雨庭等の雨水貯留施設の設置・整備効果の可視化
| 実施事業者 | 株式会社福山コンサルタント / 日本電気株式会社 |
|---|---|
| 実施協力 | 埼玉県さいたま市都市局都市計画課・みどり推進課・建設局河川課・下水道計画課 / 九州産業大学 建築都市工学部 教授 山下三平 |
| 実施場所 | 埼玉県さいたま市 |
| 実施期間 | 2025年12月~2026年1月 |

3D都市モデルを活用し、建築物や土地被覆の状況を精緻に再現した都市スケールの内水氾濫シミュレーションモデルを構築。雨庭モデルを組み込むことで、内水氾濫低減効果を定量的に評価し、雨水対策の最適化やグリーンインフラ投資の合理的判断を可能にする。
本プロジェクトの概要
都市化の進展や土地利用の変化に伴い、現代の都市環境は深刻な都市型水害や内水氾濫リスクの高まりという喫緊の課題に直面している。都市型水害対策の推進においては、①現状把握の前提となる情報整備の不足、②対策方針策定における判断の難しさ、③実装段階での技術的・制度的障壁といった、各段階で連鎖する複数のボトルネックが構造的課題として顕在化している。
本プロジェクトは、3D都市モデルの土地利用情報から舗装面や植生面といった土地被覆の種別を判別し、DEMを用いた地表面の高さ情報と組み合わせて内水氾濫リスクを判定するアルゴリズムを開発するとともに、その結果をiRIC(河川の流れや河床変動、氾濫などを解析するための数値シミュレーションプラットフォーム(フリーウェア)。本プロジェクトでは、iRICに搭載されているソルバー(計算エンジン)の一つである「Nays2D Flood」を用いて内水氾濫解析を行った。)による氾濫シミュレーションとして可視化するシステムを構築する。これにより、地域における内水氾濫リスクの現状を住民と共有し、内水氾濫対策としての雨庭導入に関するEBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)を支援することで、地域一体となった効果的な内水氾濫リスク低減と雨庭等のグリーンインフラ整備を推進する。

実現したい価値・目指す世界
内水氾濫対策として注目されている雨庭などのグリーンインフラは、雨水流出の抑制による治水効果に加え、地下水保全や生物多様性の向上など、多様な便益を有する。さらに導入が比較的容易であることから、都市の保水・浸透能力を回復させる有望な対策として期待されている。
しかし、その整備による治水効果が定量的に評価・可視化されておらず、対策の有効性を示す根拠が乏しいため、施策として採択されにくい状況が続いている。背景には、自治体が管理する都市域における土地利用情報の整備が不十分であるという構造的な課題がある。この情報の不足により、内水氾濫リスクの空間的な分析や評価が困難となり、都市型水害対策の出発点となる現状把握そのものが成立しにくい。また、官地における設置可能な用地が限られていることに加え、技術的知見や先行事例の不足から、民地での適地選定や合意形成にも課題が残っている。結果として、雨庭の導入は下水道施設の増強・改築や大規模な雨水貯留施設設置等の対策メニューに比べて実証性に欠け、優先的に採択されにくいのが現状である。
さらに、実装段階においても複数の障壁が存在する。都市型水害の抜本的な解決には、広範な民有地における分散的な対策が不可欠であるが、住民や事業者による主体的な取組は限定的である。これは、雨庭の効果やメリットに関する情報共有が十分でなく、合意形成を支援する仕組みが整っていないことが要因である。また、設計・施工に関する技術的ノウハウの不足も整備の拡大を妨げ、民間主導による展開の足かせとなっている。
このように、都市型水害対策の推進においては、①現状把握の前提となる情報整備の不足、②対策方針策定における判断の難しさ、③実装段階での技術的・制度的障壁といった、各段階で連鎖する複数のボトルネックが構造的課題として顕在化している。
これらの課題を解決するためには、雨庭をはじめとするグリーンインフラの整備効果を定量的かつ可視的に提示するとともに、多様な関係主体が協働・連携可能な環境と制度的枠組みを早急に構築することが求められている。
