどこかで実現してほしいと思わせるほど、現実と理想の狭間を攻めた見事な提案だ」という一方で、実際の行政においてバスの運行を止める許可を取ることは極めて困難であるため、これに近しい体験ができる「シリアスゲーム」のような代替手段を開発できないかという前向きな提案もされた。

サテライトオフィスの一次避難施設化

Fグループは、「サテライトオフィスの一次避難施設化」と題した防災と空間活用を組み合わせたプロジェクトを提案した。都市構造評価ツールを用いて分析を行ったところ、「居住誘導区域」「避難所のカバー域」「支援が必要な高齢者世帯等の分布」という3つの要素が地理的に分散していることが判明。このままでは災害時に街の防災機能が働かないという課題を挙げ、災害時に誰一人取り残さず全員が安全に避難できる街づくりの実現を目標として設定した。

これらの課題解決に向けて、3つの案が提案された。

●商業施設やオフィスビルを、企業側のメリットを考慮しつつ避難所として開放する仕組みづくり
●既存の公共ネットワークと新たな避難施設との連結
●地域のケアマネージャー等の知見を含めた避難計画の共同作成

議論の中で、この中から「企業側のメリット創出と避難所開放の仕組みづくり」に焦点絞って進めることが決まった。具体的な解決策として、容積率緩和のメリットを活用しながら、災害時利用を踏まえた民間ビル内でのコワーキングスペース設置の推進、建物の3D形状に加え、オフィスの「面積」「トイレの有無」「バリアフリー対応の有無」といった避難所に不可欠な属性情報をPLATEAU上にマッピングする方法を提案した。参加者はハンズオンを通じてこのデータ拡張作業を体験し、情報を追加・統合することで、自治体は災害時にどのオフィスが何人の避難者を受け入れられるかを即座に判断できるようになり、公共施設に頼らない避難所の確保が可能となると説明した。

濱田氏は「都市政策のデータを横断的に使うという点が、この提案の最大の魅力だ」とコメントし、「これまで都市政策の枠組みの中だけで使われがちだったPLATEAUが、高齢者の避難といった福祉の領域へと広がっていくことは、非常に魅力的であり、大きな気づきを与えられた」と語った。

最後に久田氏からは、東日本大震災時のエピソードを紹介しながら、善意のプラットフォームに頼るだけでなく、「災害が起きた時には、施設にどれくらいの人が集まるのか」という具体的なシミュレーションを事前に行うことができればより完璧なシステムになるだろうと、今後のさらなる発展への大きな期待を込めて講評が締めくくられた。

3日間の締めくくりに開催地を代表して、大阪都市計画局 計画推進室 計画調整課 参事 木下正浩氏から総括の挨拶があった。「大阪府でも守口市・門真市エリアにおける3D都市モデルの利活用を検討している最中であり、松江市の街づくりや堺市の自動運転といった全国の先進事例、そしてみなさまの熱意あふれる具体的な検討内容は非常に参考になりました。ぜひ、この交流会で得た知識や人脈を今後の取り組みにつなげていただきたいと思います」と述べた。

大阪都市計画局 計画推進室 計画調整課 参事 木下正浩氏

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