内水氾濫対策として雨庭や雨水貯留施設等のグリーンインフラの導入を促進するためには、その内水氾濫低減効果を定量的に算出・可視化し、地域住民や企業等のステークホルダーと共有することで、対策の必要性に関する合意を形成することが不可欠である。本取り組みでは、科学的根拠に基づく効果検証と直感的な可視化を実現することで、雨庭の採択に向けたエビデンスに基づく政策立案(EBPM)を推進するとともに、地域における円滑な合意形成を強力に支援することを目的とする。
本プロジェクトでは、3D都市モデル(建築物LOD1、道路LOD1、土地利用LOD0)および下水道の集水範囲に基づき、都市域における舗装面・植生面等の土地被覆種別を判別するとともに、1mメッシュ相当の解像度を有する高精細DEMデータから得られる地表面標高情報と統合することで、内水氾濫解析アルゴリズムを構築する。
さらに、本解析アルゴリズムに雨庭や雨水貯留施設の浸透・貯留機能を反映させ、iRICを用いた二次元不定流解析を実行することで、雨庭等の整備前後の氾濫状況を定量的に比較し、雨庭等の設置による内水氾濫低減効果を可視化するシミュレーションを開発する。
シミュレーションにおける外力は、降水量から地中浸透や樹冠遮断などの損失雨量を差し引いた「有効雨量」として設定する。「有効雨量」は、3D都市モデルから取得した土地利用種別ごとに、ホートンの式を用いて浸透特性を考慮した値として算定する。また、下水道施設が整備されている地区においては、下水道の雨水処理能力を超過する降雨のみが地表面流出を生じると定義し、当該地区での外力は、処理能力を上回る降雨強度に基づき算出した有効雨量を用いる。
得られたシミュレーション結果は、3D都市モデル上で直感的な把握を可能にするWebGISシステムとして可視化される。内水氾濫リスクの分布や雨庭による流出抑制効果を3D都市モデル上にカラーマップとして直接投影することで、専門知識の有無にかかわらず対策効果を視覚的に体感することを可能とした。
本システムの活用により、客観的データに基づく政策判断(EBPM)を強力に支援するとともに、住民や関係者との円滑な情報共有を通じた合意形成を促進し、地域一体となって対策を推進するための客観的指標の確立を目指す。
これら一連の取組を通じて、雨庭等のグリーンインフラ整備を加速させ、内水氾濫リスクの低減に加え、生物多様性の向上、地下水保全、地域の賑わい創出といった多面的な価値を創出し、持続可能なまちづくりに貢献することを目指す。
3D都市モデルによる高度な氾濫シミュレーションを通じて、雨庭等のグリーンインフラが持つ減災効果を定量的に可視化し、地域住民や企業による有効性への深い理解と主体的な設置を促すことで、安全で持続可能な都市環境が共創される社会の実現を目指す。



検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材
本プロジェクトでは、3D都市モデルを活用し、建築物や道路、詳細な土地利用状況をデジタル上で精緻に再現することで、都市特有の雨水流出メカニズム(有効雨量)を考慮した高精度な内水氾濫シミュレーションモデルを構築した。本システムは、内水氾濫リスクの高い都市部を対象として、雨庭等の雨水貯留・浸透施設を設置した場合の浸水被害軽減効果を数値シミュレーションにより評価するとともに、その結果をWebGIS上で可視化するシステムを構築した。本システムにより、従来は効果の把握が困難であった雨庭等のグリーンインフラ設置による浸水被害軽減効果を、客観的かつ定量的な根拠として提示することを可能とすることで、地方公共団体における施策検討や住民との合意形成の支援に資することを目的としている。
本システムの全体像を以下に示す。
1.内水氾濫リスク判定アルゴリズム
3D都市モデルをはじめとする各種オープンデータを活用し、雨庭等の整備効果を算出・可視化するための一連の処理フローを構築した。まず、シミュレーションの対象となる流域または下水道処理区を設定し、解析の基礎となる二次元計算メッシュデータを作成した。計算メッシュは、都市内の微地形や構造物の影響を考慮可能とするため、2m×2mの高解像度メッシュとして生成した(最小1m×1mメッシュにも対応)。次に、各計算メッシュに対して地形および地物に関する属性情報を付与し、都市空間の再現を行った。地盤高には国土地理院が提供する数値標高モデル(DEM、1mまたは5mメッシュ)を用い、地表面の粗度係数は3D都市モデルが持つ属性情報の土地利用データ(LandUse)に基づき土地利用区分ごとに設定した。また、建物による流下阻害の影響については、3D都市モデルの建築物モデル(LOD1)を用いて建物阻害率を設定し、氾濫流の挙動に反映させた。
次に、氾濫解析に入力する降雨データの設定を行った。本システムでは、単純な降水量(総雨量)をそのまま入力するのではなく、実際に地表面を流れて氾濫の原因となる「有効雨量」を算出して用いる点を大きな特徴としている。
具体的には、総雨量から地中への浸透や植物への付着(樹冠遮断)などによって失われる「損失雨量」を差し引いて算出する。この浸透量の計算には、時間経過に伴う土壌の浸透能力の低下を表現できる「ホートンの式(f=fc+(f0 - fc)・e-kt)」を採用した(e-kt:浸透の時系列減衰の項)。 3D都市モデルが持つ属性情報の土地利用データ(LandUse)を活用し、「宅地」「道路」「緑地」「農地」といった区分ごとに、初期浸透能(f0)や最終浸透能(fc)といったパラメータを詳細に設定している。特に最終浸透能の設定にあたっては、各自治体の浸透能力マップや土壌特性(ローム層の分布等)を参照し、地域の実情に即したモデルを構築した。これにより、雨庭等整備による浸透機能の向上が、どれだけ流出抑制に寄与するかを精緻に評価することを可能にした。

内水氾濫シミュレーションの中核となる計算エンジンには、河川流況および氾濫解析分野において国際的に広く利用されているiRICのソルバーであるNays2D Floodを採用し、平面二次元不定流解析を実施した。iRICはオープンソースソフトウェアとして公開されており、国土交通省が示す「小規模河川の洪水浸水想定区域図作成の手引き (令和 5 年7月 国土交通省水管理・国土保全局 河川環境課 水防企画室・国土技術政策総合研究所 河川研究部 水害研究室)」においても標準的な解析手法の一つとして位置付けられていることから、防災・減災分野において高い信頼性と豊富な実績を有する解析基盤である。
本システムで採用した平面二次元不定流解析では、河川のような線的な流れに限定せず、市街地へ溢れ出した氾濫水が道路網や建築物配置、微地形の影響を受けながら面的に広がり、一部は河川へ戻るような挙動を時間的に追跡することが可能であり、都市域における複雑な浸水状況を精緻に再現できる点を特徴としている。水理計算を定常状態ではなく時間変化を伴う不定流として扱うことで、最大浸水深のみならず、降雨開始後の浸水拡大過程やピーク時刻、浸水継続時間といった時系列的な変化を把握することができる。
本実証では、iRICを用いて2m×2mの高解像度計算メッシュを構築し、雨庭の設置による有効雨量、すなわち地表流出量の低減効果を解析条件として入力することで、雨庭等の対策が内水氾濫リスクの低減に与える影響を、平面的かつ時間的に詳細な情報として定量的に算出した。

2.雨庭等の適地選定シミュレーションと設置効果可視化
雨庭や雨水貯留施設については、その設置形態に応じた3パターンに分類・モデル化し、解析条件に組み込んだ。
1.戸建住宅の庭先等に設置される「建物雨庭」については、屋根に降った雨水が雨どい等を通じて地中へ浸透する仕組みを想定し、対象となる建物メッシュに対して雨庭効果を考慮して低減した有効雨量を与えることで表現した。
2.公園や道路脇などに整備される「空地雨庭」については、周辺地表面からの雨水を集水して浸透させる機能を想定し、対象メッシュの地盤高を掘削(検証では30cm掘削として)した地形モデルとして表現するとともに、最終浸透能に相当する排水機能をポンプモデルとして設定した(ポンプモデルでの排出先はモデル域外となる)。
3.駐車場等の地下に設置される「貯留施設」については、雨水を一時的に貯留する機能を表現するため、対象メッシュの地盤高を掘削し(検証では3m掘削とした)、地下空間への貯留効果をモデル化した。

シミュレーションは、現況条件(対策なし)および対策実施後(雨庭等設置)の各ケースについて実行し、最大浸水深および浸水範囲等を算出した。得られた解析結果については、iRICの出力データをWebブラウザ上で動作するGISに取り込み、3D都市モデルと重ね合わせて表示した。これにより、現況および対策後の浸水状況を切り替えて比較できるほか、対策によって浸水深が低減した差分を色分け表示することで、浸水リスク低減効果を直感的に把握できるようにしている。さらに、流速や流向をベクトル表示することで、雨水の挙動を視覚的に確認することも可能とした。
本システムの有用性検証として、2自治体(さいたま市、他県)の職員を対象としたシステム操作体験を開催し、アンケートを通して有用性の評価を行った。


検証で得られたデータ・結果・課題
本実証実験では、開発した「雨庭整備効果算出・可視化システム」の有用性を検証することを目的として、さいたま市(都市計画、下水道、河川、みどり推進各課)および他県の河川整備課に所属する実務担当職員16名を対象に、システムの操作体験およびアンケート調査を実施した。検証にあたっては、システムの操作性や可視化結果の分かりやすさに加え、政策立案におけるエビデンスに基づく意思決定(EBPM)への寄与や、住民との合意形成における有効性を評価するとともに、実務導入に向けた課題の抽出を行った。
その結果、本システムの有用性について多くの肯定的な評価が得られた。アンケート調査(有効回答12名)では、回答者の92%が「システムの利用により浸水リスクに対する理解が高まった」と回答し、83%が「施策の精度向上や根拠の明確化に寄与する」と評価した。特に、3D都市モデルを基盤とし、2mメッシュという高解像度で建築物単位の床上・床下浸水リスクを可視化できる点については、従来の平面的な浸水想定図と比較して情報量が多く、住民説明や合意形成の場面において高い説得力を有するとの意見が多数を占めた。これらの結果から、本システムは内水氾濫対策事業における適地選定や整備効果の検証を通じて、エビデンスに基づく政策立案を支援する有効なツールとなり得ることが示された。
一方で、現場導入を見据えた場合には、いくつかの技術的課題も明らかとなった。処理速度や操作時のレスポンスについて肯定的な評価を示した職員は25%にとどまり、自治体から貸与される一般的な事務用PC環境においては動作が重く、場合によってはベースマップが表示されないなど、実行性能の不足が日常的な業務利用の大きな障壁となっていることが確認された。また、ユーザーインターフェースおよびユーザーエクスペリエンスの観点からは、浸水深と対策による削減効果を示す凡例の配色が類似しており判別しにくい点や、操作アイコンの意味が直感的に理解しづらい点などが指摘された。これらは、専門的な解析ツールとしての完成度から、行政実務で活用可能な業務支援ツールへと発展させる上で、改善が求められる事項である。
さらに、実務への適用に関する示唆として、実際の浸水被害を高精度に再現するためには、内水氾濫に加え、河川の越水等による外水氾濫を統合的に扱う解析が不可欠であることが示された。近年の豪雨災害では、下水道の排水能力不足による内水氾濫と、河川水位上昇に伴う外水氾濫が複合的に作用し、被害が拡大する傾向にある。したがって、河川からの越水流入量や、水位上昇により雨水排水が阻害される影響(バックウォーター現象等)を境界条件としてシミュレーションに組み込み、流域全体のリスクおよび対策効果を一体的に評価可能とする機能拡充が求められる。
また、雨庭の設置が十分に普及していない要因としては、「維持管理に伴う負担」が最も多く、次いで「効果に対する理解不足」「用地確保の困難さ」が主な課題として挙げられた。これらの結果から、雨庭の整備効果をシミュレーションにより可視化する取り組みと併せて、維持管理費用への支援や技術要件を明確化した補助金制度の整備が、グリーンインフラの社会実装を推進する上で重要な役割を果たすことが示唆された。


今後の展望
本実証における最大の成果は、雨庭等のグリーンインフラが持つ内水氾濫低減効果を、3D都市モデル上で直感的に可視化する手法の有効性を立証した点にある。アンケート調査においては、自治体職員から「効果を直感的に理解できた」「対策への理解度が向上した」といった肯定的な評価が多数得られ、とりわけ2mメッシュという高解像度で建築物単位の浸水リスク低減効果を確認できる点については、住民説明や庁内における予算確保に向けた合意形成の場面において高い有用性を有することが示された。また、開発したシステムは氾濫流の流動をベクトル表示することが可能であり、段階施工(設置場所)を検討する上で有用であるとの指摘を受けている。これにより、本システムがエビデンスに基づく政策立案(EBPM)を支援する実務的なツールとして活用可能であることが確認された。また、オープンソースであるiRICと3D都市モデルを組み合わせることで、特定のベンダーに依存しない汎用的な解析・可視化フローを構築できた点も、本実証における技術的成果の一つである。
一方で、本格的な実務導入を見据えた場合には、システム性能および社会実装の両面において明確な課題が明らかとなった。まず、Webブラウザ上での3D描画処理に伴う負荷が大きく、自治体における標準的な業務用PC環境では動作が重い、あるいは表示に時間を要するといった指摘が多数寄せられた。快適なレスポンスの確保は日常的な業務利用の前提条件であり、ユーザビリティの改善が喫緊の課題であることが示された。また、シミュレーション内容の現実性に関しては、検証で設定した「街区全体に一律で雨庭を整備する」シナリオを示したが、実務上は非現実的であり、効果の実感が得にくいとの意見が見られた。実際の行政施策においては、予算や用地制約を踏まえた段階的・部分的な導入が一般的であり、こうした現実的な普及水準を前提とした検証ニーズが高いことが示唆された。さらに、雨庭の社会実装を阻害する要因として、維持管理に伴う負担や、技術的な標準や基準が未整備である点が挙げられ、単に防災効果を示すだけでは普及に十分でないことが明らかとなった。
これらの課題を踏まえ、今後はシステムの進化と社会実装に向けて三つの方向性を軸に取り組む方針とする。
1. システムパフォーマンスとユーザビリティの改善
行政職員が日常業務で使用する標準的なPC環境において、3D描画に起因する動作遅延や、UI/UXの視認性・操作性が課題として確認された。これを解消するため、描画処理の最適化やデータ構造の根本的な見直しによるシステムの軽量化を最優先で推進する。あわせて、凡例や操作体系を刷新し、専門知識がなくとも直感的かつ円滑に操作可能なユーザインタフェースの構築を図る。
2. 計画実務に即したシミュレーション機能の拡充
予算規模や事業の優先順位に応じた、より現実的な計画を策定したいというニーズに応えるため、公共施設からの段階的な導入や、浸水リスクの高い重点地区への集中的な整備など、自治体の実務プロセスに即した複数のシナリオを柔軟に設定・比較できる機能を拡充する。
3. 制度設計・予算確保を支援する機能への展開
現在、雨庭等の普及を阻む要因として、標準的な技術要件が未整備であることに加え、導入コストに対する費用対効果(ROI)を定量的に算出・説明することが困難である点があげられる。これにより、多くの自治体において補助金制度の設計や必要な予算の確保が円滑に進んでいない現状がある。
これらの課題を解決するため、単なる浸水深の可視化にとどまらず、雨庭の標準仕様書や技術要件の策定に資するナレッジ提供機能を強化する。さらに、浸水被害軽減額やインフラ維持管理費(LCC)の削減効果など、雨庭整備による経済的価値を定量的に評価可能な指標体系をシステムに実装することで、合理的な補助金制度の立案および予算確保を強力に支援するプラットフォームへの発展を目指す。
以上を踏まえ、本システムを通じて、行政、企業、市民が防災効果に関する客観的根拠(エビデンス)と共通理解を醸成することを目指す。これにより、個々の敷地単位での取り組みが流域全体の防災力向上へと有機的に統合され、「グリーンレジリエンス」な社会の自律的な形成に寄与することが期待される。





